まるで暴君。

ガタン

突然、扉が乱暴に開かれる。

そして現れたのは魔法師の正装であるローブを着崩して、やや露出が多い女性だった。

「おー、お前ら偉いな。きちんと席に座ってるなんて」

教室に入ってきた女性は教諭の席にドカッと座ると、水タバコを鞄の中から取り出した。

「今年このクラスの担当になったフィオナ・パスカリーノだ。よろしく」

どうやらこの派手な女性は俺達の担任だったようだ。

先生が名乗った直後から、教室の雰囲気がガラッと変わった。

空気がピリピリしてる気がするんだが。

そんな空気の中、最後列に座っていたチャラ男君が小さな声で呟く。

「パ、パスカリーノって……まじかよ」

隣に座るミレーヌさんも、先ほどまでと違って顔色が悪くなっている気がする。

「うん? 誰が人の事を呼び捨てで呼んでもいいって許可したんだ? あん?」

先生は急にチャラ男に向けてデコピンをするような動きをした。

指を振り抜いた瞬間、恐ろしい光景が繰り広げられる事に。

「なっ!!

デコピンの動作と共に極小の炎か発生しており、指を振り抜くとその極小の炎が発射された。

炎はチャラ男君目掛けて一直線に進む。

パン

前髪にぶつかると極小の炎は小さな爆発を起こした。

「あちっ! あちあち!」

着弾と同時にチャラ男君の髪の毛が発火。慌ててチリチリと燃え始めた髪の毛を手で叩いて消すのだった。

炎が消えた頃には、サラサラヘアーから焦げてチリチリになった前髪へとヘアーチェンジしてしまっていた。

「ぶっ! アハハハっ! チリチリがお似合いじゃねぇか。全部チリチリにかえとくか?」

涙目のチャラ男君はすぐに謝罪した。

「生意気な言動をしてしまい、本当に申し訳ありませんでした」

チャラ男君がペコペコ謝っている。

この人、行動はあれだけど凄い。

無詠唱で普通に会話しながら一瞬で魔法を発動させてる。

「まぁ今回だけは許してやろう。私は寛大だからな。とりあえず私が自己紹介したんだ。次はお前たちの番な。チリチリから順番に自己紹介しろ」

チリチリと言われたチャラ男君は一瞬悔しそうな顔をするものの、逆らうとどんな目に遭うかわからないので素直に立ち上がり自己紹介を始めた。

「シャールです。よろしくお願いします」

チャラ男君はシャールか。

「セシルよ。よろしく」

ちょっと気の強そうな女の子はセシル。

「ウィリアムだ。よろしく頼む」

部屋に入るなり平民と見下してきた奴はウィリアムか。

先生がウィリアムの偉そうな態度にピクッと顔が反応した。

「……よろしくお願いします」

誰だろうが髪の毛チリチリコースにはなりたくないもんな……

「次、二列目~」

次はあの子か。

「シ、シーヴァです……よ、よろしくお願いしますです」

この子、本当にオドオドしているよな。

しかも俺を見たときの悲鳴が、地味に傷つくし気になる。

次は双子の片割れ。

「私はルーです。よろしくお願いします」

顔立ちが二人とも中性的で分からなかったけど真ん中に座っている子は女の子らしい。

「僕はテオです。隣の姉共々よろしくお願いします。あと、こんな見た目ですが僕は男ですので間違えないで下さると助かります」

もう一人の男の子は弟なのか。

たしかにこの双子の顔だと、仮に女の子の服装したらまんま美少女だし、男の子の服装だと美少年だもんな。

「おっ! お前たちはあれか。アブリックの子供か! 本当に父親に似なくて良かったなぁ、お前たち」

どうやら先生の知り合いの子供らしい。

「先生、家名を学園で言うのはちょっと……」

「ん? あぁそうか。悪い悪い、そういやそんなルールだったな。学園なんて久々だったから忘れてたわ。いいかお前達、私が今言った事は忘れろ。いいな?」

流石に逆らうと何をされるのか分からないので皆頷いている。

「んじゃ次は最後の列だな。お前からだ」

扉側に座った女の子から自己紹介。

最後が俺か。

この子は確かアースウォールを試験の時に発動した子だよな。

「初めまして、クララです。よろしくお願いします」

きちんとお辞儀までして礼儀正しい子だな。

そして次は召喚魔法を発動した子だ。

「……ベティーです。お願いします」

見た目通り大人しそうな子だな。

次はミレーヌさんだ。

「ミレーヌです。皆様、よろしくお願いします」

綺麗にお辞儀をするミレーヌさん。

こう見てみるとミレーヌさんが少し大人びて見えるな。

そして最後は俺の番か。

「ラグナです。よろしくお願いします」

ビシッとお辞儀をして挨拶する。

流石にチャラ男みたいに髪の毛チリチリにされたくないし。

「あぁ、お前が噂の問題児か」

えっ?

「僕が問題児ですか……?」

ミレーヌさんも首を傾げてる。

「まぁ、こっちの話だ。気にすんな。これで十人全員の自己紹介は終わった訳だ」

先生が時計を確認してる。

「やべぇな、まだ時間が余ってるわ。あれだ、なんか私に質問あるか? なんでもいい。遠慮せずに聞いてみろ」

この先生に遠慮せずに聞けと言われても……

するとミレーヌさんが恐る恐る手をあげる。

「おっ。君はミレーヌだっけか? 何が聞きたい?」

ミレーヌさんは立ち上がると小さく息を整えた。

「先生は確かヒノハバラ第二魔法師団の特攻隊長だとお聞きしたことがあるのですが、どうして学園の教師に?」

特攻隊長って……

やばい職名だな。

「あぁ、あれな。第一魔法師団団長のじじぃがムカついたんで、シバいたらクビになった。んでこの学園の学園長が今年は面白い人間が揃ってるから来いって言うんで急遽教師になる事になった。以上」

そう言って俺のことを見ながらニヤッと笑った。

それだけって……

実力でいったら第一師団の団長よりも強いってことじゃん……

それに学園長も面白い人間が揃ってるって。

それは誰の事だよ……

コンコン

「失礼します」

部屋に入ってきたのはコレットさんだ。

「先ほど全クラスの入学式が終わりましたので、これより皆様を学園生活の説明および特級組の寮や食堂へ案内します」

ぺこりとお辞儀をするコレットさん。

「んじゃ、あとはよろしくー。今日はこれで終わりだから私は帰るわー」

俺達が教室を出る前に先生は先に帰っていくのだった。

「……それではこれより学園生活について説明を始めたいと思います」

コレットさんから学園生活についての説明が始まったのだった。


学園生活か。考えてみれば今年十歳になる子ども達が、いきなり寮生活だもんな。

前世では考えられないよ。

十歳で親元を離れて生活なんて。

「まずは特級組について説明します」

コレットさんが黒板の横にある丸い水晶? みたいな物に手を触れると、教室にセットされている黒板がスクリーンのように変化した。

こういうところは無駄に前世っぽいよな。

初代勇者様以外にも転移者とか転生者が居たんじゃないかって思えるような部分が、ちらほら見える。


《特級組の専用寮の説明と生活スケジュール》

専用寮は学年ごとに専用の建屋が用意されている。

男の子は一階、女の子は二階に部屋が振り分けられている

基本的に異性の部屋へ行くことは禁止。

ちなみに唯一、二階に上がる事が出来る階段には二十四時間警備員が常駐している。

ちなみにルールを破った者は即退学。

専用寮では毎朝午前六時にアラームの魔道具が起動する。

朝食は寮併設の食堂にて六時三十分~七時三十分の間で提供。

食事のタイミングについては時間内であれば決まりは特に無し。

八時三十分より学園にて授業。

学園にて授業に参加しているタイミングで部屋の清掃が行われる。

洗濯について。

各部屋に専用の洗濯回収ボックス有り。

ボックスに入れた洗濯物は午前中に回収され、夕方には乾いた状態で各部屋へと戻される。

昼食は学校内にある特級組専用の食堂にて提供。

日替わりで三種類のメニューから好きな物を注文可能。

なお、他の学年の特級組クラスと食堂は同じ。

しかし揉め事回避の為に、席の場所は学年ごとに指定されている。

そして授業は午後三時まで。

この国では一ヶ月が三十日。

一週間が六日間。

学園は一週間のうち四日間は連続して午前八時三十分から午後三時まで授業。

一日は半日授業。最後の一日は休日らしい。

つまり休みは毎月五日間。

夕食までの空き時間は自由時間。

同じく半日授業後や休みの日も自由にしていいらしい。

勉強するもよし、訓練するもよし。休んでもいい。

夕食は夕方六時~七時の間に寮にて提供される。

特級組は毎月一日に国より支援金として大銀貨二枚が支給される。

支援金が出るのは特級組と銀組のみ。

特級組が大銀貨二枚に対して銀組は銀貨二枚。

その差は十倍だ。

買い物などは学園内に併設された複数の売店にて可能。

なお金銭に関して、毎月一日に親などからの振り込みを受け取れる仕組みがあるらしい。

また金銭的に困窮している生徒などは、学園内にて募集されているアルバイトを行うことにより多少のお金を稼ぐことは出来るとのことだった。

半年ごとに各人の能力の査定があり、その成績次第では半年でクラス入れ替えが行われる時もある。


「以上、基本的には黒板に映し出された通りの生活になると思います。何か質問はありますか?」

双子の姉、ルーが手を挙げる。

「学園の外に出るにはどうしたらいいのでしょうか?」

「緊急時以外、基本的に一年生の間は学園の外に出ることは出来ません。二年生からは長期休みが夏と年末から年明けにかけてあるので、その時には学園から出ることは可能です」

つまり最初の一年はよほどのことが無ければ、学園の敷地から出ることは出来ないって事か。

「他に質問はありますか? なければ学園内を案内致します」

そしてコレットさんに連れられて学園内を案内される。

「こちらがメインの売店です」

と案内されたのが今目の前にあるお店。

「思っていたよりも売店の品揃えが凄いね」

「そうですね。うちの商品もチラホラありましたし」

筆記用具・衣類・食料・武器防具・魔道具など品揃えは多岐に渡っていた。

売店と聞いていたので本当に小さい店舗を想像していたけど、実際に見ると凄まじいサイズだった。

メインの売店は巨大そのもの。

ちょっとしたスーパーくらいのサイズはあるんじゃないだろうか。

値段もピンキリ。安いものから超高級品まで。様々な価格帯の商品が取り扱われているのだった。

「それでは次の場所に移動します」

と次に案内されたのは訓練場。

「こちらは授業で使用する魔法の訓練場になっております。また各自で申請することによって、放課後にも使用することが可能です」

遠くには的が多数設置されていた。

「そしてあちらの奥に広がる広場は大規模魔法の訓練場ですので、無闇に近寄らないで下さい。過去誤って侵入してしまい、大規模魔法に巻き込まれて命を失った者もいます」

大規模魔法ってどんな威力なんだろうか。

とりあえず間違っても近寄らないように気をつけることにしよう。

その後も学園内で働く先生方の研究所があったり、運動場があったり、憩いの場たる公園があったり……

「魔法学園ってよりも、もはや小さな街といっても過言ではないよね」

寮の食堂以外にも学園内にはレストランやカフェなどがあったり、メインの売店以外にも小さな売店がちらほらあったり。

後は学園の教師たちの研究所なども気になるところ。

「それではこれより皆様の生活の場となる寮へと案内します」

いよいよ俺達が生活する寮へと向かうと、学園から歩いて五分ほどの場所に、六軒の巨大な建物が敷地毎に区切られて並んでいた。

「こちらがあなた方専用の寮となっております」

俺達の寮は一番学園に近い場所らしい。

寮の入口には衛兵が二人立っていた。

「お疲れ様です。今年入学になりました特級組十名をお連れしました」

「了解しました。どうぞこちらへ」

コレットさんが衛兵に挨拶すると寮の入り口の扉が開かれた。

そしていよいよ建物の中へ。

「すごい……」

建物に入ると目に留まるのは天井から吊された巨大なシャンデリア。

これは寮というより、まるで大貴族の邸宅なんじゃないかと思うほど豪華絢爛な室内となっていた。

そして俺達の目の前に並ぶのは十人のメイドさん。

「「皆様、お帰りなさいませ」」

寸分の狂いなく声を揃えお辞儀をするその仕草に、思わず目が点になってしまう。

「ちなみに特級組の皆様には、各一人専属の使用人がサポートとして割り当てられます」

まじかよ……

メイドさんの一人が一歩前に出てくる。

「皆様、初めまして。この寮のメイド長をつとめるミーシャと申します。私はラグナ様付きのメイドとなっておりますので以後お見知り置きを。これより各部屋の案内はそれぞれ担当の専属のメイドが行います」

目の前に現れたのは俺専属になったという綺麗なメイドさん……

前世でも行くことが無かったメイド喫茶のメイドじゃなくて、ガチなメイドさんが現れたのだった。コレットさんに案内についてのお礼を伝えると、各自それぞれ自分の部屋へと案内された。

前もって専属のメイドさんと部屋は決まっていたらしい。

俺は一階の八部屋あるうち、一番奥の部屋だった。

今年は今のところ男子が四人なので、一部屋ごとに間をあけて振り分けられていた。

「こちらがラグナ様の部屋となっております」

「まじかよ……」

エチゴヤの屋敷で泊まった部屋も広いと感じたけど……

これは広すぎる……

目の前に広がるのはキッチンを備えた巨大なリビングと勉強スペース。

寝室には豪華なキングサイズのベッド。九~十歳の身体にはでかすぎる。

更にシャワーだけでなく湯船まで……

あと個室のトイレは助かる。

「こんなにも豪華だったとは……」

「この寮は全て同じ間取りとなっております」

まぁそうだよな。間取りが違うと騒ぐ奴もいるだろうし。

「何かありましたら遠慮せずにお申し付け下さい。」

「出来れば……そのラグナ様って言うのを止めていただけると……」

様付けで呼ばれるのにはどうしても違和感がある。

「申し訳ありませんがこれは決まりですので……」

でもまさかの断られてしまった。

「では、これからのご説明を行います。この後は食堂にて集合。皆様で集まって昼食となっております。昼食後はお部屋にて授業に必要な備品の配布。確認後は生活にて必要な物の買い出しとなります。ご不明な点は御座いますか?」

「必要な物の買い出しって何が必要なのかはわからないのですが……それに資金を持っていなくて……」

「本日の買い出しについては私がサポートとしてお供させていただきます。資金については既に国より入学支援金として金貨一枚が支給されております」

支援金の額に驚いた。

『まじかよ、特級組に入学出来ただけで金貨一枚……つまり百万円をポンっと出してくれるのか。この国の貴族は腐敗してると言われてるけど、こういう時だけは気前がいいんだね』

「それでは食堂へとご案内致します」

ミーシャさんに案内されて食堂へと到着。

食堂にあったのは巨大なラウンドテーブルだった。

何故円形のテーブルなのか。

これは学園内では身分差が無いという意味らしい。

普通のテーブルだとどうしても意味合いが出てきてしまうので学園内に設置されている全ての食堂のテーブルはラウンドテーブルになっている。

席に座って待っていると、しばらくして全員が集まった。

ちなみに席は自由。

俺の右側にはミレーヌさん。

反対側は空席のまま。

クラスは全員で十人なのに椅子が十一人分。

『ん? これはどういうことだ?』

と悩んでいると、その謎はすぐに解けた。

食堂の扉がやや乱雑に開かれる。

「すまん、すまん。待たせたな。俺の席はっと……」

現れたのはまさかの学園長だった。

「お前の隣か。ちょうどいいや」

学園長は俺の隣にドカッと座ると始めろとメイド達に告げる。

「とりあえず飯にしよう」

学園長のかけ声と共にそれぞれのテーブルに料理が運ばれた。

そして皆のグラスに飲み物が注がれた。

「それじゃあ改めて、特級組に入学おめでとう。乾杯!」

「「乾杯!」」

甘い匂いと、このとろっとしてる感じ。

そして一口飲んで確信する。

これは、以前エチゴヤの宿で飲んだリンモのジュースだ!

「なんだ、お前はあんまり驚いてないな」

学園長がリンモのジュースを飲んだ俺の反応を見ると話しかけてきた。

「驚いてはいますよ。これ美味しいんですもん。でもナルタにある宿で一度頂いたことがありますので」

「ナルタ? あんな辺境でこれを出せる宿なんて……あぁ、あるな。お前、よくあんな所に泊まれたな」

学園長もエチゴヤの宿の存在を知ってるのか。

「本当にいろいろありまして……」

こればっかりは苦笑いをするしかないよな。

この場で言うわけにはいかないし。

「いろいろか……まぁいい。それよりも飯だ、飯」

この世界って基本的に肉、スープ、パンだからな。

正直言ってこの味付けには飽きてきた……

どれもこれも塩と少量の胡椒だけ。

まぁ、胡椒を使ってくれているだけマシなんだと思うんだけど。

唯一エチゴヤだけは醤油や味噌を使ったりしてるけど、価格と量産性がネックでそこまで普及していない。

『あぁ、アウトドアスパイス使いたい』

せめてアウトドアスパイスさえ使えたらどれだけ料理のレベルがアップするか……

一瞬こっそりと使ってしまいたいと思ったが、隣に座っているのは学園長。

絶対に隠し通すことなど出来ないので我慢することにしたのだった。

学園長と少し話をしたあとは貴族の生徒達に目を付けられ文句を言われたくないので、音を立てないように気をつけながら黙々と食事をする。

チリチリの前髪を持つチャラ男君はどうやら食事の際に文句を言おうとしていたらしく、チラチラと隙を窺っている感じがした。

だけど残念だったね。

俺だって頑張ればこれくらいの最低限のテーブルマナーは身に付けているからな!

学園長は皆が食事を取り終わったのを確認すると話し始めたのだった。

「皆、食ったな? それじゃあ話でもするか。お前たちは入学の時点でこの学年代表となっている。いわば下のクラスの連中からは引きずり落とすべき人間って訳だ。特級組に入れたからと胡座をかいていると、すぐに今の地位から引きずり落とされるからな? 毎年何人も自分の実力を驕った結果、下のクラスに叩き落とされた連中を俺は、何人も見てきた。お前達がどうなるかは自分の努力と才能次第だ。俺をがっかりさせるなよ?」

「「はい!」」

「後はあれだな。こっちの話も大事か。去年まで長年在籍していた特級組の専属の担任が歳で引退してしまってな。今年から新しい人間を迎え入れた。もうお前達も会ったと思うが……今年からはフィオナ・パスカリーノが教壇に立つ。既に洗礼を受けたやつもいるみたいだけどな」

チラッとチリチリになった前髪の持ち主であるシャールを見ながら笑う。

「まぁ言動と行動に『多少』問題があることは、俺だけでなく本人も認めている」

あれで多少か……?

全員が苦笑いしている。

「だが信じられんかも知れないが、あいつの部下に対する教育の腕は確かだ。実際にアイツが部隊を率いるようになってからは隊の損耗率は劇的に下がり、戦果も凄まじく上がっていたんだ。まぁ……普段の言動が言動なだけに、上からはよく思われていなかったがな。結果的にアイツを挑発し続けた第一魔法師団団長のじじぃは部下が見てる目の前で、ブチ切れたアイツに碌に反撃することも出来ずにボコボコにされて面子を潰されたって訳だ。俺ですら何度ボコボコにしてやろうか悩んで出来なかったことを、アイツがかわりにしてくれた事には感謝してるが……」

うわぁ……

部下が見てる目の前で師団長がボコされたのか……

求心力が下がりそう。

でも先生が率いてから部隊の損耗率が下がったってことは、教育者としての腕は凄いんだろうな。

まぁ言動や行動に気をつけないと、俺もチリチリ君みたいなことになる恐怖がつきまとうけど。

「まぁ勢いでやっちまった結果、クビな訳だが。元々狙ってた人材だからちょうどいいやと思って引っ張ってきた訳だ。あえて言わせてもらうがな……あいつに頑張ってついて行けばかなり強くなれるぞ」

そう聞いた瞬間に生徒たちはギラギラとした目付きに変わる。

『ほぅ、これなら大丈夫そうだな』

学園長は生徒達の空気が変わったのを見届けると、安堵して笑顔になる。

「それじゃあ俺はそろそろ仕事に戻るわ。お前ら、頑張れよ」

「「はい!」」

そう告げると学園長は仕事へと戻って行った。

俺達もすぐに解散し、各自の部屋へと戻るのだった。

「少し休まれますか?」

「大丈夫ですよ」

「それではこれより学園より支給された備品を持ってまいります」

ミーシャさんは一度部屋を退出すると、すぐに備品を乗せたカートを押して戻ってきた。

まずはと渡されたのが教科書、参考書、初級の魔法書。

これはすぐに自分が使いやすい位置へと収納していく。

次にと出てきたのがローブと杖。

「こちらは全生徒が同じ性能の物となっております」

まぁ性能まで違いをつけるのはどうかと思うしね。

ローブを羽織ってみる。

「うわぁっ!」

ダボダボだったローブが羽織った瞬間に、急にピッタリのサイズに変化して声をあげてしまった。

「こちらのローブは自動サイズ調整機能が付属されております」

サイズを自動で調整してくれるとか……

前世を超えた技術の品がとうとう出てきたな。

「ローブに刺繍されているこの虹にドラゴンのマークは?」

「こちらは特級組を表すマークとなっております」

派手な虹色だな……

杖を持ってみる。

こっちはサイズが変わらなかった。

「一年生のうちは指定の杖を使用するように定められています」

「二年生からは違うのですか?」

「二年生からは自由に好きな杖を使えるようになります。なので自分の実力を杖によって上乗せすることも可能です」

それは……

「お金を持ってる人達が有利になりますね……」

「……いい装備を手に入れることも力のうちですから」

そう言われると何とも言えないけど。

「学園からの支給は以上となります。何か質問は御座いますか?」

「いや、大丈夫です」

「それでは買い物へと出発しましょう」

すぐさま外出の準備をして出発することに。

ミーシャさんと二人で学園内を歩く。

あんまりジーッと見てはいけないんだけど……

ミーシャさんって美人だよなぁ。

俺の視線に気がついたのかミーシャさんがふとこっちをむいた。

「どうかしましたか?」

「い、いや何でもないです」

美人だなぁって見てたなんて言える訳が無い。そんな勇気もない。