王立ヒノ魔法学園入学式。
「新入生代表、ミレーヌ」
今日は学園の入学式。
「はい!」
ミレーヌさんが壇上に上がって行く。
「本日はこのような素晴らしい入学式を行って下さり、本当にありがとうございます。私達は歴史ある王立ヒノ魔法学園の入学式を無事に迎えることが出来ました。これから卒業までの六年間、名誉ある初代勇者様がお作りになられた本校の生徒の一人として自覚ある行動をし、仲間と共に勉学に励み、自身を鍛え、皆を守り抜く為の力を手に入れ、将来はこの栄光あるヒノハバラ国を支える一人前以上の素晴らしい魔法師になれるよう日々努力していこうと思います。先生方、先輩方におかれましては、厳しくも温かいご指導をよろしくお願いします。最後になりましたが保護者の皆様、私達をここまで立派に育てて頂き本当にありがとうございます。六年後、立派な魔法師となりご恩を返せるように日々研鑽してまいります。本日は私達の為にお集まりいただき本当にありがとうございました。新入生代表、ミレーヌ」
ミレーヌさんが頭を下げると大勢の人からの拍手が贈られた。
そして壇上から降りてくると俺の隣へと座る。
「お疲れ様」
「流石に緊張しましたわ」
ふぅとミレーヌさんが息を吐く。
そして入学式の最後に現れたのは学園長であるイアンだった。
「新入生の皆、入学おめでとう。俺はこの王立ヒノ魔法学園の学園長であるイアン・ロビンソンだ。これから六年間、一日一日を大切に過ごしてほしい。だらだらと長ったらしいのは俺の趣味じゃないんでな、俺からの挨拶はこんなもんで終わりにしよう。そしてこれがお前たちがお待ちかねのクラス分けの発表だ。まずはクラス分けについて説明を行う。これを見てくれ!」
学園長の掛け声と共に空中に巨大な掲示板が現れた。
一年生一クラス 特級組 十人
二クラス 銀組 三十人
三クラス 青組 四十人
四クラス 黒組 五十人
五クラス 白組 七十人
クラスによって人数も違うのか。
クラスの人数が多かろうが少なかろうが教師の人数は同じ。
つまり人数が少なければ少ないほど濃密な指導が行われるって訳か。
そして次の表示に切り替わる。
特級組
特別寮にて生活。
朝食、昼食、夕食は特級専用の食堂にて無料で提供・学費の無料。
また様々な優遇制度有り。
銀組
上級寮にて生活。
一般食堂での使用料金の割引。
学費の一部補助。
青組
一般寮にて生活。
補助などの特待は無し。
黒組・白組
共同寮にて生活。
青組と同じく特待は無し。
「ここまで差がつくんだね」
「学園は優秀な人材を育てることを第一に求められていますからね。仕方ありませんわ」
「それじゃあ、これから各クラスの振り分けを発表する。名前を呼ばれたら壇上に上がり入学許可書を受け取り、発表された自分のクラスへと向かってくれ」
流石に緊張してくるな。
せめて青組以上に入れたらいいんだけど……
「それでは発表する。特級組の一人目は……新入生代表でもあるミレーヌ!」
ミレーヌさんが一番手に名前を呼ばれた。
「はい!」
そして壇上へと向かい学園長から書類を受け取った。すると……
「おめでとーー!」
保護者席から突然聞き覚えのある声が響いた。
ミレーヌさんもその声にビクッとして慌てて振り向く。
目線の先にいるのはフードを深く被った謎の男性。
『あれって絶対にブリットさんだよな。急いで帰ってきたんだ』
ミレーヌさんも先ほどの声の正体に気がついたのか、顔を真っ赤にして壇上から降りて教室へと向かっていった。
『流石にあれは恥ずかしいよな……』
「特級組次席、ラグナ!」
えっ? 俺!?
「は、はい」
俺が次席なの!?
少し頭が真っ白になりながら壇上へと進む。
「おめでとう。本来ならお前が新入生代表だったんだけどな。お前を守るためだ。すまんな」
学園長が小さい声で爆弾を投下する。
「い、いえ。むしろ助かりました」
あんな挨拶なんて、俺には本当に無理だよ。
逆にミレーヌさんには申し訳ない気持ちになる。
学園長から書類を受け取り後ろを振り向く。
「おめでとうー!」
ブリットさんと思われる声がまた響いた。
『これは……想像以上に恥ずかしいな』
自分でも顔が真っ赤になっているのが自覚出来たので、軽く会釈をした後そそくさと教室に向かう。
特級と表示のある教室の前には女性が待っていた。
「ラグナ君、特級クラス入りおめでとう」
確かコレットさんだっけかな?
「ありがとうございます。これからよろしくお願いします」
そして教室へ。
教室内の配置はこんな感じ。
最前列が四席
二列目が三席
三列目も三席
トータル十席
ミレーヌさんは最前列のセンターに座っていた。
「ラグナ君も同じクラスで良かったぁ」
俺はミレーヌさんの隣、最前列の壁側に座る。
「僕も同じクラスで安心しましたよ。そう言えばさっきのあれって……ブリットさんですよね?」
ミレーヌさんはさきほどの光景を思い出したのか再び顔が真っ赤になってしまった。
「本当にもぅ、恥ずかしいんだから……」
「大丈夫。ミレーヌさんだけじゃありませんでした。僕も同じ目に遭いましたので……」
「本当にうちの父がごめんなさい」
本当に恥ずかしかったんだろうな。でも確かにあれは俺も恥ずかしかったけど。
ガラガラと扉が開く。
「ふん、平民風情が」
物凄く態度がデカい子が来たな。貴族の子供かな。
大人しくしとこ。
今入ってきた子供は俺達から離れるように、三列目の壁側に座ったみたいだ。
すぐに次の子が入ってきた。
「あっ」
四人目は女の子だ。
ミレーヌさんと目が合うとペコリと頭を下げていた。
「貴女は確か召喚術を使っていた子ですよね?」
ミレーヌさんが早速話しかけていた。
「は、はい。これからよろしくお願いします……」
大人しそうな子だな。
最前列の入り口に座った。
ガラガラ。
「おっ!」
またまた見たことある子が入ってきた。
「あなた達は確か一緒に試験を受けた子よね? よろしく」
今来た子はミレーヌさんの隣に座る。
これで最前列の席が全て埋まった。
でもまだ誰一人として名前を名乗らないけど何でだろ?
次に入ってきたのは……
「おっ! エチゴヤの可愛い子じゃん。よろしくー」
チャラそうな男だな。
しかもエチゴヤって名乗ってもいない筈なのによく気がついたな。
「えぇ、よろしくお願いします。でもルール違反ですわよ?」
ルール違反?
ポカンとした顔をした俺に気がついたミレーヌさんが教えてくれた。
「学園内では貴族であろうと平民であろうと平等というルールになっていますの。だから家名を名乗るのはルール違反なのですわ」
ミレーヌさんの横に座っている二人も頷いている。
「そうなんだ。知らなかったよ。でも君はよくミレーヌさんの家名に気がついたね」
俺が話し掛けたけど返事がない。
完全にシカトされてしまった。
「君みたいな可愛い子がいるなら、俺ってばやる気でるー!」
俺をスルーしてひたすらミレーヌさんに絡んでいたのだった。
ミレーヌさんが助けを求めるような目でこちらを見てきたので、強めの口調でチャラ男に話しかける。
「おい」
「うっさいなー。男は話しかけないでくれるかな? シッシッ」
こいつは!
するとミレーヌさんが急に腕を組んできた。
「この方は私の大事な、と、ともだちですの。そういうのは止めていただきたいわ」
ミレーヌさんがそういうと、キッとチャラ男は俺を睨み三列目の入り口側に向かい無言で座ったのだった。
重苦しい空気の中次に教室へと現れたのは顔がそっくりな二人。
兄弟かな?
「「皆、どもー」」
声がハモった!
でもちょっと声の高さが違った気がする。
二人は二列目の壁側とセンターに座るのだった。
そして再び扉が開く。
「ふんっ」
俺達の姿をみたその女の子は、その一言だけ言い放つと三列目のセンターにドカッと座る。
「へぇ。君もこのクラスなのか」
さっそくチャラ男が絡んでるな。
「汚らわしい」
物凄く
「くっ……」
流石のチャラ男でも、あの冷めきった目には勝てなかったらしい。
絡むのを諦めて大人しくなるのだった。
そして最後の一人が部屋に入ってくる。
「すみません、すみません」
ペコペコしながら最後に入ってきたのは女の子だった。
「あっ」
初めて見た。この子の目の色はオッドアイだ。
つまり『魔眼』持ちって事か。
エチゴヤの屋敷の本で魔眼持ちの特徴が記載されていた本があったけど初めて実物を見られた。
その子が俺のことを見た途端……物凄く目を見開いた。
「ひぃっ!」
そして何故か急にガタガタと怯え始めてしまった……
「どうかしましたか? 大丈夫?」
流石ミレーヌさん。直ぐに異変に気がついて声を掛けるのだった。
「だ、大丈夫です。何でもないです……」
恐る恐る空いていた最後の席にその子は座る。
『何だったんだ……? なんで俺を見たらあんなに恐怖を感じた目をしたんだろう?』
理由を尋ねる訳にもいかないのでグッと我慢する俺だった。
これで特級組である選ばれし十人が揃ったのだった。