いざ学園へ。

「それじゃあ行くぞ」

村に帰宅した次の日。

午後から父さんと二人で打ち合い稽古をすることになった。

観客は狩人の皆とやたらと傷だらけになっているリビオさん。

あっと言う間に父さんが踏み込んでくる。

でも以前と違って動きがよく見える!

カン!

木剣同士を打ち合う音が響く。

「これを防げるようになったのか。それなら!」

右、左の激しい連打が来る。

カンカンカン。

『捌くだけで精一杯だ。やっぱり父さんは強い』

時折剣だけでなく脚払いなども仕掛けてくる。

なんとか、必死にかわしながら捌いていく。

「ほぅ」

ニッコリする父さん。

すると、さらに動きが速くなった。

「父さん、身体強化使ってるでしょ!」

動きは速くなり打ち込む力もさっきとは比べものにならない。

「くっ!」

『まだ目で動きを追うことは出来るけど身体がついてこない!』

徐々に身体に打ち込まれる回数が増えてくる。

そして父さんが一歩下がったと思いきや前に踏み込んで来た。

「行くぞ、ラグナ!」

そして振るわれた父さんの木剣と真っ向勝負。

木剣が交差した瞬間、バキンという音と共に木剣が砕かれて俺自身はそのまま吹き飛ばされた。

数メートル転がってやっと止まった。

「いてて。父さん、本気だったでしょ!」

身体中が本当に痛い。

「まだまだ本気じゃありませーん」

父さんはそう言いながら笑っている。

「なぁ、お前勝てるか?」

「わからん。自信は無いかも」

ん? 見ていた皆の反応がおかしいな。

「急に腕を上げたのぅ、ラグナ。力も強くなっておるが何よりも目が良くなっておるな」

村長さんの言葉に父さんも頷いている。

「確かに俺の動きがよく見えてる感じだったな。まだ身体が反射についてきていないみたいだが」

「確かに前と比べてよく見えるようになってるのかも」

以前だと反応が遅れるだけじゃなく反応すら出来ないことだって多々あったし。

「でもまぁ。あれだな。さすがは俺の子供だ。師匠がいいんだろうな、師匠が」

「おい、親バカがいるぞ、ここに!」

「なんだと! じゃあお前がうちの自慢の息子と打ち合ってみるか?」

「冗談じゃねぇ! 子供に負けたら立ち直れねぇわ! 確実に勝てない勝負はやらないのさ」

皆が笑い合う。

やっぱりこの村の雰囲気が俺は本当に好きだな。

傷だらけのリビオさんが近寄ってきた。

「また腕をあげたね、ラグナ君。たった数日なのに君はまた強くなってる。僕じゃもう勝てないかも知れないね」

「そんなこと無いですよ! それよりもその傷はどうしたのですか?」

リビオさんは恥ずかしそうに顔をポリポリと掻いている。

「そいつはな、突然現れたホーンラビットを所詮ウサギだからと甘く見た結果だよ!」

皆が笑ってる。

そして狩人の仲間が理由をバラした。

「ホーンラビットは死の恐怖を感じると額に付いている角を一回だけ飛ばしてくるんだ。それを知らないで突っ込んだもんだから、思わぬ反撃に驚いて怪我したんだよ」

それは俺も知らなかった。

「ホーンラビットの角って飛んでくるの!?

「なんだ、ラグナも知らなかったのかよ。あいつらは一回だけ飛ばしてくるぞ! 時間が経てばまた生えてくるしな」

知らないで俺も挑んでいたらリビオさんみたくなっていたかも。

「おい……ラグナまで知らないってなると……他の子供らも知らないよな」

急に皆が考え込む。

「狩人の教育をする際に魔物の詳しい生態の教育も必要だな」

「そうじゃのぅ。ラグナまで知らないとなればちと問題じゃ」

「えっ? 俺を基準にしてるの?」

「当たり前じゃ。ラグナに出来ぬ事がほかの子供に出来るわけない。お主が知らぬ事を他の子供が知っているとも思えないからのぅ」

その答えに喜んでいいのか複雑だな。

そのあとはリビオさんが狩人の皆と打ち合いを行っていた。

父さんとの打ち合いの次の日、イルマの家に顔を出してたが、やはり既に出発していた。

「わざわざ会いに来てくれたのにごめんねぇ。あと聞いたわよ。合格おめでとう」

「ありがとうございます」

イルマの母に話を聞いたが、シーカリオン国にある商業学園までは片道で一ヶ月ほどかかるらしい。

イルマとイルマの父、それに護衛二人の計四人で向かったとか。

確かブリットさんもシーカリオンに向かってるって話だったから大変だなぁ。

村長さんとハルヒィさん、そして我が家には大量のスパイスを召喚して渡してある。

少なくとも一年は帰れないらしいので、その分多めに召喚したけど困ったことが一つ。

置き場がなかった。

ハルヒィさんの能力である穴掘りスキルで急遽我が家と村長宅の地下に保管庫を建設。

そこにスパイスを収納していった。

ハルヒィさんの能力って本当に秘密基地作りに便利だよなぁ。

地下に降りる為の階段まで能力で作れるんだもん。

ちなみに地下への入り口は室内から行けるように作られていた。

しかも強化されてるから崩れる心配も無し。

長期保存しても使えるのかわからないけど、大量の備長炭も召喚した。

「これだけの炭があればどれだけ薪が節約出来ることか」

「でもいつまで使えるのかわからないからね」

「まぁ燃やせば何とかなるだろ」

まぁ確かに火がつけばどうにかなると思うけど……

お礼にと村長さんからはワイルドボアの大量のお肉、ハルヒィさんからは薬草を手渡された。

母さんからは大量の料理。

収納のスキルに保管すれば腐ったりしないからね。

そんなこんなであっと言う間に楽しかった二週間が経過したのだった。

「それじゃあ行ってくるよ」

母さんにぎゅっと抱きしめられる。

「体調には気をつけるのよ」

「うん。ありがとう」

頭にポンと手が置かれた。父さんだ。

「頑張れよ」

「頑張るよ、そっちも体調には気をつけてね」

そして父さんに片手で抱っこされながら、ジーっと見てくる我が妹。

「おいで」

手を伸ばすと珍しくこっちに来てくれたので優しくギュッと抱きしめる。

「それじゃあ出発しようか」

「うん。王都までよろしくね、リビオさん」

リビオさんはこの二週間毎日スパルタな日々を過ごしていたらしい。

頬に大きな切り傷が出来ていた。

服で隠れているけど身体中に切り傷や打撲痕だらけになっているとか。

父さん達とワイルドボアに挑んだ結果、馬鹿正直に正面から挑んで吹き飛ばされた時に出来た傷らしい。

いや、ワイルドボアに正面から挑んじゃダメでしょ……

「それじゃあ行ってくるね!」

「「いってらっしゃい!」」

俺は馬車に乗ると後ろを振り向き、村の皆に手を振る。

「学園で学んで成長して、また村に帰ってくるから!」

皆の姿が見えなくなるまで俺は手を振り続けていた。