合格発表。
試験から四日後。
今日はいよいよ合否発表の日。
「緊張しますわね」
「そ、そうだね。緊張してくるよ」
『流石に学園長からすでに合格と言われてるなんて、ミレーヌさんに言えないし……』
誤魔化しながらミレーヌさんと二人で馬車に揺られながら学園へと向かっていた。
そして馬車が停車し、学園へと到着。
「学園へと到着しました。それでは行きましょうか」
付き添いで来てくれたセバスさんと三人で馬車の待機所から学園の入口へと向かう。
既にそこは混沌としていた。
「やったー!! 合格してる!」
合格に喜ぶ子供達もいれば、
「嘘だ、番号が無い、無い、いや、嘘だろ……」
自分の番号が無く崩れ落ちる子供達も。
そして……
「お前などもう家の子供ではないわ! 恥曝しめ!」
腕を掴まれ馬車まで引きずられて行く子供も。
その光景を横目に合否発表の掲示板へと向かう。
魔法学園の入口には一般試験と特別試験とで合否発表の掲示が分かれていた。
「特別試験組はこっちですわね」
巨大な掲示板が立てかけられていた。
ミレーヌさんの番号は確か……
「あった! ありましたわ! 八番! ラグナ君はどうでしたか?」
俺は五十六番だから……いた。
「僕も合格しました」
「二人とも合格ですわね! 良かったぁぁぁ!」
飛び跳ねて喜ぶミレーヌさんを見ると年相応の女の子だなって思える。
「ラグナ様は冷静ですな。それでは屋敷へと戻りましょう」
「今日はお祝いですわね!」
ミレーヌさんはずっとニコニコしながら喜んでいる。
ウキウキのミレーヌさんに手を繋がれながら馬車の待機所へと向かう。
「おやおや、お嬢様は」
セバスさんが俺達の様子を見ながらニコニコしている。
「ちょっ! セバスさん!?」
「旦那様と若様には報告ですね!」
慌てる俺とニコニコなセバスさんに全く気がつかないミレーヌさんは、そのまま馬車へと乗り込んだ。
馬車に乗り込んで座る時にようやく気がついたミレーヌさん。
「ご、ごめんなさい、ラグナ君。私ったらずっとラグナ君の手を握って……」
「だ、大丈夫ですよ! ミレーヌさんの可愛い一面が見られたので」
すると顔を真っ赤にしたまま、ミレーヌさんは外を向いてしまった。
なんともいたたまれない空気のまま馬車は屋敷へと到着。
屋敷ではサイさんが出迎えてくれていた。
「二人ともどうだったかな?」
「二人とも無事に合格しましたわ!」
「そうか! それは良かったよ。おめでとう! ところでミレーヌ。顔が真っ赤だけど、どうしたんだい?」
「な、なんでもありませんわ! 先に部屋に戻りますわね」
ミレーヌさんは屋敷の中へと先に入ってしまった。
「ミレーヌと何かあったのかい?」
うーん、言いにくい……
「えっと、何といいますか……」
すっとセバスさんが出てきた。
「二人とも合格したことに大喜びなお嬢様はラグナ様の手を取るとそのまま馬車の待機所へと歩き出しまして。それはもう大変仲睦まじいご様子でした。そしてそのまま馬車に乗り込んだお嬢様はようやく気がついたのです。手を繋いでいたことに。慌てて謝罪したお嬢様に対してラグナ様は『可愛い一面が見られた』と。お嬢様は更に恥ずかしくなってしまい先ほどのような態度になったのかと思います」
サイさんが真顔になりこっちを向く。
「これは……父上に相談しないと! ラグナ君がとうとうミレーヌを落としたと!」
「えぇ!? そういう訳ではないですよ!?」
「それじゃあ、ラグナ君は私の可愛い妹のミレーヌじゃご不満なのかい?」
「い、いや、そういう訳じゃ」
俺が困惑していると、あははと笑いながら何時ものニコニコ顔に戻るサイさん。
「冗談だよ。まぁミレーヌは少し時間が経てば元に戻るでしょう。それよりも改めて合格おめでとう」
「ありがとうございます」
そうして屋敷へと戻る。
ベッドにバタンと倒れ込む。
「合格したのはいいんだけど、これからどうしようかな……」
合格発表があった今日は二月二十七日。
学園の入学式は四月十二日
まだ一ヶ月以上先である。
「このままエチゴヤの皆さんのお世話になるわけにもいかないし。一旦村に帰ろう」
王都からアオバ村までは片道十日。
往復でも二十日か。
入学式まで一ヶ月半あるから村に帰る時間はあるしね。
その日の夜は二人の合格祝いにと身内だけの盛大なパーティーが開かれた。
俺が好きな日本食の数々。
見たこともない料理。
パーティーが開かれる頃にはいつものミレーヌさんに戻っていた。
「二人とも本当におめでとう!」
「「おめでとうございます」」
サイさんと使用人さん達、それと王都で働くエチゴヤの幹部と紹介された人達から次々とお祝いの言葉を掛けられる。
「お兄さま、みんなありがとう」
ミレーヌさんは流石だな。
堂々としている。
それに比べて小市民の俺は、
「あ、ありがとうございます」
試験よりも緊張していたのだった。
「それじゃあ二人の合格を祝して乾杯!」
サイさんのかけ声と共にパーティーはスタートする。
流石に僕達二人の飲み物はお酒ではなかったけど。
懐かしい日本食、食べたことの無い料理の数々。
この九年間の人生で一番食べたんじゃないだろうか。
食事が終わった後はエチゴヤ幹部の人達に『未来の幹部候補ですかな?』と絡まれたりして苦笑いしていた。
そしてパーティーは終わり部屋へと戻る。
夢か……
俺の将来の夢……
考えたことが無かったな。
この世界で俺は何がしたいんだろう。
まぁいいや。
時間はまだ沢山あるんだ。
ゆっくり考えていこう。
そうして俺は眠りにつくのであった。