釈明と襲撃者の運命は。

説明を始める上でまず困ったことが一つ。

何故襲撃者に気が付くことが出来たか。

実際にはサリオラが起こしてくれたおかげで気が付く事が出来たのだが、サイさん達には話すことが出来ない。

たまたま起きていたっていうのも変な時間帯だし。

事実に嘘を少し混ぜることにした。

「襲撃のちょっと前まで寝ていたんですけど……不思議な体験をしたんです。信じてもらえないかもしれませんが……寝ていたら女の人の声が急に頭の中で聞こえたんです」

「……その声はなんと?」

「……襲撃者が来るから今すぐ起きてと」

その言葉に三人は絶句する。

『ラグナ君は女神にいつも見守られているとでも言うのか?』

『これはまた、とんでもないですな』

『女神様の使徒……』

慌ててベッドから飛び降りて警戒していると襲撃者が本当に来たので、必死に戦った結果なんとか倒すことが出来たことを告げる。

セバスさんが一つ疑問を思い出したように口を開いた。

「私が駆けつける途中で目が焼けるという声が聞こえたのですが、あれは?」

目が焼ける?

そう言えば、LEDランタンを目の前で発動したときにそんなこと言ってたっけ。

「襲撃者が攻めてきた時、部屋の照明を落としていたので月明かりしかなく視界が悪かったんです。慌てて覚えたばかりのライトの魔法を発動させたんですけど……ちょっと込める魔力の量を間違えて全力で魔力を流して発動させたら、物凄い光を放ちながら襲撃者の顔の本当に目の前で発動しちゃって……どうやら襲撃者はその光を直視しちゃったらしくて、その直後目を押さえて転げまわっていました」

「……見せてもらっても?」

「本当に眩しかったので気をつけてくださいね?」

三人とも目を閉じたことを確認するとライトの魔法の詠唱をしているふりをしながらLEDライトと頭の中で唱えて発動させる。

「準備出来ました。本当に眩しいのでゆっくり目を開けて下さいね?」

三人はラグナの指示に従いゆっくりと目をあけるが……あまりの眩しさに直視することが出来ない。

「これは本当に……眩しすぎる」

三人が本当に眩しそうな表情をしているのですぐにスキルを解除する。

「確かに暗闇の中、目の前でこんなにも明るい光を出されたらどうにも出来ませんな」

「でも……ライトの魔法ってこんなに明るくなるんですか? 私が知っているライトとは明るさが全く違う気がしますけど」

ギクッ……さすがミレーヌさん……

「魔力を大量に込めることで私達でも出来ないことはないと思いますよ。現に火の魔法であるファイアーボールでも込める魔力によってサイズや威力が多少なりとも上下しますし」

セバスさんからのナイスアシスト!

なんとかセバスさんからのアシストのおかげで、サイさんとミレーヌさんは納得してくれた。

「さて、どうするかな……まさかラグナ君に暗殺者を差し向けられるとは思ってもいなかったよ。改めて本当にすまない」

サイさんが深々と頭を下げる。

「あ、頭を上げて下さい。怪我もなく無事だったので大丈夫ですよ! それよりも本当にこんなにも壊してしまってごめんなさい」

「本当に君が気にする必要なんてないんだけどね」

サイさんは苦笑いしながら気にしないでいいと言ってくれたのだった。

改めて、サリオラには本当に感謝だな。

彼女のおかげでまた命拾いすることが出来た。

とりあえず、この部屋の惨状では寝られないので別の客間に移動することになった。

俺は新しく案内された部屋のベッドで横になると、

『サリオラ、起きてる?』

『……なに?』

『また君に助けられたよ。ありがとう』

『……別に気にしなくていいわよ。それで? ラグナはさっきの女の子みたいな娘がタイプなんでしょ?』

『さっきの娘? あぁ、ミレーヌさんか。そんな目で見るわけないじゃないか。まだ子供だよ?』

『私からすれば充分あなたも子供に見えるんだけど』

『サリオラだって知ってるでしょ。前世の記憶がある俺からしたらそんな目でみられないって』

『ならいいけど。それよりも身体は子供なんだからもう寝ておきなさい。何かあれば起こしてあげるから』

『本当にありがとう。おやすみ』

俺はサリオラと会話を交わした後、再び眠りについた。



一方サイ達はミレーヌを部屋に見送ると話し合いを始めていた。

「まさか我が家に襲撃がくるとは……ラグナ君が無事で本当に良かった。我が家への被害はどうだ?」

「門番一名が死亡、もう一人が腹部を刺され意識不明の重体。また庭師が一名行方不明となっております」

「やはり死人が出たか……庭師は間者だった可能性があるな……」

「それよりもラグナ様の情報が一部漏れていたかもしれません……」

「その可能性はあるかもしれない。まさかピンポイントでラグナ君が狙われるとまでは考えつかなかったな。それで誰が差し向けたかわかったかい?」

「それはまだ……わかりましたらすぐにご報告します。若様も一度おやすみになって下さいませ。後の雑事は私達にお任せを」

「そうだな……すまないが少しだけ休ませてもらうよ」

『まさかラグナ君を狙う人間がいるなんて。男爵家には暗殺者など雇う余裕などないだろう。伯爵家か侯爵家のどちらかか? いや伯爵家の可能性は低いか。既に城に幽閉されてると情報がまわってきているし。つまり一番可能性があるのは侯爵家だな。立場的にも闇と繋がるきっかけは多数あるだろうしね』

「それにしてもまさか我が家に対してこんな手段を使う人間がいるなんて。ちょっと甘く見ていたかもしれない。気を引き締めなきゃいけないな」


そして屋敷にある地下室では。

手足を縛られ椅子に座らされた襲撃者が頭から水をかけられて目を覚ましたのだった。

「起きましたかな?」

「くっ……俺は何も知らん。拷問されようが何も知らんぞ!」

男が奥歯で噛む動作をする……

「どうされましたかな? もしやお求めになっていたのはこちらでしょうか?」

セバスが手に持つのは襲撃者の奥歯に仕込まれていた劇薬。

「な、何故それを……」

「蛇の道は蛇というのがピッタリですかね。それでどうしましょうか。素直に吐いてくれると簡単なのですが」

「……何も知らん」

「そうですか。では残念ですがこの手でいくしかありませんな」

セバスは引き出しからあるものを取り出す。

「大丈夫ですよ。拷問なんて野蛮なことは致しませんから」

セバスは引き出しから取り出した液体を襲撃者に見せる。

「はっ、天下のエチゴヤが毒殺を行っているわけだ。市民に知られたらどうなることやら」

「はて? これが毒薬などと、いつ言いましたかな?」

セバスは部下に指示をすると襲撃者の口を開かせる。

「それではさようなら。もう正常なあなたに会うことは二度とないでしょう」

そして手に持つ薬を無理矢理口の中に注いでいく。

口を無理やり開かれた襲撃者はなす術なく液体を飲み干していく。

そして身体中が痙攣し激しく震え始める。

目からは涙が流れ、口からは涎を垂れ流し。

「そろそろですかな? お前の名前は?」

「ナギ」

「誰に雇われていた?」

「ドゥメルク侯爵家」

やはり侯爵家が動いていましたか。

セバスは素直になったナギから様々な情報を聞き出していくのだった。