今まで経験したことのないほどの目の痛み。
まるで目玉を焼かれたような痛みに襲われていた。
目の痛みに転げ回る襲撃者。
「ふぅ、さっそく活躍したな」
襲撃者が俺の下へとたどり着く瞬間に、全力で力を込めてLEDランタンを発動させた。
襲撃者は夜目になれている状態でLEDの激しい明るさを近距離で見てしまったことにより、一時的に視力を失う。
この世界では経験することのないほど、あまりにも明るい光を直視したことによる目の痛みに襲われ……
堪らずナイフを手放してしまい、目を押さえながらぐるぐると回りもがき苦しんでいた。
襲撃者が発動した魔法が無くなっていることに気がついた俺はスキルを解除すると、痛みで地面を転がっている襲撃犯の頭部に向かって全力で蹴りを放つ。
「ぐはっ!!」
既に大人顔負けの力を手にしている俺が放つ蹴りは襲撃者の意識を狩るのに十分な威力を放っていた。
俺に蹴り飛ばされた襲撃犯は顔面から壁へと叩きつけられると、そのまま意識を失うのだった。
「ラグナ様!!」
突然部屋の扉が開かれ、セバスさんが慌てて部屋へと入って来た。
「セバスさん……」
セバスはどこかでガラスが割れた音に気がつくと武器を手に持ち、すぐに音がしたと思われる部屋へと向かった。
『今の音は上の部屋。若様の部屋には窓が設置されておりませんし……っ! ラグナ様の部屋か!』
ラグナの部屋で起きた異変に気がついたセバスは、階段を駆け上がりラグナの部屋へと急ぎ向かう。
階段を駆け上がり部屋に向かう途中、男のものとみられる叫び声が廊下中に響いた。
「ぐあっ! 目が! 目が焼ける!」
『何が起きている! 今の声はラグナ様ではない!』
そして部屋の扉を開く直前。
何かが壁に叩きつけられたような激しい音がした。
そして慌てて扉を開く。
「ラグナ様!!」
セバスが部屋に入ると着衣が乱れ、息が荒れているラグナの姿が目に入った。
そして目の前には地面へと倒れている黒ずくめの人間。
壁にはこの者が打ち付けられたような跡がくっきりと残っていた。
「セバスさん……」
申し訳なさそうな顔をするラグナの表情に違和感を感じるが……
「駆けつけるのが遅くなり申し訳ありません。お怪我は?」
「だ、大丈夫です」
廊下をドダドタと走る複数の音が響く。
「ラグナ君、大丈夫かい!?」
「坊ちゃん! 大丈夫か!」
ドタドタと部屋に入って来たのはサイとサイを護衛しているリビオだった。
「リビオ、そこに転がっている者をすぐに拘束。連れていけ」
セバスはすぐに気を失っている襲撃者をリビオに拘束させると、部屋の外へと連れ出す。
「大丈夫かい、ラグナ君。怪我は無いかい?」
「大丈夫です。なんとか捌く事が出来たので……」
サイは部屋の明かりを点けるとラグナの身体を調べる。
転んで汚れたような跡はあるが、地面へと落ちているナイフで切られた様子は見られなかった。
「本当に怪我は無いのかい? それならば本当に良かった……」
サイはラグナの無事に心から安堵する。
万が一この子の身に何かあった場合、両親への償いはもちろんだが……マリオン様がどう動くのか全く予想が出来ない。
「それでなにが」
「ラグナ君!」
サイが何があったのかラグナから聞き出そうとしたところで、部屋に入ってきた人物により声がかき消されてしまった。
突然現れた正体は自身の妹たるミレーヌだった。
「怪我は無い? 大丈夫?」
ミレーヌは部屋に入ると立ち尽くしているラグナを発見。
しゃべり掛けながらラグナの身体に怪我が無いか調べて、無事が確認できると喜びのあまり抱きしめていた。
「ミ、ミレーヌさん。ぼ、僕は大丈夫ですから!」
急に抱きつかれたことに慌てるラグナ。
流石にこの状況はマズい。
サイとセバスもミレーヌの行動に驚き、目を見開いている。
『ラグナのエッチ! もう知らない!』
サリオラにも怒鳴られてしまい、冤罪をかけられたようだ。
「こら、ミレーヌ。淑女がはしたないよ」
サイはラグナに抱きついたミレーヌに声をかける。
「す、すみませんでした。お兄さま、ラグナ君」
思わず抱きついてしまったことに気がついたミレーヌは、謝罪するとすぐにラグナの傍を離れた。
「それで……本当によく無事だったね。たまたま起きていたのかい? それにあの雰囲気はその道のプロだ。よく撃退できたよ。怖い思いをさせてしまい、本当に申し訳なかった」
サイはラグナに謝罪すると、改めて部屋の惨状に目を向ける。
激しく割られた窓ガラス。
壁や柱にはナイフで削れた無数の跡。
無残にも砕け散った椅子。
足の折れたベッド。
そして一番目を引くのが、壁にくっきりと残った人がめり込んだと思われる跡。
どれだけ激しい戦闘が行われたんだろうか……
「こ、こちらこそ……高そうなものばかりなのに、こんなにも部屋をめちゃめちゃにしてしまいごめんなさい!」
まさかの予想外の謝罪にサイとセバスは一瞬固まってしまう。
ずっと申し訳なさそうな顔をしていた理由が今判明した。
「くっくっくっ。君が謝る必要なんてどこにもないよ! なぁセバス?」
まさかのリアクションに思わず笑いが込み上げてきてしまう。
「えぇ。むしろお客様を危険な目に遭わせてしまったのは当家なのですから。本来謝罪すべきはこちらになりますな」
「そ、そんな。もっと僕がうまく動けていたらこんなにもめちゃくちゃにならなかったのに……」
「それじゃあ、何があったのか説明してもらってもいいかな?」
ラグナはサイとセバス、それにミレーヌに状況を説明するのであった。