王都に到着。そして。

今回はマリオン様からの神託なども無かったので、すんなりと商業ギルドからエチゴヤ商店へと戻ってくることが出来た。

ギルド長は偶々たまたまナルタ支店に用事がありこっちに来ていたらしい。

そう言えば商業ギルドのナルタ支店のギルド長って見たこと無いな……

ちなみにサイさんとアムルさんとマホッテト司祭の話し合いの結果、商業ギルドの馬車に乗り王都へと向かうことに決まったのだった。

どうやらちょうど同じタイミングでアムルさんも王都へと戻ることになっていたらしい。

途中から難しい話ばかりだったのでぼーっと過ごしていたら、マホッテト司祭から神殿で保管されているマリオン様に関係した書物が有るというので借りて読んでいた。

どうやらマリオン様は特許を侵害する者に対してだいぶ過激な天罰を与えたりしていたらしい。

特許があることを知らないまま使用している者に対しては神託にて商業ギルドを動かし警告。

特許があることを知りながらも使用料を払わなかった者に対しては商業ギルドに神託を下して使用料分の財産を没収。

特許を持つ者を脅して契約した時は店などの資産に突然落雷が落ちてその店のみ爆発。

あまりにもひどい場合は本人に対して……など。

まぁ今まで実際に起きた天罰一覧表みたいな感じでまとめている本もあった。

エチゴヤ商店に戻ってからサイさんに教えて貰ったことが一つ。

明日からの護衛はエチゴヤ商会から一人と神殿から神殿騎士が三人。商業ギルドから四人派遣されるとのこと。

馬車に乗るのは俺とサイさんとギルド長の三人だけ。

エチゴヤ商店に用意して貰った部屋で一泊していよいよ王都へと出発。

「おはようございます。今日から数日間よろしくお願いします」

ギルド長に挨拶する。

「おはよう。それにこっちこそよろしくな、使徒様」

ギルド長からの弄りに目がピクピクしてしまった。

「ギルド長、全員揃いました。積み荷の方も確認済みです!」

どうやら護衛の方々も含めて集合が完了したらしい。

馬車は全部で二台。

一台は俺達が乗る馬車。

もう一台は旅に必要な積み荷などを積んでいるらしい。

他の皆もそれぞれ馬に乗っていくという。お金が掛かっているような感じがした。

「とりあえず王都まで一週間の道のりだ。今回は初めて王都に行く子供も居る。無理をせず安全に向かうぞ! それじゃあ出発だ」

ギルド長からの号令で王都への長い道のりがスタートした。

ナルタから王都まで馬車で一週間もかかるのか。

流石、辺境伯の領地だよ。

初日は街道沿いで夜営することに。

流石にこのままずっと大人しくしているのも暇なので護衛の人達に教わりながら夜営の準備のお手伝いをする。

俺は護衛の人に指示された通りに石でかまどを作り、その後小さい枝や枯れ葉を集める。

燃えやすい枯れ葉などを先ほど作ったかまどに放り込むと、以前目の前で見かけて以来ずっと練習していた火の魔法で着火。

無事に着火した事を確認したあとは、小さい小枝から投入し火を大きくしていく。

それに伴って徐々に大きな枝を投入していくのだった。

着火程度の本当に小さい火だけならば父さんや母さんから魔法を教わって無詠唱で火を起こせるようになっていた。

まぁ実際には詠唱の文章を知らないだけなんだけど……

そのせいか大きい火の玉のような魔法は未だに出来ない。

こればっかりは勉強しないと無理なのかもしれない。

「まじか! その歳で小さい火とは言え無詠唱で火を起こせるのか、凄いじゃないか」

護衛の人達に褒められた。

「この位の火だったら両親に教わってなんとか出来るようになったんですけど……その前に詠唱が書いてあるような本が村には存在しなくて……それ以上はどうしたらいいのかわからないんですよ」

そう話をしたら護衛の人達に驚いた顔をされた。

「普通の一般人は無詠唱で火起こしなんて早くても十代後半だからな? 人によっては無詠唱で魔法を発動することすら出来ないまま終わる人間だっているくらいだ」

えっ……? それじゃあこの国の人間じゃない父さんと母さんが無詠唱で小さいとはいえ魔法を発動出来るのはなんでだ?

「流石だな。魔法学園に入学試験を受けに行くだけの実力は有るわけだ」

アムルさんとサイさんも馬車から降りて身体をほぐしていた。

「それだけじゃないですよ、彼は。本人はマグレと言っていましたが九歳でワイルドボアを討伐した位なんですから」

おぉ、と護衛の人達に驚かれる。

「俺達でも数人掛かりで向かわなきゃ命が危ないのに、よく倒せたな!」

そう聞くと改めて父さん達の凄さを実感できる。

「そりゃ、こいつはあの『アオバ村』出身だぞ?」

「なんと!? あぁ、あの村の出身だからですか。納得出来ました」

ん? なんでみんな村の名前を聞いて驚いているんだ?

「うちの村って、ただの田舎にある辺境の村ですよ?」

皆が笑い出す。

「いやいや、普通の辺境の村が魔の森に隣接したまま無事に生活出来る訳ないだろ。未だに普通に発展している事自体が異常だと言われてるくらいなんだからな?」

そんな目でうちの村が見られていた事なんて知らなかった。

「確かに。普通の村なら魔物が攻めてきた時点で終わりだよ」

「まぁ確かに私も初めてアオバ村に行った時は驚きましたよ」

「サイさんが驚くような所なんてあります?」

「そりゃあるよ。村を初めて見たときの驚きは今でも忘れられない。普通の村は村をぐるっと囲む立派な外壁なんて無いからね? しかも今後も発展出来るようにとかなり余裕を持った範囲で。普通ならば精々あったとしても木で出来た柵くらいだから」

確か、あの外壁って辺境伯が魔法使いに作らせたんじゃなかったっけ?

「確かに外壁はありますけど、あれは辺境伯様が魔法使いに作らせたって聞きましたよ?」

「確かにそうだったなぁ。商業ギルドにも出資してくれって要請が来たくらいだ。安定して魔の森の素材を卸せるようになるからってな。突っぱねるわけにはいかないから、いくらかは出資した記憶があるな」

「うちからも出資しましたね」

商業ギルドとエチゴヤ商会の資金もあったから出来たのか。

「だからサイ殿はアオバ村から安定して素材を仕入れることが出来るし、うちにも恩恵がある。まぁその辺境伯も今では隣の領地の伯爵だけどな」

本当に領地替えが行われたんだ。

「うちも借金が返済されたので助かりましたよ」

「あぁ、あれは傑作だったな。辺境伯が領地替えになる前にこっそりと財産を隠そうとしていた動きを察知してエチゴヤ商会が借金の全回収に動いた件な。隠してあった金以外にも美術品や調度品も片っ端から査定して適正価格で回収していったもんな。領主達が発狂したように叫びまくってたから何事かと大騒ぎだったよ」

それはちょっと見たかったな。

特にあの息子には好き放題やられたしね。

そんな話をしていると、あっという間に火は成長し大きくなっていく。

しばらく火を見守っていると、焚き火の中に赤々とした火床が出来てくる。

そうしていると、ふと小さい頃に父に連れられていったキャンプでの失敗を思い出した。

今のように徐々に火を順調に育てていき、火が最も強くなった辺りで父にも言わずにフライパンを設置。

物凄い熱さに耐えながら肉を投入。

火が上がっている状態で肉を焼いた結果、とんでもないことになってしまった。

焼いた肉はあっという間にまる焦げに。

慌ててひっくり返そうにもフライパンにくっ付いてしまい剥がれない。

なんとか頑張ってひっくり返した頃にはすでに肉は真っ黒こげ。

さらに灰が舞ってしまい、肉にびっしりとついてしまうというオプション付きで。

その時に初めて学んだこと。

焚き火で料理をするときは炎が落ち着いて熾火おきびになってからするってことを。

熾火とは着火した枝や薪や炭が炎を上げずに、芯の部分が真っ赤に燃えている状態ってこと。

熾火になれば、遠赤外線の効果でムラなく食材に火を通せるため料理に最適。

それに煙も少ないので食材に煙の臭いが大量にうつるってこともなくなる。

アニメや漫画だと豪快に燃え盛る炎で料理をしていたが、現実は違ったってことを初めて知った。

そんなことをふと思い出し、ついクスっと笑ってしまうのだった。


王都までの一週間は平和な道のりだった。

辺境伯領から王都までに立ち寄った街は二ヶ所。

豪華な宿屋にドキドキもしたけれど、やっぱりエチゴヤの宿に比べるとどうしても見劣りしてしまう。

しかも俺の分の宿泊費は何故か神殿持ち。父さん達から受け取っていたお金は一銭も使っていない状況に、ちょっと気が引けてしまう。

この一週間はひたすら護衛の人達に剣の扱い方と身体の動きを教わっていた。

エチゴヤ商会と商業ギルドが用意してくれた護衛の人達はどちらかと言えば守りよりも攻撃が得意。

そして神殿騎士の人達は本当に守りに特化していた。

何度も手合わせをしてくれたけど凄い。

「そこ!」

神殿騎士と木剣同士がぶつかり合う。

「あまい!」

騎士と九歳の子供では全く相手にならない。

木剣が簡単に弾かれる。

そして木剣を握り直し再び騎士に向かっていく。

剣同士がぶつかり合った瞬間に力を抜いて剣を滑らすようにして相手の剣をかわして神殿騎士に向かって突撃する。

「まだまだだ」

その言葉と共に俺の目の前には神殿騎士の装備である小盾バックラーが現れて軽く吹き飛ばされた。

吹き飛ばされた俺はそのままゴロゴロと簡単に転がされていく。

「大丈夫か?」

「はい、大丈夫です」

「それじゃあそろそろ今日は終わりにしよう」

今日の訓練は終わり。

何度も打ち合ったけど全く崩れない。

「さっきのは良かったけど、突撃するなら相手の装備と自分との対格差をよく確認することだな」

「わかりました」

訓練を見ていた他の護衛の人達がそわそわしている。

どうやら見ていて触発されたらしい。

「一つお願いがあるんだが」

エチゴヤ商会から派遣された護衛の人が神殿騎士の人に話し掛ける。

「どうした?」

「俺も昔は神殿騎士に憧れていたんだ。しかし現実を知り夢を諦めかけていた時に、今の商会に拾って貰った。でもやはり今の立ち合いを見ていると完全には諦め切れていなかったらしい。自分の今の実力の立ち位置を知りたい。もし良ければ神殿騎士のどなたか手合わせしてはもらえないか?」

さっきまで俺と打ち合いをしていた人が仲間の神殿騎士に目で合図する。

「では私がお相手をしましょう」

神殿騎士とエチゴヤ商会の護衛の人との手合わせが始まろうとしていた。

「互いに、礼!!

二人が向かい合うと、お互いが敬意を込めてお辞儀をする。

そして、

「始め!」

「「はぁぁ!」」

共に闘志を込める。剣が交差し、熱気が一層増す。

カン!

剣がぶつかり合う音が響き渡り、その瞬間、両者の違いが際立って見える。


エチゴヤ商会の人は力で敵わないとわかると巧妙な動きで相手の剣をかわし、攻撃の隙間を狙っていた。

「ふっ!」

一瞬の隙を突こうと剣を突き出す。

「ふん!」

突き出した剣は一瞬にして弾き飛ばされる。

神殿騎士の人はあれだな。

大木みたい。

どっしりと構えて全てを打ち払う。

足腰が本当に鍛えられているんだろう。

どんなに攻撃されてもビクともせずにすべての攻撃を捌き弾いていく。

「これなら!」

エチゴヤの護衛の人がフェイントをかけて振りかざした剣は、神殿騎士のバックラーによって阻まれ、そのまま勢いよく弾かれる。

そして、その一瞬の隙に、神殿騎士は剣を突き出し、護衛の人の首元に近づけた。

「それまで!」

お互いに下がり礼をする。

「手合わせありがとうございました。全く敵いませんでしたよ」

「いやいや、手数の多さは凄かった」

「でも改めてわかりました。あなた方がいる所までは遠い。まだまだこれからも修行ですね」

「そこまで悪くは無かったぞ。偉そうに言うのもあれなのだが……これからも護衛として上を目指すならば、少し言わせて欲しい」

「さらに上を目指す……」

「君が目指すものはなんだ? 君のやるべき仕事は相手を討ち滅ぼす力か? 違うよな。君の仕事は主人を守ることだ。確かに相手を滅ぼすことは大事だ。でも第一は守るべき主人を無傷で護衛することだろう? 今のままでは攻撃にばかり目がいってしまい視野が狭くなっている。これではいつか護衛対象を危険にさらす。もっと広い視野で見渡せるようになると自然と実力も上がっていくだろう」

護衛の人も何か心当たりがあるのかも知れない。

負けたのに悔しい素振りは全く無い様子だった。

「最近悩んでいたことがやっとわかった。自分に足りなかったのは確かに視野の広さだ。本当にありがとうございます」

深々と頭を下げてお礼を伝える。

「いやいや、こう偉そうに言ってはいるが俺自身まだまだだ。神殿騎士には更に上が沢山いる。俺はもっと上を目指しているんだ」

護衛の人を圧倒していた神殿騎士よりももっと上がいるのか。

たぶん戦闘に関しては父さんの方が強いような気がするけど、この人達は守ることに関しては父さん達よりも上だと思う。

「それにしてもラグナ君は九歳だろ? それでこの腕前は純粋に凄いと思うぞ?」

俺と打ち合った神殿騎士の人がそう言うとみんなが頷く。

「普通なら九歳と言えばまだまだごっこ遊びの延長上くらいの腕前だ。でもラグナ君はどちらかと言えば実戦に近い動きをしている。やはりアオバ村だからか?」

「うーんどうなんでしょう? 一応僕に剣術を教えてくれているのは元冒険者と村長と父ですけど」

「ならば師匠も素晴らしい腕なのだろうな。その三人のうちの誰かはわからぬが、きっと騎士に関係した人物がいたのだろう。騎士としての基礎もしっかりと叩き込まれている気がするな」

「そうなんですか? 自分ではわかりません」

騎士に関係しているとしたら父さんなのだろうか。

その後も手が空いた時は手合わせをしてくれた。

何度か打ち合いを見ることが出来た。

本当に勉強になる日々。

そんな濃厚な日々を過ごしながら一週間。

無事に王都へと到着したのだった。

初めてみる王都。

ナルタで初めてみた防壁の堅牢さにも驚いたけど王都はもっと凄い。

巨大な防壁の上には何かの兵器なのか均等に設置されている。

そして王都へ入る手続きを終えて門をくぐると街の先にも大きな防壁がある。

「サイさん……王都って防壁の中になんで防壁があるんですか……?」

「そっか。ラグナ君は初めてだもんね。王都は全部で四つの防壁が設置されているんだよ」

王都の作りとしてはこんな感じだった。

今チェックを受けた一番目の防壁から二番目の防壁までの街は職人街。

武器や防具や服など生産を主に行う人々が生活する街であり第四区画だ。

次の二番目の防壁から三番目の防壁までは一般街。

ここにはヒノ魔法学園やヒノ騎士学園、数多の商店や一般の人達、つまり平民と呼ばれる人達が多く住んでいる。

つまり学園に入学出来たら俺もここの区画にある学生寮で暮らすことになっている。

そして三番目の防壁から四番目の防壁までに作られているのが貴族街。

この区画からは一般人の立ち入りが厳しく制限されている。

貴族と貴族に仕える人々が住む区画。

そして最後の防壁に守られた先にあるのが王城。

異世界だから洋風の城かと思いきや、遠くに見える城はなんと日本風の城。

本当に異世界から来た人間としては違和感しか感じない。

イメージとしては中世の城壁都市の防壁によって守られている日本の城。

何故初代勇者はこんなバラバラな世界観の国を作ったのか俺には理解出来ない。

「それじゃあ、とりあえず一般街の商業ギルドまで行くぞ」

馬車から職人街の街並みを見学する。

煙突が備えられていてモクモクと煙がでている。

あちこちで金属の打撃音がしていた。

この雰囲気はなんか好きだな。

そしていよいよ一般街へ。

サイさん達は商業ギルドの会員証の提示、俺は会員証と魔法学園の入学試験の受験申込書を提示した。

「ようこそ王都へ」

衛兵達にそう言われて街に入る。

「なんで二番目の城壁に入るときにようこそって言われたんですか……?」

皆が言いにくそうにしている中、アムルさんが教えてくれた。

「職人街以外に住んでる奴らにとって職人街は王都の一部と見なしていないのさ。所詮下の人間がやることだと見下しているんだよ。本当にくだらない。自分達の生活は誰に支えられているのか全く理解していない奴らばかりだよ、この国は」

この国は貴族だけじゃなく一部の国民ですら駄目だってことなんだろうか。

本当にこの国を作った初代勇者は今の状況を見たらなんて言うんだろうか?

暗い雰囲気になったまま、馬車は目的地である王都の商業ギルドに到着した。

「ラグナ君はこれからどうするのかね?」

「とりあえず、どこかに宿を借りようと思ってます」

「ふむ、商業ギルドの寮ならば空いているが来るかい?」

商業ギルドの寮なら宿を借りるよりもお金は掛からなそうだし。

お願いしようとした時にサイさんが口を開く。

「ラグナ君は受験日までうちに泊まりなよ。父からもうちに泊めるようにと言われているんだ。そこで妹と共に受験日まで試験の対策をしたらどうだい?」

サイさんからもまさかの嬉しい提案がある。

「神殿からも言伝があります。宿を使うつもりならば王都の神殿へどうぞ。とのことです」

神殿からも提案……

「えっと……皆さんからの提案は本当に嬉しいのですが……僕は普通の子供ですよ?」

こんなにも提案してくれるのは本当に助かるからありがたいんだけど……

「ここにいる人間は誰一人として、お前の事を普通の子供と認識してないから安心しろ。お前は決して普通ではない」

みんなも頷いている。それは酷くないか?

さて、どうしよう。

確かに宿代が浮くのは我が家の家計的にも助かるんだけど。

神殿はちょっと扱いが怖いしな。

商業ギルドはみんなの邪魔になりそうだし……

そうだな……

「サイさん、ご迷惑でなければ入学試験終了までお世話になってもいいでしょうか?」

サイさんはにっこりと笑うと、

「歓迎するよ。これでまた恩を返せる」

「恩なんて……僕こそいろいろと助けてもらっていますし……本当によろしくお願いします」

そして俺はここまで一緒に来たメンバーに別れを告げて、サイさんと共にまずはエチゴヤ商会の本店へ。

ギルド長はこのまま仕事へと向かうらしい。

商業ギルドから派遣された護衛はこのまま王都に滞在。

神殿騎士の方々は神殿に立ち寄った後に、またナルタへと帰るらしい。

エチゴヤ商会の護衛の人は俺達と一緒に本店へ。

しばらく歩くとデカデカと「エチゴヤ商会本店」と書かれている看板が目印になっている建物が大通りの左右に二ヶ所ある。

一般街から貴族街を繋ぐ大通りのド真ん中。

大きな交差点になっている角地の左右にその店舗は建てられていた。

「サイさん……これは……」

「一般街から歩いて右側にある本店は主に食料や雑貨など生活に関わる商品を取り扱っていて、左側は武器や防具、魔道具など戦いに関する商品の取り扱いをしているんだ」

でもこれは凄い……

まるでエチゴヤ商会に合わせて建てられたかのような店の並び。

ナルタに比べると商店の数が段違い。

「それじゃあ、まずは父のもとへ行こうか」

右側の店舗の裏口から入り階段を上り四階へ。

一~三階までは売場、四階は事務所になっていた。

事務所の奥にはブリットさんが座っており、山積みになっている書類にどんどんサインしていた。

「ただいま戻りました」

「お久しぶりです」

ブリットさんに挨拶する。

「ラグナ君、久しぶりだね。少し背が伸びた感じがするよ。サイもお疲れ様」

「相変わらずお忙しいようですね。一応商業ギルドと神殿からもラグナ君を預かると話がありましたが、ラグナ君は私共を選んでくれました」

「でかした! 良くやった! ラグナ君もうちを選んでくれてありがとう」

ブリットさんは立ち上がるとサイさんの肩を叩いた後に俺と握手する。

俺がどこに泊まるかだけでも駆け引きになっていたんだろうか……