村へと帰宅。

ナルタを出発して三日目の昼。

無事に村に到着した。

馬車に気が付いた子供達が村の門の周辺で声を上げながらお出迎え。

「村長さま、おかえりー」

「街はどうだったー?」

「お土産はあるのー?」

「出迎えご苦労じゃのぅ。ほれ、馬車の傍は危ないから離れておれ」

村長さんは笑顔で子供達に話し掛ける。

本当に村長さんって子供好きだよなぁ。

馬車から降りてそのまま村の広場へ。

駆けつけた数人の大人達に村長さんは声をかけて、今回の件がどうなったのかこれから説明するらしい。

「では、私はこれにて失礼します」

「今日は泊まっていってはどうじゃ?」

村長さんは御者さんに一泊してはどうかと声をかけるものの、御者さんは一日でも早く帰り詳しい報告をしなければいけないと早々にナルタへと向けて出発していくのだった。

一時間もしないうちに手があいていた大人達は、広場へと集合した。

俺と父さんは集合前に一旦家に戻り、母さんに無事? に帰宅出来た事の報告と街で手に入れた荷物などを置いて再び広場へ。

「本当にいろいろとあったが……皆には話せることは話しておくことにする」

村長さんはそう言った後、皆に説明を始めた。

まずはナルタへと出発するきっかけから。

ラグナとグイドの親子が狩りの訓練の為に守護の森に入って練習していたところ、途中で森の異変に気が付いたので訓練の中止を決め街道を歩いていた。

すると貴族の子弟が数頭のワイルドボアを引き連れたまま、街道へと逃げて来た。

ラグナとグイドは慌てて隠れたものの、子弟を追う複数のワイルドボアのうち二頭が二人の存在に気が付き戦闘になったこと。

何とか二頭のワイルドボアを討伐した二人は慌てて村へと報告しに来たが……

何も知らない商人は二人の連絡が伝わる前に村での取引を終えて出発してしまい、街道にて魔物に襲われたこと。

狩人達で救出にむかったこと。

商人は救出することが出来たが、貴族の子弟達は既に亡くなっていたこと。

報告の為にナルタへと出発。その後領主の私兵に捕まりロープで結ばれナルタへと向かったこと。

冤罪によって処罰されそうになったが、商人の父が領主の屋敷に押しかけてきてくれた結果なんとか助かったこと。

その後、領主からの誤解が解けて解放され、無事に村へと帰ってこられたと皆に説明していた。

ちなみにエチゴヤ商会関係については伏せた。

だからサイさんがエチゴヤ商会の一族だという説明も無し。

何故たかが商人の父親が領主と対等に話し合いなんて出来たんだと、村の仲間から質問が飛んで来たので商人が所属している商家から領主が借金をしていて頭が上がらない状態だったと説明していた。

確かに嘘ではない。

後は商業ギルドで起きたごたごたについても一切説明は無し。

うん。それは本当に助かる。

ちなみにうちの母さんは……俺を抱き締めながら号泣中。

帰って来た時には向こうで何があったのか伝えていなかったから。

心から心配してくれている事がわかるので、それは本当に嬉しいけど……心配をかけてしまい申し訳ない気持ちもある。

冤罪とは言え、九歳の子供が犯罪者としてロープに繋がれて街まで連行された。

一歩間違えば旦那と息子は処刑されていた可能性もあった。

うん。

自分がもしも親になって、知らないうちに子供がこんな目に遭っていたなんて知ったら……

こうなるよね……

母さんを抱き締めながら安心させる。

ふと視線を感じるのでそっちに顔を向けるとまさかの光景が。

泣くのを必死に我慢しながら目に涙を溜めてこちらへと歩いてくるイルマ。

そして……

「ラグナぁぁぁ。本当に生きてて良かったぁぁぁぁ」

目に溜めていた涙が決壊し、ついに泣きながら抱きついてきた。

慌ててイルマのことも受け止めて慰める。

イルマの泣き声に釣られて他の村の子供達も声を上げて涙を流す。

子供達を慰めながらも、それにつられて涙を流す大人達。

皆がいったん落ちつくまで暫くの時間が必要になるのだった。

「今回の件も含めてこの国の方々が動くらしい」

国の方々が動くと言われ先ほどの空気とは一変。一気に緊張が走る。

「まだ決定ではないだろうが……領主様が変更される予定らしい」

領主が変わる。その一言でザワザワし始める。

「予定ではあるが隣の伯爵様が辺境伯様となり我々の村を治めることになるとの事だった」

隣の領主と言われても村に住む人々にとってはどんな方なのか一切わからない。

「話を聞く限り、領民をとても大事にして下さる御方らしい」

それを聞いて一安心する村人達。

領主によっては、突然の重税など当たり前。

生きていけるギリギリの生活を強いられる場合だってある。

それが無いだろうと思えるだけでも安心材料になる。

「今後どうなるかはまだ分からんが……何かしらの情報が入り次第、皆には隠さずに教えていくつもりだ」

そうして広場へと集まった皆は解散することに。

その後、俺達は村長さんの家へと集合した。

先ずは俺、父さん、母さん、村長さん、ハルヒィさんだけで話し合い。

妹は近所の家に一旦預けたらしい。

「先ずはこれをせねばな」

そう言うと村長さんは母さんの方に身体を向ける。

「グイドだけでなくラグナまでも巻き込んでしまい本当に申し訳なかった」

村長さんは母さんに頭を下げた。

母さんはふぅと息を吐いた後、村長さんに頭を上げるように言うと、

「今回の件は村長さんのせいではないでしょ。誰もこんなことになるなんて思ってもいなかったわ。私だって、ただ領主に報告しておしまい。そのまま帰ってくると思ってたんだもの」

まぁ、誰もこんなことになるなんて考えてもいなかったよね。

まさか初日に捕まり連行されるなんて。

「皆には話をしてないが……それだけじゃないんじゃ」

村長さんはちらっと俺を見ると母さんに説明を始める。

「海の女神であり商業の女神でもあるマリオン様より神託があったらしくてな……どうやらラグナはマリオン様の使徒として選ばれたらしい。神託の内容は秘密とのことじゃった」

「は?」

母さんの目が点になる。

確かにそうだよね。

夫と息子が冤罪によって捕まり連行される。誤解が解けて解放される。まぁここまではわかる。

その次、何故か息子がマリオン様の使徒に選ばれた。

うん、意味がわからんよね?

大丈夫。自分でも何故こうなったのか意味がわからないし。