いざ村へと帰ろう。
商業ギルドで手続き完了後、重苦しい雰囲気のまま馬車に乗りエチゴヤ商会へ。
「ただいま、戻りました」
部屋に入るとサイさんはブリットさんに挨拶する。
「ただの手続きにしてはかなり時間が掛かったな?」
サイさんが少し言いにくそうな表情をしながらブリットさんに耳打ちする。
「なんだと!?」
サイさんから話を聞いたブリットさんはサイさんの時と同様に驚き目を見開く。
「それは……本当なのだろうな?」
サイさんはコクリと返事をする。
「まさかそんなことが起こるなど……」
ブリットさんのリアクションに村長達は何事かと心配そうな表情に。
「何かありましたかな?」
「うーむ……何と言ってよいやら……ラグナ君、話をしても構わないかな?」
「……はい」
流石にこのメンバーに内緒にする訳にはいかない。
ブリットさんは一呼吸置いてから話し始める。
「どうやら、ラグナ君は商業の女神様から神託を授かったようなのだ」
「「「神託!?」」」
父さん達は驚いて声を上げる。
「まさか女神様からの神託があるとは……それでこの子に与えられた神託はどのような内容なのですかのぅ?」
「……神託の内容については話すことが出来ないと、女神様から授かった書類に記されていたらしい。更に商業の女神の神殿はラグナ君を陰ながら支援することが決まったらしい」
皆の視線がこちらに……
「なんか気がついたら、こんなことになっちゃいました……」
俺だってこうなるとは思ってなかったよ!
「内容については言わなくていい。その神託は家を出なきゃいけないような内容なのか?」
父さんが真顔で聞いてきた。
「いや、大丈夫だよ。今すぐどうこうしなきゃいけないって訳じゃないからさ」
確かに女神様からの神託だしね。その可能性もあったのか。
「ならいいんだが……」
この部屋もだんだんと重苦しい雰囲気になっていく。
「まぁ……とりあえず、そろそろ昼食の時間だ。食事にしよう」
とりあえず食事という流れになった。
ステーキに野菜のスープ、それにパン。
このレベルの食事が普通に食べられることが物凄く羨ましい。
「それでは、本当にいろいろと大変お世話になりましたのじゃ」
食事も終わりそろそろ村へと帰る流れに。
予定外の事が起こり過ぎて予定していた帰宅日よりも遅くなっている。
「こちらこそ息子の命を救って頂き本当に感謝します」
ブリットさんと村長さんは、改めてお互いに手を差し出し握手をする。
「本当に皆さんのお陰で無事に帰ることが出来ました。本当にありがとうございます」
サイさんとミレーヌさんが頭を下げて再び感謝を伝えてきた。
「また、村に来たりする機会はあるんだろう?」
父さんがサイさんにそう質問する。
「はい、当分まだお世話になる予定です」
「ならよかった。では次はうちの村で酒でも飲み交わそう」
「はい! その時はよろしくお願いします」
サイさんと父さんも握手をして別れる。
その二人の姿を見ていると視線を感じたので振り向くと、俺の傍にはミレーヌさんの姿が。
「ラグナ君、君は王都の学園に通うんだよね?」
「試験に受かれば、ですけどね」
「きっとラグナ君なら大丈夫ですわ。来年学園で会いましょう」
ミレーヌさんが手を伸ばしてきたので握手をする。
チラッとブリットさんを見ると、目元がピクピクと動いていた。
別れを告げた後、エチゴヤ商会の裏口から退出すると目の前には馬車が用意されていた。
「帰りはこちらにお乗りください。村までお送りします」
「何から何まで本当にすまぬのじゃ。お言葉に甘えさせて頂きます」
皆でブリットさん達に頭を下げる。
「いえいえ、帰りはお気をつけ下さい。それではまた機会がありましたら」
馬車の荷台に用意されていた箱の中へと、賠償金が入った袋を仕舞い積み込む。
その後、皆で馬車に乗り出発する。
行きは犯罪者のように連行されて、帰りは馬車に乗り優雅に帰る。
この扱いの違いにびっくりする。
馬車を操作する御者さんまで用意してもらったので、皆で馬車の中に座る。
そして村長さんが小さい声で俺に話し掛ける。
「ラグナや、御者にバレないように箱の中身だけ収納することは出来るか?」
「たぶん出来ると思うけど……重さが変わって気が付かれないように箱の中に石でも出しておこうか?」
まぁ実際には馬が引っ張ってる訳だから、気が付かれないとは思うけど……
「そんなことも出来るのか? それじゃあ頼む」
皆が御者から見えないように話をしているフリをしながら後ろの視界を塞ぐ。
その隙に箱に近づきスキルを発動して一旦箱ごと収納。箱を再び取り出す前に中に石を入れるように意識して取り出せば……
『出来た……』
そして何事も無かったかのように、再び椅子に座る。
ナルタの街を守る門番に書類を提出し、そのまますんなりと街から出ることが出来た。
そして馬車に揺られて村へと続く街道を進む。
しばらく馬車に揺られていると、
「……徐々に近づいて来てるな」
「あぁ、街からずっと付いてきてる。これはあれだな」
御者の人も俺達だけに聞こえる音量で注意を促してきた。
「何やら良からぬ輩が徐々にこの馬車に接近してきています。気をつけてください」
エチゴヤ商会が用意してくれた御者はただの御者ではなかったようだ。
「このペースだと夕方、暗くなってきてからだな」
「こちらから打って出るか?」
「いや、このままにしよう。下手にこちらが止まって警戒されるよりかはいいだろう」
村長さんや父さん達が御者と話し合いをしながらも馬車は進む。
どうやら村に帰る前に、ひと波乱待ち受けているのが確定したみたいだ。