3章 三度目の人生 前編


 俺は7歳の時に高熱を出して寝込み、過去2回の人生をはっきりと思い出した。

 どういうことだ! どういうことだ! どういうことだ?

 混乱する頭を押さえて、落ち着け俺、と念じる。そもそも俺は誰だ?

 まず自分の手を見た。小さい。それからぐるりと部屋を見回す。そして記憶を探る。それらから推察するに、どうやら今の俺は一度目と同じ第一王子らしい。

 息を大きく吸って、なるべくゆっくりと吐き出す。落ち着け、俺。まずはそこからだ。落ち着け、俺、落ち着け。

 ……無理だよだって何これどういうこと俺誰だよ何この状況えっ何ホントに何?

 息を大きく吸って、なるべくゆっくりと吐き出す。さっきからそれしかしていない。よし、少しは落ち着いたかもしれない。まずは頭を整理しよう。そうしよう。落ち着け、俺。

 とにかく、まずはまだ短い今世の7年の人生を振り返ってみる。当然ながら生まれたばかりの記憶はなく、あるのはここ3年ほどのようだが、これはひどい。

 7歳にして嫌なことがあると癇癪かんしゃくを起こしたり。

 嫌いな野菜の入ったスープをわざと零したり。

 コーンスープにしない料理人を辞めさせろと命じたり。

 婚約内定者にブサイクと言ったり。

 虫を捕まえて怖がる侍女を追い回したり。

 課題を出してきた教師に、お前の代わりはいくらでもいる、と脅したり。

 僕が誰だか分かってる? とか言ったり。

「ひぃぃ……」

 自分の過去の発言に鳥肌が立つ。僕が誰だか分かってるかって?

 何も分かっていない傲慢なクソガキだよ!

 ここが孤児院だったら叱られて怒られて呆れられて追い出されているぞ、俺。

 もう何も思い出すことなかれ、と脳が拒否し始めたが、なんとか気持ちを奮い立たせて恐る恐る一度目の人生の記憶を辿たどってみる。

 ……クソガキのまま身体だけ成長してるな!

 ガキじゃなくなって、もはやクソしか残ってないな!

 黒歴史のオンパレードがまるでそうとうのように頭を駆け巡り、のたうち回りたい気分になる。

「あああぁぁぁ」