1章 一度目の人生


「リーゼ、お前との婚約を破棄する!」

 その声は学園のホールに響き渡り、にぎやかだった会場が一気に静まり返った。

 今日は学園の卒業パーティーだ。その会場には、卒業生をはじめとする若い貴族たちが集まっている。その中でもともと注目されていた第一王子である俺が宣言すると、皆がこちらに注目するのが分かった。

 公爵家の令嬢であり、俺の婚約者であった女、リーゼは静かに聞き返してきた。

「理由をお聞かせ願えますか?」

 そんなところが気に入らない。少しは焦ったり動揺すればいいものを。

 彼女はいつも落ち着いている。そして俺が悪いかのような目線を向けてくるのだ。

 チッと舌打ちしそうになるのを抑えて、目の前の女をにらむ。

「理由だと?」

 まず見た目から気に入らない。小柄で細すぎる貧相な身体、目が小さくのっぺりとした顔立ち。王子妃としてのはながなく、美丈夫だと評判の俺とは一切釣り合わない。今までは我慢していたが、こんな地味な女をエスコートしなければならないのが恥ずかしくてたまらなかった。