Ⅱ とある教師の秘密

学園の剣術大会。それは学年別に行われ、一ヶ月先の五月の開催だ。

わたしはその剣術大会に参加することを決めた。参加する以上は、勝つつもりだ。

目指すは優勝! そして、サグレス王子を叩きのめす。

とはいえ、前回戦ったカルメロのように、強い敵もいるわけで。

楽観視はできないし、練習もしないといけない。

「それで俺が練習相手ってことですか?」

レオンが呆れたように言う。お休みの日のお昼に、わたしは校舎の陰でレオンと会っていた。剣術の練習のためだ。

わたしは微笑んだ。

「だって、わたしの身内の中ではレオンが一番強いでしょう?」

「それ、王太子殿下が聞いたら、泣きますよ」

と言いつつ、レオンはちょっとうれしそうに微笑んだ。

アルフォンソ様は、何でもできる完璧超人で、剣術の腕だって悪くない。ただ、圧倒的に強いというわけでもない。

やっぱりもともと武人のリアレス公爵家と、その従者であるマルケス男爵家は、特別なのだな、と思う。

そうやって客観的に見ることができるのは、わたしが二回目の人生だからだ。

そうして、わたしはレオンと木剣を交える。

レオンの剣筋は鋭かったけれど、どこか引いたような、怯えがある。

三度剣を打ち合うとレオンは剣を取り落してしまった。

わたしは肩をすくめる。

「手加減なんてしてないでしょうね?」

「俺が手加減すると思います?」

たしかに、レオンがわたしに気を使って、手加減なんてしたりしないと思う。

けど、それにしてはあまりにもあっさりと勝ててしまっている。

「お嬢様が強すぎるんですよ」

「そう?」

「そうです!」

レオンはむうっと頬を膨らませて、わたしを青い瞳で睨む。  

そう言われても……。

たしかにわたしは前回の人生での経験値も加算されているからけっこう強くなっているかもしれない。

ただ、そうだとすれば、わたしは誰を相手に練習すればいいんだろう?

もちろんレオンがまったく練習相手にならないわけじゃないけど……実力差がありすぎると、効果的ではない。

うーん、と困っていたら、ひょこっと小柄でとても可愛い少年が顔をのぞかせた。

フィルだ!

フィルは黒い宝石みたいな瞳で、わたしとレオンを交互に見つめる。

「どうしたの、フィル?」

「……あのね、用事があったんだけど……お姉ちゃんとレオン君が一緒に出かけたって、アリスさんから聞いたから。二人とも最近、仲が良いんだね?」

わたしとレオンは顔を見合わせ、ちょっと互いに見つめ合う。

……仲良し……になったのかな?

レオンは顔を赤くして、首をぶんぶんと横に振った。

「べつに……姉バカ姫と仲が良いわけじゃないです」

「どうかなあ?」

フィルは疑わしそうに、ジト目で、じーっとわたしを見つめた。

そんなフィルの表情の意味を考えて、ぽんとわたしは手を打つ。

「もしかして……フィル、ヤキモチを焼いてくれているの!?

「え?」

フィルはきょとんとして、それからみるみる顔を赤くした。

やっぱり!

予想通りみたいだった。わたしとレオンが仲良くしているから、レオンにわたしが取られる! と思っているのかもしれない。

可愛い……!