Epilogue
夜の海岸線を、港を目指して二人で歩く。暗くなった海に、瞬き始めた星明りが、ささやかな夜想曲を添えていた。
気絶したパトリツィアは、一応軽く手当だけして置いてきた。約束を
「別に、彼女なら付いて来てくれたとは思うわよ。本当にいいの? 両手に花だったのを置き去りにして」
「さり気なく自分を花に数えるな。子どものお守は一人で充分だ」
「また減らず口」
唇を
「なんだよ、そのにやけ面、アホみたいだぞ」
「
「今更だが……ホントにどうやったら倒せるのか、見当もつかねえけどな」
「でも、最後まで付き合ってくれるんでしょう?」
「ありがとう、ライナス」
俺と少女は、これから海を渡る。騎士団の追手は、きっとその先にもやって来るだろう。
〈王〉を倒す。そして、クロニカを解放する。
その手段も、公算も、今の俺には、何一つとして見当すらついていない。
そしてまだ見ぬ外国が、ここより優しい世界である保証はどこにもない。
けれど少女と一緒なら、きっと大丈夫だと根拠なく思うぐらいはできた。
だから今は、それでいい。それだけで、いい。
「ねえ、いつか雪も見てみたいの。海の向こうには、降ると思う?」
「さあな。けど今は──」
ふと立ち止まり、帽子を押さえて、頭上の夜空を見上げる。
つられて、視線を上にしたクロニカの手をそっと握り、俺は言った。
「星が、きれいだな」
「……そうね」