成果


 冬至祭から一週間後。

 一年の終わりが近づき、やっと冬至祭の後片付けやお金の計算が一段落した。

 赤々と夕日が差しぼうけんしやギルドのしつしつで、おれはステラといつしよに事務作業をしている。

「大成功だったな……」

「ええ、これも村が団結したおかげです……!」

「ふわふわしんやアイスドラゴンのきばも売り切れそうになったしな」

 初日だけでなく、冬至祭の三日間はおおいそがしだった。

 想像以上の客がし寄せ、食材が底をつきそうだったのだ。

「後半、エルト様はずっと生産係でしたからね……」

 商機をのがしてはなるものか、と俺は生産にてつした。

 は村人ががんった分、こういう不測の事態は俺が解決すべきだろう。

 おかげでなんとか波を乗りえ、観光客も満足して帰っていった。

「持ち帰りの客が多かったのが意外だったな」

「帰り道で食べる用ですね。まさかずんどうなべで持って帰る人があそこまでいるとは……」

 遠路から来た人たちは、鍋や調理道具を持参していた。

 そうした人たちが村の料理や食材を持って帰ったのだ。

「こればっかりは事前の予測は難しいところだな。来年は少し、手を考えるか」

 テイクアウト専用の料理や食材パックもいいかもしれない。

「ザンザスも好調だったようですね」

 ステラがレイアからの手紙を読んでいた。

 ザンザスも冬至祭は大成功、投資をおおはばえる収益が上がったそうだ。

 しかしレイアはまだザンザスでの仕事が多く、ヒールベリーの村には姿を見せていない。

「元々、このあたりの祭りでは群をいていたみたいだしな」

「ええ、ぴよ着ぐるみのさらなる増量も検討中みたいです」

「……マスコットは大切だな、うん」

 ナナやコカ博士の着ぐるみ、冬はまだいいとして夏はかなりのごくなんじゃ……。

 いや、やめよう。ちゃんとその苦労に見合う給料が、ぴよ着ぐるみにははらわれているはずだ。

 手紙を読み終え、わきに置いたステラが少しだけ表情をくもらせる。

「モネットは……どうでしょうか?」

「うーん、なにせはなれているからな。情報が伝わってこない」

 何かあっても、通常の手紙だと一ヶ月以上かかるだろう。

「……成果があればいいのですが」

「コカ博士もきゆうえんに行くらしいし、一定の成果はあるはずだ」

 コカ博士のりよくは大貴族と同等だ。その辺の魔物に苦戦はしないだろう。

「そうですね、あの最高級着ぐるみなら……たとえ火の中、水の中、魔物の群れの中でも……」

「すごいしんらいだ……」

 そこでステラがぴくりと耳を動かし、首をった。

「あまり心配するのもよくありませんね」

「そんなことはないさ」

 何もかも、きっちり割り切れる人間のほうが少ない。

 たいていは行きつもどりつ、自分のせんたくと結果に折り合いをつけるのだから。

 次に手に取った書類は、来月の農業生産の予定だな。

 寒くなるにつれ、逆に夏の野菜や果物の生産を増やしていく。高い収入が見込めそうだ。

「来年は──何かしたいことはあるか?」

「来年ですか、地下のたんさくを進めたいですね」

 ステラが大樹のとうのほうを向いた。

 そこには地下広場が広がっている──今はいもを生産する区画だが。

「第四階層にもとうエリアがあります。これまではかなり遠かったのですが……」

「確かにちようせんはしやすくなったかもな」

「あのゴンドラから下に行けば、ぐっと往復しやすくなります」

 そこまで言って、ふとステラがかべけ時計を見上げた。

「あっ、もうすぐ時間です!」

「もう打ち上げか、仕事をしていると時間が早く進むな」

 今日はこの後、一年の打ち上げのえんかいがある。

 冬至祭では村人全員が頑張ったからな、その場でボーナスも支給する予定なのだ。

「どれどれ……」

 俺は立ち上がり、窓から村の様子を見た。

 ちょうど村人たちも家を出て、宴会会場の広場に向かっている。

 みなじやつかん足取りが軽い気がするな。

「よし、行こうか」

「はい……!」

 俺とステラは二人で執務室を出た。

 とびらのところで、少しだけ俺とステラの手がれる。

「ふふっ……」

 ステラが微笑ほほえみながら、俺の手をやさしくにぎって──ぱっと離した。

 その仕草に、俺はちょっとだけどきっとしたのであった。