「(ち、違う……ク、クレア殿のような異質で得体の知れない強さじゃない……せ、正統な戦士の果て……ルーサム家……いや、マクブライン王国全土を見渡しても、彼に比肩する者などいないんじゃないのか……ッ!?)」
ダリルの記憶にはない。触れたことがない。それほどの力。
驚きを持ってダーグという超越者の存在を知り、いざとなれば彼の助力を得られるという安心感が
『
それは今までの〝予感〟よりも強く強くダリルに響く。思わず頭痛を覚えるほどに。
「(……女神がここまで警告するということは……本当にダーグ殿はクレア殿を〝殺せる〟のか……?)」
ダリルが疑問を思い浮かべる度に〝予感〟が、女神からの警鐘が彼の中を巡る。つまり、その疑問は是ということに他ならない。
◆◇◆◇◆
「くははッ!! あの
「……ク、クレア様。今のマナの気配は……?」
昼間でありながら、漆黒の闇に包まれた邸宅内のとある一室。死と闇の眷属が控えるまさに人外の間。邸宅は広いとはいえ、同じ敷地内である以上、当然に人外たちもダーグのマナを察知していた。
「ふん。アレはワタシがこうなる前の別の可能性。近くて遠い同類だった者よ。託宣や使徒とは無関係ではあるが、この世界が独自に生み出した……始祖の可能性とでも言うか」
「……クレア様と同類? 始祖の可能性とは……?」
暗闇にてその表情は見えない。しかし、クレアは喜色満面であり気分が良い。
古き馴染みたる者が、古きままに道を歩み、自分とは違う可能性へ辿り着いた様を確認できた。それは今のクレアにとっては何の意味もないことではあるが、彼女の〝個〟の部分が騒ぐ。
「ふっ。貴様らには分からんさ。これは古き者の連帯の証よ。まぁ、奴からすれば、ワタシなんぞは邪道中の邪道を征く者だからな。許せんという気持ちがあるのだろう。くははッ! ワタシは奴を愛しく抱きしめてやりたいというのになッ!」
「……は、はぁ……?」
暗闇の中、復讐者でも人外でもない、ただのクレアの笑い声がしばらく止むことはなかった。
古き者。
この世界の正統な継承者たち。〝物語〟が本格的に介入してくるより以前、神々が世界に蒔いた可能性の種、因子。それを受け継ぎ、もし因子を芽吹かせることができたなら、新たな種族の始祖となり得る者たち。ただ、〝物語〟の介入後は明らかに不確定要素である為、縛りを受けた神々の手で刈り取られた芽も多いのだとか。
神々はクレアを愛する。
それは〝物語〟から脱却する道具としてだけではなく、彼女が、かつてこの世界の正統な継承者の一人だったからこそ。
神々は継承者同士の争いを望まない。たとえ片方がその資格を喪失していてもだ。