彧の言葉はにべもなかった。

はい、ごもっともで。尊厳の回復をあきらめて、私はきゅうりの味噌漬けをつまんだ。ああ、おいしい。荀彧は上機嫌でいう。

「ああ、そうそう。変わり者で思い出した。司馬徳操しばとくそうだ」

「むっ。徳操がどうかしたのか?」

三国志でおなじみの水鏡すいきょう先生こと、司馬徽しばきの字を徳操という。じつは彼も潁川出身なのだ。お年寄りの印象があるけど、郭嘉と同年代なんだから、イメージってあてにならない。

「彼から連絡がきたよ。襄陽でひらいた学問所が、なかなか盛況のようだ。君にあこがれて、鶴氅を着て、白い羽扇をもつ者も多いらしい」

「隠士の真似なんてしていたら、出世できないだろうに」

「ふふふ。その中に、おもしろい若者がいるそうだ。学問所に出入りしているだけで、門下生ではないようだがね。はからずも、字を孔明といって、たしか、琅邪諸葛氏の出身だったかな」

「ほう……」

とりあえず。ここは一発、有名なセリフを使わせてもらいましょう。さながら、某怪盗三世を追いかけまわす警部のごとく。私は心の中で叫ぶのであった。

バカヤロー! そいつが本物の孔明だッ!