第三十二話 新しい道の始まり(カイル歴五〇四年 十一歳)
新しい年を迎え、新年を祝う宴が領主館で開催された。
「今年も無事、皆で新しい年を迎えることができたこと、非常にうれしく思う。皆の日々の働き、感謝を込めて今日の宴を用意した。皆が等しく、そして存分に楽しんでほしい」
父の挨拶とともに始まった、毎年の恒例行事である宴は、無礼講が前提であり、館にて働く者、招待された者など、皆が身分に関係なく楽しんでもらうためのものだった。
「最低限の礼儀以外は全て不要とします。全ての者たちが楽しむこと、これが参加者の義務です」
実質この館で一番の権力者、母から皆にそう強く言い渡されている。
配膳などの人手も極力省き、食事も酒も皆セルフサービスで楽しむ。そういう決まりだった。
俺はこの雰囲気が大好きだ。
既に凛々しく成長しつつある兄の周りを、若いメイド達が取り囲んでいる。兄は、エストール領一番のできる男、家宰のレイモンドと人気を二分しているぐらいだ。それを羨まし気に見ていた父の背中に、少しばかり哀愁のようなものが漂っていたのを見て、俺は思わず笑ってしまったが。
「皆も遠慮せずに、ゆっくり楽しんでね」
慣れない場に緊張している、十人の魔法士たちに向かって俺は話しかけた。
新年の宴に合わせて、交易に出ていたバルトも一時的に帰郷している。
「こんなこと、まるで夢のようです」
女性の魔法士達は、緊張と遠慮はあるものの、いつもより着飾った様子で場を楽しんでいた。母はこの日に合わせ、事前に彼女たちの衣装も用意していた。
反面、男性達、特に軍に所属しているゲイルとゴルドは緊張でガチガチだった。
まぁ、彼らにとっては当主だけでなく軍の上官たちもいるし、全く落ち着かないのだろう。
他の若者達は、ただひたすら食欲を満たしていた。
俺も今年は十一歳になる。まだ十一歳だが、やっと十一歳まできたとも言える。
正直、子供の振りは非常に疲れるし神経をすり減らすため、外見上は早く成長したかった。
その思いとは逆に、あと二年後と五年後、八年後と九年後には必ず災厄が襲ってくる。
俺が後期四大災厄と名付けているものだ。
これらは、前期五大災厄と比べると、一つ一つが致命的であり、その三つで家族は命を失う。
そのひとつはもちろん俺自身だ。
「改めて考えると、攻略ルートに乗せる対策は大きく進んでるけど、攻略は進んでないよな……」
俺は大きなため息をついた。
計画の端緒には乗った。だが、そのゴールまではまだ果てしなく遠い。ほんと、遠すぎる……。
領民の戦力化、射撃大会を活用して優秀な成績を残した者を引き抜くことなど、ゆっくりと戦力増強は進んでいる。魔法士の件も傭兵団の件も、そしてテイグーンの件も、父からは承認を得た。
ここまで放った七本の矢、そして四本の裏の矢は、あくまでもここに辿り着くまでの準備、環境を整える手段でしかない。この先、レールに乗せた電車をゴールまで走らせなくてはならない。
改変されたこの世界で、歴史は帳尻を合わせに来るだろう。二年後の悲劇、これの回避は絶対の条件だが、恐らくグリフォニア帝国は雪辱に燃え、兄を、我々を目の敵にして狙って来るだろう。その時までに、十分に対応できるレベルの戦力強化は、現実的に不可能であり、何をするにも間に合わないだろう。次回の戦役で、戦地に出せるソリス男爵兵は五百名前後が関の山だ。
そうなると、戦局を変えることができる必殺技、隠し玉が絶対に必要となってくる。
俺は宴の中で、ずっとそんなことを考えていた。
「タクヒールさま、こんな場所でも今後の戦略をお考えですか?」
レイモンドさんが女性たちの輪から脱して、思案顔の俺に話しかけてきた。
「そうですね。今年もやるべきことが沢山あり過ぎて、つい……」
「タクヒールさまは働き過ぎです。お年に合わせて遊ぶことも、あっても良いかとと思いますよ」
うん、お年に合った遊びか……、心の積算年齢なら、もうすぐ八十代……。
日本で住んでいた町の、毎朝公園にて日々繰り広げられていた、よく見た光景が頭に浮かんだ。
いや、それはないな。想像してひとり笑ってしまった。
そんななか、新年の宴は賑わいを見せつつ、つつがなく終わった。
宴のあと俺は、自室で現状と今後の課題を整理していた。
ソリス男爵家の兵力は、サザンゲートの殲滅戦後、若干だが増えている。
◇サザンゲート殲滅戦前
最大動員兵力 五五〇名(うち常備兵は二一五名)
双頭の鷹傭兵団 四〇名
◇現在の兵力
最大動員兵力 六二〇名(うち常備兵は三〇〇名)
双頭の鷹傭兵団 五〇名
ただ、いくら戦争になっても全ての兵力を動員することはできない。
兼業兵も平時は、門番や治安維持に携わっている者も多く、治安や防備をゼロにはできない。
そのため、前回の戦役でも父は動員兵力五百五十名中、三百六十名しか戦場に伴っていない。
百九十名は領内各所に配備し、残留部隊として治安維持のため残っていた。
現在は若干増えたとはいえ、それでも傭兵団を加えた従軍可能兵力は五百名前後でしかない。
ゴーマン子爵のように八百名を戦場に連れて行こうとすると、動員可能な最大兵力が今の倍以上必要な計算になってしまう。人口や生産力に応じて供出できる兵力は変わるから、今の人口八千人では到底無理な話だ。人口を増やし生産力と経済力を上げ、兵力を増強するには相応の時間が必要であるため、今できることを全て行っても、二年後の最大動員可能数に大きな変化はないだろう。
射的大会を通じて領民を戦力化し、優秀な人材を兼業兵として増やすこと、領民たちが守備兵を兼ねる仕組みが整えば、守りに残す兵力は今より少なく済むかもしれない。
それに加え、一騎当千の魔法兵団、これができれば……。
以前からそんなことをずっと考えていたが、俺にはそのことに踏み込めない悩みがひとつある。
魔法兵団とテイグーンに関わることは、母の強引とも言える後押しで、父からの言質は取ったし、戦術面でヴァイスさんに指導を仰ぐ許可も得ている。ただ俺や父、母にも共通する思いがある。
兵士でもない彼ら、まだ子供といっても差し支えない者もおり、彼らを戦場に駆り出すことへの葛藤や戸惑いが、大きな壁となっている。今年は、その壁と正面から向き合うことを決意した。
「彼らには事実を話して、自らの道を自ら選んでもらおう。無理や遠慮はさせたくない。望まぬ戦いに駆り出すことだけはないよう、重々気を付けないと……」
◇◇◇
受付所の一角で、俺は候補者リストを眺めていた。
魔法士の候補者はあれから五人増えていた。いや、正確には候補者自体は百名近くいるが、為人などの確認が終わり、あとは儀式を受けるだけとなった者たちが五人だ。
「これでまた仲間が増えるのですね」
「うん、確認が終わったからね」
俺はクレアの問いに答えた。リストから適性のある領民は確認できる。でも、性格や考え方などは全く分からない。得体の知れない者に力を与えること、無原則に魔法士とすることはできない。
性格や考え方に問題がないか? すぐに他領に売り込みに行くような人間ではないか? 信頼に値する人物かどうかの調査のため、一旦は雇用して囲い込み、ある程度の期間、俺の仲間と一緒に仕事をしてもらうこと、候補者たちにはこんな段階を踏ませていた。
そのため、いまのところ最終選考に進む候補者は、兵士として既に男爵家に雇用されているか、まだ若く定職を持っておらず、俺のスカウトに応じる余地のある者が大半を占めていた。
当面の間、この迂遠なやり方で我慢するしかなかった。
「家宰として、レイモンドの人を見る目は確かですよ。彼は決して間違った人材を登用しません」
以前に、母に言われた言葉だ。そのため最近は、家宰にも候補者を見てもらう機会を設けた。
始めてみると、その効果は驚くべきものだった。
「彼はダメですね。適性があると分かった途端に、他領に売り込みに行く可能性があります」
実際ダメな場合は、レイモンドさんは候補者を一目見ただけで、まさに一刀両断だった。
その選考過程を加えた絞り込みにより、最終的に五人が新たに仲間に加わった。
元から兵士だった三名、常備軍の騎兵長マルス(火魔法士)、騎兵のダンケ(火魔法士)、歩兵のウォルス(水魔法士)については、為人の確認は不要だった。
前回の歴史でも、彼らはソリス男爵軍の兵士として俺と面識があり、俺の最後の戦いにおいて、自らの意思で参じたのち、ゲイルやゴルドらと共に、悲しい決別をした者たちだったからだ。
今回の世界では、まだ互いに面識もないこの五人は、従軍魔法士としてソリス男爵軍に引き続き所属してもらい、今後、魔法士だけの訓練を行う際は、役務の一環で参加してもらう予定だ。
因みにこの五人に関して、ゲイルとゴルドの二名は魔法士であることを公開、他の三名については、現段階では秘匿扱いとしている。
エストの街在住者で新たに仲間に加わったのは、クレアと同じく孤児院出身で最年少の少女ミア(聖魔法士)と、エランと同じく貧民街出身のクラン(光魔法士)の二名だった。
この二人は事前に実行委員の補佐として雇用しており、ミアは意図的にローザのお手伝いとして配属し、クランも同年代のエランの補佐で動いてもらっていた。
二人は日々真面目に仕事をこなし、ローザとエランからそれぞれ働きぶりに問題なしとの報告をもらい、最後は家宰にも面接してもらっていた。この二人は、他の魔法士たちと同様に、俺や家族の従者として雇用され、魔法士であることは秘匿されている。
このような経緯で十五人の魔法士たちが揃い、俺は以前に決心した話をすることにした。
それは、俺と彼らが、どうしても通らなければならない大きな関門だった。
年明け早々のある日、俺は従軍している五名以外の、十名の魔法士たちを招集した。
「今日は皆の本当の気持ちを聞かせてもらいたいです」
先ずはそう言って全員を見渡した。
「今この場にいる全員が、ソリス男爵家で貴重で大切な魔法士です。それはこの話が終わった後も変わりません。ですが、このまま時が過ぎれば、いつかは私と共に戦場に出ることになります。皆の魔法で人を殺めることもあるかもしれませんし、逆に皆が戦いの中で敵から命を奪われることもありえます。正直言って、私自身も人を殺めたくはないです。ですが、戦場に出ればその思いは叶いません。なので今日は、今の皆さんの本当の気持ち、それを聞きたくて集まってもらいました」
そこで俺は一息ついて皆を見回した。
彼らは戦いすら出たことがなく、ましてその意思を持っていたわけではない。
誰もが一様に蒼白な顔をしてこちらを見つめている。
「後で個別に、私と共に戦場へ出ることが可能なのか、できれば避けたいのか、教えてください。決して無理強いするつもりもなく、返事の内容によって、現在の立場が変わることもありません。これだけは最初に断言しておきます。皆が考えている本当の気持ち、今それを聞きたいだけです。戦いに臨むには、魔法戦闘の訓練なども必要になります。希望者には今後それを行う予定です」
うん、正直な気持ちを聞かせてと言っても、なかなか皆の前では言いにくいこともあるよね?
昔あった、特攻隊の志願じゃあるまいし。
「では、これから一人ずつ順番に別室で……」
そこまで言いかけた時、クレアが前に進み出て膝を突いた。
「私はタクヒールさまに生きる力を与えていただきました。今の私があるのは当然そのお陰です。タクヒールさまが行かれるところ、戦場でもどこでも、喜んで付いて行きたいと考えております。いえ、是非お連れください。これは逆に私からのお願いです。孤児院の仲間たち、そして、難民や被災地に対しても、いつも救いの手を差し伸べられてきた皆様、このソリス男爵家を守るために、これからも働きたいと思っています」
最も付き合いの長いクレア(火魔法)が真っ先に意思を表明してくれた。
「クレア、ありがとう。じゃあ、他の皆は別室で……」
そう言いかけたとき、もう一人前に進み出てきた。
「俺はダレクさまの活躍を聞いて、ずっと憧れていました。貧民街出身の俺には夢がありました。そのために、なんとか軍に入りたくって、ゲイルさんを目標にして毎日射的場に通っていました。そんな俺が、ダレクさまと同じ光魔法を使えるようになったときは、本当に嬉しくて泣きました。タクヒールさまのもと、ソリス男爵家に雇ってもらえて、夢が叶って再び思いっきり泣きました。なので、何も気にしないでください。是非俺も連れて行ってください」
魔法士たちの中では、最後に仲間に加わったクラン(光魔法)が続いた。
「クラン、ありがとう。そう言われて兄さんも喜んでいると思うよ。じゃあ他の皆は別室で……」
そしてまた一人、クランが話し終わるのを待っていたかのように……、いや、別室で……。
「あの洪水の日、ヒヨリミ様の領地にお手伝いに行ったとき、ずっと震えが止まりませんでした。皆様が何もしてくださらなければ、私の町も、そして私自身も、同じ運命を辿っていたでしょう。現場にいればそれはよく分かります。マーズの町を守ってくれた、タクヒールさまやクリスさま、男爵家のみなさま。今度は私の力がお役に立つのであれば、どうか私にお手伝いさせてください。それは戦場でも、どこででも何一つ変わりません」
前回の歴史では、洪水により命を失っていたはずのメアリー(地魔法)が続いた。
「僕は……、その日の暮らしさえ困る貧民街の出身です。ただ生きるためだけに毎日必死でした。ですが、ここでのお仕事は毎日が楽しく、やっと自分らしく生きていけると思い感謝しています。僕の魔法は人を傷つけるよりは、守ることしかできない地魔法ですが、守るために僕は戦います。戦場でもこの領内でも、色んな所でタクヒールさまを、男爵家の皆さまを魔法で守りたいです」
洪水対応でも大活躍したエラン(地魔法)も、メアリーが話し終わると間髪入れず続いた。
「メアリー、エラン、ありがとう。先の戦いでコーネル男爵軍の地魔法士たちは、陣地の構築や、戦場で罠を用意したりして、立派に皆を守っていたよ。じゃあ、他のみんなは後ほど……」
「あ、待ってください! 私の魔法も皆さんを守るものだと思っています。それに、施療院に所属する者は本来、救護兵として従軍する義務を負っています。それがなくても、私は進んで従軍しようと思っていました。私はこの地を治める皆さまが、為されていることに日々感謝しています。守りたいと思っています。救える命があるのなら、それは戦場でも施療院でも同じです」
「私もローザ姉さまと一緒!」
ローザ(聖魔法)が膝を突いて話すと、彼女を姉のように慕っているミア(聖魔法)も続いた。
「ローザ、ミア、ありがとうね。他の皆も正直な気持ちで、ダメな場合は遠慮なく別室で……」
「申し訳ありません。私は分かりません。正直言って凄く怖いです。私の水魔法が戦場で役に立つかどうかすら分からないし、考えると震えが止まらないです。私もクリスさまやメアリーさんと一緒に災害とは戦いました。あの時はすごく怖かったけど……、皆から勇気をもらいました。後になって頑張って良かったと思うようになりました。戦場に出てもそんな気持ちになるのか、今はまだ分かりません」
サシャ(水魔法)は従軍魔法士の男性たちを除けば、クレアに次いで最年長だが、それでもまだ十七歳でしかない。普通なら、そんな意思表明をすることすら難しいだろう。
と言うか、みんな、別室で……、ね。でないと、俺が虐めているようになってしまうから……。
「大丈夫だよ、サシャ。返答しづらいことを聞いているのは重々承知しているから。正直な気持ちを伝えるのも辛いよね。言ってくれてありがとうね。二人は別室で聞くから、遠慮なくね」
俺は沈黙したままのクリストフとカーリーンに対し、努めて優しく語りかけた。
俺の予想通り、一番答えに困っているのは、風魔法士の二人だ。
彼らの特技(弓矢)は、直接人を狙って殺めるものだ。敢えて殺めるために意思をもって狙いを定め、そして矢を放つ。ひとたび彼らが風魔法を併用した上でエストールボウを使えば、放たれた矢は常人では有り得ない射撃精度と、射程距離、そして貫通力を持つ。殺傷力がとても高いのだ。
恐らく戦場に出れば、その特性から真っ先に人を殺める必要に迫られることになるだろう。だからこそ彼らは、一層現実味を帯びた話として、他の魔法士たちに比べると余計に心を悩ませているであろうことを、俺には彼らの気持ちが痛いほど伝わってくる。
もう……、あれほど何度も別室で、そう言ったのにも拘らず、クリストフが話し出した。
「まだ修行中とはいえ、俺は狩人として生きるため、これまでに獣や魔物の命を奪ってきました。最初は心が痛んで震えて……、怖くて仕方がなかった。でも、いつの間にか慣れてしまっていた。今でも戦場にお供し戦える自信はあります。何でもお役に立ちたい、そう考えているのも本心です。でも俺はこの先、人の命を奪うことに慣れてしまうことが、怖い……」
その気持ちは俺にもある。かく言う俺自身が、人を殺めたことも動物の命を奪ったこともない。
戦いのない平和な日本で育ち、人の命は決して奪ってはならないもの、そう教えられて育った。
この世界とは全く違った価値観で成長した、俺の中にある記憶は、常に今の俺に問いかける。
『家族や領民を守るためとはいえ、残酷な戦術を考案し、命を奪うことが許されることなのか?』
『では逆に、どうやって家族や仲間を守るのか? この世界でそんな手段がある訳もないだろう』
ニシダの疑問に、タクヒールが答える。そんな自問自答をずっと繰り返していた。
悩んだ結果、俺は罪を自覚し、常に背負う覚悟を持ち続けることしかできない。そう結論を出して、無理やり自分自身を納得させている。ラノベでよく見た『ヒャッハー』なんて正直あり得ない。
俺の祖父は太平洋戦争で従軍し、実際に敵と戦った経験もあったらしい。敵に照準を合わせ、引き金を引く時の気持ちはどうだったのか? 祖父は多くを語らず、思いを背負ったまま他界した。だからこそ、彼らの気持ちはよく分かる。
「私はまだ、動物さえ撃ったことがありません。生き物に、まして人に向かって、矢を射ること、魔法を放つことができるか……、全く分かりません。そんなことをする自分自身を、怖くなってしまうかもしれません。今はただ怖い……。それしか言えず、本当に申し訳ありません」
「ふたりとも、正直にありがとうね。決して無理強いをするつもりはないので安心してください。皆が魔法士であることも秘匿しており、魔法士としての生き方も、選択権は皆にあります」
今は皆の正直な思いが確認できたこと、それで十分だと思っている。
「ちなみに今後、希望者のみヴァイス団長を教官に、実戦を想定した魔法使用の訓練を始めます。この中で希望する人だけ、挙手してください」
俺は希望者のみ、確かにそう言ったはずだけど、何故全員が迷うことなく手をあげているんだ?
「戦場での実戦を想定した訓練だよ? 参加は希望者だけで良いのだよ? 脅す訳ではないけど、団長の訓練って、かなり厳しいと思うのだけど……」
敢えてもう一度聞き直した。そして、敢えてもう一度手を挙げてもらった。
全員の表情は全く変わらず、迷うことなく手を挙げている……、サシャやカーリーンまで。
いいの? ほんとうにいいの? 俺はちゃんと言ったからね。団長はすごく厳しいと……。
結果、魔法戦闘の訓練は、全員の強い希望により実施されることになった。まぁ、ヴァイス団長に指導を仰ぐにしろ、指導の方向性だけは間違わないよう、団長としっかり話し合わないと……。