第二十五話 裏の矢 その三 候補者選定(カイル歴五〇三年 十歳)

会議の終わり、兄が笑いながら指摘してきた。

「タクヒール、またいつもの悪い顔になっているぞ!」

兄とレイモンドさん、二人ともニヤニヤしながら俺を見て笑っていた。

ともあれ、会議で両親の許可は得た!

これで小銭稼ぎができ、同時に人材確保もできる。俺はそれが嬉しくて仕方なかった。

その後は黙々と地味な作業に取りかかった。そう、俺には誰にも知られていないチートがある。

俺が歴史書と呼んでいるソリス男爵領史には、領地の歴史だけでなく領民一覧の頁がある。

前回の歴史でエストール領に住み、ソリス男爵家の領民だった者全ての名前が、歴史書には記載されていた。もちろん、内容は至極簡潔だった。


氏名  なお、領民の殆どは苗字を持っておらず、名前しか記載されていない

年齢  カイル歴五一三年時点の年齢で、死亡者については没年と亡くなった時点の年齢

居住地 カイル歴五一三年時点の居住地で、その町や村の名称

特性  ここに記載されていた内容が、チート過ぎる情報だった


この特性に記載されている情報を初めて見たとき、俺は狂喜した。

そこには本来、高額な適性確認の儀式を受けないと分からない、本人の魔法適性が整然と記載されていたからだ。誰に適性があり、それが何の適性なのか、歴史書を見れば一目瞭然だった!

事前に分かってさえいれば、少ない費用で効率的に魔法適性を持つ者、魔法士を集められる。歴史書の特性欄をざっと目を通しただけで、恐ろしい数の魔法士適性者が確認できていた。

ピンポイントで、数多くの魔法士を一本釣りができること、このメリットは計り知れない。

『単に歴史を知っているというチートに、簡単な一発逆転なんてない』

そんなこと誰が言ったのだ?

「これってめちゃめちゃ一発逆転の情報じゃん!」

俺はひとり舞い上がっていた。


ただ……、思いもよらぬ所に落とし穴があった。この世界にはちゃんとした戸籍がないっ!

徴税の為の戸別情報はあっても、個人別情報が全くないのだ。

「行政府にある領民の情報って、まさかこれだけ? こんな物でしか領地を管理していないのか? なんでだよっ、これじゃあ全く使えないじゃん!」

俺は怒りの余り、思わず手にした資料を叩き付けてしまっていた。