二話 シャバに出ますわよ!
さて。あいつらを殺すと決めたら元気になってきましたわ! やっぱり人間、目標が定まると元気になるものですのねえ。おほほ。さあ、早速、あいつらを殺す計画を立てましょう!
まず……私、この皆殺しを半年で終わらせますわ。
ほら、私、お誕生日が冬なんですのよ。そして私、お誕生日は毎年、家族にお祝いしてもらっていましたわ。今や、家族は生きているかも分からない状況ですけれど……もし生きていらっしゃるなら、ゴタゴタしてるよりは全てが綺麗に片付いていた方が、お父様もお母様もお兄様も、私のところへ戻ってきやすいんじゃないかしら。もし、半年で私が全てを片付けたなら、皆、戻ってきてくださるんじゃ、ないかしら。
……というか、そうでなくとも、お誕生日までこのゴタゴタを引きずるとか真っ平御免でしてよ。許しませんわ。そんなん許しませんわ。神が許しても私が許さなくってよ。
そして何より、冬って焚火の季節ですのよね。
ええ。焚火の季節ですわ。つまり、王城に火をかけたり、憎い王族や貴族連中を火刑に処したりするのにとってもいい季節ってことですわ!
夏場の暑い夜に行う火刑も悪くありませんけれど、折角なら焚火に合う季節に全部燃やしたいですわ! ということで、私、半年でこの国をひっくり返しますわ!
……ええ。国、ひっくり返しますわ。というか、ひっくり返っちゃいますのよ、この国。だって国王が殺されるんですもの。そりゃーひっくり返りますわ。ひっくり返しますわッ!
国王だけじゃなくて貴族院も潰しますわ。私の死刑を勧めたあいつ。貴族院総裁クリス・ベイ・クラリノ。あいつ絶対殺しますわ。周りにいた貴族共も殺しますわ。だから貴族院は潰れて、そして貴族院を失った国は間違いなくひっくり返りますわ! ひっくり返った方がよくってよ、こんな国! ムキーッ!
……まあ、国をひっくり返す、となれば、貴族の集合である貴族院と、民意の集合である大聖堂を一緒にひっくり返すべきかしら。特に、最短でいくならそこ二つは外せませんわねえ。
貴族院はまあ、クリスを筆頭に貴族がいっぱいのド腐れ機関ですわ。王家に対する影響力を持つ機関ですわね。
そして大聖堂は、エルゼマリンに本拠地を置く……まあ、宗教施設なのですけれど。でも、この国では民意の代弁者としての立場が強くってよ。大聖堂は信仰と一緒に民意も集めていますの。庶民の味方、というやつかしら。ですから、大聖堂のトップが発する言葉にはそれなりに重みがありますし、国王も大聖堂を無下に扱うことはできませんのよ。まあ、貴族院と同じくらいには、国に影響を及ぼす機関ですわね。
……ということで、私、目下の目標を貴族院潰しと大聖堂潰しと定めましたわ。それによって王家をひっくり返して王族を皆殺しにしますわ。別に国ごとひっくり返さずとも暗殺で何とかなるかもしれませんけれど、折角やるなら革命ですわ。あいつらが一番やられたくないことをやってやるのがフォルテシア流というやつでしてよ。おほほほほ。
……さて。やるべきことが決まったら、早速、目標のための第一歩から参りましょうね。まずはこのムショを出ますわ。
ええ。脱獄ですわ。そう! 脱獄ですわーッ! こんなムショ、とっととオサラバしてシャバに出ますわよーッ!
私が入れられている独房は、石材を組み上げて作られた部屋ですわね。壁も床も天井も石材ですわ。穴ぼこ開けるのは難しそうですわね。
かといって、扉を破るのも難しそうですわね。扉は鉄格子ですから破壊は難しそうですわ。鍵開けしてやりたいところですけれど、針金一本すら無いこの状況だとちょっぴり難しくってよ。大体、鉄格子ってことは廊下から監視し放題なのですわ! 今も私の様子はつぶさに観察されていましてよ! プライバシーってモンがムショには無いのですわ!
まあ、よくってよ。こういう場所なら、やり方はただ一つですわ。
「……うっ!」
私、『袖に隠しておいた何かを飲んで、急に苦しみ出した』というようなフリをしましたわ。
「なっ……何をした! おい、ヴァイオリア・ニコ・フォルテシア!」
そうすると当然、私をずっと見張っていた兵士ったら、私が自害したとみて慌て始めますわねえ。私はそのまま床に倒れ込んで、ピクリとも動かなくなりますのよ。……となると困るのはこちらの兵士。特に気を付けて見ておけとでも言われていたんでしょうに、その囚人が自害してしまったとなれば大目玉待ったなしですものねえ!
「ま、まさか、死んだのか……?」
そして兵士が三人、私の死を確認すべく、牢の中に入ってきて、一人が私を覗き込んできて……。
「死ぬわけありませんわねェーッ! 考えが甘くてよッ!」
当然! そうなれば私のラリアットの餌食でしてよ! 甘い! 甘すぎますわねえ! 武術大会優勝者の力は伊達じゃあありませんのよ! そのまま驚く二人目にタックルかまして倒したら、逃げようとしていた三人目の顎を狙ってハイキック! 二人目が起き上がる前に絞めて落としますわ! 不意打ちならば抜刀すらしていない
さて、まずは兵士の身ぐるみ剥ぎますわ。兵士の服を着ていれば多少、逃げるのに役立つと思いますの。この兵士にはパンツ一丁でおネンネしていてもらうことになりますけれどごめんあそばせ。
兵士が持っていた鍵束を手に、そのまま牢を出て、鍵をかけておきますわ。兵士三人にはここで閉じ込められていてもらいますわよ。
そうして地下牢の廊下に出たところで……私、気づきましたの。
「だ、脱獄か!? 俺も助けてくれ!」
……こういう風に、私に助けを求めてくる囚人が、結構居ますのよ。……ほーん。
ということで私、片っ端から牢屋を開けて回っておりますわ!
「開けましたわよ!」
「ああ、ありがとう。助かっ……へぶっ」
勿論、ただの人助けじゃあなくってよ! 目的あってのことですわ! ですから私、開けた牢屋の中に飛び込んでは、中にいる囚人にいきなり飛び蹴りかましてやってますのよ!
意図は単純。『私の飛び蹴りを防げる囚人を探すため』ですわ。こんなムショにぶち込まれているくらいですもの。一人二人くらい、暴力沙汰に慣れた囚人がいてもおかしくありませんわね。或いは、私の飛び蹴りを知力で避けることができるような知能犯もいるかもしれませんわ。
そう! 私は今、そういう『優れた』囚人を探し回っていますの! この私に相応しい仲間を見つけ出すために!
……私一人でこの国を転覆させてやるのも悪くありませんけれど、効率が悪いったらありゃしませんわ。私、急いでますの。とにかく、急ぎますのよ。冬までにはこの国を滅ぼして王族全員、火刑に処している予定ですもの。……なら、優れた仲間が一人でも居た方が、早くことが進むんじゃないかしら。
……ということでひたすら鍵を開けて扉を開けて飛び蹴り、もしくはタックル、という作業を繰り返し続けて、牢屋の最奥まで来た時でしたわ。
「ごめんあそばせーッ! ……あらっ!?」
私の飛び蹴りが、あっさりと、防がれましたのよ。それこそ、私がお兄様と組み手の練習をしていた時みたいに、あっさりと。