翌朝。

 クローフェ女王より高い地位を得た俺は、エルフ王国において〝元首〟の肩書を授かることになった。

 主に国内政治を取りまとめるのがクローフェ女王。

 主にヴェフェルド王国への対応策を取りまとめるのが俺。

 こんな感じに区分けされた形だな。

 俺と女王の意見が食い違った時には、「統治者」たる俺の意見が優先されるようだが――まあ、よっぽどのことがない限りエルフ王国の政治に口出しするつもりはない。

 その分野においては、正直おつくうでしかないからだ。

 だから俺の統治下にあるとはいえ、面倒くさい国内政治はクローフェに頑張ってもらう。

 一方で俺の得意分野といえば――そう。

 前世のゲーム知識を活かした国力強化だ。

 エルフたちは魔力の才能が非常に高いものの、その平和主義が影響してか、個々の戦闘力はそんなに高くない。ローフェミアだってレベルを上げればバチクソ強くなるのに、本人は気づいていないようだしな。

 ……ユリシアは卑劣な女だ。

 前回みたいに仲間割れを狙ってくるかもしれないし、強敵を同時召喚してくるかもしれない。

 いざという時のためにも国力強化はマストだろう。

 せっかくエルフ王国が俺のものになったのに、人民たちが死んでしまっては統治もクソもないからな。悪のおっぱい王国を築く以前の問題だ。

「おおおおお! すげえ、またレベルが上がったぁぁああああ!」

 だからひとまず、俺はエルフ王国軍の強化から図ることにした。

 その手順については、俺の〝レベル上げ方法〟とさして変わらない。

《エルフリア森林地帯》に潜り、ゴールデンアイアントやシルバースライムを見かけた傍から倒していく。

 それを繰り返してもらうだけだ。

 もちろん、ゴールデンアイアントやシルバースライムを倒すにもコツがいる。

 こいつらは獲得経験値が高い代わりに逃げ足がクッソ速いので、エンカウントした瞬間にはもう逃げ出されることが多いんだよな。

 その場合はもう諦めて、運よく居座ってくれたモンスターを倒す。

 びんしように自信がついてきたら、逃げられる前に先回りしてぶっ倒す。

 ゲームではよくある経験値稼ぎだが、まあ、現地人はそんなこと知らないだろうからな。

「すげぇえ! ゴールデンアイアント、倒しただけでめっちゃ力がみなぎってくる!」

「全部エスメラルダ様が教えてくれた通りだ!」

「やはりあの方は神の生まれ変わりだったんだ!」

 と感激してしまっているものだから、俺も笑いが止まらない。

 ただ単に前世のゲーム知識を活用しているだけなのに、この持ち上げっぷりだもんな。本当にチョロい民族である。

 クックック……。

 これで無事に最強の軍団を結成したあかつきには、もはや向かうところ敵なし。ユリシアは言わずもがな、世界で類を見ないほどの無敵国家を作り上げることができるだろう。

 今はこうして俺のことを崇め称えるがいい。

 俺の真の狙いを知った時、おまえらはきっと泣き叫ぶことになるだろうけどな。

 ――さて。

 話題は変わるが、現在のエルフたちの平均的なステータスはこうだ。


 レベル30


 物理攻撃力:560くらい

 物理防御力:450くらい

 魔法攻撃力:710くらい

 魔法防御力:650くらい

 俊敏性  :400くらい


 エスメラルダと比べるとどうしても頼りなく見えるが、それは俺が強すぎるだけ。

 ゲームの主人公ともそんしよくないステータスを誇っているので、これでもかなり強いほうだ。特に魔法攻撃力・魔法防御力については、主人公よりはるかに強いと言っていいだろう。

 ヴェフェルド王国軍の雑兵はレベル二十前後なので、この時点でもだいぶ差が開いているしな。

 もちろん幹部クラスになるともっと強い兵士がいるので、引き続きエルフたちには特訓を積んでもらう。

 ヴェフェルド王国はかなり手強い国だから、ちょっとやそっと修業を重ねたくらいじゃ絶対勝つことができないからな。

 だから俺も自分自身の特訓を欠かすことなく、地獄の特訓をエルフたちに課しているわけだが――。

「エスメラルダ様が頑張っているのに、我らだけ音を上げていられるものか!」

「すべてはエスメラルダ様のために!」

「エスメラルダ様に栄光あれ!」

 とか言って、けなにも俺についてこようとしているのだ。

 ……クックック、完全に俺を盲信しているな。

 悪くない展開だ。

 そしてさらに、悪のおっぱい王国を作るためには武力だけじゃ足りない。

 教養もしっかりと高めることで、我が国は真の強国たりえるだろう。

 だから俺はクローフェ女王に命令を下し、急ぎ新しい〝まな〟を作らせた。

 こちらはエルフたちの教養を高めることで、ゆくゆくは強い武器防具を作成したり、有用なアイテムを作らせたりするための先行投資だ。

 前世のゲームのおかげで、俺はこちら方面にも知識がある。

 有用なアイテムを調合したり、強力な武具を作ってきたり……。

 エルフたちに教えられることは無限にあるだろう。

 ……しかしもちろん、一番の目的はそこじゃない。

「「今日もよろしくお願いします、エスメラルダ先生!」」

 学び舎。その教室内にて。

 可愛いエルフたちが俺に深々と頭を下げているのを見て、俺は自分の王国が完成間近になっていることを感じるのだった。