「ふふふ……ただのザコ敵だったな」

 ぴくりとも動かなくなった鬼を見下ろして、俺は不敵な笑みを浮かべる。

 前世で周回プレイをしていた時も、《エルフリア森林地帯》での特訓後にこの洞窟に潜るのが鉄板だったからな。

 この鬼も弱いくせに経験値は多めなので、なかなか美味しい敵だと言える。

 ひとつ気がかりな点があるとすれば……。

「ローフェミアよ、どうしてそんなに目を輝かせている?」

 そう。

 ザコ鬼を倒してからというもの、ローフェミアはより尊敬と好意の入り混じった目で俺を見つめてくるようになったのだ。

 それこそもう、このあと不貞行為を提案しても拒否されないくらいには。

「本当にすごいです、本当にすごいです……。私たちのために鬼退治をしてくれるなんて……」

「は? このザコ敵がどうかしたか?」

「はうう、しかもザコ敵呼ばわりなんて……!」

 なぜだか悶絶しているが、俺なにか変なこと言っただろうか。

 このゲームは世界観がめちゃくちゃ凝っている上に広大なので、俺の知らないこともあるんだよな。とりあえず、この鬼は経験値のためのザコ敵としか考えていなかったが……。

 まあいい。

 この洞窟の本命はこんなクソザコではなく、鬼を倒した先にある宝箱だからな。

「さあいくぞ。超お宝が俺たちを待っている!」

「はいっ!」

 その後もローフェミアは俺に密着してきたが(もちろん胸も当たってきたが)、しかしもちろん、ハーレムを築きたい俺としては拒否せずにしておいた。

 めっちゃ歩きにくかったけどな!


 さて。

 アウストリア洞窟の最深部にある宝箱だが、これはゲーム中であれば、同行メンバーに応じた武器がそれぞれ配置してあるのが鉄板だった。

 つまり俺とミルアの使用武器である剣、そしてローフェミアの使用武器である杖。

 もしゲームと同じ展開になるならば、この三つが配置されているはずだが、果たして……?

「おや、宝箱が三つも……?」

 結論、こっちの世界でもそれは同じだったようだな。

 ミルアが目を細める先には、ゲームと同様、三つの宝箱が等間隔で配置されている。

「ふふ、開けにいってみるといい。おまえたち二人の武器が入っているはずだ」

「え、そうなんですか?」

 目を丸くしてたずかえしてきたのはローフェミア。

 第一王女たる彼女でさえ知らないってことは、たぶんこの国のエルフは全員知らないんだろうな。

「ああ。開ける宝箱はなんでも構わない。好きなものを選べ」

「わ、わかりました! 全知全能のエスメラルダ様がそうおっしゃるなら、きっとそうなんですね!」

 全知全能……?

 さすがにそれは言いすぎだとは思うが、突っ込む間もなく、ミルアとローフェミアが宝箱に駆け寄っていく。

 その際に乳がばるんばるんと揺れていたのが実に壮観だった。

「馬鹿な、まさかこれは宝剣ユグドラジル……!?

「すごい、私のほうはほうじようレスタードですよ!」

 先に宝箱を開けた二人が、それぞれ歓声をあげている。

 どちらも店には売っていない代物で、かなりのぶっ壊れ性能を誇っていたはずだ。

 片や宝剣ユグドラジルには、一定時間ごとに相手からHPを吸収するチート機能。

 片や魔法杖レスタードには、魔法攻撃力が二千も上乗せされるチート機能があったと記憶している。

 二千と言われてもピンとこないかもしれないが、ローフェミアが持っていた杖に関しては、魔法攻撃力が三百しか上乗せされないからな。

 その六倍以上の上がり幅があるわけだから、否が応でもそのぶっ飛んだ性能がわかるだろう。

 そして――。

「さあ……いでよ魔剣」

 俺が開けた宝箱には、目当てのブツ――魔剣レヴァンデストが入っていた。

 上乗せされる攻撃力はなんと脅威の一万。

 作中でもトップクラスの攻撃力を誇る魔剣だった。

 もちろんそれにはデメリットもあって、被ダメージが三倍になるという呪いに課せられることになるけどな。

 ゆえに並のプレイヤースキルでは到底使いこなせないが、前世で何度もゲームをやり込んだ俺ならば別。

 さっきの鬼のように、攻撃など当たらなければどうということはないからな。

 レベリングをして高まりまくった物理攻撃力に、さらに魔剣レヴァンデストの強さが重なる……。

 クックック、もはやそれは世界を手中に収めたも同然と言えよう。

「ククク……ハハハ……ハーッハッハッハ!!

 それがあまりにも愉快で、俺は思わずその場で高笑いをしてしまうのだった。