
1
「着いたか……」
それから数分後、俺たちはようやく目的地に到着した。
地下水路の一角に隠されていた、人の背丈ほどの小門。
まあ、ゲームでよくある転移ゲートみたいなやつだな。門の内部には淡い光が漂っていて、その光を
しかもこの転移ゲート、基本的にゲームキャラクターは認知していない。
《限の刻》においても、主人公のクリアしたエリアから順番に転移ゲートが解放される仕組みだったからな。
この部屋においてもそう。
普通にここを訪れただけではただ壁面が広がっているばかりで、転移ゲートを拝めるはずもないんだが――正しい合言葉を唱えれば、部屋への扉が現れることになる。
通常であれば、その合言葉はゲームを進めなければ知ることはできない。
だが俺は前世で《限の刻》を死ぬほどやり込んできた身。ここの合言葉もしっかり覚えていたという形だな。
つまりこの転移ゲートは、プレイヤー側の手間を省くための、ある意味メタ的な便利システムでしかないんだよな。
ゆえにローフェミアもミルアもこの転移ゲートの存在を知らず、
「え、なんですかこれ……?」
「エスメラルダ殿下、なぜこんなところに……? てっきり何か抜け道があると思っていたのですが……」
と二人して目をぱちくりさせていた。
「クックック……、不安になるのも無理はない。安心しろ。俺の言っていることにミスはない」
今回の転移先は、もちろんエルフ王国。
ゲート以外の手段で向かうにはあまりにも遠いので、今回は裏技を使わせてもらうことにした形である。
「さあ行くぞ。俺の手に掴まれ」
「「は、はいっ……!」」
これ幸いとばかりに、ミルアとローフェミアが同時に片方ずつ腕を絡ませてくる。
くっ……、二人ともまたおっぱいを当ててきているな。
しかしここは我慢だ。真の悪役たるもの、自身の欲望をおさえることも重要だからな。
「ふっ……では行くぞ、二人とも」
合図をかけたのち、俺はおっぱいたちとともに転移ゲートに足を踏み入れる。
直後、一瞬だけ青白い光に視界が覆われ――。
そして数秒経った頃には、四方八方に雄大な自然が広がっていた。
「わぁぁぁあああ……!」
「本当に着いた……!」
圧巻の様子で周囲を見渡している美少女たち。
特にミルアはここに来るのは初めてのはずなので、感動もひとしおだろう。
あちこちに生えている大樹、腰のあたりまで生えている草、そして世界の中心にあるとされる《世界の
どれも王都では見ることができないので、ミルアが言葉を失う気持ちはわかる。
俺も前世のゲームで何度も見てきた光景ではあるが、やはりVRとリアルでは景色がまるで違うからな。
ミルアと同じように感動しているのが本音だったが、ここで取り乱さないのが大物悪役としての
まわりにいる美少女エルフたちが、めっっっちゃ可愛いこと!
おっぱい大きい子も多いし、しかも露出が多いし、これは楽園すぎるぞ!
悪のおっぱい王国を築くという俺の夢が、早くも成就してしまいそうではないか……!
「あ、あれは人間……?」
「ローフェミア王女殿下、いったいなぜ……?」
しかし悲しいかな、エルフたちにとって人間は〝恐怖の対象〟らしい。
さすがに悪口や暴言を吐かれることはないが、みな一様に俺たちに
……まあ、無理もないだろう。
ユリシア第一王女を筆頭として、他にも一部の人間がエルフを誘拐し続けているからな。
いくらエルフたちが平和主義者といえども、俺たち人間を良く思わないのは当然だろう。
「気にしないでください、エスメラルダ様」
そんな俺の気持ちに勘付いたのか、ローフェミアが俺の手をぎゅっと握ってきた。
「きっといずれ、エスメラルダ様のかっこよさがみんなに伝わるはずです。ですからどうか、私たちのことを嫌いにならないでください」
「…………」
これは驚いたな。
自分たちも人間にさんざん苦しめられてきただろうに、それでも俺を
だが――それこそ本当の見当違いだ。
俺こそが悪のおっぱい王国を築き、真なる悪役となる者。本当に恐れるべきはユリシアではなく、この俺なのだから。
だがまあ……せっかく擁護してくれているのだ。
わざわざそれを
「気にするな。これしきのことで動揺はしない」
俺の憧れる悪役の条件の一つ――いついかなる時でも泰然自若とする。
今生こそ悪役として自分勝手に生きていきたい俺は、この程度のことで取り乱さない。
「ああ、やはりエスメラルダ王子殿下は、私が一生ついていくべき方……」
ミルアは相も変わらずぶつぶつ言っていたが、エルフたちが怖がっているならば、こんなところで長居している場合ではないだろう。
「さあローフェミア、まずは女王に会わせてくれ。先に俺たちの誤解を解いておかなければ、ここで
「は、はい……!!」
ゲーム廃人の俺なら痛いほどわかっている。
ここエルフ王国には強力な武器防具が取り揃えてあるし、絶好のレベルアップポイントも多数ある。ゴールデンアイアントやシルバースライムなど、経験値効率の良いモンスターがうじゃうじゃいるからな。
要はここに滞在していれば――俺はより強くなれる。
これから悪役王子となって人民を束ねるためには、当然ながら君主たる俺も強くなければならない。
あのクソポンコツ女……ユリシアもなにをしてくるかわからないからな。
つまり立派な悪役王子になるためには、エルフ王国を自由に動き回れるようになることが必須事項。
このままではそれが叶わないので、女王との
「けっこん、けっこん……!」
ローフェミアは別の意味で浮足立っていたが、それについては聞かないふりをしておいた。