「むにゃむにゃ……エスメラルダ様、エスメラルダ様……」

 やはり剣帝ミルアはちょっと頭のネジがずれてるっぽいな。

 俺に抱き着いた瞬間、ぶつぶつ呟きながら、ぼふぉぉぉおっ! と盛大に鼻血を出して気を失ったのである。

 やはり男たちにかけられた(であろう)妖術は、まだ治ってはいないんだろう。

 安全な場所に移動し次第、術の治療に取り掛かったほうが良さそうだ。

 ――そして。

「いい加減離れろ。暑苦しいったらないぞ」

 豊満な胸をいまだにぎゅうっと押し付けているエルフに、俺は呆れとともに呟く。

 おっぱいを堪能できたのは狙い通りではあるんだが、しかし色恋だけにうつつを抜かしているようでは、かっこいい悪役とは言い難い。

 悪名高い王子を演じるからには、しっかりと自分の欲望も抑えないとな!!

「は……はい。すみません」

 なんだか名残なごりしそうに俺から離れるエルフ。

 まさか女の子にこんな顔されるなんて、さすがイケメン王子に生まれてきただけはあるよな。

「こほん」

 俺は大きく咳払いをして、話題を無理やり切り替えることにした。

「それよりエルフの子よ。そろそろ名乗ってもらおうか」

「はい! 私エルフ王国の王女、ローフェミア・ミュ・アウストリアです!!

「そうかそうか、おまえも王女だったか……って、は?」

 ちょっと待て。

 このエルフも王女だなんて、さすがに聞いてないんだが。

 本当に俺の知るローフェミアなら、顔を見ればすぐわかるはず。

「……ローブ、取ってくれないか」

「はい! エスメラルダ様のためなら!」

 エルフ――改め自称ローフェミアは、言われた通り自身の顔を覆っていたローブを取る。

 そしてその瞬間、ゲームで何度も見てきた美少女が目の前に現れた。

 桃色のボブヘアに、くりっと丸い瞳。

 そして童顔のくせしてでかすぎるおっぱいと、おっぱいと、おっぱいと、おっぱいが……ッ!