終わった。

 あれだけ威勢のよかった男たちも、今ではもう身じろぎ一つしない。

 しばらくは目を覚まさないだろうし、仮に意識が戻ったとしても、手足が負傷しているので思うように動けないだろう。

「ふふ……ふふふ……」

 しかし真の悪役たるもの、ここで勝利の余韻に浸ってしまってはいけない。

 それはどちらかというと主人公ポジのやることだ。

 悪役王子たる俺が今やるべきは、ただひとつ――。

「勝った! 俺は勝ったのだ!! はははははははは!」

 大仰に両腕を広げ、悪っぽい笑い方をする俺。

 日本でこんなことをやったら怪しまれるが、今の俺ならむしろ映えるだろう。なぜならイケメン悪役王子だからだ。

「生きとし生ける者は恐れおののくがよい! 今ここに、悪の王子エスメラルダが――」

 しかし俺の高笑いは、そう長くは続かなかった。

 なぜならば――。

「エスメラルダ様っ!」

「どわっ!」

 さっきまで男たちに追い詰められていたエルフに、ものすごい勢いで抱き着かれたからだ。

 もちろん、大きなおっぱいも当たっている。

 というか、当てられている気がする。

「ありがとうございます、助けてくださって……!」

「や、やわらか……!」

 前世ではあまり異性経験がなかったためか、反則級の感触に思わず気が飛びそうになってしまった。

 が、そんなムーブは〝真の悪役〟としてふさわしくない。

 俺は「ふっ」と意味深な笑みを浮かべると、努めて動じていないふうに言った。

「別におまえを助けたかったわけじゃない。あいつらが気に喰わなかっただけさ」

「か、かっこいい……」

 そのまま目をキラキラさせているエルフの少女。

 歳は俺と同じか、ちょっと下くらいか。

 まだローブを羽織っているのでよく風貌は見えないが、あどけない顔つきをしている割に胸はバチクソ大きく、こりゃあ確かに男たちが夢中になるのもうなずける。

 ……クク、しかし見た目に違わず純粋な女だな。

 俺は男たちが一生懸命にアプローチしていたところに乱入してきた、いわゆる寝取りクソ野郎だ。それでも俺のほうに好意が傾いてしまうわけだから、やはり王子+イケメンは強いな。

 剣帝ミルアというちようぜつも部下に加わっているし、着実に俺の王国が築かれつつあるな。

 ――そう。

 悪の王子が築く、神聖なる悪のおっぱい王国を!!

 そんな感想を抱きながらも、ぐりぐりと身体を押し付けてくるエルフの感触を堪能するのだった。