なんとか出た小春姫の悪態に義晴は鼻で笑うが、悪魔の笑みを浮かべる彼は見落としをしていた。

すでにある根付が清条国外に出ていることと、宗助は自分の作品への自己評価が低いことに。

それによりポンポンと誰かに作品をあげてしまうことになり彼へ何度も説教を行うことになることを義晴はまだ知らない。

清条国から離れた土地京の都の帝の寝室。

そこには帝の地位を先代から頂いたばかりの帝聖宋天皇が眠っていた。

その帝の夢見は最近あまりよくないものばかり。この京の都を黒いものが覆い民を苦しめるという夢ばかりでいつもうなされていた。のだが今宵の夢は違った。

その夢はある家の中で座って木彫りをする男がおり、その男の傍に大きな亀が守るように座っていたのだ。

元服はしているであろう年の小柄な男。作業に真剣に取り組んでいるのか亀が見えていないようだ。

そして亀は男よりも大きく、なにより目に付くのは尾が蛇であることだ。その亀と尾の蛇は楽しげに、優しく男の作業を見守っていた。

《そなた、一体だれぞ……? ここは、それにその亀は》


帝が声をかけると亀が彼を見た。

目が合うと亀が目を細め、その瞬間に帝は突風に吹かれその部屋から飛ばされてしまったのだった。


寝具から飛び起きた帝は己の部屋にいることを確認すると乱れている呼吸を整えるように息を吐く。

そして夢の内容を整理した。

見たことのない家、見知らぬ男と傍にいた大きな亀のような生き物。

その生き物は何か作っている男を見守るように傍におり、自分はあの場所から追い出されたのだと理解した。

「はぁ、はぁ……今の夢は一体……あの男は、誰なのだ?」

月明り差す部屋の中で帝は一人言葉を零す。

その言葉は誰にも聞かれず夜の闇に消えていった。