建築を始めると村の者達が色々と生活する上での助言をしてくれ、設計図を修正したり、追加したりしながらも元服の少し前に家は完成した。

その家は村の者達の協力と知恵により、俺が思っていたものよりも素敵な、住み心地の良さそうな家ができたのである。

主な居住区となる大きな本殿は、どこの屋敷かといえるほど立派な玄関だが、足腰の悪いご老人にも優しい低めの段差の階段が隅に設置されている。中は雨が浸水して来ても大丈夫なように床を高くして、居間となる場所には囲炉裏いろりと、少し離れた場所に調理場とかまど、裏口がある。

寝床は木の床だが、いずれ畳を作って置く予定なので少し床が低い。

本殿から外れたところには鍛冶場と俺のこだわりのアトリエがある。ここで色々作る予定だ。

村長の伝手で知り合いの鍛冶職人さんにお願いして刀を打つ場所を見学させてもらった。

しかも、炉を作る際の参考として中を見させてもらっただけでなく、その職人さんから頑張れよといくつか炉の材料ももらうことができたので、太郎とおゆきに協力してもらい完成させた。

ガラス細工も出来るように少し手を加えた、俺の自信作な炉だ。

畑は女性達が整備してくれたらしく、すぐに色々植えられる。というよりすでに植えられていた。

何を植えたかと聞けば、稲と俺が食べられると教えた芋である。

おゆきと太郎が毎年、収穫の時は手伝いに来ると約束してくれた。そのときは俺がとっておきの料理を二人にご馳走すると心に決めている。

こうして俺は家を完成させて、日常の必需品を作ってそろえながらも十三になるまで村で過ごした。


その中で村のみんなが少しでも農業をやりやすいようにと農具を作ったり、肥料の改良にも手を出した。

土が硬くなってきたというので備中ぐわを作って渡せば、田起こししやすいと喜ばれ、どうせならとみんなの分を用意してやると、それを聞いた村長に抱き上げられくるくる回されるくらいに喜ばれた。

備中ぐわで皆に褒められて調子に乗った俺は、脱穀に使ってくれと千歯こきも作ってみると試しに使った女性陣が各段に効率がよくなり家事に手を回せる時間が増えたと喜ばれた。

村長から他の村にも教えていいかと聞かれたので別にいいと作り方も教えてしばらくすると、隣村の村長がお礼に来るくらい使い勝手が良かったらしくて、俺の功績だからとお礼の干し大根や人参をいっぱいくれた。

本当は選別しやすいように唐箕とうみも作りたかったが流石に村の人らが使うには大きいし、作るのは難しいのでやめた。今は手を出す気にはなれなかったのもある。

便利ではあるが流石に大型なんだよなぁ。でもいつかは作る。

肥料は昔ながらの草を焼いて作る灰の肥料に小魚の骨を燃やして砕いていれてみたり、牛の糞を乾燥させたものを入れたりするといいと提案をしたのだ。

本当は人の糞尿がいいのだが、そのことを太郎とおゆきに村人に確認をする前に提案として言ってみれば、おゆきが全力で拒否をしたのでこの提案はやめた。牛の糞はいいのかといえば牛はいいらしい。

太郎曰くもしかしたら自分の糞が使われると思うと恥ずかしいのだろうと言われた。乙女心とやらは複雑である。

で、なんやかんやとしながら村を出て一人で家に住み始めても頻繁に山から下りたり、村長やおゆき達が遊びに来たので寂しくはなかった。


だが最近何故か商人や旅人が村に来はじめたらしく、俺は村の者以外とは関わりたくなかったのであまり村に行かず、山にこもって刀や茶器を作っていた。商人や旅人がいないときはおゆきや太郎が知らせに来てくれるので、その時に山を下りている。

住み始めて分かったが、この山は資源がすごく豊かだった。

砂鉄や鉱石も多く、水は澄んでいる。木々も程よく生い茂るので、動物たちにとっても住み心地がいい。

が、熊や猪の被害がないのは廃村に理由があるらしく、村が焼かれた際の焦げ臭さがまだ近くの木々に移っているせいで、そのにおいが獣を遠ざけているそうだ。

また、この山に隕石が落ちたのも原因らしい。およだの爺さんが幼い頃山に星が落ちたらしいと祖父から聞いたらしく、その衝撃で動物たちが逃げたそうだ。

その落ちた場所を聞いて行ってみると大きなクレーターの中に隕石と思われる大きな石があったので、少し拝借したのは爺さんには内緒にしている。

一つ困ったことと言えば、刀や茶器を作り始めると没頭してしまって話を聞かなくなるので、村の者がよく頭を殴ってくることだ。

なんでも大きい声で呼んでも気づかないので頭を殴る方がすぐ気づくと、太郎とおゆきだけでなく高齢なご老人まで頭を殴る。特に村長の拳が痛くすぐにたんこぶができる。たんこぶが後ろに二つあったときは本当に寝苦しかったものだ。

半年前に刀を集中して作りたいと前もって言っておいたので今は誰も頭を殴らないが、居間におすそ分けの魚が置かれていたりはしていた。

銘切りまで終えたのでそろそろ柄や鞘の準備でもするかと山の中で柄糸の色に良さそうなものを探しており、山奥に足を伸ばす。青もいいが銀も捨てがたい、赤もいいなと頭で色を決めながら歩いていた。

そんな考え事をしながら歩いていたからなのか、俺は足元を全く見ていなかった。

「ぐえ」

「ん?」

よそ見をしていた俺の足元から変な感触と声がした気がする。ゆっくりと歩いていた方を振り向けば……。

「……………」

侍が倒れていた。

「いぃ!? 大丈夫か!?