◇◇◇

パーティも無事に終わり、アーサー様と二人で帰りの馬車へと向かう途中、わたしは思わず校門の前で足を止めた。そんなわたしを見て、アーサー様もすぐに立ち止まる。

「ここで、アーサー様に婚約を申し込んだんですよね」

「あの時はあまりにも全てが俺にとって都合が良すぎて、いよいよ妄想と現実の区別がつかなくなったのかと焦ったよ」

「わたしも、夢や幻かと思いました」

二人で顔を見合わせて笑う。

……あの日、一番最初に彼がこの場所を通ったのは、きっと奇跡以外の何物でもない。

彼と引き合わせてくれた神様に、心から感謝をした。

昔も今も、少しだけ冷たい彼の手のひらをそっと握ると、嬉しそうに彼は微笑んで。つられて笑顔になってしまう。

「あっ、流れ星」

ふと空を見上げると、綺麗な星空が広がっていて。そのまま夜空を眺めていると、きらりと輝く流れ星が見えた。

「願い事、しなくていいの?」

意地悪っぽく、アーサー様が微笑む。

夏期休暇の時に、二人で星空を見た時のことを思い出しているのだろう。「アーサー様もお願い事してください!」なんて慌てて言ったことを思い出し、少しだけ恥ずかしくなる。

隣にいる大好きな彼へと視線を移せば、美しい横顔の奥でまたひとつ、夜空に光が流れていった。

けれど今はもう、必死に願いを唱えることなんてしない。

「わたしの願いは、あの日と変わっていませんから」

「……アリス?」

「星に願わなくとも、叶えてくれるんでしょう?」

そう言って微笑めば、彼は一瞬驚いたように目を見開いて。やがてわたしの大好きな、優しい笑顔を返してくれた。

「ああ、勿論だ」


──そして明日からはまた、新しい日々が始まる。