夢の末路
どうして、クロエ様が此処にいるんだろうか。
男に押さえつけられたまま、わたしはただ呆然と彼女を見つめることしか出来ない。そんなわたしを見て、彼女はさも可笑しそうに口角を上げた。
「どうしてこんな目にあっているのか、と顔に書いてありますわよ。わかりやすいお方ですね」
「…………っ」
「貴女が、邪魔なんです」
クロエ様は美しい声で、はっきりとそう言った。
「アーサー様は貴女を愛していて、この状況でわたくしが彼と婚約する事は不可能だということはわかりました」
でも、と彼女は続ける。
「気づいたんです。貴女さえ居なくなれば、全てが今まで通りになるのではないかと」
そんなことを嬉しそうに話すクロエ様に、背筋がぞくりとした。初めて会った日とはまるで別人のようだった。
……もしわたしが居なくなったとしても、アーサー様は立場上必ず誰かと結婚することになる。
そしてきっと、一番に候補に上がるのは彼女だ。
「もちろん、あなたを傷つけるつもりはありません」
「な、にを」
「少しだけ、隠れて居てもらいたいんです」
──私が、アーサー様と結婚するまで。
そう言うと、彼女は恐ろしいくらいに美しい笑みを浮かべた。まるでかくれんぼうの誘いをするような、そんな言葉の軽さだった。
このままではいけないとわたしは震える手を握りしめ、口を開いた。
「クロエ様、こんなこと、絶対に駄目です」
「……………」
「貴方がこんなことをしては、アーサー様が悲しみます。お願いですから、」
「うるさい!」
突然大声をあげたクロエ様に、びくりと身体が跳ねる。
「アーサー様に愛されているあなたに、何がわかるというんですか」
「クロエ、様……」
「わたくしは、アーサー様の妻になるためだけに生きてきたんです。それしか、ないんです」
「……………っ」
「本当に、アーサー様が、好きな、のに……」