「……そう、ですか」
最優秀賞のトロフィーを抱え、涙ぐみながら微笑んでいるアリスを見つめる。俺の視線は勿論一方通行で、彼女の視線はその婚約者へと向けられていた。逆もまた然りで。幸せそうに見つめ合う二人に吐き気がした。
俺が十年もかけて必死に繋ぎ止めていたアリスは、一瞬にしてアーサー・グリンデルバルドのものになってしまったのだと、思い知らされた。
いつも兄に取られたものは、仕方がないと直ぐに諦められた。それなのに、俺の中にある彼女への思いは、いつまでも消える気配がない。なんて不毛なんだろうか。
──きっと、彼女の世界に俺はもういない。
一緒に過ごした記憶も何かも、このままアリスの中から消えてしまうのだろう。彼女は俺との過去など、忘れてしまいたいに違いない。それでも俺にとっては全てが、かけがえのないものだった。
楽しそうに喋り続ける女の隣で、どうすれば彼女の中から消えずに居られるのかと、そんなことを考え続けていたのだった。