毎日、今日は彼女は来ないだろうかと考えるのが日課になった。
けれど不思議なことに、友人の話はほとんど出てこないことにある日気がついた。こんなにも明るくて可愛い彼女に、友人がいないとはとても思えない。そう思った俺は、直接彼女に問いかけた。
「アリスは、どうしてここに来てくれるの? 僕なんかより、楽しい話もできて一緒に遊べる友達もいるだろう」
「……わたしね、あまり友達がいないんだ。それにね、怖いの。でも、アスランは怖くないんだ。アスランの目も声も、手も優しいのが伝わってきて安心するから」
「アリス……」
「だからアスランと話していると、楽しいよ」
こんなにも太陽のように眩しい彼女を、怯えさせる、悲しませるものは一体何なんだろう。たとえ知ったところで、こんな俺に出来ることなど何もないけれど。
この部屋に来てからというもの、沢山のことを諦めてきた。けれどこの時初めて、無力感や悔しさを覚えた。
そして彼女が遊びに来てくれるようになってから、三ヶ月が経った。彼女はいつも祖母の見舞いのあとに俺の部屋に寄ってくれていて、数日連続で来てくれることもあれば、三日くらい空く日もあった。
けれどある時、二週間経っても、彼女は来なかった。
その間は、生きた心地もしなかった。何か彼女を傷つけることを言ってしまったのだろうか。嫌われるようなことをしてしまったのだろうか。俺と居るのに、飽きたのだろうか。毎日そんな事ばかり考え、眠れない日々が続いた。
そして、二週間半が経った頃。
「こんにちは、アスラン! 遅くなってごめんね」
いつもと変わらない笑顔で、彼女は現れた。急な旅行で遠くへと行っていたのだと言う彼女に、心から安心したのを覚えている。
いつの間にか、俺は彼女に依存していたのだ。
いつも通り、アリスは俺の手を握りながら可愛らしい顔で、声で、外での出来事を話してくれた。そしていつもよりも長い時間居てくれた彼女は、またすぐ来ると言って病室を後にした。
これからもアリスは来てくれる。その安心感から、この日の夜は久しぶりにぐっすり眠れた。
──彼女の祖母が、この日の二週間前に亡くなっていたのを知ったのは、それからしばらくしてからだった。