「なら、私たちが今するべきなのは心構えだよ。頭からの報告を、そんな顔で聞くつもり? 私たちは、特級ギルドアニュラスのメンバーでしょ!?」
腰に手を当てて、偉そうに言うのがポイント。みんなだって、私がこうしていつも通りに振舞っていた方が安心すると思って。
それと、まだ成人前の子どもにこんなこと言われたら、きっと火が付くでしょ? そんな思いが透けて見えるように、私はニッと歯を見せて笑ってやった。
「さすがは俺の娘だな」
「お父さ……頭っ!」
私の言葉を聞いてみんなが顔を見合わせた時、タイミングよくお父さんがやってきた。うっかりお父さんって呼びそうになっちゃったけど、今は頭として扱わないと締まらないと思って慌てて言い直す。
「くっ、お父さんと呼んでもらえないのも辛いな」
「い、今はそんな話している場合じゃないでしょっ」
だけど、お父さんの方がこんな調子だから力が抜けるよぉ。周囲で見ていたギルドのみんなも思わず噴き出して笑っちゃってるし! もーっ、頭なんだからしっかりしてよねー! 締まらないんだからっ。
「いい顔してるな、お前ら。すっかり
でもそれは、お父さんなりの気遣いだったのかもね。程よくみんなの肩の力が抜けているのが見てわかるから。やっぱりお父さんの存在感は違うなぁ。私はまだまだみたい。それでも、少しは力になれていたと思うけどね!
お父さんはフッと笑った後、私が立つテーブルの横に立って表情を引き締めた。
「魔王の暴走が始まる。これまでずっと準備してきたな? 厄災ってのは、ある日突然訪れるもんだ。そして、まだこれから状況が悪化していく恐れがある。各自、役割を全うし、町や人々を守れ! あと、絶対に死ぬなよ!」
おう! という声がギルド中に響き渡った。もう、さっきまでの混乱した雰囲気はない。誰もが戦いに向けて気持ちが切り替わっている。
「ルーン、グート。お前らも持ち場につけ。暴走した魔物たちは子どもだからって
みんながそれぞれ動き出したのを確認した後、お父さんは私とグートに向けてそう言った。そんなの、とっくにわかってる!
「任せてよ! ちゃんと町の人たちを誘導するから!」
「ああ。だからこっちは任せて、父さんはもう行ってくれ」
特級ギルド、アニュラスの頭がいつまでもこんなところにいたらダメだからね。私もグートも、ちゃんとわかってるんだから。
「ああ、お前たち。随分大きくなったなぁ……」
だけど、お父さんの方が離れがたいみたい。私を右腕で、グートを左腕でグイッと引き寄せるとギュウッと力強く抱きしめてきた。ちょ、ちょっとぉ!
「もうっ、しんみりするのはやめてよっ」
「そうだぞっ、もういい加減に離れろって!」
私たちがジタバタ暴れ始めたのを見て豪快に笑ったお父さんは、ようやく手を離して歩き出した。
そして、振り返ることなく去って行く。その後ろ姿はとても頼もしくて、誇らしくなっちゃうな。それと同時に、ほんのちょっぴり心細さも感じたりして。
本当は、ギュッとされて嬉しかった。ちゃんと父親として、私たちのことをすごく心配してくれているのが伝わってさ。泣きそうになったのは内緒。だって、同時に信頼されているのがこれ以上ないほど嬉しいから!
「俺たちには父さんがいるけど、オルトゥスは今、そのトップを失ったばかり、なんだよな」
……そうだったね。魔王とユージンさんは魂が繋がっているから、メグは一気に父親を二人とも
別れを悲しんだりする暇もなく、この状況があるんだ。アニュラスなんかとは比較にならないくらい混乱していたりして……。
さっき、私はお父さんに抱き締められてすごくホッとした。じゃあメグは? たくさんの味方がいてくれるし、メグにはギルさんという番がいるからきっと大丈夫だとは思うけど。それでも、喪った悲しさに浸ることも出来ないなんて辛すぎるよ。……でも。
「……ううん。オルトゥスは大丈夫だと思う。事前に心構えくらいしているんじゃないかな。私たち以上に、こうなることが予想出来ていただろうし」
心配になったけど、すぐにそう思い直した。だって、あのギルドって同じ特級ギルドとして悔しくなるくらいすっごくヤバい人が多いんだもん! きっとこのピンチだって切り抜ける手を打っていたはず。心配するより、お互いに信じ合うのが今は大事だよね。うん、きっとそう!
「そっか。そうだよな。特級ギルド、ステルラや上級ギルドのシュトルもきっと迅速に対応してる」
ステルラにいるマイケは、もう成人だったっけ。泣き虫だったピーアも頑張ってるかな。シュトルにいるハイデマリーは……意外と
闘技大会の時に出会った年の近いお友達。あれからたまーにしか会ってないけど、今でも手紙でやり取りしている大切なお友達だ。同年代の子たちも頑張っているって思うと、不思議と力が湧くよね。負けてられないって。
それは、メグも同じ。でも、あの子は本当に色んなものを背負って生きているから……時々、すごく遠い存在のように思えちゃう。でも、忘れちゃいけないって思うんだ。
色んなものを背負っているだけで、本当は普通の女の子なんだってこと。きっと誰よりもこの状況を止めたいって思っているよね。あんなに優しいんだもん。
これで誰かが傷ついたりしたら、メグが正気に戻った時すっごく苦しむ。そんな思い、絶対にさせたくない。ううん、させない。大事な友達なんだから!
「確かに私たちは商業ギルドで、こういったことはあまり得意じゃないけど……後れを取るわけにはいかないよね!」
「ああ、そうだな。よし……行くぞ!」
それこそ、特級ギルドの名が