閉店エピローグ



〝平原〟。〝先輩〟達のデモン・イレブンは、あの〝最終試練〟の後しようめつし──

 ウチの店に、へいおんもどった。

「よう、とおる! バームクーヘン買いに来たぜ!」

「何をいっている!? 今日はぜいたくデモンチーズケーキ買う約束だっただろう!?

 勇者とおうがいつも通り来店し。

「くっ……このアフタヌーンという雑誌の重さは一体!? ワシのうでがもげそうじゃ……」

「またきたえなおすしかないわね……一から」

 雑誌コーナー前で立ち読みしながら、【魔道士】ルシファーと【そうりよ】ルミナリエがよくわからない決意を固め。

「あいつら鍛えるっていってるよ……どうする!?

「魔王様と勇者をうまくいかせるのと、あいつらにおくれをとるのはまた別の話だぞ」

「仕方ありません。私の権限で第二形態の限定を解除します。その上で……どちらが長時間立ち読みできるか。本当の意味で決着をつけましょう」

 そんな勇者一行をこっそりたなかげから見守りながら、魔王直属【四天王】、〝らいてい〟レッセに、〝りんわく武人〟ベリアル、何故かまた〝モノクルが割れてる〟ギルガイン、そしてゆいいつの〝紅一点〟、絶対喋らない女ロイズがこれまた決意を固め。

「父ちゃん、この電子マネーのカードに三十万Gチャージしてくれない? なんか最近いちいちチャージするのめんどうで」

「仕方ないのう……まぁグレンがそういうのならぁ……」

 グレン&王のめいかいコンビが相変わらずくるった親バカりを見せ付け。

はん殿どの。この度私、聖法騎士団ホワイトリツターけて出版社を立ち上げることにしました。主に成人向けの。そこで反馬殿、かべ殿どのからうちの社員に、エロ本の良いところを一人二時間ほど熱くレクチャーして欲しいのですが」

 元・聖法騎士団ホワイトリツター副団長、ヴァリア・ノルンが対応に困るオファーをけてきて。

しらゆきさん、今日の夜空いてます? 万引きしにいっていいですか?」

 新生ピンクスパイダー頭領、フジコが、気楽に万引きのしんをしてきてる。

「あーあ……」

 それを見て、オレ達は苦笑するより他なかった。

「これ、なんか、【SS】キープ無理そうだな……」

「そーね」

 となりたんそく交じりに苦笑しているのは九条。

「にゃははっ。〝場〟として活用されすぎてるだけで。売上げ【D】ランクくらいしか稼げてねーぜー」

 心底楽しそうにいう勇気。

「ま、いいんじゃないですか」

 スマホいじりながら適当にいうのは白雪。

「さしあたり。私達にはめずらしく、特に大きなミッションかかえてないんだし」

 そんな白雪の言葉に、オレ達は顔を見合わせる。

 そうなんだよな。

 たぶん、オレ達は。今、この世界に来て以降、一番なぎの時間を過ごしている。

〝都合六回転移させられて、六回目の転移で、最初に転移した場所に戻って、そこでその時置かれてた最終試練を乗り越えたら、元の世界に帰った〟

 すっかり抜け落ちていたけど……。

 あの、最終試練の後、オレ達に、その〝せんぱい〟のぶんせきの最後の部分。

〝元の世界に帰った〟。

 その、〝先輩〟達と同じけいむ機会が、あの後、あたえられていた。

 あの後──店に、この試練の一番の黒幕となる存在が来た。

 それは、〝先輩〟も知らなかったらしいが……オレ達は知っている存在だった。

 神鳥。つうしよう──ニワトリ。

 七部族そうどうの時、最後にかぎにぎったあのトリが、この〝試練〟の責任者、らしかった。

 そして、神鳥はいってくれた。

 元の世界に帰るか? と。

 神鳥いわく──最終試練をとつしたなら、いつでも、元の世界に店ごと送り返してもらう権利が発生するらしい。

 けど、その提案を受けて──オレ達五人の反応は、のきなみ、同じものだった。

「うーん」

「まぁ……ねぇ?」

「にゃはは。そだなー」

「うーん塔子は……」

「俺はどっちでもいいぜ?」

 全員……意見をグダグダと先延ばしする、という結論。

 いや、なんなんだろ……。

 ひどい目にあってばっかりだし。そろそろ日本にも帰りたいんだけど。

 なんでだろ。なんでか……いまだに……決心がつかず。

 神鳥をけむにまいて、この世界にいるんだよな。

 まぁ、日本の学校やら親は、〝先輩〟と〝AMエリアマネージヤー〟が〝かんぺき〟な方法でなんとかしてくれてるっていうし(方法は知らないけど)。

 もうちょいこの世界でゆっくりしていきたいとか無意識に思ってんのかな。

 まぁそんなわけで。オレ達は、毎度おみの災難を背負うこともなく。

〝草原〟で、活気はあるけどゆったりとした時間を過ごしていたのである。

 その、瞬間までは。


「オイ! お前ら!」

 その時、事務所から、店長代理が飛び出してきた。

「やべぇぞ……!」

 あせってる……んだけど、笑みをこらえきれない、みたいな、不思議な表情で店長代理。

「今AMから電話あってよ……! デモン・イレブン、日本で、買収されそうなんだと」

「「「「はぁ!?」」」」

 全員ぎもを抜かれた。買収ぅぅぅ!?

「大手コンビニ、エンジェル・セブンによ。今、日本のネットじゃあくと天使の合体でなんか地球やべぇんじゃねぇかって……」

「いやそんなB級都市伝説より、ウチの店はどうなんのよ!?

 ぼうぜんと九条。

「せっかく守ったのに……またつぶれる危機だっていうの!?

「そこなんだがな」

 店長代理が、なんかもったいぶった口調でいった。

「AM曰く。エンジェルのボスから、条件が出たらしいぜ。

 次半年間の、デモン・イレブンチェーンの売上げ合計が、エンジェル・セブンを上回れば、デモンイレブンチェーンは存続。吸収がつぺいって形じゃなく、共存って形になる。

 けど、それ達成できなかった場合、デモンは全部解体。スタッフも全員かいで、エンジェル主導でやっていくんだと。

 で、それを受けて、本部からAMに指令がいった。

 デモン・イレブン異世界店。半年以内に、俺ら一店でエンジェル・セブン全てんを上回る売上げを上げろってな」

「「「「は……はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」」」」

 店内にこだまするぜつきよう! わからないわからない意味がわからない!

「なによそれ!」

「まぁ、デモンとエンジェルじゃ規模がちがうからな。他の店がいくらがんばったって焼け石に水。勝つにはウチだけが唯一の希望なんだってよ」

「一店舗に全チェーンの命運たくすってどんな会社よデモン・イレブン!」

「何じゃそりゃ……!?

 絶句するオレ達。

「あーあ……」

 そして立ち込める、しんくさいムード。

「せっかく凪かと思ったのに……また〝試練〟の始まりか……」

「どんだけ常に〝試練〟降りかかってくんのよこの店!? しかも降りかかる試練、いちいち前回よりスケールアップしてくるし!」

「にゃは。こりゃあ過去最大級に大変そだなー」

「なんか、もう、考えただけでくたびれてきますね……」

 口々にをいうオレ達。

 だったが、オレはふと気づく。

(あれ?)

 それは、みんなの表情。

(なんか、みんな……文句いいつつ、うれしそう?)

 店長代理をはじめ。九条も、勇気も白雪も、何故か──文句いいつつ、若干嬉しそうな気配もある。

(あれ……?)

 そして、気付く。

(オレも……!?

 窓ガラスに映った自分の顔で気付いた。

 オレの口角も──ニッと上がっている。

(そっか……)

 そこで、オレは、理解する。神鳥に、返事を保留してる理由。

 なんてことはない。

 なんだかんだ、オレ達、この世界で〝トラブル〟に出くわすの好きなんだ。

 最終試練終わったけど、なんとなく、まだ物足りない。もうちょい、みんなで、なんかやりたい。

 だから、返事、保留して。

 だから、こんな無理難題ふっかけられたのに──みんな、ちょっと嬉しそうなのだ。

「何笑ってんのよ反馬!?

 そんなオレを九条がはたいてくる。少し嬉しそうに。

「事態わかってんの!? とてつもなくピンチなのよ!?

「わかってるって……。んじゃ、なんかみんなで作戦考えるか! お客さんも巻き込んで」


 午後一時過ぎ。

 つうの高校生は、今、何をしているだろう。

 授業を受けている。

 机でてる。

 隣の席のやつしやべってる。

 どれもきっと、何気ないけどかけがえのないワンシーン。

 けどオレ達も、それに負けないくらい、かけがえのないしゆんかんを過ごしてる。

 オレは今、働いている。


 ここは異世界コンビニデモン・イレブン。

 オレはアルバイトだ。いつかはオレもここを卒業するのかもしれない。

 だけどここで過ごした時間のことはきっと一生忘れない。

 そんな何気ないけどかけがえのない時間を。

 オレは今日も。オレ達は今日も。

 デモン・イレブンで働いて、つむいでいく──


「いらっしゃいませ! ようこそデモン・イレブンへ!」


 今日も元気に、オレ達のアルバイトが幕を開けた!



【END】