けど、コンビニって、それだけじゃないって……オレ達、この前気づいたじゃん」
「あ……!」
九条が、ちょっと
「
「そう」
オレは
オレ達が子供の
商品を買わなくてもいい。そこで過ごす時間自体が楽しい。
場として楽しい。
くそ
それが、オレ達が目指す、いや無意識に目指していた、デモン・イレブン。
それにオレ達は気づいた。
「いや、それどころか。オレ達、ほんとは最初から気づいてたのかも」
オレはいう。
「店内で弁当が足らず戦争状態になった……って問題起こったら。
異世界人の争いをとめたりするんじゃなく。〝身体能力を上げてなんとか品出しするように努力〟する、って
立ち読み客が
ウチは、ずっと、結局、お客さんを受け入れる接客してきてた。
そういうことが大事だって。ずっと前から気付いてたのかも」
「で、でもさ」
不思議そうにいう九条。
「じゃあ、何? じゃあウチに、お客さんは……サービスの質とかじゃなく。コンビニとしての便利さじゃなく。そういう〝場〟としての楽しさを、求めて来てたってこと?」
「うん……。少なくとも、前から来てた常連さんはそうだと思うよ。だから、デインさん達は、〝先輩〟の店をつまらないっていって。ルミナリエさんとかは……急に
オレはそんな推測を口にする。
「三週間前、ウチは、急になくなった。となると、次に行く店は、あの〝先輩〟のデモン・イレブンしかない」
「うん」
「けど、あの店はウチと似てるようで全く違う。だから、通えば通うほど、なんだか、知らず知らず元気がなくなる……自分達が求めていたものがないから……」
「あ、なるほど……」
「そんな生活が続いて、そんな中、ウチが
ウチが戻ってきても、特に反応しなかったくらいだし……!」
「そっか……だから、こうやって、分かりやすく、元のデモン・イレブンが戻ってきたことをアピールして……ウチのよさ、改めてみてもらって……
お客さん、引き戻そうってわけね」
「そう」
オレは頷いた。
「だからまだやれるよ……オレ達!」
前を
「だって、お客さん、あんな楽しそうじゃん。オレ達が、ここから本当の実力出したら! ここからきっと、もっといい勝負になる」
店内を見ながらオレはいう。
「そうね……!」
九条は頷いた。
「なんか……ありがと」
そして、変に素直にそんなことをいってきた。
「は…………?」
「? なによ」
「いやごめんごめん。聞き
「バッ……なにが聞き間違いよ! 現実よ! 確かに私のこの口がいったの! あ・り・が・と!」
ヤケクソのようにいい放ってくる九条。
「え…………ええぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!? 何いってんのお前!?」
オレはやっぱり耳を疑う。
「礼? 九条が? オレに? お前、なんか体調不良かなんか……」
「な・ん・で・よ!?」
「だって、お前がオレに礼いったことなんて、今までの人生でなかったじゃん!? オレがなんかお前のこと手伝っても、〝当たり前でしょ〟〝別に感謝なんかしないんだからね〟〝まだやってんの? もうトロイわねぇ〟くらいのもんで。
「何よ!? たまには勇気出して素直になったらいけないの!?
正直、さっきまで私、半分くらい
ったく……こんな素直な私、もうあと三年半くらいは出さないつもりなんだから……ちゃんとありがたく記憶にとどめておきなさいよね!?」
その一言に、オレは、
「……………………」
……なんか照れた。
あれ? なんでオレ、照れてんだろ。
九条にありがとうっていわれた
「おい、透、何やってんだ!?」
その時だった。いきなり後ろから店長代理が走ってきてオレを
「ぐっ、店長代理?」
「レジやべーんだよ早くしろ! 何こんなとこでくっちゃべって──」
「真壁サン……!」
しかしその時だった。そんな店長代理の頭を
「にゃは。アンタ……何やってんだ?」
「え? いや、店長代理として、バイトに仕事しろって……」
「そうじゃなくて。今、ここじゃ、百年かかっても起こりそうになかった
「ぐわぁぁあぁぁ!?」
ギリギリギリギリ、ダンジョン
シン──。
残されたのは、オレと九条。
「な、なんかよくわかんないけど。仕事しよっか?」
少しだけ赤い顔で、九条が
「そ、そうだな。そうしよう」
オレもたぶん少しだけ赤い顔で、その意見に同調した。
いろいろよくわかんないけど、とにかく、仕事しよう。
それがコンビニバイトの務めだもんな。
自分達がこの異世界でやってきた事を信じて、出し切る!
とにかくそれだけを念頭に置いて、そこからオレ達はデモン・イレブンで力を振りしぼった!
例えば、
「にゃはは、おーい、配達行ってきたぜー! バベルの搭とアトランティスと裏ダンジョンの九九階にー!」
たった今帰ってきた勇気が主にやってる〝異世界版デモン・デリバリー〟を今まで以上に精力的にアピールした。
『えーみなさんお待たせしました、今日は昨日に引き続き、俺とおでんの出会いを。あれは俺が産湯に
店長代理が主にやってる〝異世界版デモン・ウェーブ〟を改めて始めた(つか、なんか今日のラジオの内容何気に聞き捨てならないな! なんか
さらに、
「え? あぁ、当店は
たぶん地球、いや異世界
そして、
「さぁ行くぞ、九条! オレ達も弁当の
「なりたくないわよ女子としてそんな
オレ達も、お客さんを受け入れる品出し──死線をかいくぐって商品を補充していく曲芸品出しに磨きをかけた。
この異世界で身につけた、お客さんが喜んでたデモン・イレブンのサービスを、とにかく出し
すると、勝負は、思いがけない展開を見せる。
〝
うちのデモン・イレブンの売上げが、少しずつ、少しずつ、
※
「いけるかもしれません」
そんな中、勝負開始から十日目。
白雪が、働きながら、合間をみての立ちミーティングで、ある試算を出した。
「塔子としたことが、失念してました。
この勝負は、客の
つまり、片方の店が
私達の店が売上げを伸ばせば伸ばすほど、〝
「ん?」
「ここまで十日間の売上げ合計は──
〝
〝
試算を発表する白雪。
「勢いは逆転しています。このペースで行けば……あと四日、上回る可能性がちょっとあります」
「おお……!?」
その報告にオレ達は顔を見合わせる。
「ただ……どうしても、あと少し……あと少し、届かない計算になります」
厳しい顔でいう白雪。
「あと少し……どれくらい?」
「数字でいったら、一日一〇〇万G分くらい。それくらい、あとこっちに
「一日一〇〇万!?」
オレ達は絶句する。いやいや、ここまで追い上げてるだけでもとてつもなく
それ、ちょっとって規模なんだろうか……?
※
そして──その白雪の予想は、さすがというかなんというか、
勝負開始から一二日目。
オレ達の売上げは、かなり〝
けど、どうしても、最後のあと一押しが足りない。
あれから、例のダンジョンマスターだとか、
それでも……その分を足しても、どうしても足りない。
そして無情にも一二日目、一三日目も
どうしても越えられない差を残して。
勝負は最終日──一四日目に
※
「いらっしゃいませ、いらっしゃいませ!」
オレ達はラストスパート──死力を
時計は、もう、昼の一二時を過ぎようとしている。
「……ダメですね」
そんな中、レジで計算していた白雪が、オレに告げた。
「塔子の計算では、お昼ちょうどがデッドラインです」
と、白雪。
「それすぎたら、たとえ……たとえ、
「一二時……!」
オレは
五、四、三、……
オレ達は、奇跡を信じる……が。
二、一、〇……。
無情にも。ほんとうに無情にも。
白雪が決めたデッドラインを、時計の秒針と分針が通過した……一二時である。
(ま……負けた……!)
まだ、勝負は決まったわけじゃない。このデッドラインは、天才とはいえ、白雪の出した〝試算〟に過ぎない。
けど……頭ではそうわかっていても。心がなかなか、ついてこない。
「……ごめん。オレのせいだ」
だから……思わず、オレはいってしまった。
「最初の一週間の
そう、最初の
「なんか最後まで、バイトリーダーとして
ガックリ
「バーカッ! 何いってんのよ!」
九条が思いっきり頭をひっぱたきながらいってきた。
「確かに出遅れたけどさ。けどその後、こんなに追い上げられてんの、あんたがウチの店の
「九条……」
「そうだぜー」
続いて、両手でオレの
「最初出遅れたのは別に透だけのせいじゃねー。みんな、〝先輩〟にアテられて、ちっと無理しちまってたぜー。私もマイも含めて。だから透にゃ感謝してるぜー」
満面の笑みでいってくる勇気。
「勇気……」
「だからさ。最後まで、
「そーだぜ透。もうここまで来たら、勝ち負けはいいじゃねーか。一人でも多くの人に、うちの店の
「そう……だな」
オレは、
ようし……そうだ!
たとえ勝負には勝てなくても……これだけのお客さんが店に来てくれてるんだ。
最後まで、全力を、
「よーし!」
最後にオレは力を振りしぼる。
「ウチの店のラスト一二時間だ。
最後のエネルギーを使いきろうと腕まくりするオレ。だったが……その時だった。
「お、おい!」
入り口のほうから声。
「透! 九条! 野宮! ちょっと来てみろ!」
店長代理の声だった。
「へ?」
「なによ?」
「なんかあったんかー?」
不思議に思って店頭に向かうオレ達。
「え!?」
そしてオレと九条と勇気は店頭に出てすぐに
そこには、オレ達の予想もしなかったような光景が広がっていた──!
※
そこに立っていたのは──臓物と目玉のない犬に、ゆりかごを
世界樹の
「え……」
「おお、ニイちゃん、なんか売り上げ
臓物のない犬が、オレにいう。
「仕方ないですねぇ。ヒマなんで、カレシと手伝いに来ましたよ。まだ私の
口を開いたのは元・バイトのユグドラだ。
「こっちも同じくだ。最近国も落ち着いてきたんでな」
「兄貴と
サムソンさんとオルバさん。
「すいません、旧魔王城のトイレ直ったんですけど、やはりこちらのトイレの座り心地が忘れられなくて……! あと
トイレ貸してもらってもいいですか?」
旧魔王城の魔族達もいってくる……!
「えええええ!?」
まさかの面々の来店に──オレ達は声がかれそうなくらい
な、何これ!?
なんでこの人ら──ここにいるの!?
「な、なんで!? てか……どうやってこの店まで来たんですか!?」
この世界の
それに、なんかうちがピンチだってのを知ってる風だけど、なんでそれを……!?
「売上げの件は、新聞に
教えてくれるのは、
マジか……どっから
ほんと、この世界の新聞、意外にうちのことよく載せてくれるなー。
「来た方法は簡単ですよ」
いったのは世界樹の精霊──ユグドラ。
「ああ。一回行ったことある場所に転移する
「つまり、世界中のどこにいても、仲間のピンチには、
続いて
「あんた
そして九条はいうのだった。
「へ?」
「まさに、魔王城であんたいってたじゃん、
〝お客さんに対する営業って、すぐ効果出る、劇薬的な営業も重要だけど。
たぶん、商売って、それだけじゃダメ。
お客さんが喜ぶのは何か……?
売上げ度外視して、それだけを考えて、行動することも大事〟って。
そしたら、それがちゃんといつか実を結ぶって。
ほんとにそうだったのよ……!」
目を少し赤くしながら九条がいう。
「あんたのそういう姿勢もあって。あんたのバイトリーダーとしての方針が……最後にみんなをちゃんと呼んだのよ!」
「マジか……!」
オレは、なんだか泣きそうになった。
ていうか……ちょっと泣いた。
けど、泣いてる場合じゃない。
まだ、ぜんぜん勝ったわけじゃない。勝負はここからなんだ。
奇跡の