ブチギレながら九条。

「こっちはもう、ライバル店に五百倍近く差ぁつけられて絶体絶命虫の息なのよ!?

「へ? いや、俺達は、この世界をほろぼす最悪の敵、堕天古代竜オメガデイクスが復活したから、マオと二人がかりで三週間戦い続けてやっと倒してきてその帰り──」

「言い訳するんじゃないわよ! 本気でウチ来たかったら、そんなもん二、三秒で倒してウチに来れるハズでしょ!」

「無茶いうな! 世界さいきようの敵だぞ!? 何気に世界滅びかけてたんだぞ!?

「今日無茶苦茶だぞマイ!?

 ギャーギャーもめる魔王、勇者、麻衣。

「にゃはっ。なーんか、ちょっと、空気明るくなったか?」

 そんな光景を見ながら笑顔でいってきたのは、勇気。

「そ、そうだな……」

 九条も、怒りやら喜びやらでなんか逆ギレ気味にとはいえよみがえったし。

 店長代理や白雪も、毒気がかれたように、バカバカしくなったように、なんかたんそくしながらその光景を見守っていた。

 店内から、さっきの辛気臭い空気が抜けていく。

 いやー、ほんと、ナイスタイミング。

 勇気とか、せんとう力とか、魔力とかじゃなく。

 そういう、いざという時、何かが変わろうとする大事なイベントには絶対間に合って、えいきようあたえるヒキの強さが。

 ほんと、この二人の、勇者と魔王たる所以ゆえんなんだろうな……。


    ※


「ハァァァ!?

 と、いうわけで。せっかく店に来てくれたので。もうこの際ねこの手も借りたい。

 なのでオレ達は、常連代表、デインとベアトリーチェも交え、もう一度。このじようきようをなんとかする方法はないか。

 別の角度からのとつこうはないか。七人で、最後に会議をすることにした。

 たぶん、ここで何か活路を見出さないと、オレ達はギブアップもやむなしなくらい追いつめられている。

 オレも脳みそフル回転で参加していくぞ!

「あと一週間以内に売上げ五〇〇倍の差を逆転しなきゃなんねぇ!?

「しかも同時にその本部評価【S】ランクとやらも達成しなくてはダメ!?

 事情を聞いたデインとベアトリーチェは驚愕していた。

「そ、そうなんです。何かいいみようあんないですかね?」

 お客さんに聞くのはどうかと思いつつ期待を込めてオレは聞くが、

「あー……そりゃ無理だわ、うん」

「残念だったな……デモン・イレブン。今まで楽しかったぞ」

 あまりに絶望的すぎる状況に……あっさりいやになったらしい。

 二人はぽいっとさじを投げて会議からだつしゆつしようとした。

「待ちなさいよ!」

 そんな二人の耳を引っ張って会議に引きもどすのは九条。あの二人相手にすごい勇気!

「何あっさりあきらめてんのよ!? 諦めたらそこで試合しゆうりようでしょ!?

 九条が二人に詰め寄る。

ててて! わ、分かった、考えるって!」

 九条からげながら、デイン。

「けど、実際問題、けっこうキツくねぇか?」

 たんのない意見をいってくるデイン。

「能力もけたちがいで。色んな条件も向こうのほうが上なんだろ? 立地とか」

「そうですね」

「しかも、こっちは二週間不在だったブランクもある……不利な条件がそろい過ぎているな」

 な顔でいう、魔王。やっと本気で力貸してくれる気になったか……。

「あの、もちろん、別に起死回生のアイデアそのものを出さなくてもいいんです」

 オレは二人にいう。

「何か、きっかけになるようなことでも。オレ達の話聞いて、何か、何でも、思いかぶことはありませんか?」

「そりゃ……」

 勇者はいつしゆん考え。

 そして、いった。

「まぁ……つまんなそうだな……とは思うな」

 かざのない言葉で、勇者は、率直にいってくる。

「へ? つまんなそう?」

 何がいいたいのか、かくの部分がとらえきれないオレ達。が。

「ほう……ぐうだな」

 まさかの──魔王も同意見だった。

「私も同じ感想だ。よくはわからないが。そのライバルのデモン・イレブン? まだ行ってないのでなんともいえないが……客としていくには。なんだかつまらなそう、だとは思うな」

「つまらなそう……!」

 ビックリしながら、オレ。

「なによそれ……?」

 九条がげんな表情でいっているが、

「ちょっと──待って」

 オレはそんな九条を制し、二人にもっとにじり寄った。

「それ。もうちょっとくわしく聞かせてくれませんか?」

 何でか、はわからない。

 けど。なんだか、とても重要な、別の角度からの情報の入り口まで来てる──そんな予感がして、オレは二人に聞いた。

「なんでそう思ったんです?」

「んー……」

 二人は、顔を見合わせ、

「あぁ、そっか。まずは……その〝カゴ〟だな」

 勇者が思い当たったようにいった。

「〝カゴ〟?」

「ああ。なんだっけ? その店、店入ったら、問答無用で自分が欲しいと思ってる商品まったカゴわたされるんだろ? 俺だったら、んな味気ねぇのゴメンだな」

「私も、同じだ」

 おうは頷いた。

「そんなんじゃ、四天王に誕生日会を欠席された時。どうやってどくに商品だなの前で深夜のフルコースを選べばいいんだ?

 そういう過程の時間がなく、ただただ必要な商品を渡されるだけじゃ、なんだかただ必要な物資を調達しにいってるだけみたいだし……生活にうるおいがなくなって、とかなくなりそうじゃないか」

 さらに魔王は苦笑して何気なくそういうが……

「あ……………………

 その……しゆんかんだった。

 その瞬間……オレの中で、いろんなことがつながった。

 元気のないレッセとルミナリエ。

せんぱい〟のかんぺきなデモン・イレブン。

 そして──

 その完璧なデモン・イレブンの、弱点。

(これだ──)

 繫がった真相に。

 オレは、ある意味ではがくぜんとなった。

(なんてこった──って事は──オレはちがってたんだ……!)

 そうだ……オレは鹿だ。大馬鹿ろうだ。

 魔王城で、九条と話した時、一度は気づきかけてたのに

〝先輩〟のプレッシャーからか、全然取るべき戦法を見誤っていた。

「? ちょっと、どうしたのよ、反馬」

 そんな愕然となるオレを見て、怪訝にいう九条。

「思いついたんだ」

 そんな九条に、オレはいうのだった。

 向こうのデモン・イレブンが〝完璧〟なら。

 こっちはそれ以外の特性で戦わなくちゃいけない。

「起死回生の、先輩達をえるための──一発逆転の、そんな作戦」

「ハァ!?

 こだまする九条の声。

 そして、オレは勇者と魔王にいう。

「デインさん。ベアトリーチェさん。一生のお願いです。どうか、レッセさんやルミナリエさん……いや、他にもいる。なんか最近覇気がなくなっちゃってるこの辺のお客さんいたら、ウチの店宣伝してもらっていいですか?」

「は!?

「レッセにルミナリエ!? どういうことだ!?

 こんわくする勇者と魔王。

 ここから。

 ここからだった。

 〝狭間〟デモン・イレブンのはんげきが始まった!


    ※


 翌朝。

 八時一分。

「よし……準備はいいな、九条」

 入り口前。ノボリや張り紙を大量に用意し、入念にくつしん運動しながらオレはとなりの九条にいう。

「マジで……!?

 しかし隣の九条はまだ心の準備ができたふんではなかった。

 まぁ、でも、確かにそれは無理もないのかもしれない。

 なら、オレ達が始めようとしている呼び込みは、こんな内容の呼び込みだったから。

「いらっしゃいませいらっしゃいませ! 欲しい商品は全部自分で選ぶ! なんだったら他のお客さんと取り合いになる! 楽しい時を過ごすお店、デモン・イレブンはいかがですか~!?

「い、いらっしゃいませ……」

 隣で九条もボソボソいっているが、

「声が小さい! 何ずかしがってんだよ!」

「恥ずかしいに決まってんでしょ!?

 列火のごとく言い返してきた。

「なんなのよ、このうたもん! 欲しい商品は全部自分で選ぶって、当たり前でしょ!?

〝欲しい商品は全部自分で選べる店、デモン・イレブン〟。その手書きポスターを見ながら九条はいった。

「しかも、なんなのよ、この注意書きは!」

 九条は別のポスターをバンッ、とたたきながらえる。

 そこにはこう書かれている。

 当店は商品の在庫じようきようが発注者が未熟な為非常に不安定です。

 なので商品そうだつによるとうが多数起こります。

 当店はそれを許可しております。ごりようしよう下さい。

「どこの世界に客同士の私闘許可するコンビニがあるのよ!? こんな謳い文句で客が来るワケ──」

「〝私闘の許可〟? ──これだよ」

 その時だった。

「僕達が求めてたのは──」

「これだったんだ」

 オレ達の前方から、複数の声が聞こえてきた。

…………え?」


「ハッハー! 何やってるのよレッセ! あなたしばらくやりあわないうちに、ずいぶん動きがにぶってるんじゃない!?

「調子に乗るなよルミナリエ! いいからそのコロコロ渡せよ!」

「いやよ! これには私が絶対知りたいゲームのシリアルコードもってるんだから! 来るなら力ずくで来れば?」

「望むところだ──〝真の終の雷グラン・ゲイボルク〟!」

「〝なんかとにかく敵をホーリー八つ裂きにする呪文ライト!〟」

 カッ──!

 店内でぶつかるあつとうてきな光と光。

 その力をぶつけているのが、他ならぬ、最近までうちの店に興味を示していなかった、覇気を失った二人──そうりよルミナリエと、四天王〝らいてい〟レッセである。

「えぇぇぇぇ……!?

 そんな光景を見ながら愕然とするのは九条。

 ちなみに、現在、店内では他にも、

「くそ……やはりお前と手を組むなどといったのが間違いだったようだなリオン……! お前の和風おにぎりへのべつはもう俺にはえられん!」

「! 馬鹿な……僕はただ、おかかや梅より、ツナマヨやソーセージ巻きのほうが隊の志気が上がると、」

「お前のそういう貴族的な物言いがいちいち俺をやみへいざなうことが何故わからん……けんけリオン! 梅おにぎりのきようを見せてやる!」

「理想ばかりで世の中は変えられない……! ツナマヨの売上げはいつだって一位だ!」

「お前みたいなやつがいるからぁぁぁぁぁ!

 ぶつかる剣と剣。

 いや……またやってんのかい!?

 和解したんじゃなかったの? と、とにかくぶつかる若き革命戦線の二人。

「くそ……あれほどじゆんたくにあったうぉーいお茶がこれだけしかなくなるとは……! 貴様の差し金かインダストリア!」

「その手にはのらんぞウェストニアの……! きような戦法は貴様のではないか!」

「全軍とつげき!」

「こちらもだ! 一兵たりともお茶を買わせるな!」

 王と王と、兵と兵。

「てめぇ! 何やってくれてんだ〝双剣〟の!」

「それはこっちの台詞せりふだ〝十勇者〟!」

「その〝青じそドレッシングのさっぱりサラダパスタ〟は──」

「絶対お前だけにはゆずらない!」

 そして毎度おみの、ワイルドなふうぼうのオッサンと、がしらの将軍も争っている。

「これでよかったか? トール」

 そんな光景を前にいっているのは、とりあえずこのだいいちじんのお客さんを連れてきてくれた魔王と勇者。

「あ、はい、ありがとうございます。また同じような人いたら声かけてあげて欲しいですけど……とりあえず、これで。二人も買い物楽しんでください」

「うーい」

 二人は店頭に消えていった。

「いやいやいやいや……」

 混乱しているのは九条である。

「なんで? なんでいきなり、こいつら、店での私闘ありになった瞬間。

 こんな元気になってんのよ!?

「たぶんこれだったんだよ」

 オレは、九条にいう。

「これって……何よ」

「ウチに、お客さんが求めたことって」

 この前、デインとベアトリーチェの話を聞いた時。

 改めて、気づいた。

 最強に便利な全盛期の〝せんぱい〟の店。

 けど、一つ疑問がある。

 みんながみんな。それこそ、異世界中の人全員が。

 その〝先輩〟の店を、理想のコンビニとするだろうか?

 だとしたら──何故レッセとルミナリエに元気がなかったのか。

「確かに、便利なのも重要。速度も大事だ。