「いらっしゃいませいらっしゃいませ!」
今日も今日とて、〝戦場〟で営業を続けるデモン・イレブン。
〝戦場〟に来てから、一週間が経っていた。
当初はおでんしか売れなかったこの〝戦場店〟だが、努力の
「よし、今度こそこの場所で──」
期待に目を燃やし、決意を固めかけるオレ──だったが、そうは問屋がおろさない。
ドンッ!!
四回目の
※
「ウソでしょ……!?」
「えええええええええええええ!?」
爆発直後、頭を
「また〝ドンッ!〟!? これ、まだ続くの!?」
「さすがに
爆発が終わり、
窓の外には、赤い
灯りがない
そんなものが見える、
「もういいわよ……どこよ……今度は、どこよ、ここは……!?」
なんか
「あり?」
そこで、気づいたのは
「ここ、なんか見たことあるぜ? もしかしてここ……魔王城なんじゃねーの?」
そしてさらりといってくる、勇気。
「はあ!?」
「魔王城!?」
「うん。あたし、何回かここデリバリーで来てるし、見たことあんぜ? それに、ほれ……みろよ、広間の入り口の向こう。
勇気が指したほうを見ると……
そこを、
魔族。魔族が、
「魔族……」
「って事は……!? やっぱここ、魔王城なのか?」
「けど……だとしたら、何か様子変じゃない?」
その魔族達のほうを見ながらいったのは九条。
「なんか魔族達に
「にゃはっ。じゃあさ、あたし、ちっとひとっ走りいって事情聞いてくるぜー」
そんな中、笑顔でいったのは勇気。
「え!?」
「いや。さっきもいったけど、あたしこの辺、配達で何回か来てるし、顔なじみも何人かいるんだぜー。ちょっと待ってろ、ジョウホウシュウシュウしてくっから!」
いうが早いか、店を飛び出していってしまう勇気。
す、すげぇ。オレはなんだかんだこの辺は来たことなかったんだけど。確かに勇気は魔王城デリバリー行ってたし、顔利くのか?
そのまま勇気は、本当に、廊下で体長十メートルくらいある、三つ目の石像を
二人は最後はお
「行ってきたぜー」
ウィン、自働ドアを開き、店内に
「お、おお。まじで
オレは確認するが、
「んにゃ? いや知り合いかと思いきや、他人の空似だったらしく初対面だったぜ?」
はあ!? 初対面!?
「お前、初対面の魔族とどうやったらあんなスピーディーに打ち解けられるんだよ?」
店長代理が
「いや、共通の知人いたからよー。魔王とか、四天王とか。
で。聞いた話だと、やっぱここは魔王城。ベアトたちの城で
と、報告してくる勇気。お、おお!?
「ただ、ここは、正式には〝旧魔王城〟。
「へぇ……」
魔王城に、旧と新とかあるのか……。
「で。なんか今、城が慌しいことなんだけど。まぁそれも、老朽化がからんでくるんだけど。それがけっこうシリアスな問題が原因なんだってサ」
そして勇気が続ける。
「シリアスな問題?」
怪訝にオレ達。
シリアスな問題──。この前の〝戦場〟編もシリアスだったと思うけど……。
デモン・イレブンには
「なんか。今この魔王城のトイレ、老朽化が進んで、水回り
同情を
「ん? ト、トイレ?」
オレ達は困惑する。
「クーデター起こったとか、なんか、勇者が乗り込んできたとかじゃなく?」
「そ。トイレ」
「それのどこがシリアスなのよ……?
そんなのどこにでもあることじゃない。うちの店だってトイレ壊れたことあったし」
「わかってねーなーマイ」
勇気は笑顔でいう。
「一個じゃねぇんだぜ? ぜんぶのトイレが使えねーんだぜ?」
勇気は両手を広げながらいい、
「しかも、ウチのトイレが壊れるのとは問題の規模が全く違うぜ。
何千、下手したら何万の社員? が働く魔王城だぜ?
そこのトイレが壊れたら、どうなると思う?」
「どうってそりゃ……困る?」
「そう、困る。用を足すにも困るし、トイレって、用を足すだけじゃねーだろ?
女子は
急にトイレ伝道師みたいなことをいいだす勇気。お前は今どこのポジションなの?
「ま、まぁわかったわよ」
その説明を受け、たじろぎながらだが、九条は
「あんま花も
「そのとーり。ちょっとした機能不全みたいな状況になってるらしくてよー。
まぁだから? レコメンドしてきたぜ」
得意げにいう勇気。
「レコメンド?」
文脈が分からず全員が首をかしげた。
レコメンドって……なんかCDショップとかに
「レコメンドって……何をレコメンドしてきたのよ?」
「だから、トイレだぜ?」
楽しそうな笑顔でいう勇気。
「コンビニってトイレ使用自由だし。うちもトイレはけっこう
だからそういう事情なら、
「「「「え?」」」」
その説明に、オレ達四人の目が点になった。
全トイレ使用不可になり、トイレ難民溢るる
「あれ? なんだろ、
その時、店長代理が、フラリとしながらいった。
「なんだか俺。すげぇ
「オレもです」
口々に不安を
するとその時だった。
ピンポーン。
おなじみの入店音が
先頭にいるのは、さっき勇気が話していた石像、に見た目が
「ここか!?」
そして石像はいうのだった。
「弟がいっていた──無料でトイレが借りられて、しかもそのトイレは、便座があたたかくて、水流を
そんな極上のトイレを貸し出す店、デモン・イレブンというのはここか!?」
「いや、確かにここはデモン・イレブンですけど別に極上のトイレって程じゃ……」
オレはいったが、もはや石像は聞いていなかった。勇気に案内され、勝手に
「極上だ……」
「こんなトイレタイムは初めてだ……。これはもはや生理現象を済ますだけの場所ではなく一種のアトラクション……! 完全に今、
どっかのトイレ会社の回しもんかってくらいトイレを
その発言で……完全に、他に並んでいたトイレ難民に火がついたらしい。
「どけよ! 次はオレがトイレに行く番だろ!?」
「笑わせるな小童! 序列からいえばワシが……」
「いいやオレだ。オレはもう三日もトイレ
店内で起こる、かつてないほど
そしてそんな
「いや、勇気……」
オレは
「にゃはっ! まぁ仕方ねぇよな? こんな展開、
「できたわ! お前が魔界のトイレ難民にうちのトイレレコメンドしたって聞いた
悲鳴をあげるオレ。えぇぇ……オレ達、異世界来て、しかも魔王城まで来て、トイレ貸さなきゃいけないの?
こうして、デモン・イレブンVS魔王城勤務のトイレ難民。
【S】ランク取るのに全く関係ない
※
店内から店の外まで
その先頭が目指すのは、勇者のもとでも、魔王のもとでもない。
トイレ。デモン・イレブンのトイレなのである。にもかかわらず……
「なんっっでこんなにレジはヒマなのよ!?」
どんっ! とレジを叩きながら
そうなのである。
あれ以降、ウチのトイレは極上
トイレを使った客は、特に一声かけることもなく、店からさっさと出て行ってしまう客がほとんどで。店の売上げはほとんど伸びていなかった……!
「おかしいでしょ!?
「まあ、あれ、日本の文化っていうか、少なくとも〝人間
「そうはいっても、このままじゃやべーだろ」
いかにも
「とにかく。なんとしても、トイレ利用後に、コンビニも利用してもらわねーと」
「じゃあ、個室の中に、
そこで提案してきたのは、いちおうオレ達の会話を聞いていたらしい
「え? 購買意欲そそる張り紙って?」
「わかんないですけど……コンビニのトイレって、店によって、商品のチラシとか貼ってある店ありません?」
「「「あ……」」」
白雪のその言葉に、オレ達は
脳裏に
「いいじゃん」
あれ、確かに、けっこう効果的な気がする!
「そこでうまいチラシ貼って、トイレ寄ったやつを店内に先導しよう」
「あ、じゃあ、あたしからいっていいかー?」
早速挙手したのは後方でオレ達の会話を聞いていて、フラフラ寄ってきた勇気だ。
「いやいいけど……あんた、ほんとに今からやろうとしてることの
勇気はこの事態を招いた張本人であるからして、不安そうに聞く九条。
「わかってんぜー? まぁ見てなって」
勇気はいうと、〝ごめんやっしゃ〟とかいいながら、トイレの列に割って入っていき──うまい具合に
そして数秒後、トイレから出てきた。
「お、もう貼ったのか?」
「そうだぜー、まぁ、見てな!」
そしてその直後、入れ
どうでもいいけどあいつ、ウチのトイレでどんな感じで用足すんだろ……。
そして、約一分。その蟹のトイレが終わるのを
効果、発揮するか……!?
すると、ガチャリ。ほどなく
さぁ果たして……!? 勇気の
視線の中、蟹はオレ達に近づき、オレ達の前を横切り、オレ達から遠ざかり……
「な……なんすか?」
最後に気味悪そうにそういうと。
ガァァ……。そのままドアから外に出て行ってしまった……。あれ?
「にゃは? あれおっかしいなー、ちゃんと良いポスター貼ったのに……」
笑顔ながらも、心底不思議そうにいってくる勇気。
「いやユーキ……ちゃんと良いポスター貼ったって」
「お前が貼ったポスター。どんなポスターだったんだよ?」
「にゃは? だから……コンビニのトイレによく
いうと勇気は、何故か予備をもっていたのか、トイレに貼ったものと同じと思われるポスターをオレ達に見せてくる。そこには、こんなことが書かれていた。
トイレはね、いつも
だからみんなも、コンビニでガムかなんかをかえばいいんじゃないかなあ?
コンビニだもの。
ゆうき
「「なんか
オレと九条は同時に
「いや確かにこのパターンもあるけど!」
なんかこう、見る人の気持ちをほっこり前向きにする格言みたいの貼ってるコンビニのトイレもあるけど!
「にゃは? 違ったか? あたしが知ってるコンビニのトイレ、よくこんなの貼ってあるぜー九九万円で世界一周できるボートの広告とか!」
「そーかもしれないけど、今回はそれじゃないでしょ!? 回りくどすぎるわよ!」
「実際蟹には無視されてるわけだしな……」
「こ、今回は別の方針でいきましょ」
別に
「にゃは、そうか? 残念だなー……こういうのいっぱい貼ったんだけど。じゃあ一枚残して、ぜんぶはがしてくるわー」
いいながら、トイレに割り込んではがしてくる勇気。いや、できればぜんぶはがして欲しいんだが……そこまではいえないので。オレ達は仕方なく
「しゃあねぇな……」
そんな勇気の失態を見て。
次に挙手したのは店長代理だった。
「要するに、もっと直接的にやりゃいいんだろ? 俺に任せろ。確かおでん六〇Gセールのチラシ、本部から送られてきてたよな?」
「え? あ、はい。事務所にありますけど」
「なら見とけ。俺がほんとの〝宣伝〟ってやつを見せてやるぜ」
いうと店長代理は一度事務所の奥に引っ込み、そしてそのまま勇気と同じ要領で間隙をぬってトイレに入り、そして作戦を実行して出てきた。
それとすれ違いに入っていったのは──二体で一対の
頭のてっぺんから角を生やした、ピンク色の子
数分後──。二
(さぁ今度はどうだ?)
期待しつつ、二体の動向を追うオレ達。
すると二体は、トイレ出るなり、オレ達にちょっとゾッとしたような眼差しを向け、
「ちょっとこの店マジなんなの……!?」
「ほんとマジなんなの……。なんか
──何故か、日本のキツめの女子高生みたいな口調で。
オレ達に
「……へ?」
全員、
「店長代理……ちゃんとポスター貼ったんですよね!?」
「あ、ああ、貼ったぜ。直接的に店内に
不思議そうに店長代理はいうが、勇気の例もある。本人はやる気満々でも根本的にどこか間違ってるのかもしれない。
「じゃあ、オレ……ちょっと見てきていいですか?」
「あ、じゃあ、俺も確認するわ。もしかして、変な具合にはがれちまってたりするのかもしれねーしな」
オレ達はさっきまでと同じ要領で、連れ立って、トイレに入る。そして入った瞬間、
「あれ? 別にはがれてねーじゃん」
不思議そうに店長代理はいうが、
「い……いやいやいや……」
オレは身体中に
「店長代理。このポスター。どういうコンセプトで貼ったんですか?」
「ん? いやだから。さっきまでの反省活かして、直接的に消費者の心に
「そこですよ」
オレは
「物量活かしすぎですよ! 逆に
トイレ内を
一切
「なんかサイコパスの人の部屋みたいになってるじゃないですか! ちょ、あの短時間でこれどうやって貼ったんですか!?」
「え? いや、なんかおでんのこと考えてたら自然と力が
「どんだけおでんの為なら
床の一枚に、〝ゆうき〟作の『コンビニだもの』が貼られていて、この部屋の狂気度は最高潮に達していた。
「は、はがしましょう。逆効果ですって。さすがにもうちょい自然にやらないと……」
「はあ~? 直接的にしろっていったりさりげなくっていったり、注文細けぇなオイ」
めんどくさそうにいう店長代理。