照れながらユグドラ。

「おずかしながら。付き合ってたんですけど……ちょっとケンカしちゃって。今は仕事にぼつとうして彼のことを忘れたくて……それで不肖ユグドラ、デモン・イレブン勤務を希望しました!」

「はあああ!?

 そんな、しつれんの対処法として!? なんて今っぽいコンビニバイトの志望動機なんだ!

「まあ、でも、ほんとにヨリを戻す気はなかったんですけどね」

 ダークハルトが去っていったほうを見ながら、ユグドラはいった。

「でも、なんだかかわいくって……。あれなんですね。こいって……するもんじゃなく。落ちるもの。落ちたほうが結局負けなんですね。私、どうやら落とし穴に落ちちゃったみたいです。ダークハルトという名の落とし穴に、ね……☆」

「……にゃはは、待て、待て、マイ。気持ちわかるけど一回その鈍器ゴルフクラブ置け? な?」

「お、お……置けるかぁぁ!」

 そこでばくはつしたのは九条だった。

「何なのよコレ!? 何なのよコレ!? ストーカーに追われてるっていうからかくまったら結局案外相手は誠実なヤツでこっちもまんざらでもなくって最終的にヨリもどす気配~~!? ふざけんじゃないわよ! 何で私らが人のラブコメ見なきゃいけないのよ!? しかもうまくいってるやつ!」

「まぁまぁ。だいじようですよ、九条せんぱい。先輩にもそのうち春が来ますって」

 そんな九条に対し、ユグドラはなんかホクホクした顔で勝者の台詞せりふをはいている。

「ふ、ふざけんじゃないわよ! 私だって十年かけてそれなりに今春が」

「えーと。それよりユグドラ」

 もう収拾つかないので、店長代理が九条をさえぎって、ユグドラに聞いた。

「なんか、じゃあ。問題は解決したんだな?」

「はい! カンペキです!」

「じゃあ、さっき、お前、バイト続けるかもっていったけど……どうすんの?」

「あ、それはいいですー」

 ユグドラは幸せ絶頂の笑顔で手をぱたぱたりながらきよぜつした。

「カレシできたし、バイトしてる場合じゃないし。なんだったらはなよめ修業しないといけないし。お断りしますね」

「あぁムカつくわぁぁぁぁぁ!

 九条のほうこうが店内にむなしくひびいた。

「あ、あっそ。じゃ、じゃあ、お前、今日でバイト卒業ね」

「はい。お世話になりましたみなさん。このご恩は一生忘れません!」

 ぺこりと頭を下げるユグドラ。

「あ、でも、バイト代は指定の口座に振りんでおいてくださいね」

 そして最後に一言。それはちゃっかりもらうんかい!?

「何でバイト代まではらわなくちゃいけないのよ!? れんあいうまくいってるヤツに! あんたに、この店がどんだけめいわくかけられたかちゃんとわかってんの?」

「まぁ、でも、よかったじゃないですか? 新しいバイト入れると、どういう感じかわかって、みなさんにとってもいい経験になったと思いますけど?」

「「「「「だからお前がいうな!!!!」」」」」

 全力で五人で叫ぶ。

 こうして、新人バイトユグドラは、三時間程でうちから卒業していった……。速っ。

 なんだったんだろこの騒動。ウチ、クレームもらいまくって、どっかのバカップルのヨリ戻しただけ?

 そしてもちろんその間、ウチは、【S】ランクに向かって全く進展していない……!

 いやむしろマイナスだったよな、これ……!


    ※


「あーもうマジつかれたわ!」

 さっさと帰っていったユグドラを見送った後──反省会なんだかユグドラ無事卒業記念パーティなんだかよくわからないもよおしを、無人になった店内で開くオレ達。

「ま、まぁでも……また前回のり返しになっちゃうけど」

 オレはいう。

「これで、この〝世界樹〟エリアでの商売の情報、ちょっとそろっただろ……」

 気休めっぽいけどオレはいった。

「まぁそうね……」

 九条がうなずく。

 この騒動でオレ達が得た情報。

・このエリアには、とにかく、暗黒騎士の客が多い。

・午後五時以降はほぼ無人になる。──ので、それまでが勝負。

かぶとさえがなけりゃ、暗黒騎士の人らもけっこういい人達っぽかったし……。ま、ここなら確かに、がんれば【S】ランクも──」

 自分に言い聞かせるように、じように、前向きなことをいおうとするオレ。

 ……だったが。その時だった。


 ドンッ!!


 オレ達の足下から。まーた覚えのある爆発音が、とつじより響いた──!


    ※


「……え? ウソだろ?」

 もはや、全員、同じリアクションだった。

 窓の外。そこに広がる光景に、全員、言葉を失っている。

 そこにあったのは、海上でも、世界樹でも、勿論もといた草原──でもない。

 赤い、大地。

 折れたけんおのやり、そしてなきがらがどこまでも続く赤い大地が、デモン・イレブンの周りに広がっている。

「ちょ、ちょっとウソでしょ……!?

「もしかして……また転移した……!?

 目の前の現実を理解できないオレ達。

 しかしオレ達を本当にきようがくさせる出来事が起こったのは、ここからである。


 ワ゛ァァァァァ!


 その時、いきなり、デモン・イレブンの周囲から、とんでもない人数の、とんでもない野太い声が響いてきた。

「は?」

「へ!? こ、今度はなんだぁ!?

 いきなりな展開に、若干たじろぐオレ達。

 そして窓の外に広がっていく光景に──

 オレ達はただただあつとうされた──!