森──ひたすら森が続いている。

「どこなんだよここは……!?

 そんな、窓から見える眼下の光景を見ながらぼうぜんとなるオレ達。

「どうやらここは……なにやら、とてつもなく大きな森の中にある、きよだいな木の上らしいですね」

 ゴッ、とジェットふんしやしつつ降下してコンビニにもどってきたシラユキ一号の口からき出された、一枚のポラロイド写真を見ながらしらゆき。シラユキ一号そんな事もできるんだ……。

「木!?

「高さは三〇〇〇メートル以上あります。じゆれいは推定一万年以上。木の種類は不明」

「はあ!?

「三〇〇〇メートル!?

「ちょ、ちょっと待ってよ……。何で私らがイキナリそんな場所に……さっきまで海のど真ん中にいたのに……」

 呆然となるオレ達。頭がまったくついていかない。

 しかし、そんな中である。

 オレ達の頭をさらに混乱状態におちいらせる人物が、店に入ってきた。


 ピンポーン。


 いきなりだった。

 こんな時にもかかわらず。店のとびらが開き。入店音が鳴り響き。

 いきなり、だれかが、店に入ってきた。

「は!?

「え!? い、一体誰が……!」

 ますます混乱するオレ達だったが、

「お……お願いします!

 ここはデモン・イレブンですね!?

 どうか私を──しばらく、ここで、働かせてくれませんか!?

 そんなオレ達に、闖入者は堂々という。

 入ってきたのは……なにやら全身をあわく発光させている、ボブカットのぎんぱつに、まるぶち眼鏡めがねの、そうな少女だった。

「今度は何者だよ……!?


    ※


「え、えーと、おじようさん? あんた一体……?」

 事務所である。

 とりあえず、店長代理が、お茶など出しながら、応対。

 他のデモン・イレブンのメンバーも全員集っている。

「あの。ここは、二四時間営業していて、その明かり絶えることはなく、いざという時、危機的じようきようにおかれた女性がげ込める場所にもなっている──〝デモン・イレブン〟ですよね!?

 すると、いきなり少女はオレ達に確認してきた。

「え!? な、なんでウチの店の名前を?」

せいれいネットワークで、うわさを聞いたんです。はるか遠くの大陸にそういう店があるって。

 だから、さっきぐうぜん見かけておどろきました。

 これもマナの導きにちがいありません!

 だからお願いです。どうか私を……ここで働かせてくれませんか!?

「い、いや、ちょっと待ってくれや!?

 えーーっと、どっから話せばいいのか……? まず。あんた誰だよ!?

 当然の質問をり出す店長代理。

「あ、すいません、もうおくれました!」

 いうと、少女は、あわててれき書を差し出しながら──履歴書、もう準備してあるんだ──!?

「私は《せいけんユグドラシル》の精──《ユグドラ》!

 この《世界樹》で、《聖剣ユグドラシル》を守っている精霊です」

「「「「「世界樹!?」」」」」

 その発言にオレ達は目を見開いた。ここ、世界樹の上だったの!?

「あれ? 世界樹ってなんだっけ? なんか聞いたことあるような気がするけど……」

 じようはよくわかってなかったらしい。

「い、いや、ファンタジーとかじゃ定番の、世界支えてたり、世界で一番おっきかったり……ともかくそういう神聖な大木だよ。ていうか、お前、前に世界樹の葉っぱでくさもちとかつくってたじゃん……」

「そーだっけ? なんか変なチーズ使ってカルボナーラあんたにつくったのは覚えてるけど……」

「オリハルコンな! チーズじゃなくて!」

 世界樹の葉っぱ使って作った草餅のこともオリハルコンのことも忘れてやがる……! さすがファンタジーに興味一切ナシ女……!

「じゃあ、そのもういっこの……《聖剣ユグドラシル》も有名なわけ?」

 さらに九条はオレに聞いてくる。

「それは……」

 オレは若干口ごもった。

 いや、ユグドラシルもなんとなく知ってるけど。その、オレの知ってるユグドラシルと、この世界樹のユグドラシルが同じかどうかがよくわからん。

「《聖剣ユグドラシル》は伝説の剣です」

 そんなオレ達のやりとりを聞き、ユグドラは教えてくれた。

「この世界樹にねむる、きはなった者の、あらゆる望みをかなえる伝説の剣──それが《ユグドラシル》」

「ど、どんな願いでも叶う!?

 血相変えて九条。

「はい。で、しかもウチのユグドラシルには、キャリーオーバーというシステムがありまして……一度抜かれた後、次に抜かれるまでの期間が、長ければ長いほど、次に叶えられる願いの規模が大きくなるんです」

「キャリーオーバー!?

 驚いたのはオレ。

「はい。今年は、前回に抜かれてからちょうど千年で……もう、叶えられちゃう願いの規模が、めちゃくちゃにふくれあがってますね」

「なんなのよキャリーオーバーって……ロトなんとかじゃないんだから! ほんとファンタジー世界っていい加減よね……!」

 九条が吐き捨てているが、いや、キャリーオーバーがある聖剣あるの、この世界だけだから! かんちがいしないでほしい。

「で、その、ユグドラシルのキャリーオーバーがそれくらいに達していることに気づき、今、ユグドラシルを手に入れるため、私を付けねらってるじやあくな存在がいるんです……その名も〝暗黒ダークハルト〟」

「ダークハルト……!」

 なんか……いかにも強くて悪そうな名前だ。

「彼は今、世界中の生物を、全て自分の下僕にする……そんな目標をかかげて、世界樹でゆいいつ聖剣の在処ありかを知る存在……私をねらっています。ストーカーみたいなものです。

 そこで、みなさんに、助力をいたいのです!」

 前のめりになりながらいってくるユグドラ。

「そういう、たとえば悪漢に狙われてる時。デモン・イレブンは、無条件で我々女子を受け入れてくれると聞きました」

「え? ま、まぁねぇ……」

「た、確かに、コンビニ、そういう側面あるけど」

 ユグドラのいうとおり。コンビニには役割として、〝防犯上役にも立つ、いざという時のけみ寺〟──みたいな要素がある。

 交番なんかより、よっぽどどこにでもあって、夜でもひともあるし。

 夜の一人歩きで、ちょっと心細い時、もしくはもっと具体的に、変な人やそれこそストーカー的な人がずっとついてきてる時……コンビニに逃げ込んで、なんとかなったケースがけっこうあるって聞いたこともある。

「にゃはは、そういやそうだったなー」

とうも、夜、一人で歩いててこわい時、コンビニ見つけるとホッとしますよ?」

「い、いや、まぁ確かにそれはそうなんだが……」

 そこで、店長代理が、冷静に聞く。

「それと。ぼうとうの、〝ウチで働きたい〟ってのと……どこがどうつながってくるわけ?」

 不思議そうにいう店長代理。

 そう、問題はそこだった。

 ストーカーに追われてる人を店に入れる。かばう。そこまではわかる。

 けど、ストーカーに追われてる女の人を働かせる──

 それは意味が全くわからない。

「裏をかくためです」

 それに対し、ユグドラは自信満々に宣言してきた。

「え?」

「たぶん、ダークハルトも、まさか自身が狙う世界樹の精霊が、コンビニでアルバイトしてるとは夢にも思わないと思うんです!」

 それに対し、ユグドラは力説してきた。

 う、うん。そら思わんわな!

 だってそれもはや世界樹の精霊じゃないし! ただのコンビニバイトだし!

「下手にかくれるより安全だと思うんです──だからお願いです。私を、一時、ダークハルトをやり過ごすまでの間。ここで働かせてくれませんか!? 私、前接客のバイトしてましたし、けっこう使えると思いますよ!?

 さらにお願いしてくるユグドラ。前接客のバイトしてた聖剣の精霊ってどういうキャラなんだよ……。

「わ、わかった……い、いいぜ」

 そこまでまっすぐいわれると、めんどうの良いこの人のことである。断れないのだろう。

 やはり、また、なしくずし気味にりようしようする店長代理。

「はあ!? ちょっと店長代理! またぁ!?

かべサンだいじようかー?」

「だってしゃあねぇだろ……確かに下手に隠れるより安全かもしんねぇし。まぁ、ストーカーいなくなるまでの一時的な間なんだろ? まぁよしとしてやろうぜ」

「マジか……!」

「てか【S】ランクはどうすんのよぉぉ……!

 こうして、またしても、【S】ランクとはあんまし関係のないそうどうに巻き込まれていくデモン・イレブン。

 今回は、何故か、世界樹にて、臨時新人バイトをやとうハメになった……!


「やるからには仕方ない……! キチンとくらいは覚えてもらうからね!」

 というわけで、まずダークハルトが来る前に、オレ達はデモン・イレブンの制服にそでを通したユグドラに研修させて、接客基礎をたたき込むことにした。

 が。研修させてみると……。

「ば、ばか! なんでとうと食パンをクソ重い月刊まん誌の下にくのよ!? ボロボロになっちゃうじゃない!?

「い、いや、ユグドラ、お前な……。いくらなんでも、おでんと成人向け雑誌をいつしよふくろにいれちゃダメだ。みろ、これ、成人向け雑誌のグラビアのページ、湯気でフニャフニャになっちまってんじゃねーか……!」

 ──だまされた。自己PRとは裏腹に。

 ユグドラは、ぜんぜん、仕事ができなかった……。

「す、すいません……でも大丈夫です! 私、前の部署でけっこう重要な仕事任されてたんで、こういうのぜんぜんできるタイプなんです!」

 しかも、むかつくのが、仕事ができないだけならともかく、このコ、やたら言い訳が多いことだ……!

 例えば、トイレそうとか、単純作業たのんでも、ぜんぜんやってくれない。

 で、それに対して注意すると、

「すいません。この店のオペレーションをもっとよくするにはどうするか考えてたら、手につきませんでした」

 ……こっちがオーダーしてないスケールの大きなミッションに勝手にいどんでたことをアピール、トイレ掃除等をやってなかったことを正当化……!

 いやそんなこと頼んでないですけど!? こういうやつ、いるんだよ!

 あと、

「えーこんなやり方してるんですか? 前の職場ではもっと効率的なやり方で……」

 やたら、〝前の職場〟でのやり方をアピールしてくる。

 いやしらねーよ! 世界樹の精の前の職場ってどこなんだよ……!?

 こういう奴もいるんだよな。〝前の職場〟での過去の栄光前面に押し出してきて、こっちのいうこと聞いてるようで聞いてないバイト……! デモン・イレブン時代もいて、二日でやめてったっけ……。