「うん。だってあたし、霊感ねーもん」

 笑顔で勇気。

「ん?」

「霊感って?」

「ん? だってユーレイって、ある程度霊感ねーと見えねーんだろ?

 あたし、今、店に入ってきてる幽霊達? ぜんぜん見えてねーぜ?」

「は……はあ!?

「ウソだろ!?

「うん。まぁ勘で、なんとなくこういうこと起こってんだろーなって推測してリアクションはとってるけど……どんなお客さんが来てるのかはさっぱりわかってねぇぜにゃははは」

「「…………」」

 オレと九条は絶望した。

 なんなんだよ……幽霊見えてないけど勘の良さでリアクションとってる女コンビニ店員って! 勇気以外絶対存在しない属性だ!

 てか、こんだけハッキリクッキリ見えてるお客さん見えないって、どんだけ霊感ないんだよ……オレと九条だって、絶対霊感なんかないほうだぞ?

 なんてとつしゆつした霊感のなさなんだ勇気……!

「えぇぇぇぇぇぇぇ……

 オレと九条は現実をきつけられたんそくした。

「なによコレ……じゃあ、色々総合的に考えて、結局私と反馬があとお客さん全員にねつれつ接客して、全員成仏させないといけないってこと……?」

「そんな……!」

 店内をはいかいし、なんだかクックック……と笑ってるようにも見える霊のお客さん達を前にせんりつするオレと九条。

 というわけで、オレと九条によるゴーストバスターズ……いや、ゴーストサービスズとしての戦いが始まった!

 マジでオレら何やってんだろ……!


    ※


「い、いらっしゃいませ! 失礼ですが、こちらのお目玉とお臓物は、お客様の物ではございませんか?」

 いつのまにかゆかに落ちていた、はんとうめいの目玉と半透明の臓物を拾い、ふるえながらレジの前をウロついていた青い犬型のお客様にわたすオレ。

「? オオ、これ確かにワシの目玉とゾーモツや。どこいったんかと思って捜しとってん。サンキューなニイちゃん、お礼に今度モツ焼きオゴるわ! このゾーモツ使て!

 ハハハハハ!」

「……ハハ……」

 オレは犬のお客さんの、笑っていいのか悪いのか、そもそもじようだんなのかマジなのかすら判断しかねるかなりリアクションに困る発言に無理に笑う。

 なんなんだよこのノリは……!

 確かにコンビニって、こういう、リアクションに困るやや寒い冗談みたいのいってきて店員困らせる客来るけど! だいたい、なんで関西弁なんだよ……どういうバックボーンの持ち主なんだ、このお客さん……!?

「え、えーと。いらっしゃいませお客様。そちらはおでんです。カラシが無料でおつけできますよ?」

 レジでは、九条が、おでんのじゆうに興味津々だったお客さんにご案内しているが、

「エ? アー、アー、イイワイイワ。私達、ゆうれいダカラ、塩採ルト蒸発シテシマウノ。カラシッテ塩分イジャナイ? 蒸発ジャナク成仏シタイカラ、ツケナクテイイノ。聞イテクレテアリガトウネ?」

 レジに並んでいたお客さん……ってか、あの店長代理をはいじんに追い込んだゆりかごのお客様なんだけど……!

 は、九条ににこやかにいって、カラシをえんりよしている。

 うん……幽霊って、塩だけじゃなく、塩分ぜんぱんダメだったんだ!? だったら、コンビニの食品全般けっこうダメなんじゃ!?

『チナミニ、モシ後デ買イ物シタトシテモ、ソノ時レジぶくろハイイカラ。エコバッグモッテキテルカラ』

 そしてそのお客さんは、にこやかに自身の持ってるゆりかごをかかげながらいう。

 あのゆりかごエコバッグだったの!?

 とりあえず、オレの中にあった〝子供を捜し彷徨さまよう女幽霊像〟は今日をもって完全に打ち砕かれたな……。

「にゃははは! えー、お客さん、その商品気に入ったんか?」

 隣のレジで、レジ前のチョコを興味深げに見ていた客に勘のみで接客しているのは勇気。ちなみに接客されているのは例の白骨船長だ。

「あ、あぁ、まぁ……」

「ふんふん。何いってんのかわかんねぇけど、たぶんなんか、好意的なこといってくれてんだな! サンキュー!

 あ、じゃあ特別に、昔アニメとコラボキャンペーンした時に余ったグッズとかプレゼントするかい?

 たぶん、あんた、好きなアニメは日常系のアニメで、えっていうより、笑いが前面に出てる系のやつ、好きだろ? だから、このアニメのこのキャラのグッズとかもらったらうれしいんじゃねーの?」

 なんかアニメとコラボしたラバーストラップを差し出しながら勇気。

!? ワシのしゆこう!? 私の趣味は、だれにも話したことはないのに!? 確かに当たってはいるが!?

 きようがくしている船長。いや、うん。

 勇気、相手見えてないのに勘良すぎだろ!?

 相手からしたらちょっと気味悪いレベルになってるってソレ!

「へぇー船長アニメとか観るんすか!? 最近この世界でりつつあるという。なんかイメージとちがいますね!」

「なんかホッとしたな……船長にも、厳しい一面以外あるんだ……」

「お、おまえら……!

 悪かったな……船をまとめるためには厳しい面を見せないといけなくてな……」

 結果、何故かその船長は、その後ろに並んでいた部下とおぼしきお客さん達と結束をより強固なものにしていた。

 勇気、まじすげぇ……! そこまで読んでの勘だったらマジですげぇ……!

「あ、やべ、なんか適当に触ってたら、レジがなんか〝重大なエラーが発生しました。強制しゆうりようします〟って。とおる。これどーすりゃいいん?」

「なんでつうにレジ打つだけで、そんなえげつないバグみたいなの起こるんだよ!?

 まぁその分。

 機械オンチだから、意外に差し引きゼロなのかもしれないけど……!


 そんな調子で、どんどん店に来ていた幽霊船のメンバーを接客していくオレ達。

 しかし、これは異世界で修業を積んだ結果なのか、はたまた案外生来持っていたのんきな性質なのか。

 やってみたら、〝幽霊船〟のお客さん達の接客も、けっこう慣れてきた……!

 そりゃ、確かに半透明で発光するお客さんは中々不気味だし。

 身体中やりさってたり心臓なかったりするお客さんは、見ると〝ヒィ!?〟ともなるけど。

 確かに、最初に店長代理がいってた通り、日本のコンビニ時代でだって、ちょっとイカツイオジサン接客しなきゃいけない時はあったし。

 それとどっちがこわいかっていわれれば、まぁ、今日来てくれた人が、いい人ばっかりだからっていうのもあるけど、幽霊船軍団のほうがちょっとマシなくらいだ。

 だからオレ達は。

 平たくいうと、なんだかんだつつがなく幽霊船の乗員のみなさまを、もてなすことに成功してしまった──!


    ※


「「「ありがとうございました……!」」」

 頭を下げているのは──

 オレ達、じゃなくゆうれいせんの乗員のみなさま。

「こんな接客、何十……いや何百年ぶりじゃろう」

「色々不満モアルケド、マァ、オオムネ満足ネ」

「せやな、おもたとおり、ここはいい店やったな!」

 満足そうにいう幽霊船の面々。

「え、じゃあ、っていうことは……」

「ああ」

 コクリ。船長はうなずいてくれる。

じゆうぶん満足した。これを機に我々は成仏を──」

「! おお!?

「しようかと思ったんじゃが──」

!? おお!?

「……不思議なもんじゃ。これだけ心地ここちよい店、心地よい接客をされると、生きる活力がいてくる。

 ワシらは決めたぞ。今後も、霊として、生きる!」

 いきなり、霊なのにやたらポジティブな結論に至る船長。えぇ……っ!?

 他の幽霊達も頷いていた。

「素敵ナ買イ物ガデキタワ……! マタ来タイモノネ」

「せやな。またこの店来る為、がんばって働かな、な!」

 なんか明るい笑顔でいってくる、幽霊のみなさん。

 すごい変わりようだ!

 ま、まぁ、元気になってくれたんだから、それはそれでいっか……!

「わ、わかりました。では──またのご来店、お待ちしております」

 オレは頭を下げる。

「しゃあないわね……まぁ意外にいい人(?)達だったし。また来てくれてもいいわよ」

「幽霊船のみんな、また、絶対来てくれよなー!」

 勇気と九条も深々と頭を下げた。

「うむ。ありがとう。ではまたな──デモン・イレブン。また必ず会おう!」

「店長サンニモ言ッテオイテネ。マタ会イマショウッテ」

じやしたなー。ほな!」

 朗らかに帰っていく幽霊船の面々。

 幽霊船の乗員の最後の一人を見送った窓の外には。

 相変わらず、しやくねつの太陽、そして青い青い海が広がっていた──。


「行っちゃったわね……」

 さて、その直後。幽霊船のゆの字も見当たらない、快晴の海を見ながらどことなく名残なごりしそうにいうのは九条だった。

 ったくコイツは。

 あんだけビビってたクセに、なんだかんだ、一番あの幽霊船のみなさんに親しみ覚えちゃってるじゃないか……。

「にゃははは! ま、でも。なんだかんだ、ここでもなんとかなりそーだな?」

 そんな九条のかたに無理やりのように飛びつきながら、勇気がいった。

「ちょ、やめてよバカユーキ!」

「にゃははは!」

 とかじゃれあってる九条と勇気のコンビをしりに、

「やれやれ……ま、そうだな」

 オレも少し、ホッとしていた。

 確かに勇気のいうとおり。

〝草原〟からいきなりこんな見ず知らずの土地に転移させられて。

 今までの経験もスキルも常連客も全部失って、例の本部との〝条件〟果たせるのか、内心けっこう不安だったけど。

 今回、いきなりたぶん割りと高難易度な〝幽霊船来店〟も、なんとか、無事乗りえたし(がいじんだいだけど。店長代理と白雪は未だ灰になってるし)。

 多少、オレ達、自信持ってもいいのかもしれない。

〝海上〟エリア。ここで、オレ達は、【S】ランクをねらう……!

「よし」

 オレは、いつまでもじゃれてる勇気と九条にいった。

「手探りだけど。店長代理と白雪起こして、そろそろ何かける準備しよう。

 ここで。この海上で──絶対天下るぞ!!

 バイトリーダーらしく決然と宣言するオレ。

 その時だった。


 ドンッ!!


 最近聞いたばっかりである。

 まさかなばくはつ音が、足下からひびいたのは──!


    ※


「へ……?」

 しばらくたって、ようやく静まり返った店内。

 窓から見える光景に、目を点にするオレと九条。

 海が、こつぜんと姿を消していた。

 その代わり現れたのが、うつそうしげる青葉。青葉に集うこまどり達。駒鳥についばまれる果実。

 そして、空。

 上ではなく、真横に広がる、雲、とてつもなくんだ青い空。

「は……?」

「どこ……」

「ここ?」

 あまりにもありえない展開に放心状態になる、オレと九条と勇気。

「お、おい、どうした!?

 さすがに目を覚ました店長代理達がドヤドヤやってきて、聞いてくれたが。

 それに答える言葉は、どうがんばっても、オレ達の口からは出てこなかった──。