トゥルルルルル……!

 無人の店内で、突然、電話が鳴った。

 ビクゥッ!

 そんなまさかの不意打ちにオレ達五人全員がビクッと身体からだふるわせる。

「ビ、ビックリしたぁ……誰よ?」

「誰ってそりゃ……AMエリアマネージヤーなんじゃないの?」

 うちの店の電話は、何故かもといた世界でオレ達の店をかんかつしていたAMのけいたい電話には、電話が通じたので、オレはいった。

「と、とりあえず出るわ」

 ぐうぜん一番手近にいたオレが電話に歩み寄り、受話器を取る。

 耳にあてた受話器から聞こえてきたのは──果たして、予想通りの人物だった。

『おーうぃ、はんか? 俺だ俺。AMだけど』

 電話の向こうの声は──AM。

「あ……AM。おつかれさまです」

 若干、ホッとしながらオレ。

 たとえ相手がAMとはいえ、予想通り、顔見知りの人間の声を聞けたことが無性に気持ちをほぐしてくれた。

「い、いや、AM、実は……」

 というわけで、事情を話そうとするオレ。だったが。

『あーワリ。ゆっくり話してる状況じゃねぇんだ。

 今日はな、ちょっと、伝達こうがあって電話したんだ』

 その話はAMに強制的にさえぎられた。

「え、で、伝達事項? あーいや……それ、後回しにできませんかね? オレ達、今、とんでもない事態に置かれてて」

『お前ら。時間がねーぞ』

 また遮って、AMはオレにそういってきた。

「え……? 時間……」

『あと一ヶ月だ』

 そしてAMは、とうとつにいう。

『【S】取れば、店の閉店なくなるって話。

〝半年以内に達成〟ってしばりだったけど、事情が変わった。

 あと一ヶ月──。ちょうど今日から、月始めだから、つまり、今月。

〝今月の月間本部評価、Sランク〟とんねーと、その店、へいすること、今日の本部会議で決まったぞ』

「……はい!?

 オレは受話器に向かってぜつきようした。

 そしてあわててみんなのほうにり返り、

「う、うちの店。今月【S】とらないと、閉鎖決定って……」

「「「「はあ!?」」」」

 全員、絶句した。

「しゃあねぇ……おい、代われ、とおる

 すると、店長代理が心を整えるように一度大きく深呼吸し、オレから受話器を受け取った。そしてスピーカーホンにして話し始める。

「あーっと、もしもし。かべですけど」

『ハナシ聞いてたか?』

「はい。今月【S】とらないと閉店決定だって。どういうことなんすか!?

『いや、それがな。今、きようなのかなんなのか。お前らだけじゃなく、俺の持ち店、ことごとく売り上げしんで、ほとんど【D】ランク、良くて【C】みてぇな状況なんだよ』

 つかれてる口調でいってくるAM。

 あ、そ、そうだったのか? その事情は意外だったが……

「そ、その状況と、うちの閉店までの期限短くなったこと、なんの関係が……」

 こんわくしたように聞く店長代理。

『それで、本部から通達来て。今月中に、俺の受け持ちエリアの全てん平均のランクを【B】にしねぇと、一回全店舗閉店して、スタッフ入れえてリニューアルオープン。お前らの店は予定通り取りこわし決定。そういわれちまったんだよ』

「はいぃ!?

 オレ達はまたまたきようがくした。

 全店舗一からリニューアルオープン+ウチの店予定通り取り壊しって! うちのエリアに住んでる人、デモン・イレブンに何が起こったんだってそうぜんとしないか!?

「え? あれ、でも……B?」

 そこで困惑したようにいう、店長代理。

「Bって。うち、先月、売り上げ【B+】でしたぜ? だったら、ウチは、その条件あんま関係ないんじゃ……」

『だーかーら。今、こっちの世界は不況で苦戦してるっつってんだろ!? お前らの店だけB+でも、他の俺のごまの店が、どうやったってBなんてとれねぇ状態なの。

 どっか、期待もてる店が、とつしゆつした高評価打ち出して、それで他の店のマイナスカバーするくらいのことしねぇと……』

「「「「「え?」」」」」

 そのAMの発言にオレ達はいやな予感を覚える。

「ま、まさかとは思いますけど。その〝突出した高評価出さなきゃいけない、期待もてる〟店って。ウチ……デモン・イレブン異世界店のことじゃないですよね?」

『は? そのまさかですけど何か?』

 しかしAMはいってくる。

「えぇぇ!?

『この状況打開できるのは、もう異世界にいるお前らしかいねぇ。

 今月の本部評価を【S】にしろ。

 そうしなきゃ……お前らの店だけじゃなく、俺の受け持ちエリアの店もいちれんたくしようでぜんぶ強制リニューアルオープンだ! 当然俺もへきに飛ばされる!』

「「「「「ハァァァァ!?」」」」」

 意味がわからない意味がわからない意味がわからない!

「い、いや、AM、オレ達、今、ほんとにそれどころじゃなくて、」

『他の店舗にはもうりようしようを得た。こうなった以上仕方ない。売れ筋の商品も、お前らの店に優先的に回す約束をしてくれた。おうえんメッセージも続々届いてる。

 それによ、お前らの店。五年くらい昔──お前らが入る前。【S】ランクとってたこともあるんだぜ』

「えっ!?

 その発言にオレ達はちょっとビックリした。【S】ランク!?

 五年前っていうと、前バイトリーダー……〝せんぱい〟が、高校生のころか?

 オレ達が入ってからも、〝先輩〟がいる頃は【A】とったりしてたけど……その前は、【S】だった時期もあるのか……初耳だ。

『あの頃は、十二期連続で【S】とってて、〝伝説レジエンド〟っていわれてて。残念ながら、お前ら〝はざの世代〟が入ってきてから、若干パワーダウンしたが……』

「〝伝説レジエンド!?

「てか、あの、私ら、〝狭間の世代〟呼ばわりだったの……?」

『とにかく、【S】とれるポテンシャルあるはずなんだよ。その店は。

 少なくとも、このクソ景気の悪い日本の俺の手持ちのどの店よりもな』

 AMは言い切るのだった。

『じゃ、俺、けいたいショップの店員さんと合コンとかでいそがしいから。後たのんだぜデモン・イレブン。目標達成しとけよー』

 軽く冷たい口調で言いえ、プツッ、と電話を切ってしまうAM。

「マジかコイツ……つか、そんな難題あたえるならお前も合コンしゆくしろや……!?

 今月中に【S】ランクをとらないと、〝エリア内の店も全部リニューアルオープン〟。

 オレ達のかたに、わけのわからない重責がのしかかった……!


    ※


「ったく、えらいことになってきたな……」

 ザザーン。三六〇度海が広がる中。

 店内で、電話が終わった後、頭をガリガリやりながらいったのは、店長代理。

「えーと、じようきようを整理すると」

 立ち姿のまま、指を折ってじよう

 あ、ちなみに、いくら空調が利いてるデモン・イレブンとはいえ、さすがに洋上のど真ん中だと暑いので、オレ達は今の間に勝手に制服をくずして夏服仕様──

 女子は〝部屋〟にあった水着の上に制服を羽織る海の家の店員みたいな格好、オレ達も何故か〝部屋〟にあった短パン+上ははんそでスタイルの制服に、それぞれチェンジした。

「今、なんでか、私達はわけのわからない海の上にいる」

 洋上をわたしながら、状況を確認していく九条。

「けど、そんなこととは関係なく。私達が今月本部評価で【S】とらないと、うちの店は閉鎖」

「それどころか、ウチが【S】とれなかったら、同地区の他の店もリニューアルオープンされる状況にある──そういうことですね?」

 スマホいじりながらクールにいったのはしらゆき

「にゃはは! ほんとむちゃくちゃな状況だなー」

 楽しそうにゆうがいってくるが、いや、勇気、笑ってる場合じゃないと思うぞ……。

「じゃあ、とにかく、オレ達は売上げを出していかなきゃいけないのか」

 周囲三六〇度。どこまでも続く海を見ながらオレはいう。

 さあ、問題はここからどうするかだ。

 なんでいきなり海に来たのか状況はよく分からないけど。

 一つだけ確かなのは、状況がよく分かろうが分かるまいが、今月のウチの本部からの月間評価を【S】にしない限り、ウチは閉鎖が決まる、という条件。

【S】っていうのは、とったらそれこそほとんど伝説──日本の現存店舗ではたぶんもう三、四年とか出てない──レベルの売上げをたたき出さなきゃとうたつしない域。

 オレ達は、この新天地で、【S】評価されるくらい、店をはんじようさせなくちゃいけない。それにはどうしたら?

「あれ?」

 その時だった。

 オレと同じく──しかしみように違う角度で外を見ていた九条が声をあげる。

「あれ……船じゃない!?

「えっ!?

 はじかれたように九条が見ていたほうに目を向ける。

 するとそこには──九条の言葉通り。

 一隻の船が、デモン・イレブンに向かって航行してきていた!


    ※


 デモン・イレブンに向かってきている船。

 それは、こんな船だった。

 は破れ。船底はち。かんぱんの上には、ひとだまが無数に飛び交っている。

「な、なんだありゃあ……!?

「ゆ、ゆうれいせん……!?

「ウチに何の用なのよ……!」

 その異様な船の外観に、オレ達はゾッとしていたが、

「君達──もしかして、ここは何かの商店か!?

 そんなオレ達に。甲板から、とつぜんハリのあるげんを感じさせる声が飛んできた。

 ビックリして見上げると──

 そこにいたのは、かいぞくぼうに海賊服をまとった、──全身白骨化した男。ヒィィ……!

「え? あ、いや、ま、そうですけど……」

 そんな呼びかけに、店長代理がとりあえず正直にそう答えた。

「そ、そうか……!」

 すると、船の上で、その男はかんに声をふるわせ、

「頼む!」

 そして、いう。

「俺達を──その店で成仏させてくれないか!?

…………はぁ!?


    ※


 デモン・イレブン店内へ──幽霊船から有無を言わせずわたされた戸板をえて、幽霊船の乗員達が続々、入店してくる。

 身体中にやりさったままになり、ボロボロになった海賊服を身にまとった、首から上のない男。

 だれも入っていないゆりかごをらしながらちょっと手がつけられないくらい号泣している、長いくろかみに白い布きれのようなものを纏っただけの異様に顔色の悪い女。

 はんとうめいの、臓物や目玉が飛び出している青い毛並みの犬。

 海賊帽に海賊服をまとった、白骨船長。

 同時に、ピシッ! ピシッ!

 さっきまで絶対鳴ってなかったのに、とつじよラップ音がひびき渡り。

 ゴウッ!

 ポルターガイストのお客様もいつしよにいらっしゃったのか、ほんだなの雑誌が、ゴウゴウ店内を飛び交うというホラーな状況を加速させつつある。

(ちょ……どうするんですか店長代理!?

 オレは声を殺して店長代理に確認。

(オレ達、こんなことしてる場合なんですか!?

(う、うるせー、来ちまったもんはしょーがねぇだろ!)

 店長代理はムキになったように反論してくる。

(だいたい、どんな客でも受け入れんのがコンビニだろ? ヤンキー来たら追い返せるか? ヤーさん来たら追い返せるか? 同じロジックだよ。

 幽霊船来たら、追い返せねぇだろ)

(そこ同じロジックですかね!?

「感謝するぞ店長」

 そんな中、最後に入店してきた船長が、店長代理に礼を述べる。

「我々は、なんせこんなナリ、こんなにおいでな。中々入れる店がないんだ。しかも基本海しか行動できないし。最後の願いとして、どこかで、一度、ゆっくり買い物がしたいと思っていたんだ」

 と船長。

「そ、そうですか……」

「助かる。そして助かりついでに、一つ頼みがある。

 我々への接客はねつれつかつみつ、入念にお願いできないだろうか?」

 なんかまさかの〝熱烈接客〟のオーダーを口にする船長。

「え……?」

 きよをつかれたように店長代理。船長は満足げに、

「買い物のだいは、店員に、熱い接客を受け、商品をかいして心の交流を行い、おたがいをよりよく知ったしゆんかんに、最高潮に達する──。

 我々がちがいなく成仏するためにも。

 のうこうに、ねっとりと、つきっきりで。じようなスキンシップを期待する。できるな」

「デ……デキマス……」

 なんとなく店長代理は押し切られてるが、

(いやいや、何勝手にりようしようしてんのよー!?

 ちょっとなみだになりながら九条がこうした。

(なんで幽霊船の乗組員相手につきっきりで接客しなきゃなんないの! 濃厚ねっとりと! 今は【S】ランク目指してガンガン客入れなきゃなんないのに!?

(しゃ、しゃあねぇだろ? 今さら追い返したら殺されるっつーの!)

 店長代理は引きかれたような表情で説明、九条もその説明に頭をかかえ、

(じゃ、じゃあ……百歩ゆずって店への入店は認めるけど。成仏させる為の熱烈接客は店長代理絶対やってよ! 私こういうの、ほんっっっと苦手なんだから!)

 本気でいう九条。ああ、そういや、九条ってこういうかいだんとか、苦手だったっけ?

「わ、わかったわかった。わかったよ!」

 店長代理はウンザリしたように九条にいった。

「ったくガキはこれだから……。やりゃあいいんだろ、やりゃあ。いいじゃん。やってやろうじゃねぇか」

 き捨てるように、そう宣言。

 さぁこうして。何でこんなことをしているのか?

 幽霊船VS店長代理の、なぞのつきっきり接客タイムが幕を開けた。


「だいたい……オバケがこわいだぁ……?

 店長代理が、かくを決めたようにいう。

「こんなもん、声優界とか芸能界にいるもうりようみたいなオトナに比べりゃぜんぜん怖くねぇっつの……!」

 そしてなんかがんちくある台詞せりふを自分に言い聞かせるように口にし、

「みとけや。二十歳過ぎた人間にしかできない──大人のいろただよう接客を!」

 そのまま、ビッと制服のえりを正し、ぜんとしたあしさばきで幽霊船ご一行様に向かっていった。おお、中々男らしい!

「──いらっしゃいませ」

 そして早速、入り口付近にいたお客様に、よくせいの利いた、甘い声で話しかける。

 相手は、あの、誰も入ってないゆりかごを抱えて号泣し続けてる黒髪に白いヒラヒラした服を着た女性だった。

「当店のご利用は初めてでございますかお客様。何かお困りのことがあればなんなりとお申し付けください。店員一同、喜んでお力になります故」

 続けて、ゆうな声色であいさつする店長代理。

(す、すげぇ)

 それを見ながら、オレ達残りのメンバーは顔を見合わせた。

 よりによってあのお客さんに声かけたたんりよくすごいし、接客もていねいかつ優雅。

「くっ……あいつ、他は残念だけど、やっぱちょっとその辺にはいないような声してんのよね実際……!?

 その様子に、九条もその接客の良さは認めざるを得ないようだった。が。

「ホントウ……?」

 相手はゆうれいせんの船員。

 中々ひとすじなわではいかない。

「ジャアオ言葉ニ甘エテ──少シ力ヲ貸シテクレル?」

 まず、店長代理にそうもちかける。

「! もちろんでございます──お客様に気持ちよくお買い物していただくためでしたら、なんなりと──」

 店長代理は笑顔で対応するが、

「実ハネ──私ノ赤チャンガ、見当タラナイノ……」

…………え?」

 次の瞬間。女の人が放った一言に、店長代理だけじゃなくオレ達全員がこおりついた。

 こ、これは……もしかして、かの有名な、子供を失った女性の幽霊とかによる〝私の赤ちゃんはどこ?〟発言……!?

 怪談でよく聞くけど、実際聞いたら……かなり反応に困るっていうか……固まるな。

 体温……どころか、店内の温度が二度は下がった気がした。

「さ……さようでございますか」

 が──店長代理、さすがは従業員ゆいいつえである。

 たじろぐのをみとどまりつつ、

「か……かしこまりました。よければ、店員一同で捜させていただけませんか?」

 神対応をり出した。

「当店には映像を記録するカメラ装置もございますし……なにかお力になれるかもしれません。お客さまの赤ちゃんを、みんなで、捜しましょう!」

 さわやかな笑顔で、しかも本心からいってる声で、本当に赤ちゃんがいるかどうかは定かじゃないが、必死にいう店長代理。おお、男だ、店長代理!

「アリガトウ……ヤサシイノネ」

 その対応に、うれしそうにゆりかごの女性。

「いえいえ。コンビニ店員として当然の対応ですから。

 で? その赤ちゃんというのは……どういったお顔でございますか? おものなど、何かとくちようを覚えてらっしゃいますか?」

 一気にたたみかけるように聞く店長代理。だが。

「ソウネ……」

 そんな店長代理に、ゆりかごのお客様は少し考え、

「コンナ顔ダッタカシラ……」

 まさかの、いちげきを、う。

 ゆりかごのお客様が、店長代理の顔の前に、ゆりかごを持って行くと。

 ぼぉぉぉ……そこに、ぼんやりと、何かがかび上がってくる。

 ゆっくり一〇秒は経ったころ

 そこに現れたのは──

 ぼぉぉぉ……

 一〇秒たっても……

 なんだか、ボンヤリしたまま何かばくぜんとしたイメージのままの物体……。

 ……へ!?

「実ハネ──」

 そんな中、ゆりかごのお客様が、とうとつに口を開く。

「私……子供ナンテ、産ンダ事ナイノ……」

 そして店内に響き渡るゆりかごのお客様の独白。……え?

「テイウカ……けつこんシタコトモナケレバ、男性トオツキアイシタコトモナイノ」

 そしてきようがくの独白は続く。

 え!?

「ナノニ、郷里ノ両親ハ、イツ結婚スルンダ、子供ハマダカッテ凄クウルサイノ」

……………………

 店内が、だんだん、さっきまでとはちがう意味で寒くなってくる。

「ワカル? 私ハ──ドンナ手段ヲ使ッテデモ。今年中ニ、結婚相手ヲ見ツケナクテハナラナイノ!」

………………

 いつのまにかあせダラダラで立ちくしている店長代理。

「……お客様、一体何のお話を──」

「トドノツマリ。貴方あなた、私ト結婚シテクレナイ!?

 そんな店長代理の手に、ゆりかごのお客様が必死でにぎらせたのは──

 すでに自分のらんには署名がされている、【こんいんとどけ】と書かれた、一枚の紙切れ。

 ひぃぃぃ!?

「うおおおお!?

 オトナのゆうを消し飛ばしぜつきようする店長代理。

 なんだあの幽霊!?

 まさか……何も入ってないゆりかごは、ただの同情ひく為の小道具で!

 根っこの部分は、ただ結婚したいだけの結婚をあせるOL的……霊!? なんて複合的な怖さを持つ霊だ!

「ネェ、イイジャナイ! 私、モウ死ンデルカラ、食費モカカラナケレバ税金モカカラナイシ、中々安上ガリダト思ウワヨ!?

 さらにOL、ではなく、霊は店長代理にる。

「いやそんなとこセールスポイントにされても!」

「車モツイテクルワヨ! 表ノ幽霊船、私名義ノ幽霊船ダカラ、結婚シテ名義へんこうスレバ貴方ノ物ニナル!」

「幽霊船にも名義変更とかあんの!? てか、表の船、あんたのだったの!? どっちにしろ幽霊船は車じゃないし要りませんけど!?

「ナニヨモウ……ジャア、モウイイワ。

 何モアゲナイケド、トニカク、結婚ダケシナサイ!」

「余計いやだよ!? わ、ちょ、よせ、お、おい、いんを……

 とおる! 助けてくれ透……ひぃぃぃぃぃぃぃ!?

 きようのあまりあわをふきはじめる店長代理。

「反馬……呼んでるけど?」

「前オレがベアトリーチェにせまられた時はスルーしたクセに……。

 ったくもう……結局いつも通りすぎる展開じゃないか!」

 あわてて飛び出し、ゆりかごのお客さんに店長代理の芸能事務所の事情やら話して、なんとか救出するオレ。

「ソウ……芸能人ナノ。ジャアイイワ。収入安定シナイシ。別レルッテイットイテ。

 アー時間ニシタ」

 するとおそろしくさばさばした口調で、ゆりかごのお客さんは結局、店長代理への興味を失ってくれた。なんて現実的な幽霊なんだ!

 しかし残ったのは、接客開始から二分も経たないうちに白い灰と化して動かなくなった店長代理。つまり今後もつきっきりで接客しなきゃならないのに、五人のうち一人が早くも再起不能になったという事実。

 VS幽霊船、ファーストラウンド。

 店長代理VSゆりかごのお客さんは。

 かんなきまでに……デモン・イレブンの敗北で終わった!


    ※


「店長代理は……死んだ」

 店内。レジカウンターの中で、え尽きた灰のようになって座り込んでる店長代理を前に、オレはみんなに伝える。

 店長代理は、さっきの恐怖で未だ(精神的に)死んでいる。

「残りは四人。この四人で、なんとか、あの幽霊船の面々を成仏させるためつきっきりで接客してかなきゃいけないんだけど……だれか、行けそうな人いない?」

「白雪は!?

 そくとうしたのは、九条。

とう。あんた、科学の権化なんだから、幽霊なんて非現実的なモン信じてないでしょ? あんたならどこまでもクレバーに接客できるんじゃないの!?

 期待をこめた声で白雪に聞く九条。

……………………

 しかし白雪は、店内のけいこうとう眼鏡めがねに反射する、表情が見えない状態のまま動かない。

「? えーと……塔子?」

「にゃは、シロなら呼んでも無駄だぜ?」

 すると勇気が、頭の後ろに手をやりながら、楽しそうに笑っていった。

「へ? 無駄って……なんで?」

「だってシロ、店に入ってきた幽霊船のみなさんを見て以降、ずっと気絶してるぜ?」

「「……はあ!?」」

 その解説にオレと九条は慌てて白雪を見た。

「ずっと気絶!?

「そーだぜー気づいてなかったか? 確かに、実物見るまでは、

〝はぁ? こわいって何がです? 幽霊なんてしょせんプラズマ、科学的に立ち向かえば恐怖なんて感じる要素ないじゃないですか〟っていってたけど。

 店内に来て以降は、カクッと気ぃ失って、ずっと気絶中だぜー」

「いやいや勇気! 気絶中だぜーじゃなく、オレ達に教えるなり起こしてやるなり心配してやるなりしろよ!?

「どーりで静かだと思ったわ……確かに塔子、さっきから一言もしやべってなかったしね……」

 あきれるように、石像のごとく固まったままの白雪を見ながら九条。

「どうすんの……また一人減って、もう、この三人でゆうれい対処するってこと?」

 九条が心底いやそうにいうが、

「いやーだいじようだろー?」

 勇気は笑顔でいった。

「こういう時のために。シロが、シラユキ一号用意してたんだからな!」

 明るくいう勇気。

「え? シラユキ一号?」

「何それ……」

 するとその時、こんわくするオレ達の後ろから、

「お待たせしまシタ──」

 ズシャリ。

 やけに重量感あふれる足音をひびかせ。

 何故か、目の前にいるはずの白雪と同じ声を持つ六人目(?)の従業員が現れた。

 現れたのは、デモン・イレブンの制服を身にまとう、

 鋼色のを持ち、黄色い目、顔にツギハギのある、白雪と同じ背格好の女──。

「「うおおおお!?」」

 オレと九条は思わず後ずさった!

「何だコイツ!?

「だからいってんじゃん。白雪が行動不能になった時のためのバックアップにして、デモンがかかえるまんせい的なバイト不足解消の為の切り札。はんよう人型コンビニ決戦ロボ『シラユキ一号』だぜ?」

「汎用人型コンビニ決戦ロボ!?

「〝決戦〟って、何と〝決戦〟すんのよ、何と!?

 てか……白雪、どんだけ天才なんだよ!?

 こんなロボ一人でつくれるなら、やっぱり、コンビニバイト辞めて政府とかに協力してくれた方が世界の為な気もするんですけど!?

「こ、これ、ちゃんと動くの?」

「あたり前だぜー? シロがいない時、シロの代わりが完全につとまるようにプログラミングされてるんだぜー? な? 一号?」

 笑顔でシラユキ一号の背中をぽん、とたたく勇気。

──────────

 しかしシラユキ一号は何も答えない。

「にゃは!? どーした? 一号?」

 ぽん、ぽん、と何度もかたを叩きながら不思議そうに勇気。

「あ、あのさ、ユーキ……」

 そこで、ちょっと、いいづらそうにいったのは九条だ。

「もしかして……なんだけど。

 そのロボって、塔子がいない時、塔子の代わりが完全に務まるようにプログラミングされてるんでしょ?」

「そだなー」

「で……塔子って、天才じゃん」

「そだなー」

「ってことはさ。あいつ天才すぎて。

 幽霊見たら……気絶しちゃうってとこまで……無駄にプログラミングで再現してんじゃないの?」

…………

 そのてきに、勇気は笑顔のままいつしゆんフリーズし。

 次のしゆんかん、思い当たったように、シラユキ一号の目の前で何度か手をってみる。

 そして七秒後、こちらに振り返り、笑顔で一言。

「そみたいだなー」

「はああああああああ!?

「いやいやいやいや!」

 その返答に、オレ、そして指摘した九条ですら絶句した。

「そみたいだなー、じゃないわよ!? まさかと思ったけどほんとにそうなの!?

「え!? 気絶しちゃったのシラユキ一号!? 鳴り物入りで出てきたのにもう出番終わり!?

 なんなんだよ、人間が乗りえられないかんきよう、ちゃんと乗り越えられない仕様のロボットって! 白雪天才すぎて、逆に汎用性無いロボットになってるじゃないか!?

「んー、こういう時の為にマニュアル預かってんだけどなー……えーとこれが対しようめつミサイル発射装置で、こっちがたいけんとつにゆう用フィルム射出用のボタンで……あ、やべ、うでとれた。あ、適当にやってたらなんかけむり出てきたぜにゃはは」

「ちょっとやめてよ!?

「もういいからさわんな勇気──!!

 オレと九条が必死に勇気を止める。

 勇気って、かんはいいくせに、機械に関しては想像を絶する機械オンチだからな……。

 絶対触らせない方がいい! たぶんもう修復できないくらいかんぺきこわされちゃう。

 てか、白雪、なんでそんな勇気にマニュアルたくすんだよ……仲いいから!?

「ざ、残念だけど、一号はもうしまっとこうぜ!」

「そ、そーね……オリジナル白雪といつしよに、店長代理のとなりに並べといてあげましょう」

 一瞬で出番が終わったまぼろし六人目シツクスマンシラユキ一号と白雪本人を、そっと店長代理の横に並べるオレ達。

「にゃはは、じゃ、そーすっか!」

 と、いうわけで。

 VS幽霊船、セカンドラウンド。白雪塔子とシラユキ一号の戦いは……

 このコンビの勝手なめつで、戦わずして、デモン・イレブン側の敗北で終わった!

 てか、じようきよう、さっきとほとんど変わってねー!


    ※


「店長代理と……白雪塔子……そしてシラユキ一号も死んだ!!

 店内。レジカウンターの中で、燃えきた灰のようになって座り込んでる店長代理。

 そして全く同じポーズで気絶しているオリジナル白雪とシラユキ一号を前に、オレはえる。

 五人いる店員のうち(何故かいきなり一人増えたけど)、

 数分もしないうちに、まだ誰も成仏させてない間に、すでに二人がやられてしまった。

 残りは三人……!

「てかさ……。私と反馬は、そんなに幽霊に強くないことはもうわかってんだから。あとたいせいありそうなの、ユーキしかいないじゃん」

 青い顔でいう九条。

「そ、そうだな」

 オレも完全に同意。

「勇気、あんまそういうの気にしそうにないもんな。実際、どうなん勇気? 幽霊とかそんなこわくないだろ?」

「にゃは! いやいや、あたし、幽霊からっきしダメだぜー?」

 しかし勇気は、いつも通りのカラッとした笑顔のまま、オレの希望を打ちくだいた。

「はあ!?

「そ、そうだっけ! アンタにそんなキャラ設定あったっけ?」