「ジゼル~。たーちゃんもあがる」
ん、と両手を空に向けて伸ばすたーちゃん。桶から引き上げ、タオルでよく
○ ○ ○
今日は朝からたーちゃんと共に何度も市場と宿屋とを往復し、色んな人に石けんと入浴剤を配り歩いている。遠方のヴァネッサには手紙と一緒に配達してもらった。付き合いは短いが、お世話になった人としては外せない。
本当はステファニーにも
ジゼルとしては日を改めるつもりだったのだが、何度も
ありがとうと言われる度に
特に塩屋のおじいさんは
「元気そうでよかった。大事に使わせてもらうな……ううっ」
店先に
『心配かけてごめんなさい』
心の中で何度も何度も繰り返した。けれどきっと謝ったら
「心配してくれてありがとうございます。私、村を出てから来た場所がこの場所で本当によかったって思ってるんです。
「
「また来ますね」
仕事の
その足で夕方から出勤してくる人に配り終え、最後はドランとドラゴンさんだ。朝から渡す機会はあったのだが、最後にしたのは一緒にオレンジピールが食べたかったから。最後ならゆっくりと話せる。
「待たせてごめんね。実はたーちゃんと一緒に入浴剤を作ったんだ。小さい方がドランの手湯用で、大きい方がドラゴンさんの足湯用。ドラゴンさんは使えるかどうか分からなかったんだけど、よかったら使って?」
「ありがとう。もしかしてこれ、みんなに配ったのか?」
「うん。石けんの人もいるけど」
「どうりで今日はみんな早く帰りたがるわけだ」
「もしかしてお仕事の邪魔しちゃった?」
「その逆。いつもよりも早くて的確だった」
「そっか。ならよかった」
ホッと胸を撫で下ろす。喜んでくれたドランとは正反対に、ドラゴンさんは中身が食べ物ではないと分かると一気に興味を失っていく。
「なんだ、食べ物だろうと楽しみにしていたというのに」
「もらい物にケチつけるなよ」
「おれんじぴぃるもあるよ? おやじさんがつくってくれたんだぁ~」
ポケットの中から瓶を取り出し、たーちゃんに渡す。たーちゃんは瓶を
「我はこっちでいい。それは坊にくれてやる。たーちゃんよ、早く瓶の中身を
けれど瓶の
「これはあとでみんなでたべるやつ。ドランがてゆやるのがさき」
「なぬ!?」
「それにねぇ、ジゼルのにゅーよくざい、とってもきもちいいんだよぉ。たーちゃんもぼすもおきにいり。ふぁぁぁぁってちからがぬけてとけちゃいそうになるのにぃ。もったいないなぁ~。おじちゃんがいらないなら、たーちゃんがもらってあげるぅ」
どうやら入浴剤はいらないと言われ、
ここまで言われると、食べられないものに興味はなかったドラゴンさんも気になるようで、チラチラとドランの手の中にある包みに視線を向ける。
「あれはそんなに気持ちいいのか?」
「うん。おすすめ。でもおじちゃんがいらないっていうならぁ~」
「坊よ、さっさと足湯とやらを用意するのだ。オレンジピールはその後だ」
「お前なぁ……」
ドランは
「ジゼル、どうかしたか?」
「ううん、なんでもない。私も手伝うよ。何をすればいい?」
彼の背中を追いかけ、お風呂の準備を手伝う。ドラゴンさん用の桶は大きくて、その分、必要となるお湯の量も多い。けれど大変だとは思わない。お湯を用意している間もドランと話すのが楽しいから。
なにより、
明日からまた錬金飴作りに戻る。だが数日前までとは