【閑話】王宮錬金術師採用試験会場にて
「ここが王都! 建物も人もいっぱいだ! すっげぇ」
「よそ見してないで、前見ろ。ぶつかるぞ。ほら、こっち」
「引っ張るなよぉ、兄ちゃん」
初めての王都にはしゃぐビビアンは兄・フェリックスに引きずられていく。兄は自国の王都に何度も行ったことがあるから少しだけ
けれどここは隣国。祖父・オーレルから話を聞いているとはいえ、兄も来るのは初めて。少しだけソワソワとしているようだ。それでも大人らしく
「遊びに来たんじゃないんだから、ちゃんと歩け」
「はぁい」
そう、今日は兄弟で隣国まで遊びに来たのではない。ビビアンは王宮錬金術師採用試験を受けに来たのだ。といっても
ただ
兄はビビアンの
祖父からは手紙と
宿屋の夫婦はジゼルが錬金術を止めないよう、新たな道を示してくれたのだとか。祖父は
「ほら、あそこ。旗が立ってるところが入り口だろう。大きい荷物を持った人達はみんなそこに入ってるし。行ってこい。兄ちゃんも挨拶しに行ってくるから」
「終わったら
「ああ。どうせそんなにかかんないだろ。早く終わってもあの旗の辺りで待ってるんだぞ?」
「うん。分かった」
バイバイと手を振ると、兄は早く行けとばかりに手の
ビビアンは他の人達についていくように試験会場に入る。思ったより人が多く、自分と同じくらいの年の子もいる。
それより気になるのは周りに飾られた
彼が王宮錬金術師長らしい。挨拶から始まり、今回の
まだ幼いビビアンには細かいところはよく分からなかったが、配られた番号札を見える位置に
一つ目のお題は中級回復ポーション。評価ポイントには瓶も含まれる。初歩よりも一歩先に進んだお題だ。王宮錬金術師試験としては少し優しすぎるが、その分厳しく見られるのだろう。
だが作り方が分からずにリタイアということはない。運がよければ二次試験までいけるかもと希望が持てる。
「それでは各自生産を始めてください」
王宮錬金術師長のかけ声で、
魔力水を錬金釜の半分よりも少し上くらいまで入れてから火にかける。その間にポーションと瓶の材料を取りに行く。
さすがは王宮錬金術師採用試験。どれも一級品ばかりだ。必要な分だけ確保して持ち場に戻る。バッグの中から愛用のすり
周りがピリピリしている中、ビビアンは落ち着いていた。というのも、錬金術は母から習っただけで周りに母以外の
他の参加者達が次々とポーションを提出している姿を見ても全く
「よし、できた」
ポーションの瓶に
「君はまだ若いのにこの
「ポーションを飲むのは
「いいお母様だな。……ポーションも瓶も問題なし。
「ありがとうございます」
まさかの一次試験
何にしようかなと思いながら、次の部屋へと向かう。すると途中で試験官にくってかかる人達が目についた。
「ふざけるなよ!
「こんなところで落ちるはずがない。今すぐ
「私のポーションのどこが悪いっていうのよ!?」
「上を出せ!
「はぁ!? お前達の目、
彼らが口にした『精霊の釜』とは少し前までビビアンの祖父・オーレルがギルドマスターを務めていた錬金ギルドだ。次のギルドマスターはジゼルを辞めさせた人で、彼が原因で現在は活動休止になっているらしい。
所属していた錬金術師達は悪くないはずなのに、ここにいる人達は
ドアをくぐると、冷ややかな目をした錬金術師達が迎えてくれた。彼らが
一次試験の通過者はビビアンで最後だったらしく、すぐに二次試験のお題が発表された。
今度は石けん。これまたビビアンでも作れるものだ。石けんなら何でもいいらしいので、
今度は生産時間に制限が設けられていたものの、作り慣れていることもあり、難なくクリア。
今回はかなり早く、三番
ハンカチが完全に乾いた頃、背の高い女性と少年が話しながら入ってきた。少年はおそらくビビアンと同じくらいの年。二人はビビアンの真ん前の席に並んで腰掛ける。
聞こえてくる話では二人は知り合いで、たまたま二次試験会場で出会ったようだ。聞き耳を立てるのはよくないと思いつつも、自然と会話が耳に入ってきてしまう。
「でもリュカちゃんはこういうの
「リュカちゃんと呼ぶなと言っているだろう。お前の頭には
「そのトゲトゲしさも懐かし~」
「
「いくら将来を有望視されてるとはいえ、いいところのお
オーレル、と聞いて、ビビアンはハッとする。祖父の名前だ。ジゼルは兄が
どうやらこの二人も『精霊の釜』に所属する錬金術師のようだ。先ほどの人
「ああ。まるでジゼルを採用するために用意されたお題だったな」
「リュカちゃんもそう思うわよね?」
「だがいくらジゼルに有利な内容であっても、試験に参加する意思のない者が通過することはない」
「参加する意思がないってどういうことよ。王宮錬金術師になれば一生
「僕もジゼルに直接聞いたわけではない。だが来ないだろうと予想はしていた」
リュカと呼ばれた少年が取り出したのは
「これを食べてみるといい」
「いきなり何? 飴玉? わたし、
「ただの飴ではない。食べれば分かる」
「ええ仕方ないなぁ……。美味しいし、身体がすうっとするような? 薬?」
「包み紙をよく見てみるといい。ジゼルの興味も技術もそこに注がれている」
「ふうん。これ、どこのギルドの?」
「宿屋ギルドに所属しているが、
ああ、そうだ。思い出した。祖父
あれは宿屋で売っていたものなのか。引っかかっていたものが取れてスッキリした。そうだ、兄に買ってもらうものはあの飴にしよう。祖父が一個も分けてくれないくらいだから、すっごく美味しいに決まっている。ビビアンは一人でウンウンと