ジゼルも王都に来たばかりの頃よりカットするのが
「はい、どうぞ」
「ありがとう」
二つの皿を見て、盛り付けが綺麗な方をドランに渡す。すでにたーちゃんは食べ始めていた。口がパンパンになるほど
「ドラン、今日は誘ってくれてありがとう」
「ああ」
軽く返事をしながらパンケーキをもぐもぐと食べ進めていくドラン。彼も気に入ったようだ。ジゼルはフルーツサンドを頬張る。
ドランが選んでくれたあっさりめの紅茶との相性も抜群だ。パンケーキもマロンクリームが絶品で気づいたら口の中で
「おいひいね」
つい、たーちゃんのセリフと同じ言葉が口から出てしまう。ドランはクスッと笑うが、彼だって同じように幸せに満ちた顔をしている。
二人と一匹で皿を綺麗にした後、机の横に
「もう一個頼もう」
彼もまだまだ食べ足りないようだ。
「賛成」
「たーちゃんもたべる~」
運ばれてくるまでの間もどんなフルーツを挟んだら楽しいかという話で盛り上がったのだった。
「じゃあ帰るか」
すっかりと満たされたお
「ドラン。それ、私にちょうだい」
「今日は俺が
「ダメ。あれは今日の連れてきてもらうからって用意した分。たーちゃんがやってきた日のお礼をさせて?」
「そんなの気にしなくていいのに……。俺はジゼルが
しょんぼりと肩を落とし「また一緒に出かけてくれればいい」と言い出すが、その手には乗らない。ドランと一緒に出かけたいのはジゼルも同じなのだ。お礼がなくなる理由にはならない。
「だーめ。今日は私が払うの」
「分かった。でもせめてお土産代だけでも払わせてくれ」
「そう言って会計を済ませた過去があるので認められません」
胸の前で大きなバツを作る。ドランが困っているうちに彼の手から伝票をひったくる。
「たーちゃん、ドランのこと見ててね」
そう言い残して、ささっと会計を済ませてしまう。ドランはよく「ジゼルが思っているより
こういう時に奢らせてもらわないと、この先、流され続けてしまうから。店員さんに
戻ってきたジゼルに向けられるのは、ドランの物言いたげな視線だった。ジゼルも似たような視線を向けたことがある。だから全く気にならない。たーちゃんを
「ほら、お土産半分持って。帰ろう」
「……ああ」
ドランはまだ
もちろんジゼルだって、ずっと今のままの売り上げが続くなんて思っていない。今は
お金に困るようになったらまた違う仕事を探せばいいだけ。錬金飴を売り出したことで、錬金術を使って働くにしても職場を錬金ギルドに限定する必要がないと気づいた。
だからお礼の意味もあるけれど、余裕があるうちにこうして美味しいものや楽しいことに使ってしまいたかった。
「配達ギルドに戻る前に市場を覗いていってもいい?」
ギルドに戻る
「ああ。女将さんと親父さんへのお土産か?」
「うん。名産品とかあればいいんだけど」
「なら
「桃? でも少し前に
桃が市場に並ぶのは暑い時期だ。王都だと
隣国とはいえ、旬は変わらないはずだ。桃は好きだが、さすがに難しいはず。そう思ったのだが、ドランはふっふふ~と得意げに笑う。
「この国では色んな種類の桃を育てていて、年中買えるんだ。ほら、あそこ。店出してるだろ?」
「本当だ!」
ドランが指差す先にあったのは『桃』ののぼり旗。さすがに並んでいるものが桃かどうかはこの
「あれってフルーツサンドにしたら美味しいかな」
自国では見かけなくなった桃を目にして思うのは、先ほど食べたばかりのフルーツサンドのこと。桃が甘い品種でも
「パフェもいいよな」
「ぱふぇ?」
「ああ。前にジゼルと食べに行ったことがあるが、桃のパフェは
「あれは美味しかったよね」
思い出すのは二年前。王家からの
小さめの桃とはいえ、かぶりついた時に一気に来るじゅわっと感は、カットされた桃では決して楽しめない。丸々一個だからこその
思い出したら満腹まで食べたのを忘れて、今からでも食べたくなってきた。ジゼルとドランは二人してほおっと息を
「たーちゃんたべてないよ!」
「そりゃあたーちゃんが来る前のことだからな」
「たべたいたべたいたべたいたべたいたべたいたべたいたべたい」
すごい
「今度は
「いっぱい買って帰って、親父さんに作ってもらおう。親父さんなら店で食べたものより美味いものを作ってくれるはずだ」
ドランの
そのうちにドランは早足で屋台に向かい、
「お金は後でいい?」
「さっきはジゼルに払わせたからな。絶対受け取らない」
「でも」
「それに俺も親父さんの作ったパフェとフルーツサンドが食べたい。これは材料代みたいなものだ」
「そっか」
「ああ。ジゼルからも頼んでおいてほしい」
「分かった」
そう言われてしまえば文句なんて言えやない。ジゼルだってすでに親父さんのパフェとフルーツサンドを楽しみにしている。いつの間にかお土産ではなくなっている。そう、理解はしている。だが生まれてしまった食欲という名の強い
代わりに何種類か食材を買っていこうと決め、ドランとたーちゃんと一緒に市場をぐるぐると回るのだった。
りんごと栗もいっぱい買って、上機嫌で配達ギルドに戻る。想像よりも長いお留守番に、待たされていたドラゴンさんはやや不服といった表情だった。
だが大量のフルーツサンドを並べれば一転して上機嫌へと変わる。一人前はドラゴンさんの一口へと変わり、次々と大きな口に納められていく。
「たまにはこうして出かけるのもいいな。娘とたーちゃんよ、また我が出かけに連れていってやろう」
「お
「坊一人だと気の利いたものを買ってこんからな」
あっという間に全て平らげ、フンッと大きな鼻息を鳴らす。ドラゴンさんも大満足の一品であったようだ。
宿屋『オリーブの
「そのフルーツサンドが本当に
「パフェもお願いします!」
「たーちゃんもぱふぇたべたい」
お願いしますと手を合わせるジゼル。
勢いよく頭を下げるドラン。
親父さんの足にしがみつきながらぴょんぴょんと跳ねるたーちゃん。
二人と一匹の様子に
「そんなに美味しかったのかい?」
「それはもう!」
「あんた、作ってやりなよ」
「作るのは構わないんだが、俺からもドランに頼みたいことがある」
「俺にできることなら!」
食い気味で返事をするドランの目には、親父さんが作った桃パフェが見えているのだろう。たーちゃんもすでに食べることが確定した気で
一方で、ジゼルは
親父さんのことだから難しいことは言わないのだろうが、
別の意味で力が入る二人だったが、親父さんから告げられた言葉は意外なものだった。
「少し先の話になるんだが、雪解け祭りに行って、ホットパウダーを買ってきてほしい」
「ホットパウダー?」
「確か親父さんがずっと使ってみたいって言ってた、雪解け祭り限定の調味料ですよね?」
ホットパウダーとは、身体の
売りに出されるのは雪解け祭りが開催されるひと月のみ。ホットパウダー欲しさに各国から料理人と商人が集まる。ただし買えるのはその年に一つだけ。
商人の大量買いを防ぐため、購入の際はその人の所属が分かるようなものを提示しなければならないという
寒くなると毎年親父さんが話してくれるため、よく覚えていた。
「ああ。一度使ってみたいとは思っていたんだが、うちからじゃ遠いし、何日も宿を空けるわけにはいかない」
「おまけに夜は
「馬車なら移動だけで一ヶ月以上かかるが、ドラゴンなら翌日には帰ってこられるだろう? 祭りの期間中なら行くのはドランの都合のいい日で構わないし、ドラゴン便のお金も出すから。お使いをしてきてくれると
ドラゴン便は非常に高い。親父さんはいつかの日のためにコツコツと資金を貯めていたそうだ。そのへそくりを出す
「これは個人的な頼み事、というかパフェとフルーツサンドを作ってもらう
「だがドランは配達を商売にしているだろう? それをタダで、っていうのは道理が通らない」
「それは親父さんにも言えることですよね?」
「単価が違う。やはりお金は払うべきだ。払えるか心配なら今から配達ギルドに予約しにいって……」
「俺の食欲を安く見ないでください。栗を使ったデザートだって作ってくれないかな……って下心もあるくらいなんですから」
ドランはジゼルに接する時よりも
ジゼルが思っている以上に渋栗のパンケーキも気に入っていたようだ。なんとも可愛らしくも彼らしい下心に、親父さんは目を大きく開き、そしてフッと笑った。
「悪かった。ドランはジゼルと同じくらい食べ物が好きだもんな。栗の方もちゃんと考えておく。相棒のドラゴンもフルーツサンド、食べるんだよな?」
「あいつは美味いものならなんでも食べます。それに雪解け祭りは俺も一度行ってみたかったんで。ジゼルも行きたいって言ってたよな?」
「確かに行ってみたいとは思ってたけど……。もしかして連れていってくれるの!?」
以前そんな話をチラッとしたことがある。だが親父さん同様、日数がかかることを理由に
そんななんてことない会話を覚えていてくれたなんて……。
「せっかく行くのに調味料一つだけで帰ってくるのはつまらないだろ? あいつだってジゼルとたーちゃんなら喜んで背中に乗せるはずだ。といっても泊まりにはなるから、無理にとは言わないが」
「じゃあドランの分の宿代は私が出すね!」
「いや、俺は配達ギルドに泊まるから。ジゼルとたーちゃんの分だけ予約してくる。人気の宿だと半年前に
「うん。分かったら教えて」
「ああ。それで、親父さん」
「桃のパフェとフルーツサンド、それから栗のデザートだろ? できたら配達ギルドに持っていってやるから安心しろ」
親父さんの言葉にドランは満足げに頷く。そして軽い足取りで配達ギルドへと戻っていった。
日が分かったら、その日をめがけて二日分の錬金飴ストックを作っておかないと。
それにしても泊まりがけのお出かけなんて初めてだ。ジゼルは今まで村か王都で過ごしてきた。王都なら
王都の外の話を聞くことも多かったし、楽しそうだとも思ったことはある。けれど行動に起こすことはなかった。それより
多分この先もそれは変わらない。その気持ちは本物で、けれど胸を
○ ○ ○
「あなたがジゼルさんですか! お会いできて光栄です。私、ブルーノと申します」
「たーちゃんもいるよぉ」
「ああ、君が看板タヌキのたーちゃんか!
「えへへ~」
今日はずっと前から約束していた『満月の湖』から依頼を受けていた
ブルーノの第一印象は感じのよさそうな人。
どこか
知らない人だと、どうしても一線を引いてしまいがちだ。なにより、相棒であるたーちゃんに好意的である点はジゼルからの印象に大きなプラスとなっている。
「今日はうちまで来てもらっちゃってごめんなさいね」
「近くですし、宿屋の客間はちょっと今使えなくて……」
ステファニーは申し訳なさそうにするが、ジゼルとしても都合がよかった。なにせドランと出かけてきた翌日から錬金飴を大量生産し、今では客間に
ジゼルとしては一日も休みをもらってしまったから、手が空いているうちに気合いを入れて
けれど女将さんから『寒くなったら絶対注文増えるから! 少なくとも宿屋ギルドからの注文は倍に増えると思った方がいいよ。瓶は後回しでいい。とにかく飴をたくさん作っておいておくれ』と熱弁されてしまった。
正直、まだまだたーちゃんハイテンション分のストックが残っているけれど……とは思った。けれどストックがあるに
さすがに倍の注文が来なくても、瓶を作らなければそんなに場所も取らない。『満月の湖』からの注文分を考えると、消費できない量でもない。
余裕があるうちに作ることで、
女将さんの助言通り、ここ数日で注文が一気に増えている。寒期に
客間に大量の物を置くことも許してもらい、ジゼルが留守にしている間は錬金飴のお客さんの対応までしてもらっている。本当に女将さんには感謝しかない。
そんなわけで、ステファニー達が気にすることなど一つもない。にこりと笑ってから、
「今回来てもらったのはね、あなたにこれを見せたかったからなの」
「
「ええ。実はキャンディボトルを
「ランプ、ですか?」
「本格的なものではなく、キャンドルホルダーとしての側面が強くなってくると思うけど、あなたの瓶は
「なるほど。ですが耐熱性ガラスを使用するとなるとややコストが……」
冒険者が使用することを想定した錬金ランプには、
特に今回は色味とデザインを重要視するということで、ガラスの配合バランスにも気を
ギルドに所属していた
まだ
「高くなった分は追加で出すわ。
「は、はぁ……」
ぐいぐいと来られ、ジゼルは上半身だけのけぞってしまう。評価の表れなのだろうが、今から次の話をするなんてさすがに気が早すぎる。
手紙のやりとりは何度かしているものの、こうして会うのは二度目。ステファニーの勢いにはまだまだ慣れない。初めてのたーちゃんはぽかんと口を開けている。だがブルーノにとってはいつものことのようで、
「私が提案させていただくデザインとリンクした香りや色味の蝋燭を集めていただきました」
ブルーノが切り出すと、ステファニーの表情も真面目なものに切り
「ここにある以外のものも後々用意させてもらうつもりだから、イメージと
「えっと、火を付けた時の明るさや火の大きさ、どのくらいの時間燃えるのかを教えていただきたいです」
「そう言われると思って、事前にそれぞれのデータは集めておいたわ」
「ジゼルさんのガラスを使えばまた色味が変わってくるとは思うのですが、こちらで用意させていただいたガラスを重ねたものがこちらになりまして。まずはテーマと瓶のベースカラーから決めて行ければと思っております」
「なるほど」
前準備はほとんど整っているということか。前に進もうという勢いだけではないところはさすが『満月の湖』のギルドマスターだ。差し出された冊子を軽く
「今回はステファニーさんからいただいたテーマを元に、『空』『植物』『住居』『動物』の全四つのテーマをご用意させていただきました」
「空と植物、動物はなんとなく分かるのですが、住居とは一体……」
ジゼルが質問した
「『住居』は私が追加させていただいたものでして! ジゼルさんの
そう言いながら、
「あ、これ可愛い」
「たーちゃんもこれすき~」
ジゼルとたーちゃんの目を引いたのは、シンプルなレンガのデザインだった。今作っている瓶より高さを少しだけ低くし、その分
入れるのは高さの低い蝋燭。芯を太くすることで、赤茶色のレンガの部分の明るさが優しく広がるのだ。
使用想定として、ベッドサイドに置いて読書をする老人のイラストが描かれている。メガネをかけた老人は少しだけジゼルの祖母に似ていた。自分の作ったものがこんな風に使ってもらえたら……と思い描きやすい。
「実はそれ、私も一番気に入っているデザインなんです」
「本当ですか!?」
「シンプルですが……いえ、シンプルだからこそ、ジゼルさんの持ち味が伝わるデザインだなと」
「私もいいとは思う。けれどこのデザインにするなら、来月には配り始めないといけなくなる。……納期がかなり厳しくなるわ」
「それは、そう、なのですが……」
ステファニーの言葉は商人としてもっともである。ブルーノもこのデザインを通すことはジゼルから作業日の余裕を
「一日でも早く配りたいとは思っているけれど、同時に
「来月までに作ればいいんですよね?」
「ええ。でもかなり難しいと」
「できると思います」
「え?」
「似たような色味なら作ったことがありますし、瓶の形自体も今作っているものと大きく変わるわけでもないので。
「直接持って来てちょうだい。しばらくは長時間留守にする予定はないから、時間はいつでもいいわ。でも無理しなくてもいいのよ?」
「私の中で完成品のイメージは固まっているので、生産日数的には問題ありません。ただ私が作ったものとお二人のイメージが違う場合もあると思うので、気に入らないようでしたら他のデザインも検討していければと思います。いかがでしょうか」
幸いにも錬金飴はストックに余裕がある。デザインが今日決まってしまえば、あとはキャンディボトルを作るだけ。
食べ物以外を錬金する際に使う
なにより、ジゼルが作った錬金ランプを
「私はそれで構わないわ」
「ジゼルさんのお手間にならなければ
「本来の使用目的は飴を入れる瓶なんですけどね」
ジゼルは少しだけ困ったように笑ってみせる。けれどすぐにデザイン画を受け取り、たーちゃんと共に宿屋に
部屋に戻る前、キッチンに顔を出す。ブルーノが描いてくれたイラストの色味を再現するには、どうしても必要なものがあるのだ。
「すみません、親父さん。今日、タマネギとりんごを使う予定はありますか?」
「ん? ああ、予定はないが、今から夕食に使うことはできるぞ。一個ずつでいいか?」
ジゼルの質問の意図に気づいたようだ。親父さんは調理台の上にりんごとタマネギを並べる。
「はい。お願いします」
親父さんはりんごの皮をスルスルと
「ジゼル、おなかすいちゃった? たーちゃんのぶんのあめあげようか?」
「ううん。これは瓶の色を付けるのに使うんだ」
「かわからいろでるの?」
「うん。りんごの皮とタマネギの皮を使うと、さっきブルーノさんが見せてくれたみたいな色が取れるの」
だが鉱物を使った方法ではどうしても出せる色が限定されてしまう。特に
ヒントとなったのは草木染めである。布や糸を染められるのであれば、
ちなみに余計な水分が混ざることによる耐久性の心配は、ガラス本体の強化と植物の
「おいしいだけじゃないんだね」
「ちなみに私が好きなオレンジは着色に使えるし、お
「おかし!」
たーちゃんにとって、着色や掃除よりもお菓子が大事なのだ。お菓子というワードだけですでにうっとりしている。今にも
「今度作ってやるからな」
「いいの!?」
「ああ、美味いぞ~。でも今日はりんごで
「うん。たのしみにまってる!」
「
「気にするな。
「はい。お願いします」
たーちゃんはりんごの皮とタマネギの皮が入った袋を、ジゼルはカットされたりんごを持って部屋に戻る。一緒にりんごを食べながら、ブルーノから預かってきたデザイン画を
「色味は調整していくとして、形と柄はどうやって作ろう?」
デザインがしっかりと書き
またガラスの色味も確認しておきたい。似たような色は作ったことはあるものの、ガラスの種類が変われば出る色味も
鉱物を使って調整はしていくつもりだが、今回はなるべく植物をベースとした色を作りたい。鉱物は発色がいい分、混ぜすぎないように注意が必要だ。
まずはもらってきた二種類の皮を
細かくなった鉱物をすり
チマチマと鉱物を追加しては混ぜてを
今回は日にちに余裕があることもあり、納得いく色味を追求していく。といっても色が決まれば終わりというわけではない。実際に完成したガラスが思っていた色と違うなんてこともザラだ。
「とりあえず一回作ってみてから考えよう」
作ったばかりの
少しすると釜の真ん中に、錬金飴よりも少し小さな球が発生する。これがガラスの
少し時間がかかるので、錬金飴を包みながら待つ。縁ギリギリまで育ったら一度引き上げ、冷めるまで待機。その間にもう一度ブルーノのデザインを確認する。特に蓋の部分の大きさを重点的に。
手で
「たーちゃん、この色どう思う?」
「ぽかぽか~ってなる。たーちゃんはすき」
「じゃあベースはこの色にしようか」
「うん!」
ジゼルも好きな色合いだ。キャンディボトルを冷ましている間に、残っている材料で同じ色を作っていく。完成したら染料は
「そのはこ、なぁに?」
「私が気に入った色を入れる箱だよ」
この箱には今までジゼルが作ってきた染料の中でも特にお気に入りの色を保管してある。ほとんどが錬金ランプを生産する際に作った染料である。
調整に時間がかかるのはもちろん、材料がやや
「前にたーちゃんが変身していた錬金ランプに使った色もあったはず……」
蓋の上に書いた日付を参考にいくつかの小瓶を持ち上げる。そして例の錬金ランプを作る際に使用した染料を見つけた。たーちゃんに見せると口元を
「ジゼルのいろだぁ。たーちゃんがだいすきないろ」
息を吐くように
「私も気に入ってる色なんだ」
たーちゃんの頭を
「ほかもみていい?」
「いいよ~。この中に柄に使える色があるかもしれないし、一緒に見ていこうか」
「うん!」
瓶全体の色に使うのとは違い、柄だけなら大した量は必要ない。ここにいい色があったらそこから使おう。本決まりになった際はメモを参考に作り直せばいい。