三章



「ふああああっ」

「たーちゃん、お腹なか出して寝ねてると冷えるよ」

 たーちゃんは大きくお口を開けて欠伸あくびをする。それを合図に、ジゼルは引き出しに常備してあるたーちゃんの腹巻きを取り出した。たーちゃんもハッとした様子で、ジゼルの手元までトコトコやってくる。

「そうだった! おなかまきまき」

「はい、ばんざーい」

 たーちゃんに両手を上にしてもらい、腹巻きを巻く。親おや父じさんのお手製で、右側には中くらいのボタンが縦に三つ並んでいる。

 たーちゃん一人でも着ちやく脱だつできるところが親父さんのこだわりポイント。とはいえ面めん倒どうくさいのか、たーちゃんが自分で着けようとしないことは内ない緒しよである。

「これで大だい丈じよう夫ぶっと」

 初めこそ籠の中で丸まって寝ていたたーちゃん。だが慣れたからなのか、今では宿屋のカウンター上で大の字になって寝ることも。天窓から差し込む日差しが心ここ地ちいいようだ。

 お客さんが来たら起きることがほとんどだが、常連さんやドランなど、慣れた相手が来た時には安心して眠り続ける。

 たーちゃんはタヌキの姿の精霊とはいえ、相手はお客さん。怠たい惰だな姿を見せるのも……と思い、お客さんからは見えない位置に台を置き、そこに籠を持ってきたこともある。だがたーちゃんを心配する声が多く寄せられたことで、たーちゃんは堂々とお昼ひる寝ねすることに決まった。

 今では『たーちゃんのへそ天爆ばく睡すい姿』はレア姿の一つとして、お客さん達たちをほっこりとさせている。

 以降、それ以外のことも基本的には好きにさせるという方向で決まった。だがこの腹巻きは別だ。そろそろ寒期に入るため、昼間でもさほど気温は上がらない。風邪かぜ対策として、温かくなるまでは腹巻きをして寝る約束が結ばれている。

「おやつなくなるところだったねぇ」

 お腹の模様と同じ柄がらの腹巻きを撫なでながら「せーふ」と長い息を吐いている。ちなみに腹巻きを忘れて寝たらおやつ抜き。

 たーちゃんに腹巻き着用の習慣を付けさせるためのルールなのだが、約束を破った際に一番大きなダメージを受けるのは親父さんである。おやつが載のった皿を持ち帰るその背中は悲ひ哀あいに満ちていた。

 ジゼルとしても親父さんにあんな悲しい思いをさせたくないので、腹巻きなしですや~っとし始めたたーちゃんを起こして腹巻きを着けるようにしている。

「今日のおやつはおいもとかぼちゃのクッキーだって」

「たーちゃんのすきなおやつ!」

「そうだよ。ステファニーさんがくれたお茶も用意して食べようか」

「たのしみ~」

「楽しみだね」

 のほほんとした穏おだやかな空気の中、ジゼルはメッセージカードにスタンプを押おしていく。

 初回の手紙には案内を付けるようにしていたのだが、最近は知り合いに配るためにいくつか余分に欲しいという声ももらうようになった。

 一つ一つは少しでも、人数が多ければその分、作成にかかる時間は増えていく。錬金術で作ってしまうのも手だが、途と中ちゆうで文面が変わる可能性がある。主に値段面が。

 そこで錬金術を使って、スタンプを作ることにしたのだ。スタンプは二つ。一つは値段や配送方法などを書いた、販はん売ばいに関する案内のスタンプ。そしてもう一つは錬れん金きん飴あめ自体の説明と注意事じ項こうのスタンプ。