俺たちの前には、巨大な影がきつりつしていた。

 それは奇妙な構造をしている。

 様々な生物の骨を無理矢理つなぎ合わせたような格好をしていて、その骨でできた体の中心部に巨大な魔石が輝いていた。

 それが、先ほどリタが発見した〝獣王の息〟である。

「……グラァァァァ!?

 骨のキメラが、吠えた。

「あいつの弱点は!?

 俺が尋ねると、アメリアは言う。

「言わずもがな、魔石なんだけどね……砕いてしまうと使い物にならないだろう?」

「……っ! これは面倒くさいかもな」

「そうなのさ。前の時は砕いてしまったんだよ」

 だから、アメリアのネックレスに加工されていたのか。

 他の部分も同様に砕かれて加工されたのだろう。

 しかし、今回はあれを無傷で手に入れる必要がある。

 そうでなければ聖樹を救えないからだ。

「皆さん、よろしくお願いします……!!

 ファルージャが悲痛な声でそう叫ぶ。

 彼自身ももちろん戦うつもりで短杖を構えているが、全員が同じ意識で戦わなければならないのだから大変だ。

「……よし、じゃあまずは頭を潰すのを目標にしようか。あれは容姿から見るに、宝玉をエネルギー源として動く一種のアンデッドだ。アンデッドは意外に頭を潰せば動かなくなるパターンが多い」

 俺がそう言うと、全員が返事をして散開する。

 的は絞らせない方がいいということをわかっているのだ。

 それから俺たちは遠距離攻撃を主体に攻撃を加えていった。

 アメリアと俺は可能な限り魔術を放つ皆に骨のキメラが注意を向けないよう、足下を直接武器で攻撃するなどしてヘイトを稼ぐ。

 こういう生物としての思考能力を持たない魔物は、直接攻撃をしてきた者を優先的に狙う傾向があるからだ。

 その狙いは当たったらしく、骨のキメラは俺とアメリアを執拗に狙ってくる。

「フローラ! 俺は良いからアメリアに結界を!」

「わかった!」

 俺は自前で結界を作れるので問題ない。

 アメリアは戦い方が猪突猛進気味というか、防御より多少怪我を負ってもいいから相手に全力を叩き込む、という感じの動きをするからな。

 それも悪くはないのだが、流石にこの巨大な骨のキメラに一撃もらったらアメリアでもかなりのダメージは避けられない。

 そのことを思えば、当然の判断だった。

 そんな感じで少しずつ攻撃を加え、敵の戦力を削っていく。

「頭、やったか!?

 おそらくは頭部に該当すると思しき骨を破壊することに成功するが……。

「まだ動いてるね!」

 アメリアがそう言う。

「これじゃだめなタイプだったか……」

「次は!?

「今度は宝玉回りをやるしかないな。あの辺りの骨と、魔力によって繋がっているからその骨を壊せば間違いなくやれる。ただ、かなり危険だ」

「それくらい、覚悟の上さ!」

 これをやれるのは、俺とアメリアしかいないからこその台詞だった。

 魔術で狙うとどうしても破片が宝玉に命中する可能性があるし、そもそも宝玉の放つ魔力によって力場が形成されているため、狙いが正確であってもおかしな軌道にぶれる可能性がある。

 純粋な物理攻撃ならそういうことは起こらない。

「細かい作業は得意か?」

 俺が役割分担のために一応、アメリアに尋ねると、彼女は骨のキメラの攻撃をいなしながら、にやりと笑って、

「得意そうに見えるかい?」

 と言ってくる。

 まぁそうだよな。

 わかっていたよ。

 でも一応聞いてみたんだ……。

 俺はすぐに頭の中でここからの手順を組み立てて、アメリアに伝える。

「だよな! なら、アメリアはしばらくあれの攻撃をいなした後、隙を見つけて足下を崩してくれ」

「了解」

 うだうだと文句を言わず、即答してくれるのはありがたい。

 普段も辺獄の森で、同族たちとチームを組んで狩りをしているからこういうことには慣れているのだろう。

 俺はむしろ逆で、最近は特にソロで戦うことが多いため、人に指示を飛ばすのは実際は微妙だ。

 勇者パーティーで旅していた時も、指示を出すのはユークかテリタスだったからな。

 俺とフローラは専ら、指示に従うか、何も聞かずに好き勝手に動くかのどちらかだった。

 ただ、今回ばかりはそうも言っていられない。

「……ここだ!!

 アメリアがそう言って大斧を振るう。

 どうやら骨のキメラの隙を見つけたらしい。

 アメリアの一撃を足下に受け、骨のキメラは大きく体勢を崩した。

 すると、その胴体がこちらに向かって落ちてくる。

 その瞬間、俺は自分の足にいつもの数倍の身体強化をかける。

 そして、思い切り地面を蹴り、キメラの胴体めがけて跳んだ。

 そこには骨で囲まれて固定された〝獣王の息〟がある。

 骨のキメラは決して意識的にこちらに向かってきているわけではないため、俺が近づいているのを理解していながらも、その速度を変えたり、軌道をずらしたりはできないようだった。

 俺はそこを狙って、剣を振るった。

 ちょうど、骨で囲まれた部分だけをきれいに切り分けるように。

 すると、その瞬間、骨は力の供給を絶たれたかのように、ガラガラと音を立てて〝獣王の息〟から剥がれていく。

 むき出しとなったそれを、俺はキャッチし、そのまま着地した。

 振り返って見てみると、骨のキメラそれ自体も完全に接合を失っており、ぴくりとも動かない。

 どうやら〝獣王の息〟からの力の供給が途絶えると、もう動けないようだった。

 まだ僅かにエネルギーが残っていて、気配は感じるが、それも徐々に失われていき、そして完全に沈黙したのだった。

「やったわね! クレイ」

 そう言ってまず最初に駆け寄ってきたのはフローラだった。

 俺以外の全員に常に結界術や補助魔術をかけ続けた彼女であるが、あまり疲労がたまっていなそうなのは、魔王の時と比べるとこれが比較的楽な戦いだったからだろう。

 あの時は俺も含めて、全力を超えた力を出さなければどうにもならなかったからな。

 フローラも例外ではない。

 今のフローラは十分に余力を残していて、魔力もまだ八割方あるくらいだった。

「あぁ、なんとかな。フローラのお陰で、全員無傷だったようだし、それも良かった」

「みんな戦い慣れてるみたいだったから、そんなに心配する必要もなかったみたいだけどね。衝撃を受けたのはリタとキエザくらいかしら」

 彼女が視線を向けた方を見ると、そこにはリタとキエザがほっとしたように座り込んでいた。

 安全圏に下がってもらっていたとはいえ、流石に今回の戦いは彼らには刺激が強過ぎたようだ。

 あの骨のキメラは大きさだけなら竜の成体にも匹敵するようなサイズだったから、さもありなんという感じではある。

 強さは……どうだろうな。

 単純に強さだけで言えば、竜の方が強力だったが、胸元に存在する〝獣王の息〟を無傷で採取しなければならなかったので、難易度で言えばこちらが上、という感じだったか。

 できればもう戦いたくない相手である。

 強いというより、面倒くさ過ぎた。

 ま、魔物の素材の採取というのは大抵そういうところがあるけれど、失敗が許されないというのが一番厳しかったな。

〝獣王の息〟は滅多にできるようなものではないようだから、これを逃すとそれこそ数十年待たなければならなかったかもしれないのだ。

 なんとか無傷で得られて良かった。

「また随分と器用にやったね。この骨の断面……まるで鏡みたいじゃないか」

 アメリアが俺の切断した骨のキメラの残骸を一本拾って観察しながら、そんなことを言いつつ近づいてきた。

「気合いを入れて切ったからな」

「そうなると見えないほどの速度になるわけだ。そりゃ、私程度じゃ勝てないわけだね……」

「ま、経験が違うからな。アメリアも俺と同じくらい過酷な戦いの日々に浸かれば、すぐに同程度のことはできるようになるぞ」

 これは冗談ではなく、本気だ。

 勇者パーティーでの旅の間、当然毎日戦いに明け暮れていた。

 戦闘というのは技術ももちろん必要だが、それ以上に可能な限りたくさんの敵と戦うという経験を積むことが非常に大切なのだ。

 その意味で、アメリアにはまだまだ戦闘経験が欠けている。

 特に対人戦には慣れていないようだった。

 まぁ、辺獄の中からあまり出てこないせいで、そういう経験を積む機会は少ないのだろうな。

 あっても同族相手になるので、未知の相手が出てくると少し判断に迷ってしまい、そこが隙になるのだ。

 そんなことをアメリアに言うと、彼女は納得したように頷いて言う。

「確かにそういう部分はあるね。たまに森の外に出て、必要なものを買い出しに行くこともあるんだけど、そういう時だって大抵敵は魔物だし、人族がいても大したことない盗賊とかだしねぇ……」

「なかなか、相手探しは難しそうだな。そもそもアメリアの実力なら普通は力尽くで勝ててしまうだろうし」

「そうなんだよね……ま、考えておくさ。それより、〝獣王の息〟だ」

「あぁ、そうだったな……おっと、みんなも興味津々か」

 気付いたら全員が俺の周りに集まっている。

 皆の視線が向かっているのは、当然〝獣王の息〟に対してである。

 アメリアのネックレスで破片程度の大きさのものは見たが、今回手に入ったものはそれよりも遥かに大きい。

「それが〝獣王の息〟ですか……やっぱり、小さいものとは受ける印象が違いますね」

 そう言ったのはリタだった。

「そうか? まぁ感じられる魔力は多い気がするが……」

 言ってしまえばその程度の違いに思える。

 あの巨大な骨のキメラを動かしていたのだから、発している魔力が小さくとも、内包されている魔力はかなり大きいのだろうが……。

「えっ、兄貴。これすごいよ……近くにいるだけで震えるくらいだ」

 意外なことにそう言ったのは、キエザだった。

「震えるって?」

「見えにくいけど、この中心に物凄い魔力が圧縮されているのが感じられるんだ……え、これ、俺だけ……?」

 他の面々がキエザを見て感心しているのに気付き、彼は慌ててそう言った。

「みたいだな。確かにそう言われると……僅かにそんな気配もある気がするが、キエザほどにはっきりとはわからない」

 これについてはシャーロットとファルージャ、それにイラのエルフ組も同じなようだ。

「私もわかりませんね……不思議な魔力が少し、というだけです」

「私もだ……これが本当に聖樹様のお力になるのかと不安だったが、キエザ殿が感じておられるほどの力が内包されているのならば、安心して良さそうだな」

「同感ですな」

 褒められて、キエザは少し恥ずかしそうだ。

「いや、そんな……でも、俺の気のせいってこともあるからそんなに信用されても……」

 少し自信なさそうだったが、おそらく彼の勘は正しいだろう。

 そしてなぜキエザだけ感じ取れるかと言えば、彼のスキルシード由来の力だろうな。

 キエザのスキルシード《魔導剣士》は、魔導師と剣士の両方に適性を持つ、希有なものだ。

 そして、その両方に適性があるということは、魔力や闘気などの不可視の力が放つ気配に敏感であるということでもある。

 そういったものを感じ取って、周囲の状況を把握し、また自らが扱う技術を高めていくためだ。

 この点、俺はしょぼいスキルシードしかないし、フローラの〝聖女〟は法術特化型だからな。

 他の面々は異種族なのでスキルシードという人族のみに与えられた恩恵を持たないし。

 まぁその代わりに、獣人族は恐ろしいほどの身体能力を持っているし、エルフはエルフで生まれつき強力な魔力や長い寿命を持ち、さらには精霊との対話能力まであるのだからどちらがより優れているという話にはならない。

 そんな話をキエザにすると、彼は納得して頷く。

「そういうことなのか。確かに最近、より遠くの魔力や闘気の気配がわかるようになってきた気がする」

「アルザムとの修行の成果が出ているんだろうな……その調子で頑張れば、一人で辺獄を歩ける日も遠くないぞ」

「本当に!? いや、でもその前にもっと他のところで経験を積みたいような」

 確かに最初からいきなり辺獄探索、なんていうのはあまりにも難易度が高いか。

 そのうち王都に行って、冒険者になるなり傭兵になるなりして、もう少し危険性の少ない場所で経験を積んだ方が彼のためかもしれない。

 ともあれ……。

「これで〝獣王の息〟は手に入りました。次は〝魔人の角〟ですね」

 俺がそう言うと、ファルージャが頷く。

「ええ、そうですね。あ、その〝獣王の息〟なのですが、保管の方はクレイ殿にお願いしてもいいですか?」

「構いませんが、どうしてです? せっかくの品なんですから、手元で保管したいのでは?」

「そうしたいのはやまやまですが、大きさもありますし、かなり容量の大きな収納袋を持っておられるクレイ殿にお願いした方がよさそうかなと」

 そうは言うが、ファルージャたちもこれが入りそうな収納袋を持っていたような気がするが……。

 まぁ、いいか。

 何か他にも理由があるのだろうが、ここで尋ねても答えてはくれないだろう。

 誰が持っていても使い道はもう決まっているのだし、構わないか。

 そう思った俺は、ファルージャに言う。

「わかりました。では、必要になるその時まで、俺が預かっておきましょう」

「お願いします」

 それからアメリアに向き直る。

「ってことなんだが、持っていって構わないんだよな?」

〝獣王の息〟は獣人族の秘宝だ。

 事前にしっかりと許可は得ているとはいえ、実際にこうして手に入れたらまた話は違ってくる、なんてこともあるかもしれない。

 昔、旅の最中にそういうことがたまにあったのだ。

 強力な魔物が襲ってきているから倒してほしい。

 魔石や素材は好きにして構わないから、討伐を頼めないか。

 そんな依頼を受けて実際に討伐した後に、やっぱり魔石や素材を置いていってくれないかと言い出すとかな。

 何をふざけたことを、と言いたくなるところだが、その判断はユークが行っていた。

 大半は言われた通り置いていっていた。

 それで路銀がなくなるようなことはまずあり得ない旅だったからということもあるが、やっぱり勇者パーティーという触れ込みで旅をしている以上、悪口を吹聴されかねないような行動は可能な限り避けたかったのだと思う。

 ユークの場合説得力のある言い訳も可能で、自分は王子だからはしたがねなんか必要ないと言えば良いというのもあった。

 これが普通の平民の冒険者だったら、場合によっては冒険者の依頼料の相場を破壊しかねない行為と見られてしまう可能性もある。

 だが、ユークはただ、自分は王子なので金などいくらでもあると言っていれば誰も反論ができない。

 ある意味、いい権力の使い方と言えた。

 そんな経験をした俺は、今回の戦利品は最終的にどのような扱いになるのか、その確認をアメリアに求めたわけだ。

 これに彼女は答える。

「最初に言った通り、持っていってもらって構わないよ。まぁ、長はそれを直接見たがるとは思うが、それくらいだろうしね」

「見たがる? どうしてだ?」

「以前の〝獣王の息〟はほら、砕けてしまっただろう。完全な形のそれが手に入るのは珍しいことなのさ。少なくとも、うちの一族には伝わっていないことでもそれがわかる」

「なるほど……後でもめないためにも、一旦見せた方がいいかもな。ファルージャさん、どうでしょうか」

 手に入れたのは俺だが、所有者というか使うのはファルージャだから聞いてみた。

 すると彼は頷く。

「もちろん、問題ないです。本来なら獣人族が手に入れるべき品ですから……」

「では、とりあえず獣人族の集落……獣の里に戻りましょうか。それから〝獣王の息〟を長に見せに行けば良い」

 そういうことになった。


*****


「おぉ……! これが〝獣王の息〟! 素晴らしいな……本来これほどの輝きを放っているのか」

 獣の里に戻り、早速、長に〝獣王の息〟を見せに行くと、案の定喜んでくれた。

 そして〝獣王の息〟に触れるその手つきは丁寧で、少しの傷もつけまいと配慮してくれていることがわかる。

 実際には少し触れた程度でどうこうなることはなさそうなので心配はない。

 どうも、かなりの硬度を持つようで、傷をつけようと思ったら結構な力が要りそうに感じるのだ。

 落としたくらいではまず、傷つかないな。

 重量級の武器を持って、破壊する気で振り下ろすくらいのことをしなければ。

 以前〝獣王の息〟を手に入れた時は、まさにそうやってあの骨のキメラを倒したのだろう。

〝獣王の息〟はあのように、出来上がると周囲の骨など無機物をまとうように集め、そして魂を吹き込んでしまうらしいのだ。

 だからアメリアはあそこに行く前にしきりに覚悟しろと言っていたわけだ。

 今回の戦闘は予定通りだったということだ。

 ただ、今回の〝獣王の息〟は質が良いのか、あの骨キメラは言い伝えられているよりもかなり大きかったらしい。

 本来はあの半分くらいのサイズが普通だという。

 ちなみに、今さらだがあの骨キメラの名前は、ボーンキメラ、というらしい。

 そのままだな。

 名前をつけたのは昔の獣人族ということだ。

 あんな魔物はここ以外で見たことがないため、非常に特殊なレアモンスターであるとも言える。

〝獣王の息〟は獣人族の魔力が凝ればできるのだから、他に獣人族の墓があれば、そこでも生成されるのだろうか?

 それとも辺獄という特殊な空間だからこそ生成されたのだろうか。

 その辺りは外の獣人族に聞いてみなければわからないことだな。

 今まで外で獣人族に会ったことはあるが、流石に墓の話になどなったことがないからその知識はなかった。

 今度会うことがあれば、うまく話を振って聞いてみようと思った。

「いいものを見させてもらった。ありがとう」

 クラテがそう言って〝獣王の息〟を返してくる。

「もう良いのですか?」

「あぁ。十分だ。別に何か特別な使い道があるわけでもないしな。それが聖樹の救済に使えるなら、是非使ってくれ」

「そのように。獣人族の長、クラテ殿のご厚意に、深い感謝を」

 ファルージャがそう言って頭を下げた。

「いやいや、頭を上げてくれ。それに、まだ必要なものがすべてそろったわけではないのだろう?」

「それは……はい。残るは〝魔人の角〟のみですが……」

 厳密にはまだ〝ハイエルフの涙〟も入手していないが、それは生産者たるシャーロットとメルヴィルにもらえばいいので心配する必要はない。ちなみに、〝ハイエルフの涙〟もまた、〝獣王の息〟と同じように魔力の凝縮されたものらしいが、液体状になっている点が異なると聞いた。

 しかし〝魔人の角〟は手に入れられるかどうか、微妙なところだ。

 クラテはこれについて話す。

「魔族はこの森にもいるから、彼らに協力してもらえれば良いが……住んでいる場所がな」

「確か、今回行った墓地のさらに奥だと」

「そうなのだ」

 それを考えると、あのまま奥に向かって魔族と交渉してくれば良かったのでは、と思うかもしれないが、それには問題があった。

 リタとキエザだ。

 辺獄の魔族がどのような性質をしているかわからない以上、二人を連れていくのは危険だ。

 魔物の一匹や二匹からは守れるが、何匹も徒党を組んで襲いかかってくる者相手となると、どんなからめ手を使われるか、すべて予想することは不可能だからだ。

 少なくともヴェーダフォンスまでは二人を送り届けて、それから二度手間になるが、墓地の向こうへと行く、そういう話になっているのだった。