「なんだ!? どっから来た!」

「ヤベーよ! 豹だろ!?

「早く、お嬢さんを捕まえろ!」

 ユキが、男達を倒して行く。騎士団や領主隊相手でも、あっと言う間に倒したんだ。こんな奴等は瞬殺だ。あっという間に倒してしまった。

 オクソールが騎士達と一緒に走って来た。

「殿下!!

「オク! レピオスを連れてきてもらって!」

「殿下、これはどう言う事ですか!?

「アイスクラー侯爵の令嬢が襲われたんだ! 侍女が令嬢に薬を盛ったらしい!」

「分かりました!」

 オクソールは、一緒に来た騎士達に指示を出していく。

「殿下、参りましょう」

 ユキが倒した男達を、騎士達が拘束している。俺はもう一度、辺りを見渡した。もう、他にいないよな? その時だ。近くの木の上で何かが光った。

『エアーインパクト』

 ──ドサッ!!

 俺が、片手をかざし、風魔法で空気の衝撃波を放つと男が木から落ちた。

 やっぱりだ。最初から、なんとなく視線を感じてたんだ。警戒しておいて良かった。

「拘束しろ!」

「はッ!」

 オクの指示で、騎士が拘束に走る。

 ……と、あれれ。アースとレイ、見に来たのか。危ないぞ。柱の陰から、ヒョコッと顔だけ出している。近くにいた騎士に頼む。

「ねえ、あそこの柱の陰に男の子が二人いるんだ。危ないから、ご両親のところまで連れて行ってあげてほしい」

「はッ、殿下。畏まりました!」

 騎士が走って行く。これで、大丈夫か。

「オク、控室に行く?」

「いえ、直接レピオス殿のところへ行きます。身体が硬直してきています。殿下はお戻り下さい」

「何言ってんの? ボクも行くよ!」

「では、殿下。急ぎます。ユキ、殿下を」

「分かった」

 オクが令嬢を抱き上げて走る。その後ろをユキに乗って走る。

 リュカが騒ぎを聞きつけたのだろう。走ってやって来た。

「殿下! ご無事ですか!」

「リュカ! ボクは大丈夫!」

「驚きました!」

「ボクじゃなくて、令嬢が狙われたんだ!」

「ご令嬢が!?

「オク、こいつらどうやって城に入ったんだろう?」

「まだ、分かりません。拘束した者を取調べます。あと、侍女も拘束している筈です。リュカ、先に行ってレピオス殿に知らせてくれ! 薬で身体が硬直していると!」

「はい! 分かりました!」

 リュカが、あっと言う間に走り去って行った。

「おー、リュカ早い」

「狼ですから」

「そうだった」

 リュカも獣人だって、忘れてたわ。


 オクソールを先頭に、俺達は慌ててレピオスのいる医局へと入って行った。

「殿下! ご無事ですか!?

 レピオスの最初の一言だ。いや、俺じゃないし。リュカはちゃんと伝えてないのか?

「レピオス、ボクじゃないよ。オクが連れてきた令嬢だよ」

「あぁ、それは失礼しました。リュカ、ちゃんと言って下さいよ」

「え!? 俺、言いませんでしたか?」

「誰が? が、なかったですね。リュカが走ってきたら、当然殿下だと思ってしまいます」

 ま、そうだよなー。リュカは俺の従者兼護衛だもんな。

「レピオス、薬を盛られたらしいんだけど、何かは分からないんだ。挨拶の時から顔色は悪かったけど、身体は何ともなかったみたい。少しずつ動かなくなってきたらしい」

「なるほど。オクソール殿、こちらに寝かせて下さい」

 オクソールが、レピオスの指示に従う。レピオスは、令嬢の顔色を見て口元の匂いを嗅ぐ。薬によっては、独特の匂いのする物があるからだ。

「レピオス、瞳孔はどう? 脈は?」

「殿下、それはどういった……?」

「え……?」

 この世界ではまだないのか? 俺はレピオスの邪魔をしない様に、令嬢を寝かせたベッドの反対側に回る。首の頸動脈を触ってみる。しっかりとした脈が触れている。手首の左右差もない。

 眼瞼結膜を見る。大丈夫だ。瞳孔は……、よく分からん。ペンライトが欲しいな。打診は……このドレスだと無理だな。その間に、レピオスがスキャンしている。そうだ。スキャンがあるから、そんな事をしなくても全部分かるんだ。

「レピオスどう?」

「毒ではありませんね。一時的に身体の動きを奪うだけの、軽い痺れ薬の様なものでしょう。水分をとって頂いて、身体の外に排出しましょう。時間と共に少しずつ動くでしょう」

「レピオス、後遺症は大丈夫?」

「心配ないと思います。念の為、薬湯を飲んで頂きます」

「まだ小さいし、女の子だから……」

「はい、気をつけて見ておきますよ。オクソール様、令嬢のご両親には?」

「騎士が知らせているはずだ」

 うん。オクソールが指示してくれていたからな。

「リュカ、ここに付いていてくれる? また狙われたりする可能性が、ない訳じゃないから。ボクはオクと一度戻るよ」

「はい、分かりました」

「何かあったら、すぐに教えてね」

「はい。殿下も、念の為お気をつけて」

「うん。ありがとう。レピオスじゃあ、お願い」

「はい、畏まりました」

 俺はオクソールとユキと一緒に戻る。

「殿下、どう言う事でしょう?」

「うん。ボクじゃなくて、令嬢が狙われたね」

「あの令嬢はどちらの?」

「えっとね、衛生管理局局長のアイスクラー侯爵家のご令嬢だ」

「衛生管理局ですか」

「うん。犯人も薬に詳しい人かな?」

「かも知れません。アイスクラー侯爵家と言えば、医療院や薬店も経営しています」

「へえ、手広くやってるんだ。敵は少なくない、て事かな?」

「ですね。ところで殿下」

「なぁに?」

「ユキは、転移ができるのですか?」

「え? 転移? ユキ、そうなの?」

 俺の横を歩いているユキに聞く。

「リリ、今頃何を言っている」

 げっ……気付かなかったぜ。

 そう言えば、さっきも風が収まったらユキがいたよな。あれ? 辺境伯領の時もそうか。一瞬で港まで来たよな? ユキ、凄いじゃん!

「ユキはさすが神獣だね」

「はぁ……殿下、今更ですね」

「まったくだ」

 あれれ、呆れられちゃったよ。

「殿下! ご無事ですか!?

 あ、セティだ。もしかして、騒ぎになってる? セティに状況を説明した。

「それで、アイスクラー侯爵は?」

「はい、部屋でお待ち頂いております」

「じゃあ、ボク説明するよ。騎士団の話はまだ聞けないのかな?」

「はい。まだ取調べができておりません」

 そっか……まだ時間が掛かるかもな。

「そうだ、侍女は?」

「はい。控室におりましたので捕らえております」

 んー、先に父と情報を共有する方がいいか? と、思ってセティを見る。

「はい。先に陛下と話される方が宜しいかと」

 何も言わないのに、分かるのかよ。セティ、恐るべし。忘れちゃいけない、セティはニルのパパだ。セティに先導されて、オクソールやユキと一緒に父の執務室にやって来た。

「リリ! 心配したわ!」

「母さま、大丈夫です」

「ユキが守ってくれたの? 有難う!」

「当然だ」

 ユキったら男前だね。母に抱きつかれているよ。ユキのモフモフは手触り最高だからね。

「で、リリ。どうなっているんだい?」

「はい、父さま」

 俺は経緯を説明した。

「なるほど、リリはよく気付いたね。しかし、近くにいる騎士にどうして言わなかったのかな? 危険なのは、リリも同じだからね」

 まあ、そうなんだけど。ちょっと様子を見るだけのつもりだったんだよ。

 まさか、こんな事になるなんて思いもしなかったんだ。

「はい、父さま。すみません」

「リリ、シグフォルス侯爵とジェフティ侯爵の子息とは仲良くなったのかな?」

 誰だそれ? 全然分からん。コテンと首を傾げる。

「殿下、あの時私に知らせに来て下さったご子息です」

「ああ、アースとレイだ。父さま、あの二人はギラギラしてなかったので、普通に話せました」

「ギラギラ?」

「はい。ボクに取り入ろうと、ギラギラしてない」

「ああ、そう言う事か。彼ら二人も協力してくれたそうだから、改めて招待でもしようか?」

 まあ、どっちでもいいさ。

「あれ? リリは興味ないみたいだね」

「父さま、お任せします。ボクはどっちでも良いです」

「リリ、そんな事を言ってると、お友達ができないわよ?」

 まあ、母の気持ちも分かるが、なんせ中身は大人だからな。ぶっちゃけレピオスと話してる方が楽なんだよ。心の友達だし。まあ、いいっか。

「では、母さま。二人にもお礼を言っておきたいです」

「そうね。そうしましょう」

「父さま、アイスクラー侯爵に説明は?」

「ああ、セティに頼むよ。リリも同席したいのかい?」

「いえ、特には。セティがしっかり説明してくれるなら、それで良いです。でも、令嬢は暫くレピオスが付いて治療します」

「殿下、もちろんその事もご説明致します。アイスクラー侯爵は、医療院を経営なさっておられるので、そちらに移動なさりたいかも知れません。令嬢は、動かせる状態ですか?」

「今日は無理じゃないかな? 意識が戻って、レピオスの許可が出れば良いと思うよ。その時は、ちゃんと症状や治療内容を引き継ぎする様に言って欲しいな」

「はい。畏まりました。では、私はご説明に参りますが、他にはございませんか?」

 俺はないな。まだ、何も解明されてないしな。それはそうとだな。

「父さま、捕らえた者達は城にはどうやって入ったのでしょう?」

「まだ全然分からないね。尋問が進まないと」

 なんだか、物騒だな。城も安心できない、て事だ。

「子供を巻き込むのは、許せません」

「分かっている。リリもハッキリと解明するまでは、絶対に一人では行動したら駄目だ。必ず、オクソールかリュカと一緒に動きなさい」

「はい、父さま」

 オクソールとユキと一緒に、部屋に戻ったらニルが駆け寄ってきた。

「殿下、ご無事で!」

「ニル、大丈夫。ボクが狙われたんじゃないから」

「そうなのですか? 突然、ユキが消えて驚きました」

 ああ、そっか。ユキを呼んだからか。ニルはユキと一緒に部屋にいたんだ。

「心配かけちゃったね。ニル、ごめんね」

「いいえ、殿下。ご無事で良かったです。りんごジュースをご用意しますか?」

「うん、おねがい。ねえオク、ユキが倒した奴等の尋問はどうするの?」

「連行して行ったのが、第1騎士団ですので既にそちらで始まっていると思います」

 そうなのか。第1騎士団て事はフレイか。まあ、詳細が分かるまでどうしようもないよな。待つか。

 結局、お披露目パーティーはディアーナ嬢の件があったので、お開きになった。

 お披露目パーティーに、力を入れていた貴族達は残念だろうが、俺はラッキーだ。

 もう、あんなギラギラした目で見られるのは御免だ。


 そうして、数日が過ぎた頃にフレイに呼び出された。

「兄さま、お呼びですか?」

「リリ、またお手柄だったな」

 何のことだ? と思いながら、ソファーに座る。

「兄さま、何ですか?」

「アイスクラー侯爵令嬢の、誘拐未遂事件だよ」

「それは、お手柄ではありません。体調の悪い人を労るのは普通の事です。それで、詳細は分かりましたか?」

「ま、今日はその報告だ。リリが気にしていると聞いたからな」

 フレイ率いる第1騎士団が、実行犯と侍女を取り調べた。ぶっちゃけ、実行犯は何も知らなかった。誰だか分からない男に金で雇われたらしい。しかし、侍女はかなり核心まで知っていた。余程騎士団が怖かったのか、もう抵抗しても無理だと思ったのか。ペラペラと喋ったそうだ。

 黒幕は、レークス・エリニース。ディアーナ嬢の父親である、ヒューイ・アイスクラーに敵対する侯爵だった。なんでも、貴族専門の豪華な医療院を経営しているそうだ。

 ディアーナ嬢の侍女は、元はエリニース侯爵の前妻の侍女だったらしい。

 15年前に、前妻が亡くなった。その後、後妻の侍女をしていたそうだ。その侍女が、エリニース侯爵の指示で、昨年からディアーナ嬢の侍女として、入り込んでいた。ディアーナ嬢が盛られた薬は、レピオスが言っていた様に少しの時間、身体の自由を奪うだけで毒性はなかった。

 実行犯を城に入れたのも、この侍女だった。

「兄さま、敵対しているからと言って、どうして令嬢を誘拐までしたのですか?」

「ああ、それだが。子供を失う恐怖を思い知らせたかったらしい」

「どう言う事ですか?」

「エリニース侯爵は、前妻と子供を同時に亡くしている。正確には、出産が難産で死産だったそうだ。そして奥方も、そのまま亡くなったそうだ」

「それが、どうしてアイスクラー侯爵令嬢を、誘拐する事に繫がるのでしょう?」

「亡くなった前妻の出産に関わったのが、アイスクラー侯爵が経営する医療院だそうだ」

 この世界、ポーションや回復魔法があるせいか、現代日本の様に医療が発達していない。

 難産で亡くなる子もいる。産まれてきても、新生児特有の高熱で亡くなる子もいる。いくら薬湯がよく効いて、回復魔法があっても、人体の何たるかを全く理解していない。あんなに優秀なレピオスでさえ、脈拍を測ったり、視診打診でさえ知らない。

 魔法はファンタジーで、素晴らしい力だが、だからと言って万能ではない。

「では、兄さま。逆恨みですか?」

「そうなるかな。エリニース侯爵は、アイスクラー侯爵が経営している医療院の担当医が、何か間違いでもしたと思っているのだろう」

「アイスクラー侯爵は何て言っているのですか?」

「エリニース侯爵の前妻が、医療院にいた事すら知らなかったよ」

「経営はしていても、治療内容まで知らないと言う事ですか?」

「ああ、そうだ」

 まあ、普通そうだろうな。実際、侯爵が何か出来るとは思えない。

「それで兄さま、エリニース侯爵は?」

「捕らえて状況確認中だ」

「ディアーナ嬢は、もう回復したのですか?」

「翌日には普通に動ける様になったらしい。その後は、アイスクラー侯爵が経営する医療院に任せたらしいがね。レピオスが許可したから大丈夫だろう」

「良かったです。まだ小さいし、もし後遺症でもあったら可哀想ですから」

「リリも同じ歳なんだけどね。で、リリ。アイスクラー侯爵がお礼をしたいと言っている」

「いや、ボクはいいです」

「そう言うと思ったんだが、父上が面談の場を作る様にと言っている」

「えぇ〜……

「令嬢がもう少し元気になってからだ。それと、あと二人いたろう?」

「二人ですか?」

「たしか、アース・シグフォルスと、レイリオン・ジェフティだ。彼等も一緒に、おやつでも食べる様にと」

「はぁ……」

 正直、めんどくせー……



 今日も元気にレピオスの部屋に来ている。俺はレピオスと勉強中だ。

「レピオス、そうだよ。普通は1分間に60〜100回なんだ。個人差が大きくて年齢や体温、動いた後とかでも簡単に数値が上下するんだ。脈拍はね、身体のすみずみまで血液が行き渡っているかどうかを知る指標なんだ。脈拍の数やリズムに異常があると、心臓や血液循環に関連した病気が疑われる」

 ディアーナ嬢の事件の時に、俺が脈を診たり眼瞼結膜を見たりした事にレピオスが興味を持ったんだ。

「なるほど。ですから、脈拍がないと心臓が動いてない。死亡していると言う事ですか」

「そう。脈だけでなく、呼吸も確認しなきゃね」

「で、ない場合は胸骨圧迫ですか」

「そう。その通りだよ。それが、救急処置だね。心臓にショックを与える方法もあるんだけど、まだ考え中なんだ」

「ショックをですか。そんな事をして大丈夫なのですか?」

「止まった心臓にショックを与えて、拍動を正常に戻すんだ。雷魔法で出来るかも知れないけど、加減が難しいから考え中。実験できないしさ」

「なるほど。回復薬では、一度止まった心臓を動かしたりはできませんから」

 そうだ。回復薬でも魔法でも一度止まった心臓を、動かす事はできない。

 しかし、心臓マッサージなら可能な場合もある。

「そういえばレピオス。ハイポーションの上位て何?」

「え? 殿下、今頃それを聞きますか?」

「え、何? 変?」

「変ではなく、当然知っておられると思っていました」

「あらら。知らなかったよ」

「ハイポーションの上位は、エクスポーションです。欠損していても瞬時に回復する秘薬と言われています」

「秘薬なの!?

「はい。私も見た事がありません。材料や作り方も分かりません」

「何それ、まるで伝説じゃん!」

「そうなのですよ。現実では誰も見た事がありません」

 超作りたいなー! 伝説とか秘薬とか、めちゃそそられるじゃん! 薬草は何を使うんだろう?

「殿下、作り方が分からないのですから、無理です」

「はぁーい。そうだ、レピオスが使ってるスキャンは良いよね」

「そうですか? 殿下は鑑定があるから必要ないでしょう?」

「え、そうなの?」

「……殿下、一度ちゃんと勉強なさる方が良いですね」

「あらら、本当に?」

「はい。宝の持ち腐れです」

「え、ひど……」

「クーファル殿下に、魔術師団に連れて行ってもらうと仰ってませんでしたか?」

「そうなんだけどね、兄さま忙しいみたいでさ」

「そうですか。それは残念ですね。では、ルー様にお願いしますか?」

 なんか、久しぶりだな。そう言えばルーは何してんだろう? 最近、全然いないな?

「リリ、いるよ!」

 ポンッと、ルーが現れた。

「ルー、久しぶりだね」

「まあ、俺は常にリリを見てるけどね」

 ほぉ〜、そうかよ。疑いの眼差しだ。

「リリ、本当だからね。加護を与えるとはそういうもんだ。で、レピオスのスキャンか?」

「うん。あれ良いよね」

「リリ、レピオスが言ってた様に、リリには鑑定があるだろう?」

「鑑定てさ、イマイチ何に使えるのか良く分かってないんだ」

「リリ、本当に宝の持ち腐れだな」

「クフフフ、ルー様。ハッキリ言い過ぎです」

「いや、レピオスが言ったんだろ?」

「ルー様、そうでした」

「リリな、令嬢を助けた時にまだ賊がいないか警戒してただろう? あんな時には、サーチだ」

 あぁ、なるほど。忘れてた。

「鑑定だけど、レピオスのスキャンの上位だと考えていい。鑑定すると、対象の全てが分かる。スキャンではそうはいかない。だから、どんな薬を盛られたのかも分かるんだ」

 ほぉ〜、知らなかったよ。超便利だ。

「リリ、本当マジでもっと勉強しな。鑑定もサーチも、ガンガン使う事だ」

「どうして?」

「使えば使う程、精度が上がったり、上位にランクアップしたりするんですよ」

「レピオス、そうなの?」

「はい。魔法もスキルでもそうですよ。殿下はあまり、魔法やスキルを使おうとされないので、勿体ないですね」

「あー、そうなんだ」

 だってな、魔法のない世界で生きていたから習慣がないんだよ。魔法なんてなくて科学が発展した世界だったからね。

「あー、リリそうか」

「うん、ルー」

「意識的に使うしかないな。それにリリはあれだ。最初からかなりの魔法を使えたから、余計に意識がないんだ」

「そうですね。殿下は最初から、上位魔法を使っておられましたね」

「え? みんなは違うの?」

「当たり前だろー!? 最初から、上位魔法をホイホイ使える奴なんていないさ」

 そうなのか……? 全然知らなかった。

「普通は、使って使って慣れて自分のものにして。何年も掛かってやっと、上位の魔法が使える様になるんですよ」

「そうなの?」

「ああ、そうだ。人は理解してないが、そうして少しずつ自分の魔力量を増やしているんだ」

「ルー様! そうなのですか!?

「ああ。リリは最初から魔力量が膨大だった。だから、最初から使えたんだ」

「魔力量だったのですか。それは凄い事実ですよ。誰も知らない事ですよ」

「あれ? でもボク、最初から知ってたよ?」

 確か、知っていたぞ。なんでだっけ? だから、皆普通に知っていると思ってたな。

「えっ? 殿下、最初からとは?」

「えっとね……そうだ。3歳の時だ。初めて魔法を使う時に知ってた」

「殿下、どうして知っておられたのですか?」

「え……? なんでだろ? 分かんない」

「アハハハ! リリは、最初からずば抜けていたからな!」

「そうだ。3歳の時にね、試した事があるんだ」

 だって魔法が使える事自体が不思議だったんだ。だからあの頃、ニルの目を盗んで実験してみたんだ。

「リリ、何をしたんだ?」

「魔力量がどれくらいあるのか知りたかったから、自分の中の魔力が減るのを感じてみようと思ったんだ。でも、全然底が分からなかった。ニルに危ないって止められたし。あ、そうそう。こっそり、魔力を使い果たしてみようともしたんだ。でも魔力が減る感覚が、全然なくて諦めた」

「ブハハハハ! リリ、それは本当に規格外だな!」

「殿下、驚きました」

「そうなの?」

 そうか、そうだったのか……?



 今日は、例の誘拐事件のアイスクラー侯爵とご令嬢が挨拶に来る日だ。要するに、お礼だ。別にいいのにさ。

 俺はモソモソとベッドから出て、顔を洗う。着替えていると、ユキがノソノソと起きてきた。

 食堂に向かっていると、いつも通り張り切ってワゴンを押しているシェフがいた。

「シェフー! おはよう!」

「殿下ぁッ! おはよう御座いますッ!」

「今朝はなぁに?」

「はい、今朝は寒いですからね。ホットサンドと、ポトフです!」

「美味しそうだ」

「はい! 沢山食べて下さいねッ!」

 そう、帝都は今真冬だ。

 辺境伯領は帝国の南端だから暖かかったけど、帝都は寒い。そろそろ雪も降りそうだ。

 食堂に入ると、テュールとフォルセがいた。二人は第1側妃の子だ。

 テュールが、16歳になった。ブルー掛かった金髪に紺青色の瞳。緩いウェーブの柔らかそうな髪をスッキリ短髪にしている。スポーツマンタイプだ。

 もう一人、フォルセは13歳になった。ブルーブロンドの髪に紺青色の瞳。兄と同じ緩いウェーブの髪を肩まで伸ばして後ろで一つに束ねている。相変わらず、超絶可愛い。俺の中では不動で妖精さん確定だ。

「兄さま、おはようございます」

「おはよう」

「リリ、おはよう」

「兄さま、今日は学園には行かないのですか?」

 いつも、学園の制服で朝食を食べているのに、今日は違う。二人共、皇子様ルックだ。まあ、俺もだけど。

「リリ、今日から冬休みなんだ」

「テュール兄さま、そうなんですか?」

「ああ、年明けまで休みだよ」

「ねえ、リリ。令嬢を助けたんだって?」

 フォルセは、ディアーナ嬢の一件を知っていた。犯人のエリニース侯爵の子息が同じ学年にいたそうだが、今回の事件で学園を退学する事になったそうだ。令嬢誘拐未遂事件で、エリニース侯爵は爵位剝奪になっていた。しかし、財産は没収されなかったので、医療院の経営は続けるそうだ。貴族専門と言う事で、貴族には需要があるらしい。

「一部の生徒が、陰口を言っていてね。嫌な感じだったんだ。子供は関係ないのにね」

「本当ですね。学園を辞めてどうするんでしょう?」

「お母上と一緒に領地に帰るんだって。でも爵位が無くなっちゃったから、領地も親戚が経営するらしいよ」

 確か、後妻は侯爵の犯行を、止めようとしていたと聞いたが。帝都では、皆事件の事を知っているから、いられないのかも知れない。

 出産時は現代日本でも、危険な時があるから仕方ないんだよな、きっと。この世界では、帝王切開なんて概念はない。保育器もない。俺は、産科じゃなかったから専門外だし。しかし、なんとかならないかな? 帝王切開と保育器でかなり違うはずだ。うん、今度レピオスに相談してみよう。

「ねえ、リリ。お母上と赤ちゃんが、亡くなった事だけど本当に仕方ない事なのかな?」

 詳細を知らないから、なんとも言えないんだよな。

「兄さま、ボクはその経緯や状態を知らないです。だから、なんとも言えません」

「そっか。でもさ、そんな事はあるの?」

「ありますよ、普通に。出産は、大変な事ですから。普通に命懸けです」

 この世界より医学が発達していた現代日本でもそうだったんだ。この世界だと余計に大変な事だろうと思う。

「でも……フォルセ兄さま、ボクの個人的な意見ですが。また婚姻して、兄さまと同じ歳の嫡男もいるのです。その今を大切にして、幸せになる選択肢もあったのに。と、思います」

 こんな事になってしまって、後妻さんと子供がかわいそうだ。しかも前妻の敵討ちみたいになっちゃってる。そんなのやり切れない。

「そうだな。リリの言う通りだ。確かに悲しい事だとは思う。しかし、それに執着して、今の家族を不幸にしていたら何をしているんだと思う」

「ボクも、テュール兄さまと同じ事を思います」

「そうだね。うん、僕もそう思うよ」

「失礼致します。リリアス殿下、今日は少しお急ぎ頂かないと」

 ニルとオクソールが迎えに来ちゃったよ。せっかく、兄二人と一緒だったのに。

「ニル、分かった。ユキは?」

「まだ、食べています」

「リリ、ユキってあの神獣だよね?」

「はい、フォルセ兄さま。ユキヒョウです。真っ白ですよ」

「ねえ、今度見に行ってもいい?」

「もちろんです。まだフォルセ兄さまは見てなかったですか?」

「うん。学園があったからね」

「リリ、俺も一緒にいいか?」

「はい、テュール兄さま。学園がお休みだとまた一緒に鍛練できますか?」

「ああ、明日の朝から俺も参加するよ」

「やった!」

「リリ、嬉しいの?」

「はい、フォルセ兄さま! だっていつも一人ですから、テュール兄さまが一緒だと嬉しいです!」

 俺はいつもなら、午前中はオクソールの鍛練を受けている。学園が休みの間は、テュールが参加するんだ。オクソールと1対1より、テュールがいる方がずっと良い。

「じゃあ、兄さま。ボク先に行きます」

「ああ、リリ」

「リリ、またね」

「ニル、お待たせ」

 食堂を出るとニルが待っていてくれた。オクソールとリュカも来ている。

「ニル、ボクどうしたらいいの?」

「殿下、お部屋で待機です」

「そう。で、今日は侯爵が来られるの?」

「はい、侯爵様はご挨拶だけです。ご令嬢と、後お二人来られます」

「ああ、あの時の子息だね。分かった」

 そんな話をしながら、廊下を歩いていたんだ。取り敢えず部屋に戻ろうと思ってさ。

「リリ! ちょうど良かった!!

 正面から、フレイと側近のデュークがバタバタと走ってきた。

「えっ!? 兄さま!?

 俺はあっと言う間に、フレイにヒョイと抱き抱えられた。

「行くぞ!!

 フレイとデュークが走り出す。ダッシュだ。

「フレイ殿下! どちらに!?

「殿下!」

 オクソールとニルが慌てて声をかけるが、フレイはお構いなしだ。

「オクソール! ニル! 悪い! 少しだけリリを借りる!!

「兄さま! ボクは今日は予定が!」

「ああ、分かってる! 少しだけだ!」

 どこに行くんだよー! なんなんだよー! 俺、兄に拉致られちゃったよー!

 そして、連れて行かれたのが、騎士団の鍛練場だった。

 第1騎士団と、第2騎士団が何か揉めている。

「兄さま、これどうしたのですか?」

 俺はフレイに、抱き上げられたまま聞いてみた。

「リリ、お前だよ。第2騎士団がリリに魔石を貰ったと自慢したんだよ」

「あれは魔物討伐があったので」

「そうなんだけどな」

「でも、兄さま。あれは即席なんです。たまたま、辺境伯領で小さな魔石が取れたので。思いつきなんです。なんなら付与する練習も兼ねてると言うか……」

 辺境伯領の海岸で魔石が流れ着いているのを見つけた。直径数ミリ〜2センチ位の小さな魔石だ。それに俺は、物理も魔法攻撃にも対応出来る結界を付与した。魔物討伐の予定があったからだ。お守りだよ。それを森に入る前にみんなに配っていたんだ。その事を言っているらしい。

「でもな、リリ。騎士団に必要だと思わないか?」

「それは兄さまが父さまに交渉して下さい。魔石があれば、ボクはいくらでも作りますよ」

「そうか! リリ、約束だぞ!」

「はい、兄さま」

「よし」

 フレイが騎士団に向かった。

「整列!!

 第1騎士団の団長が、号令をかけた。第1第2騎士団全員が、一斉にフレイに向かって背を正した。既に騎士団全員知った顔だ。

「皆、聞いてくれ! 魔石の件だが、リリが作ると約束してくれた!」

 フレイがそう言ったとたんに、第1騎士団の皆が歓声を上げた。

 俺が作った魔石、防御に特化している、だから、欲しいのだろう。それだけじゃない。

 どうやら、第2騎士団が自慢したそうなんだ。『リリ殿下にいただいたんだ。いいだろう』みたいにさ。それで、揉めちゃっていた訳だ。デュークが呆れていたよ。

「大人げないといいますか」

「リリ、その魔石は誰が持っているんだ?」

「兄さま、知らないですよ。ソールに聞いてみて下さい」

「分かった。父上の近衛の分も頼めるか!」

「はい。いいですよ」

「じゃあ、頼んだ」

「はい、兄さま」

 騎士団長が号令をかけた。

「全員! リリアス殿下に礼!!

 ズザッ! と音がして、騎士団が右手を胸に持っていく。

 この帝国風の敬礼だ。そんなに畏まらなくてもいいのに。

「リリアス殿下! 有難う御座います!!

 ──有難う御座いますッ!!

 俺は顔を引き攣らせながらヒラヒラと手を振った。

「兄さま、ボク戻らないと」

 オクソールが追いかけてきて、ずっと控えて見ていた。

「ああ。オクソール、悪かったな」

「フレイ殿下。リリアス殿下をお連れする必要はなかったのでは?」

 そうだよ、オクソール。もっと言ってくれ。

「まあ、いいだろ。皆、リリの顔を見ないと気が済まないんだよ」

 人騒がせな。絶対にフレイの思い付きだろう? ちょうど前から俺が歩いてきたからだよ、きっと。

「殿下、戻りましょう」

「うん。オク、きっとニルが心配してるよ」

 オクソールと一緒に戻ると、やっぱりニルは心配していた。

 それに、もう侯爵が来られているそうなので、面談する部屋に向かう。俺がオクソールと一緒に部屋に入ると、父とセティ、レピオスが。アイスクラー侯爵の横にディアーナ嬢がいた。

「申し訳ありません。遅くなりました」

「リリ、どうした?」

「はい、父さま。フレイ兄さまにつかまってました」

「ああ、騎士団の魔石がどうとか言っていたね」

「はい。そうなんです」

「後でフレイに聞いておくよ」

「はい。お願いします。ディアーナ嬢。お元気そうで良かったです」

 俺が声をかけると、侯爵と令嬢は席を立ちお辞儀をした。

「殿下、娘を助けて頂いて誠に有難うございます」

「リリアス殿下、助けて頂き有難うございました」

「いえ、ボクは大した事は何も。ディアーナ嬢、お顔色も良いですね。良かったです。レピオス、問題はない?」

「はい、後遺症もなくお元気ですよ」

「良かった」

「父様達は、お話があるんだ。リリ、別の部屋に子息達が来ているから、令嬢と一緒にそっちに移動してくれるかい?」

「はい、父さま」

 侍従に案内されて、俺はオクソールと令嬢と一緒に別の部屋に向かう。子息達とは、あの時にオクソールに連絡してくれた、アース・シグフォルスとレイリオン・ジェフティだ。

 二人が待っている部屋に向かいながら、令嬢と話す。

「もう、身体に違和感等ありませんか?」

「はい。もう大丈夫です。殿下、あの時は本当に有難うございました」

「ボクは大して何もしてないよ。やっつけたのも、ユキだしね。これから会う二人が、オクソールに伝えてくれたから早く対処できたんだ」

「でも、私の方がお守りしなければいけないのに。私が殿下に守られてしまいました」

「え? そんな。ボクを守るなんて思わなくていいよ」

「そんな訳にはまいりません。殿下は大切なお方ですから」

「ハハハ、ありがとう。でも、ボクは君より強いからね。大丈夫だよ」

「はい。殿下。魔法を使われていましたね。驚きました」

「え、そう?」

「はい。殿下は光属性だけだと思っておりましたから」

「ああ、ボクは全属性なんだよ」

「まあ! 全属性ですか?」

「うん。らしいよ」

「お強い筈ですね。ウフフ」

 お、ウフフだって。初めて笑ったよ。可愛いね。

 部屋に入ると、緊張した面持ちで座っていた二人が、慌てて立ち上がり挨拶をする。

「リリアス殿下、お久しぶりです!」

「殿下、今日はお招き頂き、有難うございます」

「ああ、座ってね。あんまり堅苦しくしないで。ボク達だけなんだし」

 そう言いながら、一緒に来た令嬢を紹介する。

「紹介しよう。アイスクラー侯爵のご令嬢で、ディアーナ嬢だ」

「ディアーナです。先日は助けて頂いて、有難う御座います」

「僕は、シグフォルス侯爵の五男で、アースです」

「僕は、ジェフティ侯爵の次男で、レイリオンです。レイとお呼び下さい」

「オク」

「はい、殿下。お二人が、早急に私に知らせて下さったお陰で、迅速に対処できました。お手柄ですよ。有難うございました」

 オクソールが二人に礼を言うと、アースが目をキラッキラさせて、モロに嬉しそうな顔をした。

「アースはオクに憧れてるんだっけ?」

「はい! 殿下! オクソール様は私の目標であり、憧れです!」

「将来は、騎士団に入りたいんだって」

「殿下、そうですか。アース殿、頑張って下さい」

「オクソール様、有難う御座います!」

「失礼致します。お茶をご用意致しました」

 ニルがお茶と、クッキーやらお菓子を持ってきてくれた。

「ニル、有難う」

「殿下、りんごジュースもございますが?」

「じゃあ、ボクはりんごジュースでお願い」

「はい、畏まりました」

「殿下は、りんごジュースがお好きなのですか?」

 レイが尋ねてきた。

「うん。大好き」

「実はボクは、ぶどうジュースが大好きで」

「レイ、ぶどうジュースなの? もしかして、紫じゃないぶどうジュースを飲んだ事ある?」

「はい! 殿下、ご存知なのですか?」

「うん。飲んだ事あるよ。あれは美味しい。特別だ」

「はい。あれは特別です。毎年邸に、売りに来てくれます」

「そうなの? 城には来てくれないのかな?」

「殿下、城に出入りする商人は、決められております」

「ニル、そうなの?」

「はい。あの時は別邸でしたから」

 俺が3歳の時に、一時的に滞在した別邸。近くのミーミユ湖に、実の姉に突き落とされて死にかけた。その時に、前世を思い出したんだ。嫌な思い出もあるが、なんか懐かしいな。

 お茶を出し終えて、ニルが部屋の隅に下がる。オクソールも隅に待機だ。

 クッキー食べよう。シェフのクッキーは美味しいんだ。

「殿下、宜しければ、パーティーの時に話されていた、剣に魔法を付与する話が聞きたいです」

「アース、ボクあんまり知らないよ」

「ええ〜……」

「ごめんね。見た事はあるけど、付与の仕方は知らない。オク、知ってる?」

 少しオクソールに振ってみる。

「殿下もアスラール殿から、教わっていらしたじゃないですか」

「そうだっけ? アース、ごめん。覚えてないや」

「ええ〜……!

「フフフ……」

 あ、令嬢が笑った。おっとりした感じなんだな。

「あ、申し訳ありません。リリアス殿下はお強くて、全属性魔法を使えるのに。と、思ってしまいました」

「えっ!? リリアス殿下は光属性だけでなく、全属性ですか!?

 レイが何故か食い付いてきたぞ。

「うん……ゴクン。これ、このクッキー美味しいよ」

「まあ、そうですか? 頂いても宜しいですか?」

「いいよ、いいよ。食べて。二人も食べて」

「「殿下……」」

「え? 何?」

「ウフフ、まあ、本当に美味しい」

「「ディアーナ嬢……」」

「え? 何か?」

 ディアーナ嬢と二人でキョトンとして、アースとレイを見る。

「レイ、これはあれだな。お二人は」

「ああ、アースそうだな」

「クフフフ……」

 なんだよ、オクソール。何笑ってんだよ?

「オクソール様、殿下はいつもこんな感じですか?」

 レイが、オクソールに聞いた。こんな感じ、て何だよ。

「はい。そうですよ。ですので、畏まらずお友達として話されると宜しいかと」

「ハァ〜……そうですか。分かりました」

 何? 何だよ? 俺なんか変な事言ったか?

「リリアス殿下、僕達とお友達になりましょう。ですので、このメンバーで話す時は敬語も止めます。宜しいですか?」

「うん、レイ。その方がいいよ」

「では、ディアーナ嬢も?」

「はい。嬉しいです。私の事はディアとお呼び下さい。嬢はいりません」

「じゃあ、ボクはリリ」

「クフフ……」

 オクソールまた笑った。さすが、リュカの師匠だ。ま、いいけどさ。もう既にこの笑いがないと寂しいしな。実は、笑うかな? て、ちょっと期待していたりなんかする。

「じゃあ、時々みんなで集まろうよ!」

「アース、それは無理だろう。皆、勉強もあるだろうし、殿下はお忙しいだろう?」

「ボク? そんな事ないよ? いつでも城に遊びに来て」

「いや、そんな訳にいかないし」

「うん。アース、そうだな」

「じゃあ、お手紙出しませんか? この日はどうですか? て、お手紙で都合を聞きませんか?」

「手紙かぁ……オク?」

「殿下、それは陛下と、侯爵様方にご相談しないといけません」

「そっか。魔石も小箱もないしね」

「はい」

 俺が思ったのは辺境伯家と城にある、お手紙転送のお道具さ。あれがあると便利だなぁ、て思ったんだ。

「殿下、何です?」

「ああ、レイ。辺境伯領に行った時にね、あそこまで遠いじゃない? だから、お手紙を転送するお道具を作って、置いてきたんだ」

「殿下! 詳しく!」

「え! え? レイ、もしかして、興味あるの?」

「はい! かなり!」

「ええ〜!」

 と、三人とはいい感じでお話しできた。何より、ギラついてないのが良い。

 俺に初めてのお友達が出来たんだ。中身はしっかり大人なのに、5歳児のお友達だよ。小っ恥ずかしい!


 この三人とは、長く付き合って行く事になる。

 それは、まだこれからのお話だ。

 みんなまだ5歳だ。未来はまだまだ夢や希望がいっぱいだ。