「殿下、危ないですから」

「キャハハハ! オク、ありがとう! みんな! すごい! すごいよー!」

 オクソールの肩に乗せられた俺は、隊員達とハイタッチだ!

「にーさまー! にーさまも早くー!」

 クーファルを呼ぶ。

「ユキー! 兄さま連れてきてー! おいでー!」

 俺がそう呼ぶと、ユキがクーファルを押しながらやってきた。

「騎士団も領主隊も、よくやった!」

 ──おーーッ!!

 クーファルが、隊員達の輪の中に押し入れられながら叫ぶ。

「領主隊! この地を守ってくれ! 頼んだぞ!!

 ──はッ!!

 ズザッ! と、領主隊が片手を胸に背を正す。前世だと、敬礼みたいなもんだ。

「騎士団! 帝国を頼んだぞ!!

 ──はッ!!

 騎士団も同じだ。カッケーな!

「みんなー! お昼食べるよー!」

 ──えぇ〜!!

「ブハハハハ! 殿下、このタイミングで昼飯ですか!?

「リュカ、だってお腹すいた!」

 隊員達や観客から、ドッと笑いが起きた。

「えッ? なんで?」

「まあリリらしいよ」

「兄さま、お腹すきませんか?」

「すいたね。さあ、皆で食べよう!」

 ──ハハハハ!!

 領主隊や騎士団だけでなく、見学している領民達からも笑いが起こった。

「さあ! 皆さん! 食事ですよ! 沢山食べて下さい!」

 シェフはもうエプロンをつけている。手には串に刺した焼けた肉を持っている。

 今日の昼食は、朝にシェフと相談して料理人達に伝えておいたバーベキューだ。

 もう前庭は競技場から、バーベキュー場に早替わりしている。

 料理人達が、肉と野菜を串に刺したものをどんどん焼いていく。

 クリームシチューも大きな鍋ごと並べてある。あとは、トマト味の魚介のスープパスタだ。

 料理人達が、パスタの麺を朝から作ってくれていた。

 おにぎりもズラッと並べてあって、その横にはパエリアだ。

「さあ! 皆、どんどん食べてくれ! たくさん用意してあるからな! 遠慮はいらないぞ!」

 アスラールが観客達に呼びかけると、小さい子供がワーッと肉に集まる。

「ワイン開けるぞー!!

 アルコースが叫ぶと、大人達がワイン樽に群がる。

「兄さま、お祭りですね!」

「ああ! どこでも最後はこうだ!」

「兄さま! 楽しいです! 平和です! 良かった!」

「ああ、リリ。良かった!」

 クーファルに頭をクシャクシャッと撫でられた。

「殿下、シェフにもらいに行きましょう!」

「うん! オク、行こう! ユキ、行くよ!」

「リリ、我は肉がいいぞ!」

「殿下! ユキ! 行きますよ!」

「リュカ! 待って!」

 オクソールに抱き上げられたまま、人混みを移動する。

「リリ殿下!」

「あ! おっちゃん!」

 ニルズだ。俺の二番目の心の友だ。一番目はもちろんレピオスだ!

「おっちゃん来てたの!?

「ああ! そりゃあ見にくるさ!」

「クーファル殿下、リリアス殿下!」

「テティ! 二人共来てるの全然気づかなかったよ!」

「俺達は酒飲みながら、ワイワイと見てたさ! それにしても、オクソールさん! スゲーな! 飛び抜けてたよ!」

 ニルズはまた、オクソールの肩をバシバシ叩いている。無敵だぜ。

「ハハハ、有難う御座います」

「ニルズさん! 俺は!?

「なんだよ、リュカ! お前、盛大に転けてたじゃねーか!」

「キャハハハ! リュカ転けてたねー! ブヘェッ! て転けてた!」

「殿下もニルズさんも酷いッスよー!」

「ハハハ! 確かにリュカ、転けてたな!」

「クーファル殿下まで!」

 たくさん、応援した! たくさん、食べた! たくさん、笑った!

 俺、前世でもこんなに楽しかった事はないかも知れない。

 最近、5歳児にかなり引っ張られてるが、それも良いかも知れない。無邪気って事でさ。

 腹一杯たべて、笑って、平和が一番だ!



 リリアスはいつの間にかスヤスヤと寝息を立てていた。

「エヘヘ」

 良い夢でも見ているのだろうか。眠っているのに穏やかに微笑んでいる。

「寝られましたね」

「ふふふ、はしゃいでいたからな」

「クーファル殿下、私はこのままリリアス殿下を、部屋にお連れします」

「ああ、オクソール頼んだよ」

「いい顔して、寝てるじゃねーか」

「本当に。可愛らしい殿下ですね」

「では、皆さんはゆっくりして下さい」

 オクソールが、眠ってしまったリリアスを抱っこして、邸に歩いて行った。

 リュカが、先にニルに知らせに走る。

 オクソールに抱っこされている、リリアスの寝顔を優しい目で見つめながらクーファルが静かに話し出す。

「ニルズ、テティ。リリが喜んでいたよ。世話になったね、有難う」

「クーファル殿下、とんでもないです。世話になったのは、こっちの方だ」

「そうです。クーファル殿下。勿体ないお言葉です」

「またリリが来た時には、相手をしてやってくれるかい?」

「もちろんです。殿下、もう帰られるのですか?」

「ああ、テティ。森の調査も終わったし、転移門も修復したからね」

「転移門ッスか。俺らが若い頃に使えなくなったと聞いてますが?」

「そうね。たしかスタンピードの時ですよね?」

「そうだね。リリが修復したんだ」

「リリ殿下がですかい!?

「まだお小さいのに……!」

「これからは、いつでも来る事ができる。リリがまた来たら宜しく頼むよ」

「殿下、もちろんですよ!」

「はい! いつでもお越し下さい。リリアス殿下なら大歓迎です」

「ニルズ、テティ、有難う」

 オクソールがそっと抱っこして歩いている。そのオクソールの目も優しさに溢れていた。



 あれ? 目が覚めたらまたベッドの中だった。

「殿下、お目覚めですか? 今日もオクソール様が」

 オクソール、毎日本当に有難う。

 ベッドから、のそのそと下りてソファーに座ると、大きいままのユキが付いてきて、俺の足元に腹ばいになる。

「殿下、りんごジュースをどうぞ。ユキも」

「ニル、ありがとう」

「ああ、すまない」

「……ふぅ……」

「殿下、疲れましたか?」

「ううん。なんかね。終わったなぁ、て思って」

「終わりましたね」

「うん。後は帰るだけだね」

「はい。殿下。長かったですね」

「うん」

「リリ、また来ればよい」

「ユキ、そうだね」

 色々あったけど、いざ帰るとなるとちょっぴり寂しいな。

「リリ、明日一日は騎士団が準備をする。明後日、帰ろうか」

「はい、兄さま」


 俺達は、夕食を食べている。ここでの夕食も明日で終わりだ。

「クーファル殿下、フィオン様、リリアス殿下。本当に有難うございました」

「辺境伯、役に立てた様で良かったよ」

「クーファル殿下。領地だけでなく、我が家族を救って頂きました。感謝しております」

「父上、寂しくなりますね」

「アスラール、本当だな」

「はい兄上、寂しくなります」

「アラ殿、アスラ殿、アルコース殿。また、いつでも来る事ができます。それに、定期的に魔力の補充にも来ます」

「リリアス殿下。そうですね。いつでも、お越し下さい!」

「アスラ殿、ありがとうございます」

「殿下方、この後少し宜しいでしょうか?」

「辺境伯、ああ。分かった。結論が出たのだな?」

「はい、クーファル殿下」

 ん? 何だ? 何だ?

 俺達は食事を終えて、応接室に来ている。

「失礼致します」

 夫人が、レピオスに付き添われて入ってきた。足取りもしっかりしてきた。もう安心だろう。

「夫人、元気になられましたね」

「ええ、リリアス殿下。有難うございます」

「レピオスどうかな?」

「はい、殿下。もう、薬湯も必要ないでしょう。後は時が癒してくれるでしょう」

「良かった」

 本当に良かった。あのドレスの下の血溜まりを見た時はゾッとした。

「ご報告がございます」

「辺境伯、聞こうか」

 なんだ? 一体なんだろう? もう問題は満腹だぞ?

「殿下、アルコースがフィオン様と正式に婚約する事になりました」

 なんだってー! フィオン! 良かったじゃん!

 いつの間にだよ。クーファルは知っていたな。

「フィオン姉さま、おめでとうございます!」

「リリ、有難う。お兄様、有難うございました」

「フィオン、良かったね」

 なんだなんだ? 俺は全然分からないぞ。どうしてこうなったのか、教えて欲しいなぁ。

「え? えっ? 兄さま、何ですか!?

「いや、二人を見ているとじれったくてね。少しだけ、お節介を焼いたんだ」

「兄さま!」

 俺は隣に座っていたクーファルに抱きついた。

「おや、リリ。どうした?」

「兄さま、お手柄です! 本当に焦ったかったですから!」

「リリ、止めてちょうだい! 恥ずかしいわ!」

「姉さま、本当に良かったです!」

 今度はフィオンに抱きついた。

「リリ、有難う。リリと離れるのは寂しいけど」

「姉さま、何言ってるんですか! ボクより、アルコース殿でしょう。アルコース殿、フィオン姉さまを宜しくお願いします」

「ええ、殿下。一生大事にしますよ」

「もう、止めて下さい。本当に、恥ずかしい」

 あー、フィオン。真っ赤っかだよ! 可愛いねー! 本当、良かったよ!

 アルコースの卒業式に泣いたフィオンだ。その頃から想っていたのだろうな。良かったよ。

「また、正式な婚約の為に、城に参ります。内々ですが、殿下方にはお話ししておこうと思いまして」

「そうだね。まあ、これからはいつでも行き来できる」

 うんうん。俺が転移門を修復したからな!

「殿下、もう一つご報告が御座います」

「夫人、何かな?」

「実は、アスラールも決まりました」

「ええー! アスラ殿! どなたですか!?

「ハハハ、リリアス殿下。そう食いつかないで下さい」

「だって、全然気付きませんでした」

「殿下がご存知ない者ですから。薬師のアイシャの一番下の妹です」

「ああ! 幼なじみの!?

「はい。幼なじみで、従兄妹にあたります。殿下のお陰です」

「へ? どうしてですか?」

「殿下方が、ケイアの件を解決して下さったからです。だから、私もアルコースも決心できました。有難うございます」

「はい、兄の言う通りです。私は……フィオン様の事は諦めておりました。それが、まだ夢の様です」

 ああ、そうか。ケイアの事があるから、婚姻しないでいるとルーが言ってたな。こんな問題のある家に迎える訳にはいかないと。

「二人共、おめでとう」

 おめでとう! アスラール、アルコース、自分の幸せを諦めるなんてあってはならないんだ。

 皆、幸せになる権利は平等でないとならない。誰もが幸せを、諦めなくていい領地にしてほしい。「本当におめでとうございます!」

「クーファル殿下、リリアス殿下。有難うございます」

「本当に有難うございます」

 いやぁ〜、良かった。良かったよ〜!


 さて、翌日だ。

「殿下、今日はどうされますか?」

「ニル、どうって?」

「明日、帰りますよね? 今日は会っておきたい方に、会いに行かれるかと思ったのですが」

「ああ、そうだね。どうしようかな。兄さまに聞いてみるよ。ちょっと、やりたい事もあるんだ」

「はい、分かりました」

 俺は、ベッドから下りて顔を洗う。ニルに手伝ってもらいながら、着替える。

「あれ? ユキは?」

 そうだ。もうユキがいない。

「お腹がすいたと、もう調理場に行きましたよ」

「早いね」

「よく食べますから」

「本当によく食べるよね」

 ニルと食堂へ向かうと、クーファルとソールが前を歩いていた。

「あ、兄さま! おはようございます!」

「リリ、おはよう。昨夜は頑張って起きていたね」

 頑張ったよ。もうギリギリだった。

「部屋に着いてからの、記憶がありません」

「ニル、ご苦労だったね」

「クーファル殿下、とんでも御座いません」

「兄さま、ボクはお腹いっぱいになったら、起きていられません。ヤバヤバです」

「もう少し大きくなったら、大丈夫だよ。もうあと1〜2年じゃないかな?」

「兄さまも、そうでしたか?」

「いや、私はリリ程寝なかったね」

 なんだって?

「人それぞれだから、気にしないで良いよ」

 クーファルは幼い頃から大人びていたのかな? 今は一番頼りになる兄だ。

 ソールが食堂のドアを開けてくれる。丁度アスラールがやって来た。

「おはよう御座います。クーファル殿下、リリアス殿下」

「おはよう」

「アスラ殿、おはようございます!」

 ぐふふ……!

「リリアス殿下、ニヤけないで下さい。こっちが恥ずかしくなります」

「エヘヘ。だって、つい。ねぇ」

「おはよう御座います。お二人共、お早いですね」

 出た。アルコースとフィオンだ。二人お揃いだ。

「おはようございます。姉さま、おはようございます」

 ぐふふふ……余計にニマニマしてしまうぜ。

「リリ、せっかくの可愛いお顔が、変になっているわよ」

「姉さま、酷い!」

「アハハ、リリ。普通にしなさい。ニヤけない」

「はーい、兄さま」

 席につくとシェフがやってきた。

「殿下、おはよう御座いますッ!」

「シェフ、おはよう」

「今日はシンプルに、ベーコンと卵のホットサンドです!」

「ありがとう。今日もおいしそう!」

 あーん! と大きな口を開けて食べる。卵の黄身が少しかための半熟でベーコンとのバランスが絶妙だね。うん、今日も美味い!

 つい食べる事に夢中になってしまったぞ。クーファルに聞こうと思っていた事があるんだよ。

「兄さま、相談があります」

「リリなんだい? 今、聞いてもいいのかな?」

「はい」

 俺は、ホットサンドを口に入れて、少し慌ててモグモグする。

「リリ、ゆっくり食べなさい。話は食べてからにしよう」

「……兄さま、すみません。シェフ、とっても美味しいよー!」

「殿下ぁッ! 有難うございますッ!」

「とろけるチーズが入ってる! とろっとろ!」

「はい、こちらのチーズは美味しいですから!」

「うん! 美味しい!」

 口の中が玉手箱だよ〜!

 転移門を使って、定期的に食料取りに来たら駄目かな? シェフ連れてさ。美味いよなー!


 さて、朝食を済ませてクーファルの部屋に来ている。

「殿下、りんごジュースはないのですが、アップルティーをどうぞ」

「ソール、ありがとう」

 うん、りんごの香りがいい。ちょっとフーフーしてゆっくりと飲む。大人の味だ。

「で、リリなんだい?」

「兄さま、お手紙を転送できるお道具を作ろうと思うのです」

「手紙を転送?」

「はい。こっちでお手紙をのせて、魔力を流したらお城に届く様な感じです」

「いいね、それ」

「でしょう? こっちに転移門を使って来たとしても、誰も知らなくて扉が開いてないとか嫌ですしぃ。何日に行くよー、とかお知らせできたら良いなー、と思ったのです」

「そうだね。父上も喜びそうだ」

 だろう? 辺境伯領にお手紙出しても、届くまで何日も掛かるんだ。それは不便だよな。

「取り敢えず、フィオンが確実に喜ぶね」

「はい! 兄さま!」

「じゃあ、ルー様に父上の意見を聞いてもらおうか」

「はい。ルー」

 俺が呼ぶと、ポンッとルーが現れた。

「リリ、呼んだかな?」

「うん。ルーに確認して欲しい事と、教えて欲しい事があるの。あー、それとね……」

 俺は、ルーに説明した。

「じゃあ、取り敢えず皇帝に聞いてくるよ」

「うん。おねがい。ルー、ありがとう」

「なんだリリ。今日はえらい素直だな」

 俺はいつも素直だよ! 今回はルーに色々動いてもらっていたから、ちょっと悪いなって思っているんだ。精霊に食事を運ばせたりしていたんだからね。

「ルー、姉さまの事でも動いてくれていたんでしょ?」

「あー、まあな。まとまって良かったよ」

「うん。だからありがとう。ルーのお陰で、姉さまも幸せになれるよ」

「辺境伯一家と縁が出来るのは、良い事だ。それに、フィオンもアルコースも、気持ちを抑えて諦めようとしていただろう? それは、辛い事だよ。こっちで、クーファルとリリが解決したからこそ、出来た事だ」

「そうかも知れないけど。でも、ルーありがとう」

「ハハハ、良いって事さ。じゃあ、ちょっと聞いてくるな」

 そう言ってルーは、ポンッと消えた。お人好しな精霊さんだ。

 今回は毎日という程、城とこの邸とを行き来してくれた。父や母、皇后の意向を汲んで、シェフが作ったものを持ってだ。それに、こちらの状況を逐一知らせてくれていたらしい。

 本当に、手間を掛けたね。ありがとう。

「リリ、でもどうやって作るんだい?」

「兄さま、全然分かりません」

「え……?」

「だってボク、そんなの作った事ないです」

「まあ、誰も作った事はないと思うけど」

「だから、ルーに聞きます。あ、もしかして魔術師団の人だと知ってるのかな?」

「リリ、マジックバッグの作り方は、誰に教えてもらったのかな?」

「あれはレピオスに教わりました」

 て、言うか、俺が魔法を教わっているのは、ルーかレピオスだ。

「そうなのかい? でも、レピオスは医師だよ? 兄様は知らなかったよ」

「そうなんですか? 兄さまは誰に魔法を教わったのですか?」

「私は城の魔術師団の団長だね」

「ボク、城の魔術師団て全然知らないです」

「そうだったか。城に帰ったら会ってみるかい?」

「はい、兄さま。ボク、教わりたい事が沢山あります」

「そうか。じゃあ、兄様と一緒に魔術師団に行ってみよう」

「はい、兄さま!」

 その時、ポンッとルーが戻ってきた。

「おまたせー!」

「ルー、早いねー」

「いや、皇帝が食いついてきたよ。良い考えだってさ。是非、作って欲しいそうだよ」

「そう、じゃあルー教えて」

「ああ。それとな、リリ。城に帰って来てからでいいから、何個か作って欲しいそうだ」

「いいけど。なんで?」

「売るんだとさ」

 何をどう考えたら、そうなるんだ? 商売をするのか?

「……マジで?」

「父上は何を考えておられるのか……」

 ほら、クーファルも呆れてため息をついてるぜ。きっと考えている事は同じだ。

「父さま、商売するの?」

「城の専売にしたいんだとさ」

「えぇー、それは駄目」

「駄目か?」

 駄目に決まってるじゃないか!

「うん。商売は民に任せなきゃ。経済が潤わないよ」

「なんか小難しい事言ったな」

 ハッハッハ、なんせ中身は社会人だからな!

「しかし、リリの言う通りだ。ルー様、誰にでも作れる物ですか?」

「いや、そこそこ普通に魔力はいるよ?」

「魔術師団には作れますか?」

「どうだろ? 僕は城の魔術師団が、どの程度なのか知らないからね。街で魔道具を作って、商売している者がいるだろ? 彼等なら、作り方さえ教えてあげれば、作れるんじゃないかな?」

「じゃあ、魔術師団も作れますね。なら、作り方の権利だけ城にして、物を売るのは民に任せないと」

「そこは、クーファルかフレイが、決めれば良いんじゃないか?」

「そうですね。そうします。父上は普段吞気なクセに、時々テンションが変になる。悪い癖だ」

「ハハハ! 息子達の方がしっかりしてるからな」

 本当だよ。父よ、しっかりしようぜ。嬉しがって思いついたんだろうな。様子が目に浮かぶよ。

「リリ、取り敢えず魔石がいるな」

「あらら。ボク持ってないよ」

「リリ、兄様と街に買い物に行こう」

「兄さま、行きます!」

「はいはい。じゃあ行ってきな。帰って来たらまた呼んでよ」

「うん」

 俺はルーに、どうしたいか構想を説明した。

 その為に、どんな魔石が必要かを聞いてルーはまた消えた。

「じゃあ、兄さま行きましょう……あ! 駄目です!」

「リリ、まだ何かあるのかい?」

「兄さま、大変な事を忘れてました……」

 肝心な事を忘れてたよ! どーすんだ!?

「リリ、どうした?」

「兄さま……ボク、お金がありません」

「……リリ、兄様が持っているから」

「兄さま、買ってくれるのですか?」

「もちろんだ」

「兄さま、ありがとうございます!」

 やったぜ! クーファル太っ腹だ!

「そうか。リリはまだ買い物をした事がなかったね」

「はい。ありません。街に行った事がないです」

「そうか。じゃあ今日は練習だ」

「はい、兄さま!」

 こっちで生まれて初めての街だ。買い物だ。ちょっと、ワクワクするぜ。

 それと、もう一つの考えをクーファルに相談した。転移門の容量は充分なんだ。だからな、出来たら便利だと思うんだ。

「リリ、分かったよ。辺境伯に相談しておこう」

 やったね。できたら本当に便利だ。もしもの時にも良いと思うんだ。



 俺はクーファルやソールと一緒に、馬車に乗っている。

 馬車の前後に、オクソールとリュカが馬で付いている。

「兄さま、馬車はどうするんですか?」

「街に馬車預かりがあるんだよ。そこに預けるんだ」

「へぇ〜」

 パーキングみたいだな。

 俺は馬車の中から外を見る。あれ? あれはアルコースじゃないか? どうしたんだ?

「兄さま、アルコース殿が馬で追いかけてきます」

「アルコース殿が?」

 馬車がゆっくりと止まった。ソールが馬車の窓を開けた。

「殿下、街に行かれるそうで」

「ああ。リリと少し買い物をね」

「ご一緒します。お声を掛けて下されば、ご案内しますよ」

「リリの練習に良いと思い付いたからね。じゃあ、アルコース頼むよ」

「はい、殿下」

 きっとよく知っているのだろう。知った人に案内してもらえるのならその方が安心だ。

 馬車が走りだし、少しするとまた止まった。

「殿下、馬車はここまでだそうです」

 どうやら、もう街に着いたらしい。近いよな? わざわざ馬車に乗る必要あんのか?

 天気も良いし、ユキに乗ってのんびり行きたい感じだな。

「リリ、降りよう」

「はい、兄さま」

 先にソールが降りて、馬車から降ろしてくれた。街かぁ……初めてだ。色んな匂いがする。何かを焼いている様な香ばしい匂い。焼き立てのパンの良い匂いもする。生活があるんだなぁ。

 この世界で生きているんだ。信号もない、コンビニもない。俺もこの世界で生きて行くんだ。

「殿下、どちらにご案内しましょうか?」

「リリがね、魔石を買いたいそうなんだ」

「魔石ですか。では、あちらの区画ですね」

 アルコースとソールが前を歩き、その後ろをクーファルと手を繫いで歩く。