「やったー!」

「殿下! お見事!」

 ──おぉーー!

 ──殿下、スゲー!

 ──ヤッター!!

 見ていた領民達が歓声を上げた。

「リリ! 怪我はないか!?

 クーファルが慌ててやってきた。

「兄さま、大丈夫です。なんともありません」

「リリ、本当にヒヤヒヤしたよ」

「我が付いておる。怪我などさせん」

 ユキは本当に男前だよ。カッコいいよ。

「ユキ、ありがとう。兄さま、ごめんなさい。でもあれ、美味しいですよ!」

「えっ!? リリ、あれを食べるのかい? クラーケンだよ?」

 クーファルがビックリしているが、この際スルーだ。ちゃんと鑑定で確認したからな。大丈夫だ。

「シェフーッ! おっちゃーんッ!」

「おう!」

「はいぃッ! 殿下ッ!」

 二人揃って、ビュンとやってきた。アハハハ、良いコンビだ。

「あれ、食べるよ!」

 ビシッとクラーケンを指差して俺は言った。

「「ええぇーーッ!!」」

 うん、二人とも良い反応だ。ふっふっふ。


「んんーまーい! プリップリ!」

 シェフに言って、クラーケンをアヒージョっぽくしてもらった。

 プリップリじゃないか! 魔物なのに、超美味い! 魔物なのに。

「いやぁ〜、食べると言い出した時はビックリしたが。美味いもんなんだな! めっちゃ酒に合うな! ガハハハ!」

 ニルズはワインの入ったコップを片手に、上機嫌だ。いつの間に吞んでいたんだ?

「おっちゃん、酔ってる?」

「これしきのワインで酔うもんか!」

 本当か? 酔っ払いは皆そう言うんだよ? もう顔が赤いじゃん。

「ねえ、おっちゃん。同じ様なので、頭が三角なのいない?」

「いるぞ。今日の頭が丸くて赤いのが、レッドクラーケン。頭が三角で白いのが、ホワイトクラーケンだ」

「その三角なのも、美味しいよ」

「そうかッ!」

「殿下、他の調理法ですが……」

 シェフ、メモを片手に聞いてきた。プロだねー。早速、シェフが作ったらしい。タコの唐揚げと、タコのカルパッチョ。それに、ソイと砂糖で煮物まで。タコのフルコースだ。

「シェフ凄い! 天才!」

「殿下、有難うございますッ! いやぁ、クラーケンが、まさかこんなに美味しいとは思いませんでした!」

「うん。塩でしっかりヌメヌメを落としたら、美味しいでしょ」

「はい! 大きいから大変ですけどね」

「おっちゃん、魔物じゃないのも、いるでしょ?」

「あー、いるにはいるが。捕まえられないんだ。逃げ足が早いからな」

「おっちゃん、罠を仕掛けといたらいいんだよ」

「殿下、罠か?」

「うん。網の筒みたいな物の中に餌を入れておいて、海底に沈めておくんだ。海の温度が低いと、動かなくなるらしいから、暖かい時がいいね」

「そうか、やってみるわ!」

「うん」

 前世のテレビで見た知識なんだけどな。

「殿下! めちゃ美味いです!」

 リュカ、まだ食べてんのか。

「リリ殿下、しかし凄いのを連れてるんだな」

「え? おっちゃん何?」

「それだよ、ユキヒョウだろ?」

 俺の横で、タコを夢中になって食べているユキを指差した。とっても食べ方がワイルドだ。

「ああ、そうだけど。神獣なんだって。ユキって言うの。よろしくね」

「し、神獣だとぉッ!? 初めて見たぞ!」

 ニルズさぁ。リアクションは良いけど、手に持ったワインこぼすよ?

「ハハハ、俺達も初めてですよ」

「リュカ、お前もか?」

「はい、初めてですよ」

「なんか、スゲーな! リリ殿下は、マジで規格外だな!」

「ニルズさん、何言ってんスか。殿下は精霊様も友達ですよ」

「あん? 加護じゃねーのか!?

「加護もですけど、友達だそうですよ。ねえ、殿下」

「ん? ルーの事?」

「はぁッ? 名前あんのか!?

「ボクがつけたの。お友達だからね」

「はあ〜、慣れねー! 慣れねーわ!」

「アハハハ!」

 リュカ、お前はいつも酔っているのか?

「殿下、そろそろお昼寝の時間ですよ」

「オク、もうそんな時間?」

 そうか、もう半日いたんだな。ニルズといると楽しい。時間の過ぎるのが早く感じるよ。

「なんだ? 昼寝すんのか?」

「おっちゃん、ボクまだ5歳だからね。お昼寝は大事」

「ガハハハ! そうだった、まだ5歳だったな!」

 なんだよ、それ。忘れてたのか?

「リリ、戻ろうか?」

「はい、兄さま。ユキ、沢山食べた?」

「ああ、美味かった」

「良かったねー」

「ユキ、どうする? 殿下は私の馬にお乗せするが、小さくなるか?」

 オクソールが聞いてきた。

「いや、面倒だ。このままついて行く」

「オク、ボクはユキに乗って帰るよ」

 いつも乗せてもらってるの悪いしさ。ユキ、カッコいいじゃん? 乗って走りたいぃ!

「殿下、途中で寝てしまわれたら危ないですから」

「あー、そっか。じゃあオク、お願い」

「はい、殿下。では参りましょう」

 仕方ない。寝てしまったら落ちてしまうぜ。俺は両手を上げて、オクに馬へ乗せてもらう。

「おっちゃん、またねー! 今日はありがとう!」

「何言ってんだ! こっちこそ、有難うよ! また、いつでも来なよ!」

「うん、ありがとう! テティ、またねー!」

「殿下! 有難うございました!」


 やっぱ、帰る途中で寝てしまいました! オクソールよ、いつも有難う。本当、感謝してるよ。

「殿下、りんごジュースをご用意しましょう」

「うん、ニル。ありがとう」

 俺はベッドからおりて、ソファーに座る。ユキもお座りをしてりんごジュースを待っている。

「殿下、また色々食べて来られたそうで」

「うん。あ、もしかして姉さま?」

「はい」

「え、どうしよ……」

「シェフに相談しましょう」

「うん、そうしよう」

 ニルとユキと一緒に調理場まで来ている。シェフと夕食の相談だ。

「シェフ、夕食はこっちでいいよ」

「そうですね。豪華に見えますしね!」

 いや、めちゃくちゃ豪華だよ。シェフと相談して、伊勢海老のグラタンとフライにした。

 殻をグラタンの容器にする案もあったのだが、伊勢海老を見た事のない女の人が見ると抵抗があるかも知れないのでやめた。こんな高級食材をフライにするのはもったいないぜ。

「シェフ、リモネンとタルタルもつけてね」

「はい、殿下」

「殿下、少し宜しいでしょうか?」

「料理長、どうしたの?」

 この邸の料理長だ。

「先日、街の奥方達が来た時の話なんですが。白身の魚がよく捕れるらしいのです」

「そうなんだ」

「はい、それを利用して屋台や食堂で、出せる様な料理はないかと考えているのですが。殿下、何かありませんか?」

 白身魚か。そんなの決まってるじゃないか! ド定番だ!

「料理長、白身魚と言えば、お魚のフライでしょう」

「フライですか。あのパン粉をつけて、揚げるものですか?」

「うん、そうだよ。屋台なら、一緒にポテトフライもつけたらいいよ。前にじゃがいもで作ったよね? タルタルかけてパンに挟んでもいいなぁ」

「なるほど」

「フライはね、なんでも合うんだ。ボアのお肉でもいいし、ホロホロヤケイだっけ? あのお肉でもいい」

 今みたいにエビも合うし、イカもいい。

「ピンクの身のお魚ていないかな?」

「ああ、いますね」

「それも合うよ」

「成る程、どれも美味そうです。有難うございます」

「成る程、成る程。肉もいいと」

 シェフがまたメモってるよ。

「シェフ、ホロホロヤケイは唐揚げもいい。むしろボクは、唐揚げがいい」

「ほう、唐揚げですね。ふむふむ」

「ソイとジンジャーで下味つけて揚げて、リモネンを絞ってかけて食べるの。絶対に美味しい」

「ふむふむ。いや、美味しいに決まってますねッ!」

 そこにポンッと、ルーが現れた。

「リリ、また貰って行くけど」

「ルー、昨日はありがとう。父さまに会えて嬉しかったよ」

「そうかい? リリは寝ちゃったけどな」

「うん。起きた時に父さまがいなくてショックだった」

「ハハハ、仕方ないさ。あれ、ユキ。何食べてんの?」

 そう。俺の隣でユキとニルは、試作品の伊勢海老フライを食べていた。

「美味いぞ」

「ルー様、食べますか?」

「ニルまで食べてんのかよ」

「はい、美味しいですよ」

 ユキもニルもガッツリ食べてる。ユキは、本当に食欲旺盛だね。港でもガッツリ食べていたよね。

「シェフ、余分にある?」

「ありますよ。また持って行きますか?」

「ああ、いいかな?」

「お持ちするなら少し待って下さい。グラタンも焼きますから」

「うん、有難う」

 シェフがグラタンを作りに立った。世話をかけちゃうね。

「ねえ、ルー」

「ん? リリ何?」

「毎日持って行ってない?」

「リリが、毎日何かやらかすからだろう?」

「そんなに毎日やってないよ」

「そうかい? まあ、気にすんなって」

「まあ、いいけど」

 ルーの出前みたいだな。ウー○ーじゃなくて、ルーイーツだ。

 面白くない……でも、ルー。ありがとう。いつもごめんね。

「ああ、そうだ。リリ、皇帝が転移門を修復して欲しいんだとさ」

「そうなの? どうやって?」

「また僕が教えるよ」

「そう、お願い」

 そうか。転移門か。どうせなら、今度は騎士団中隊分位を転移できるのがいいな。馬や馬車も転移出来るともっといいなぁ。

「ん? リリ、マジか? リリなら出来るだろうな」

「そう? じゃあ、そうしよう」

「本当に、初代といい、リリといい」

「なぁに?」

「規格外にも程があるよ」

「そう? エヘ」

「エヘじゃないよ」

「ルー、転移門を直したら帰りは転移で帰れるの?」

「いや、城の方が駄目だから無理だ。戻って城の転移門を直したら、次からは転移門で一瞬だ」

「うん。ちょくちょく来ようっと。あれ? ルー?」

「なんだ?」

「転移門を作れる位なんだから、ボクって転移できないの?」

「そうだな。出来るだろうな」

 なんだよ! 出来るのかよ!

「まあ、でも転移門があると複数の人を転移できるから、便利だよ?」

「うん。転移門は直すよ」

「まあ、時間が出来たら呼んでよ」

「うん。ルーありがとう」

 そうして、ルーはシェフに色々もらって消えた。どこに仕舞っているんだろう……

「本当、毎日だよね?」

 シェフに聞いてみた。

「そうですね。毎日ですね」

「父さまと母さまが、食べるんだよね?」

「もちろん、そうですよ。ああ、皇后様もらしいですよ。殿下が見つけて、殿下が考えて、殿下が食べてらっしゃるのが、欲しいと仰っているそうです」

「そっか……そっか」

「恋しくなりましたか?」

「シェフ、そりゃあね。ボクはまだ5歳だから」

 そりゃあ、恋しいさ。まだ親の側にいたいさ。5歳だからな。

「さあ、殿下。夕食にしましょう。このメニューで、きっとフィオン様も喜ばれますよ」

「うん! シェフ、そうだね!」


「まあ! なんて美味しいのでしょう! 今迄食べていた海老とは全然違うわ!」

 伊勢海老のグラタンを食べた、フィオンの台詞だ。そーだろ、そーだろ! 美味いだろう! そりゃそうだよ、伊勢海老だもんな。高級食材だからな。

「姉さま、気に入ってもらえましたか?」

「ええ、リリ! 本当にとても美味しいわ!」

 良かった良かった。シェフと相談した甲斐があるよ。

「これも、食べられていなかったのだな?」

「ええ、クーファル殿下。本当に勿体ない事です」

「父上、本当にそうですね」

「アスラールが仕留めたクラーケンもだな」

「父上、あれは私ではなくリリアス殿下ですよ」

「まあ、リリが!?

 アスラール、フィオンの前でそれを言ったら駄目だ。フィオンは俺に超過保護だからな。

「姉さま、違いますよ。アスラ殿が仕留めたも同然なんです。ボクは、トドメを刺しただけです」

「リリ、あまり危ない事はしないでちょうだい。姉様、心配だわ」

「姉さま、大丈夫です。オクもリュカもユキもいますから!」

「フィオン様、こちらもリリアス殿下が教えて下さった、カルパッチョです」

「シェフ、これは生なのね?」

「はい、オリーブオイルとビネガーにリモネンの果汁を加えたソースをかけてあります。とても、爽やかで美味しいですよ!」

「そうなのね。いただいてみましょう」

 タコと言っても、クラーケンなので大きいんだよ。その分、歯ごたえも凄いんだよ。

 だから、シェフが薄〜く透ける程に切ってカルパッチョにしてくれた。

「弾力と甘みが、とても美味しいわ」

「シェフ、やったね!」

「はい! 殿下ッ!」

「殿下方、この後少し宜しいでしょうか?」

「リリ、平気かい?」

「はい、兄さま。まだ大丈夫です」

「何かございましたら、無理には……」

「ああ、辺境伯。違うんだ。リリはまた寝てしまうからね」

「そうでした。そうお時間は取らせませんので」

「アラ殿、大丈夫です」

「では、リリアス殿下。少しお時間を下さい」


 俺は、オクソールに抱っこされて、邸の地下に降りる階段を降りている。

 ちゃんと両側に灯りが備え付けてあって、幅も広い。地下に下りる階段には見えない。階段の両脇はスロープになっている。これはもしかして、馬車でも通れる様に作ってあるのか?

 アラウィン、アスラール、クーファル、フィオンに、ハイクとリュカが一緒だ。

「殿下、こちらです」

 アラウィンが、白っぽい石でできた地下の大きな扉を開けた。

 長く使われていなかったのだろう。石の扉が、ゴゴゴ……と音をたてた。俺達は中に入る。

 そこには一段上がった丸い土台に、十一芒星の様な魔法陣が描かれている。

 十一芒星って、たしかウンデカグラムだっけか? 前世でいうと、アメリカの自由の女神の土台だ。あれが十一芒星だったよな? まあ、俺の知識なんて中途半端だ。うろ覚えって、やつだ。

 十一芒星の11個の頂点には、白くて丸い柱が立っている。

 そして11本の柱の中央には、幾何学模様のアラベスク柄が彫り込まれている。その柄の中心に、十一芒星の中央に向かって、透明な丸い魔石が嵌め込まれている。

 向かい合っている柱の上にも、同じ様な柱が渡してあって、中央に同じ柄と魔石がある。

 柱は11本だ。正面右側の1本だけ、上に柱を渡してない。柱の数が奇数だから、対にしていったら1本余る。その余った柱にある魔石だけ大きさが違う。他の柱の魔石より一回り? いや、二回りほど大きい。もしかして、この魔石が起動装置か?

 これが転移門。中世ヨーロッパかそれとも古代ローマ遺跡か? て、趣きだ。

 邸の地下にこんな大きな設備があるなんて想像できない。

「辺境伯、これは?」

「クーファル殿下、これがルー様が仰っておられた転移門です」

「これが……」

「とても大きいのですね」

「オク、下ろして」

 俺は、オクソールの腕からおりて、転移門の方へ歩いて行った。

「リリ、ストップだ」

 ポンッとルーが現れた。

「ルー、なんで?」

「リリ、気をつける様に言ったろ?」

 パタパタと俺の肩に止まった。

「え? ルーこれも?」

「ああ。むしろこれは特にだろう?」

「そうなの?」

「ああ、そうだ」

「ルー様、リリがどうしたのですか?」

「フィオン、リリは光属性が強いんだ。初代も強くてな。初代の魔力の残滓があると、意識が引っ張られるんだよ」

「引っ張られる……ですか?」

「そうだ。意識が過去に引っ張られてしまう。見なくて良いものを、見てしまうかも知れない」

「ルー様、それは初代が見たものと言う事ですか?」

「クーファル、そうだ。言っただろう? 初代の頃は、今みたいに平和じゃなかったんだよ」

「そうでした。リリは見ない方がいい」

「兄さま、ルー。そんなになの?」

「ああ、この部屋の扉がなんでこんなに大きな石造りなのか分かるか?」

「もしかして……魔物?」

「そうだ、リリ。万が一の時に、魔物が入って来られない様にだ」

「そうなんだ……」

 扉や柱が白っぽいのも、魔物避けが使われているのだろう。領地内にある魔物避けと同じだ。

「これが、最後に使われたのが30年前だ。転移門が作られたのは630年前だ。約600年間、魔力を補充しながら使われていたんだ。初代は凄いだろ?」

「うん、想像できないや」

 本当、残っているだけでも凄い事なのに、使われていたんだもんな。

「リリ、君が引き継ぐんだ。修復できるのは、リリしかいない。リリは以前花を咲かせた光の大樹と、この転移門を守り引き継ぐ事。それが役目になる。悪いな、プレッシャーかけてしまって」

 いや、プレッシャーもあるが……

「ルー、ボクは修復できる事を誇りに思うよ。守り引き継いでいくよ」

 アラウィンが感慨深げに話し出した。

「私はまだ子供でしたが、使われていた事を覚えております。実際に、父と一緒に転移した事もあります。先代の皇帝陛下が、光属性の魔力を補充する為に、定期的に来られていたのも覚えております。600年間、続けて来られたのです。次代のフレイ殿下に、壊れたままお渡しするのは心残りでありました。リリアス殿下。殿下には心から感謝を申し上げます。領地の事でも、大変ご迷惑をお掛けしましたのに」

 違うんだ。辺境伯領だけの為ではない。迷惑なんかでもない。

 だから俺は、リリアスという個人としてではなく皇子として言おう。

「アラウィン辺境伯、迷惑などではありません。辺境伯領の為だけではなく、帝国の為です。ボクは、帝国第5皇子としてできる事をするだけです」

 俺は敢えて口調を変えて、アラウィンに言った。いつもの気さくな感じではなく、帝国第5皇子として丁寧にだ。

「そうだ、リリアス。辺境伯領が盤石でないと、帝国の平和にも関わってくる。リリアスだけでなく、フィオンや私も帝国の皇家としての役目だ。辺境伯、この地を頼んだ」

 アラウィンとアスラール、ハイクは跪いた。

「必ず……必ず守り続けて参ります。陛下や殿下方から受けた恩義に報いる為にも。お任せ下さい」


 俺はまた途中で寝てしまった。またオクソールが抱っこして部屋に連れて来てくれたらしい。毎度毎度、オクソール申し訳ないね。

「殿下、お着替えしてお食事に」

「うん。分かった」

 俺はモソモソとベッドをおりて、着替えて食堂に向かう。

「ニル、転移門て知ってる?」

「はい。城の地下にありますよね。見た事はありませんが」

「昨夜見たんだ」

「昨夜ですか? では、このお屋敷に?」

「うん。地下にあるんだ。ボクが修理する事になったの」

「殿下がですか!? 危険はないのですか!? もしも、魔力が尽きたりでもしたら!」

「ニル、大丈夫。ルーが平気だって言ってた。ボクが直さないと、もう修復は出来ないだろう、て」

「殿下、本当に大丈夫なのですね?」

「うん。直すだけじゃなくて、一度に転移できる人数も増やす予定なんだ。ボクはできるんだって」

「でも、殿下。少しでも無理だと思われたら、すぐに止めて下さいね」

「ニル、ありがとう」

 食堂に入ったらシェフが待っていた。

「殿下! おはよう御座いますッ!」

「シェフおはよう」

「今朝は、こちらの漁師飯を取り入れてみましたッ!」

「そうなの?」

「はいッ! さぁ、どうぞ!」

 そう言ってシェフが自信満々に出してきたのは、なんと!

「シェフ! おにぎりじゃん!」

「はい、殿下。船の上で食べた時に、とても美味しかったでしょう? あれから、米を炊く練習をしてまして。やっと上手に炊けました!」

 練習なんてしていたのか!? 炊飯器がないもんな。俺は自慢じゃないけど、炊飯器がないと米は炊けないぞ。

「シェフ、凄い! それに、ミソスープじゃん! え? これ、魚の干したやつ?」

「そうです。殿下が食べてみたいと仰っていたので、ニルズ殿が持ってきてくれましたよ」

「シェフー! 凄い! あー、これで卵焼きがあったら完璧じゃん!」

「んん? 殿下、卵焼きとは? それを詳しく」

「えっとね、卵をね……」

 食堂でシェフに卵焼きを説明していると、クーファルが入ってきた。

「リリ、食べないと冷めてしまうよ?」

「兄さま、おはようございます。昨日また寝てしまって、ごめんなさい」

「ハハハ、大丈夫だ。想定内だからね」

 想定してたのかよ。分かっているなら、次から昼間にしてくれると嬉しいな。要希望だ。

「おや、今朝は見た事がない食事だね」

「兄さま、おっちゃんに教えてもらったご飯です!」

「ご飯と言うのかい?」

「はい。これは、おにぎりです。手で持って食べます。このミソスープも美味しいです。ほっこりしますよ!」

「リリ、ほっこりなんて言葉を、よく知っていたね?」

「エヘヘ。食べて下さい。船で食べた時にとっても美味しかったので、シェフが頑張って作ってくれました!」

「そうなのかい? それは楽しみだ」

「殿下、冷めないうちに、食べて下さい!」

「うん、シェフ。いただきます!」

 俺は、おにぎりを手に取って、カプッとかぶりついた。いやー、こうなると切実に箸が欲しい!

 和食をナイフとフォークで食べるのは何か違う。違和感ありまくりだ。

「んーー! シェフ美味しいぃ! めちゃ上手に炊けてるよー!」

「殿下ぁッ! 有難うございますッ!」

「ミソスープが、しみるぅ〜!」