「かわいい……」
「ええ、本当に」
「初めまして、ボクはリリだよ。元気に大きくなるんだよ。たくさん一緒に遊ぼうね」
「フフフ、リリったら」
夜明けだ……朝が来た。ふぅ……もっと時間が掛かるかと思ったけど。
そうだ、忘れずに。念の為に『鑑定』だ。うん、大丈夫だ。健康な子だ。
後産が終わったら、母が回復魔法をかける。出血もそう多くはなかったし、軽くで大丈夫だろう。
後は、ゆっくり自然に回復していこう。
「アイシャ、疲れたでしょう? ゆっくり休みなさい」
「エイル様、有難うございます」
母2人だ。強いなぁ。綺麗だなぁと思った。
「レイリ、出産に立ち会っちゃったね」
「はい。もう離れる事なんてできませんでした」
「そうだね。ボクまで立ち会っちゃったよ」
「殿下に立ち会ってもらえるなんて、幸運な子ですよ」
「アハハハ、良かった。2人共、無事で良かったよ」
レイリが、ゆっくりと深く頭を下げた。
「リリアス殿下、エイル様。私の妻と子を助けて頂き、本当に有難うございました。このご恩は忘れません」
レイリ。父親になったんだね。あとは、邸の医師に任せて部屋を出るとニルが待っていた。
「エイル様、殿下。お疲れ様でした」
「ニルも、お疲れ様」
「かわいい男の子よ。ニルも抱かせてもらってきなさい」
「よろしいですか?」
「うん。ニル、ボクここにいるよ」
「すみません、少しだけ」
ニルは部屋に入っていった。
「ニルがリリを連れてきてくれたのね?」
「はい、母さま」
母と一緒に部屋の前でニルを待つ。
「あの子はリリを赤ちゃんの頃から見ているのよ。リリを育てたのはニルね」
「え、そんなにですか?」
「そうよ。乳母を付けてはいたけど。母乳が必要なくなると、もうニル1人で殆ど世話していたわ」
「あらら……」
帝国は皇族でも、赤ん坊と母親を別にする事はしない。同じ部屋で育てる。初代皇帝の考えだ。
乳母はいるが、赤ん坊を育てるのは殆ど母親と赤ん坊付きの侍女だ。
4歳になる迄は、母親と同じ部屋で生活をする。その後は、子供の性格や成長度合いを見て判断される。夜泣きやオネショ等だな。俺は、4歳からニルと2人だ。兄達も同じだと思う。
「リリは、夜泣きをあまりしない子だったのよ。それでも時々泣いたら、皇后様やクーファル殿下まで駆け付けてこられるの。いつもニルが、お戻り下さい。と、言って追い返していたわ。フフフ」
なんか目に浮かぶなぁ。
「昼間は昼間で、皆順番に見に来るのよ。だから、リリが落ち着いて寝られなくて。ニルが、出入り禁止にしますよ! て、怒っていたわ」
ニル、最強じゃん。アハハハ!
「リリは確かに何度も狙われたわ。でもね、皆に沢山愛されているのよ。皇后様なんて、一度リリを抱くとなかなかお離しにならなかったから困ったものよ。やっと皇后様に解放されたと思ったら、次はクーファル殿下だったりね。フフフフ」
そうなのか? 知らなかった。
「お待たせして申し訳ありません」
ニルが部屋から出てきた。
「ニル、かまわないわ」
「ニル、有難う」
俺は、ポフッとニルに抱きついた。
「え? 殿下? どうされました?」
「フフフ。今ね、リリが赤ちゃんの頃の話を少ししていたの。リリを育てたのはニルだわ、ってね」
「そんな、エイル様。とんでもないことです」
「殿下、お部屋に戻りましょう。お休みになられないと」
「うん、ニル。母さまも、ゆっくり寝て下さい」
「ええ、リリ。有難う」
そうだよ。母の方が寝てないんだからさ。
「ん〜……」
「殿下、おはようございます」
「ニル、おはよう。ニル寝てないんじゃない?」
「いえ、ちゃんと寝ましたよ」
「えー、本当に?」
「はい」
俺はベッドから下りる。ニルは一体いつ寝ているんだろう?
「ニル、今何時?」
「もう直ぐお昼です」
「え? ボクそんなに寝てたの?」
「はい。エイル様から聞きました。長い時間魔力を使われていたとか。そのせいではないかと」
「そうなの?」
「はい」
長時間魔力を使うとそうなのか? 知らなかった。マジか。
「殿下は、魔力量が多いので普段はそんな事ないでしょうが」
「そうなんだ」
「りんごジュースをどうぞ」
「有難う……あ〜、美味しい」
「フフフ」
ニルに微笑まれちゃった。生温かい目でさ。
──コンコン
誰だろ? ニルがドアを開けて確認する。
「殿下、お目覚めでしたか」
「デューク、うん。どうしたの?」
フレイの側近デュークが部屋に入ってきた。
「昨夜はお疲れ様でした。辺境伯様が改めてお礼を申したいと言っておられました。それで殿下、お戻りのご予定なのですが」
「ああ、そうだ。今日帰る予定だったんだよね?」
「はい。フレイ殿下が明後日に延ばそうと仰っています。あの殿下、例の恒例の」
「ああ、あれね。するつもりなんだ?」
「はい。しかし、今回は遠征ではなくリリアス殿下のお休みなので」
ああ、そうか。俺に気を遣っているのかな? 俺はどっちでもいいよ。
「うん。兄さま言い出したら聞かないし。ボクは気にしないよ。全然構わないよ」
「有難うございます」
いいよ、いいよ。全然いいよ。て言うか、領主隊や騎士団や近衛師団はどうなんだろ?
「ああ、ご心配はいりません。皆、やる気です」
「なんだ、そうなんだ」
じゃあ余計に俺は何も言わないさ。て、事で明後日帰る事になった。
きっと明日は恒例の対戦だよ。いいけどさ。本当、みんな体育会系だよね。
俺は、朝食兼昼食を食べに食堂にきた。
「リリしゃま!」
「アウル、おはよう」
「リリしゃま。もうおひるれしゅ」
「ああ、そうだった」
ハハハ、さっきまで寝てたから。俺の隣がアウルースで固定になっていて、もう既に座っている。
「リリしゃま、あかしゃんみました!」
「そう! かわいいでしょ?」
「あい! ちいしゃいれしゅ!」
「ねー、アウルより小さいね」
「あい! にーしゃまれしゅ!」
「ん? ああ、アウルはお兄さんだね」
「あい! かわいーかわいーしましゅ!」
「そうだね。可愛がってあげてね!」
「あい!」
シェフが料理を出してくれる。
「パスタに致しましたッ! 殿下、食べられますか?」
「うん! 食べるよ。お腹すいちゃった」
アイシャの出産の事で、アラウィンにえらく感謝されてしまった。
「助産師が驚いてました。どうやっても逆子が戻せなかったのにと」
うん、あれは少し大変だったよ。少しずつゆっくりと戻したからな。まだ、この世界では帝王切開ってないし。でも、上手くいって良かった。無事に産まれて良かったよ。
母がずっとついていてくれたのも、逆子だった事が大きいのだと思う。
もし、戻せなくて足から出産なんて事になったら、大量に出血していたかも知れない。そうなったら命に関わる。赤ちゃんだって危険だったかも。きっと難産になっていただろう。
母は、その危険性を考慮してくれていたのだろうと思う。母も回復魔法を使えるからな。
なのに、そんな事は一言も言わず、ずっとアイシャを励ましてくれていた。
母は冷静に対処してくれた。それにあの度胸だよ。本当、凄い侯爵令嬢だよ。
「リリ、なあに? ジッと見て」
「いえ。母さまは凄いなと思ってました」
「何かしら? やだ、気持ち悪いわ」
ハハハ、気持ち悪いって言われちゃったよ。
「まあ! アウル、どんな食べ方したの? お顔がベトベトじゃない!」
「エヘヘへ」
アハハハ! アウルースのほっぺも鼻の頭までもベトベトだ。フィオンに顔を拭かれている。
「アウル、美味しい?」
「あい! リリしゃま! おいしいれしゅ!」
「そうか! アーシャは?」
「おいしいです!」
アンシャーリは上手に食べてる。今日はアウルースとアンシャーリとずっと遊ぼう!
「よう! リリ殿下!」
俺達はまたニルズに会いに港まで来ている。今日は、船にのる予定はないのでアウルースやアンシャーリも一緒だ。
「アウル、アーシャ、おっちゃんだよ」
「おっちゃん!」
「え? リリでんか、おじさまではないのですか?」
「うん、アーシャ。おっちゃん」
「お、おっちゃん!?」
「そうそう!」
「リリ殿下、何教えてんだよ! おっちゃんを広めようとしてねーか?」
ブホホホ、バレたか!
「こんにちは、私はテティと言います」
「て、ててー」
アウルース、言えてないよ。
「あら、難しいかしら?」
「こんにちは、アーシャです!」
「まあ、お利口さんね!」
「おふねが、いっぱいれしゅ!」
「ああ、そうだろ? もう少し大きくなったら乗せてやるよ!」
「あい!」
皆で港を歩いて行く。通り過ぎて浜辺に向かう。
アースとレイ、ラルクがキョロキョロしている。興味津々だ。
「殿下、あの大きなのが先日の魔石ですか?」
ラルクが魔石を並べてあるのを見て聞いてきた。
「そうだよ。ブルーホールの底に沢山あるんだ」
「リリ殿下、ブルーホールって何ですか?」
おや、レイもまだ知らないか。
「ブルーホールってね、ほらあそこ。珊瑚礁が見える? あそこにね、浅瀬が陥没しているところがあって、そこだけ穴の様に深くて海の色が違うんだ」
浅瀬に白っぽい珊瑚礁が見えている所を指差しながら、軽くブルーホールを説明する。
しかし、本当に大きな魔石だな。
「おっちゃん、魔石大きいね」
「ああ、そうだろ? ニディが潜るのが得意な奴を集めて潜ってるんだ。1時間だけとか時間を決めてるみたいだぜ。そう慌ててとる必要ないしな」
「うん、そうだね。安全が一番だからね」
限りある資源だしね。安全にゆっくりが良いよ。魚介類の種類も5年前と比べて増えている。前は動きが速いから捕りにくいと言ってた、イカやタコも水揚げされている。
「凄い! 俺、見た事ないのばかりだ!」
アースが驚いている。そうだよな、帝都にはまだ流通してないもんな。
「新鮮だからな。焼いて塩やソイをかけるだけでも美味いぞ」
うんうん、そうだよな。今日はシェフも付いてきている。港のおじさん達と話しているから、きっと持って帰るつもりだな。
アウルースと俺が手を繫いで、アンシャーリはアースと手を繫いでいる。ちゃんと2人の父親も来てる。あとはもちろん、オクソールとリュカだ。ユキもいる。
「アウル、大人しいけど疲れた?」
アウルースが首を横にブンブンと振る。どうした?
「リリしゃま、ぼくしりゃないの、いっぱいれしゅ」
水揚げされている魚を指差して言う。
「そうかな、アウル。食べてるのも沢山あるよ?」
「え! ぼくたべてましゅか!?」
「うん、お魚食べてるでしょ?」
「おしゃかな……ちがいましゅ」
そう言ってアウルースは小さな長方形を指で描く。あら……? あらら?
「リリアス殿下、アウルは魚1匹丸ごとを見た事ないんですよ」
「アルコース殿、そっか! お魚は切り身しか知らないんだ!」
あー、日本でもいたよ。魚は切り身で泳いでないっての。
「アウル。あの大きいお魚をね、シェフ達が食べやすい様に切っていつも食べてる形にしているんだ。元はあんなのだよ」
「ふぉぉ〜、きって!」
「おおきい……!」
アハハハ、もしかしてアンシャーリも知らなかったかな?
「シェフ、しゅごい!」
アハハハ! シェフなんだ! 小さな子って、発想が面白いよな。さあ、そろそろ浜辺だ。
「アウルとアーシャは浜辺に来た事あるのかな?」
「リリでんか、はじめてです!」
「れしゅ!」
そうなのか? 近くにあるのに。
「今日は浜辺で遊ぼう」
「あい!」
港とは違って、船が停泊していないから、波が打ち寄せているのも水平線もよく見える。
「ふわぁぁーー! リリしゃま! ひりょいれしゅ!」
そうだよ。世界は広いんだ。アウルースやアンシャーリの知らない事が沢山あるんだ。
俺はアウルースと波打ち際に行く。
「リリしゃま、ジャパーンて! おみじゅ!」
「アウル、海はね普通のお水じゃないんだ。塩っぱいんだよ」
「ひょ! しょっぱいれしゅか!?」
「アハハハ! そうだよ、塩っぱくて飲めないよ?」
「ひょー!」
「リリ殿下、ここら辺ならいるぞ」
「うん、おっちゃん。有難う」
さてさて、俺はマジックバッグから秘密兵器を出そうかな。
「はい、アウル。アーシャも」
「リリしゃま? なんれしゅか?」
「これでね、こうして……」
俺は波打ち際を掘って見せる。
「ほら! 貝が出てきた!」
「ホントだわ!」
アンシャーリも食いついてくれた。よしよし。子供でも持ちやすい様に、小型の熊手を作ってもらったんだ。危なくない様にちゃんと先を丸くしてだ。これを使って今日は潮干狩りだ!
「食べられるからね! 沢山とって持って帰って食べよう!」
「あい!」
「はいッ!」
アウルースとアンシャーリが掘り出した。アースとレイとラルクもリュカに熊手を貰っている。
「リリアス殿下、この貝はよくパスタに入っている?」
「そうそう。ラルク、そうだよ。アサリだよ」
「あー! アウル! お前座ったらお尻濡れるだろ!」
「あー、とうしゃま。びしょびしょ」
あーあ、座っちゃったか。
「アウル、おいで!」
俺が呼ぶと、アウルースが両手を横に広げたままヨタヨタとやってくる。濡れて気持ちが悪いんだろう。変な歩き方をしている。ドライ。と、ついでにクリーン。シュルンと水気がとんで乾いた。
「よし、気をつけてね」
「リリしゃま! しゅごい! まほうれしゅか!?」
「そうだよ。アウルも大きくなったらできるよ」
「ぼくも!? ぼくもれきましゅか!?」
「うん。できるよ」
「とうしゃまとかあしゃま、ちゅかってましゅ! ぼくもれきるれしゅか!?」
「うん。もっと大きくなったら教えてもらうといいよ」
「いまは、らめれしゅか?」
「アウルはまだ小さいからね。それより、沢山食べて、遊んで、ちゃんとお昼寝する方が大事だよ」
「あい!」
お利口さんだね。それから、俺達は沢山アサリをとって、砂浜でトンネルを作ったりして遊んだ。
波と追いかけっこしたりした。恋人同士かよ。太陽に向かって走ってはないぞ。え? 古い?
アウルースとアンシャーリは初めての砂浜で歩きにくそうだった。レイもだ。アースは運動神経が良いんだろうな。平気な顔をして走っていた。
もう少し大きくなったら、ビーチバレーも良いなぁ。小さくても俺は飛べる! なんてな!
「殿下! 色々焼いたから食べな!」
「はーい! おっちゃん有難う!」
エビの塩焼き、蛤のソイ焼き、イカの炙ったもの、牡蠣。ご馳走だ。え? 蟹もある。こんな季節に蟹か? これは、タラバかな?
「おっちゃん、この季節に蟹が捕れるの?」
「ああ、この種類のは初夏と冬に捕れるんだ」
へえ〜、知らなかったよ。
「うんまッ!」
「アース、口ん中いっぱいじゃないか」
「本当に、焼いただけなのに。美味しいですね」
「ラルク、そうでしょ〜。新鮮だからね。プリップリだ」
「リリしゃま! おいちー!」
「あーあ、アウル。手も口の周りもベタベタだ」
アルコースがアウルースの顔を拭いている。
「アーシャ、美味しい?」
「はい! リリでんか、おいしいです!」
やっぱ、アーシャは食べるの上手だ。アウルと違って、全然顔が汚れてないぞ。
「殿下、夕食は魚介類で何か作りましょう!」
「うん、シェフ。母さまが牡蠣のグラタン食べたがってたよ」
「そうですか? ではそれを一品!」
「うんうん」
「で?」
「え? で? て?」
「他に何かありませんか?」
「んー、アクアパッツァとかエビフライ?」
「ああ、良いですね。アクアパッツァにエビフライですか。タルタル付きで」
「うん。シェフのタルタル美味しいもんね」
「殿下、タルタルって何ですか?」
レイがエビを剝きながら聞いてきた。レイはエビばっか食べてる。気に入ったか?
「え? レイ。タルタル知らないの?」
「はい、知りません」
「じゃあ、夕食を楽しみにしておいて」
「タルタル、わたしすきです!」
「ぼくもタルタルしゅきー!」
「え? 2人は知ってんの?」
アースも知らないか? もしかしてマヨも知らないか?
「シェフ、帝都でもっとレシピを広げなきゃね」
「本当ですね。こんなに差があるとは!」
そうだよ。何でだ? 例えばタルタルでもさ、俺がシェフに教えたのはもう5年も前だ。全然帝都に、広がってないじゃん。
「食べられるお店がまだありませんからね」
「オクソール、そうなの?」
「はい。まず何処かの店で食べて美味しいと認識しないと、なかなか広がりませんね」
そりゃそっか。お店なぁ。まあ、帝都に帰ってから考えよう。屋台も良いよな。
ああ、そうだ。テティが5年前にまず屋台から始めるみたいな事言ってたな。
「それよりリリ殿下、もう帰るんだろ?」
「うん、おっちゃん。明後日ね。明日はフレイ兄さまが恒例のを開催するって、張り切ってるよ。今頃は領主隊が選抜してるんじゃないかな?」
「お! やるのか? 見に行くぜ!」
「今回も負けません!」
リュカ、やる気だね。
「殿下、もうアウルが」
アルコースに言われてアウルを見ると、手に蟹の脚を持ったままコックリコックリし始めている。
「ああ、もう限界だね。お昼寝しないで来ちゃったから悪い事しちゃったな」
「いえ。アウルとアーシャも殿下と遊べるのは喜んでますから」
と、言うアスラールを見ると、アンシャーリが腕の中で同じ様にコックリしている。
「お腹もいっぱいになったから、一気に眠気が来たんでしょう」
「うん。アスラ殿、じゃあそろそろ帰ろうか」
「はい、殿下」
「えッ! 待って! 俺、これ食べてしまう!」
アースが慌てて口に入れている。そんなに気に入ったのか。良かった。
「リリ殿下、また来てくれな」
「うん、おっちゃん。必ず来るよ」
「ああ。待ってるぜ」
「おっちゃんも、テティと帝都に遊びに来れば良いのに」
「ああ、いつかは行きたいな」
「うん。待ってる!」
「ん……リリしゃま……?」
「アウル、おはよう」
「エヘヘへ。リリしゃまいた」
アウルがお昼寝から起きるまで、俺は側にいた。ずっと寝顔を見ていた。
何でだろう。この子は一緒にいると心が温まる。何故か懐かしい感じまでする。それに、素直でお利口だ。無事に大人になってくれる事を祈るよ。俺は、アウルに話をした。
明後日には帰る事を話した。
「あい……リリしゃま」
アウルは泣かなかった。一生懸命、涙を堪えていた。手をギュッと握って、目にいっぱい涙を溜めて俺を見ている。俺はアウルを膝の上に座らせ抱き寄せ手を握る。そんなに強く握っていたら爪痕がついてしまう。この子は本当に賢い。怖くなるよ。
「アウル、また絶対に来るからね。それに、アウルが大きくなったらお城に来る事だってできる。また、いつでも会えるんだ。だからこれが最後じゃないからね。ボクはいつもアウルを思っているから。アウルは、沢山食べて、沢山遊んで、ちゃんとお昼寝して大きくなるんだよ」
「あい、リリしゃま。ぼくもリリしゃまにあいにいきましゅ! ぼくはリリしゃまわしゅれましぇん。じゅっとじゅっとリリしゃましゅきれしゅ」
「うん、ボクもアウルが大好きだ」
「リリしゃま、ぼくにないしょれ、いなくなったりしないれくらしゃい。やくしょくれしゅ」
「アウル……?」
きっとアウルースはそんなつもりはないんだろう。だがこの言葉は、突然この世界に来た俺には特別なものに思えた。ドキッとしたよ。全部見透かされている様な気がした。
「大丈夫だ、アウル。ボクはどこにも行かないよ。絶対にまたアウルに会いに来るからね。また一緒に遊ぼう」
「あい! リリしゃま!」
それから一緒に夕食を食べた。シェフが言ってた通り、牡蠣のグラタンにエビフライ、アクアパッツァまで出てきた。アースとレイに、これがタルタルだ! と教えてやった。2人共、エビフライにたっぷりつけて食べていた。沢山食べた。
アウルースがお口の周りをホワイトソースとタルタルだらけにして食べていた。大きな口を開けて美味しそうにニコニコして食べていた。そして、その日はアウルースと一緒に寝た。
思い出すよ。前世の息子たちが小さかった頃を。こうして一緒に寝た。一緒に食事をした。一緒に遊んだ。何気ない日常がかけがえのない思い出になるんだ。
もう、息子達には会えないが俺は忘れない。大事な息子達だ。
元気でいてくれ。ちゃんと大人になって悔いのない様に生きてくれ。
そうか……もしかして俺はアウルを息子達と重ねていたのかな?