特別収録 レッツゴー☆オズマーランド!  


「はあ、はあ、はあ……」

 夜半の寝室に、リズムの異なる男女の呼吸音が幾重にも重なっていた。

 精霊石の淡い間接照明に浮かび上がる汗まみれの裸身。酸素を求めて上下する胸。くすぶる官能の残り火に、女たちの白い尻がビクンビクンと震えている。

 アーヴィンとシャーリーが左右から火照る肢体を俺へと擦り寄せ、うっとりとした表情のザザが、俺の腹を枕に息を荒げていた。

 ザザを三人目の妻に迎えてから、彼女たちを同時に抱くのは、これが三度目だ。

 最初の一度はともかく、二度目以降は抜け駆けしようとした一人を残りの二人が咎め、それを宥めようとした俺に矛先が向いて、なし崩しで三人を同時に相手しなくてはならなくなるというパターンが成立しつつあった。

(それにしても……異常すぎるよな、この身体の絶倫っぷりは……)

 妻たちは、それぞれに何度も絶頂し終えている。

 それでも尚、俺のモノは萎える気配もなく雄々しく反り返ったまま。

 それは不満げに震えながら、更なる彼女たちの奉仕を求めていた。

 愛する妻たちは疲労困憊といった様子ではあるが、快感に瞳を蕩けさせながら、俺の身体を愛おしげに撫で回し、甘えるように身を擦り寄せてくる。

 普段は凛々しい近衛騎士のシャーリー。人前ではツンツンと刺々しいこの国の姫アーヴィン。そして、フレンドリーなクラスメイトのザザ。いずれ劣らぬ美少女たちである。

 多くの人間に憧れの目を向けられる女たち。そんな彼女たちが今、発情しきった牝の顔をして争うように俺の寵愛を求めていた。

(まったく……過ぎた贅沢というか……)

 それが、偽らざる俺の想いである。

 魔法の研究三昧で女性にほとんど縁も無く、童貞のまま一生を終えた前世を思えば、この状況は未だに夢の中にいるようにすら思える。

 そのせいだろう。どこか一歩引いたような目で、この状況を眺めている自分自身がいた。

(でも……もっと彼女たちを味わいたい)

 そろそろ休憩も終わり。俺が再び彼女たちを抱き始めるための切っ掛けをさがしていると、アーヴィンが俺の胸に指先でのの字を描きながら、甘えるように囁きかけてくる。

「ねぇ、オズ、今度の休みなんだけど……」

「なんだ?」

「旅行とか……どうかな?」

 すると、俺が返事をするより先に、ザザが顔を上げて話に割り込んできた。

「いいね、それ! 新婚旅行ってことだよね! 行こう! 行こう!」

「ちょ、ちょっと、ザザ! 私はオズと二人っきりで……」

 慌てて抗議の声を上げるアーヴィン。だが、ザザはその鼻先に指を突き付ける。

「奥さんはみんな平等! だよね、シャーリー先生!」

「そうですね。そして一人ずつ旦那さまと旅行するなら、順番的には私が一番初めかなと……」

 名目上、第一夫人であるシャーリーにそう言われると、いくらこの国の姫であるアーヴィンと言えど、強引に押し切ることもできない。こうなってしまうと勝負あったというものである。

 シャーリーを味方に付けて、ザザは勝ち誇ったような顔でこう言い放った。

「三人一緒に三回の旅行と、一人一回ずつの旅行、どっちがいいかなんてわかりきってるじゃん」

「ぐ……ぐぬぬ」

 悔しげな顔をするアーヴィン。

 どうやら、俺が三回旅行に行くことは確定事項らしい。旦那さま、旦那さまと随分持ち上げられている割に、俺に決定権がほとんどないのは謎としか言いようがなかった。

「はぁ……わかった。わかったわよ」

 不承不承といった様子で肩を竦めるアーヴィン。一方でザザは上機嫌に話を進める。

「で、どこ行く? 行っちゃう?」

「うーん……行けても一泊でしょうから、それほど遠くには……」

「じゃ、リメルだね。近場だけど」

 シャーリーの言葉尻を食うように、ザザがあっさりと行き先を決定してしまった。

(リメルは近場っていう認識なのか……)

 リメルは、この国の辺境。そして俺の故郷であり、我がクラリエ家の領地である。

 前世の記憶に基づいて言えば、王都からリメルへの道のりはとんでもない悪路だ。

 旅程の大半が山岳路で馬車は使えず、亡者の谷ワイトバレーと呼ばれる大渓谷が横たわっているせいで、大きく迂回路をとる必要があり、当時はどれだけ急いでも二ヶ月以上かかる道のりであった。

 それがこの時代では朝、精霊列車トレインに乗れば昼前には到着するというのだから、三〇〇年の時の流れの凄まじさを思い知らされる。

 この時代に転生して驚くことは沢山あったが、最も驚いたのはこれかもしれなかった。

精霊列車トレインというのには興味がある……」

「あ、オズくん、乗ったことないんだ? すっごく速いから!」

 普段利用しているモトもそうだが、エドヴァルド王国時代には、魔法で乗り物を動かすという発想そのものがなかった。

 一体どんな仕組みなのか、どんな風に動くのか、本当にそんなに短時間でリメルに辿り着けるのか……考えれば考えるほどに興味は尽きない。

(それに……故郷がどんな風に変わったのかも気になるしな……)

 以前、シャーリーに聞いた話によれば、俺の生家であるクラリエ家も滅んではいないのだという。クラリエ家の末裔にも会ってみたい気はするが、一方でオズマーランドとかいうテーマパークになっているという話には、イヤな予感しかしなかった。

「じゃあ、オズくんも乗り気みたいだし、決定だね!」

「うぅ……旅行に行こうって言ったのは、私なのに……」

 いつのまにか話の主導権をザザに掻っ攫われて、アーヴィンは不満げに唇を尖らせる。このまま放置しておくと碌なことにならないのは、既に幾度も経験済みだ。

「アーヴィン、拗ねた顔も可愛いな」

「やーん、もう、オズったらぁ……」

 俺は有無を言わさず彼女の唇を奪い、薄い膨らみを揉みしだく。大きい胸は良いものだが、彼女のこの慎ましやかな胸もまた愛おしい。

 アーヴィンへの口付けを皮切りに、ザザとシャーリーが頷きあって俺の身体をまさぐり始める。そうして俺たちは再び、愛の営みへと没頭していった。



 数日が経過して、俺たちは旅行の日を迎えた。

 旅行に関することは、ジゼルの手により全て滞りなく手配済み。俺たちはそれぞれバラバラに王城を出発して王都西側の発着場へと向かい、精霊列車トレインに乗り込んでから落ち合う手はずとなっていた。

 どうしてみんなで一緒に王城を出ないのかというと、これはお忍び旅行だからだ。

 本来、王家の一員であるアーヴィンが遠出するとなれば、特別列車を運行させたり、護衛騎士や侍女たちをゾロゾロと引き連れて歩き回るなど相当な大事になるらしい。

 流石に、そんな新婚旅行は勘弁願いたかった。

 そのため、アーヴィンと近衛騎士としてかなりの有名人であるシャーリーには変装してもらい、念には念を入れて別行動を取ったという訳である。

 俺が日の出前の薄暗い発着場に辿り着いた時には、行商人と思わしき大荷物を抱えた人々と、恋人同士と思わしき若い男女が、駅舎にひしめきあっていた。

「こんな朝早くから、凄い行列だな……」

 俺が思わずそう呟くと、斜め後ろから唐突にザザの声が聞こえてくる。

「おはよー、オズくん!」

「ああ、おはよう……ってザザ、合流は客車に乗り込んでからじゃなかったっけ?」

「大丈夫、大丈夫だってば。姫殿下やシャーリー先生は問題あるかもしれないけど、アタシはただの一般生徒だし、婚約者の近くに居て声も掛けないほうがどう考えても変じゃん」

「まあ、そりゃそうか」

「で、オズくん、そっちは三等客車の列、アタシたちはこっち!」

 ザザが言うには、人がひしめきあっているのは一番安い三等客車の乗り場で、行商人たちは途中の中継駅で乗り換えて各地を目指し、若い男女は俺たち同様、リメルを目指す観光客だろうとのことだった。

 ジゼルが俺たちに手配してくれたのは、一等客車の乗車券である。

 ザザに手を引かれて辿り着いた一等客車専用の乗降口に人はまばらで、俺とザザの他に乗客は四人ほど。そのうち二人は、変装したアーヴィンとシャーリーであった。

 アーヴィンは黒髪をミュシャのように二つ結びに結わえて眼鏡を掛け、服装も庶民らしい草色のジャンパースカートに白いブラウス。溢れ出る王族オーラを地味な装いでどうにか抑え込んでいるといった風情である。

 一方のシャーリーはというと、長い金髪を鳥打ち帽に押し込んで、グレーのズボンに紺のジャケットを纏った男装。あの大きな胸をどれだけ締め付けているのだろうかと心配にはなるが、この人物が男性だとしたらあまりにも美少年過ぎて、どう見ても普段以上に衆目を集めていた。

「はへぇ……クロエが、このシャーリー先生を見ちゃったら、大騒ぎしてたんだろうなぁ……」

 感心したような声を漏らすザザだが、そう言う彼女の服装も、いつもよりグッとお洒落な印象である。

 へそ出しの裾の短いピンクのカットソーに、同じ色のニーソックス。丈の短い黒のプリーツスカートが小悪魔っぽく、ソックスとスカートの間から覗く白い太腿に、ついつい目が吸い寄せられた。

「オズくぅん、どうアタシのこの格好? 似合ってる?」

「ああ、すごく可愛いよ」

 少ないとはいえ人目がある以上、アーヴィンとシャーリーは俺たちと他人のふりをせざるを得ない。だが、ザザはそんなことお構いなしに、いや、むしろ今がチャンスと言わんばかりに、甘え声を洩らしながら俺に身を摺り寄せてきた。

 俺としては、物分かりの良いシャーリーはともかく、アーヴィンの機嫌を損ねてしまわないかと気が気でない。実際、ザザの一挙手一投足に、彼女はビクン、ビクンと反応していた。

 俺は、くっついてくるザザをさりげなく引き剥がしながら、誤魔化すように問いかける。

「えーと……オズマーランドだっけ?」

「うん! 楽しみだね、オズマーランド!」

「ザザは、行ったことあるの?」

 俺がそう問いかけると、彼女はなぜかムッとしたような顔をした。

「あるわけないじゃん、恋人たちの聖地だよ! 彼氏もいないのにオズマーランドとか、惨めすぎて泣けちゃうってば!」

「恋人たちの聖地?」

「そうそう、オズマーランドでデートしたカップルは、必ず結婚するっていうジンクスだってあるんだから!」

「なんだそりゃ……」

「だって、景色はロマンティックだし、アトラクションも楽しいし……」

(ロマンティック? あんな山を切り開いた畑しかないような場所が?)

「噂だとオズマーランドで盛り上がったカップルの大半は、一ヶ月半ぐらい経ったら女の子がお腹をさすりながら男の子を訪ねてくるんだって!」

「結婚するじゃなくて、結婚せざるを得なくなってるだと!?

 まさかの授かり婚の聖地である。

 愕然とする俺の耳元で、ザザが艶やかな声で囁く。

「パパになっちゃえばいいじゃん。ね、オズくん」

 一気に旅行する気を失うも、ザザに腕を掴まれて一等客車に連れ込まれ、後から乗り込んできたアーヴィンとシャーリーに逃げ道を塞がれた。

 ジゼルが手配してくれた一等客車は、向かい合わせの四人掛け席が二組の八人乗り。一両を貸し切っているので、車両にさえ乗り込んでしまえば他人のふりをする必要もない。

「ちょっとザザ! どうして抜け駆けすんのよ!」

 客車に乗り込むや否や、アーヴィンがザザへと突っかかった。

「あはは、ごめんって。オズくんが三等客車の方に行っちゃうのが見えちゃったからさー」

 ザザが後退りながらそう答えるのとほぼ同時に、発車を告げるベルがけたたましく鳴り響く。

「動き出しますから、お席に」

 シャーリーに促されて、俺たちは慌ただしく座席に着いた。すると、車両がゆっくりと動き出す。動き出しの感覚はモトとあまり変わりがない。車輪のガタつき。次第に振動が増幅していくような感触。想像以上に激しく揺れた。

「結構、揺れるな……」

「速度が上がりきってしまえば、揺れはほとんどなくなりますので」

 斜め向かいのシャーリーが、そう言って俺に笑いかける。

 車窓の向こう。後ろへと飛び去っていく風景。シャーリーの言葉通り、速度が上がると走っていることすらわからないほどに揺れはなくなり、風を斬る音だけが窓越しに響き始めた。

 数分で門を抜けて王都を抜け出し、車窓の景色は田園風景へと変わる。

 考えてみれば、転生以後王都を出るのは、これが二度目。対抗戦のために闘技場を訪れたのが一度目、そして今回である。

 郊外の風景は王都と比べれば前世で見たのと大きく違いはない。だが、人も寄せ付けないような沼地だった場所が整備された農地に変わっていたのには、三〇〇年という時の流れを感じさせられた。

「それにしても、むちゃくちゃ速いな」

「モトとは比較になりませんからね」

 俺が感心すると、シャーリーがどこか誇らしげな顔で説明してくれる。

精霊列車トレインは我が国の精霊魔法技術の粋を集めて造られたもので、車輪は初速を上げるためだけに使用され、途中からは専用道路の左右に埋め込まれた精霊石の力で、わずかに車体を浮かせて移動しています」

「浮いているのか!? なるほど、だからこんなに揺れが少なく……これはすごい!」

 たぶん、一番はしゃいでいるのは俺かもしれない。そこからしばらくの間、俺は我を忘れて、「アレはなんだ?」「これはどんな仕組みなんだ?」と、シャーリーたちに質問を繰り返していた。

 だが、まあそれはそれで良いのだろう。俺が感心するたびに、アーヴィンやシャーリーはどこか誇らしげな顔になって、ザザはそんな俺たちを微笑ましげな顔で眺めていた。

 俺にとっては刺激的だし、彼女たちにとって嬉しいことならば、何一つ問題はない。

 そして、俺たちが乗車して二刻ほどが経過した頃、シャーリーが窓の外を覗き込んで、こう口にした。

「そろそろ、オズマの谷オズマバレーです。この路線最大の絶景でございますね」

「いや……王都とリメルの間に横たわる渓谷と言えば、『亡者の谷ワイトバレー』じゃないのか?」

 一斉にきょとんとした顔を向けてくる妻たち。うん、いい加減もう慣れたよ。

「で、オズマの谷オズマバレーって……また何か逸話があったりするんだよな?」

 肩を竦めながらそう問いかけると、アーヴィンが誇らしげに胸を反らした。

「もちろんよ」

「えーと……高祖陛下とグロズニー皇帝の一騎討ちの時の話だったっけ?」

「そうです! 高祖陛下が絶体絶命のピンチに陥った際、大地を割って現れた精霊王オズマが高祖陛下を救ったという逸話ですね。その際にできたのがオズマの谷オズマバレーなのです!」

 うろ覚えといった雰囲気のザザに、力強く頷くシャーリー。

「なのですって言われても……な」

 俺としては(またか……)と呆れるしかない。

 そもそも『亡者の谷ワイトバレー』は俺の生まれる前から存在しているし、それ以前に皇帝とフェリアの一騎討ちという状況がもうおかしい。

 一国の皇帝が一対一で戦う状況など、そもそも有り得ないのだ。

 とりあえず、オズマが関わっているということにしておけば良いだろう的な、関係者全体の怠慢を感じざるを得なかった。

「ほら、オズ、オズマの谷オズマバレーに差し掛かるわよ」

 アーヴィンに促されて、俺は窓の外へと目を向ける。

 そこはまごうこと無き亡者の谷ワイトバレー。だが、旅人を寄せ付けず、ただ迂回することしかできなかった大渓谷に、巨大な石造りの橋が架かっていた。

「これは……すごいな」

 俺は、思わず言葉を失う。

 俺が生きていた時代では、足場を造ることさえままならなかった巨大な渓谷。そこにこんなに巨大な橋を架ける技術など想像もつかなかった。

「これはいったい……どうやって作ったんだ? 土属性の魔法か?」

 シャーリーが、真っ直ぐに俺の目を見つめる。

「いいえ、多くの職人の手によって、何十年という月日をかけて造られたと、そう聞いております」

「……そうか」

 悪い癖だ。魔法を学ぶものは、ついつい全てを魔法で解決しようとする。だが、そのせいで三〇〇年前、エドヴァルド王国がどうなったかは言うまでもない。

 俺が考えに没入しかけたところで、ザザが急に話題を変えた。

「それはともかく姫殿下! そろそろオズくんの隣、交代してほしいんだけど! もうとっくに半分過ぎてるしさ」

「それは無理」

「なんで!」

「この座席は、既に我がヒップと一体化してるから」

「おかしなこと言い出した!?

 途中で座席を交代するというのは精霊列車トレインに乗ってすぐに決めたことだが、ここへきてアーヴィンはその約束を反故にしようとしていた。実に王族らしいわがままである。

「じゃあ、こうしちゃうから!」

「お、おい!」

 ザザは、俺の首に手を回し、抱き着くように正面から膝の上へと乗ってきた。胸板に押し付けられる豊かな肉鞠の感触。途端にアーヴィンが信じられないとでも言いたげな顔で喚き散らす。

「あ! ちょっ! ズルい! ズルいわ!」

「姫殿下には言われたくないやい。ベーだ!」

 ベーっと舌を出すザザに、アーヴィンがキーッといきり立った。完全に子供の喧嘩。この二人に比べれば、斜め向かいの座席で苦笑するシャーリーは、やはり少し年上だけあって流石だなと思う。

 ならば良い子にご褒美を上げるのが、教育の基本であろう。

「ザザは、この席が良いんだな」

「うん、そうそう」

「じゃあ、俺と代わろう」

「へ?」

 俺はザザを抱きかかえて持ち上げると、席を立ってそこにザザを下ろし、シャーリーの隣へと席を移る。

「ちょ! オズくん、そういうことじゃなくて!」

「遠慮はいらないって、アーヴィンの隣がいいとか。流石、親友同士って感じだよなー」

 わざとらしくそう言いながら、俺は見せつけるようにシャーリーの肩を抱き寄せると、アーヴィンがザザを睨みつけた。

「ザザ、アンタがバカなことするから!」

「姫殿下が約束守らないからでしょ!」

 額を突き付けて睨み合う二人を他所に、俺はシャーリーの耳たぶを甘噛みする。

「あん……旦那さま」

 潤んだ瞳で見上げてくるシャーリー。

 普段とは違う男装姿も可愛くて、俺は我慢できずに彼女と唇を重ねた。

「うぅー……こんなはずじゃなかったのに」

「姫殿下のあんぽんたん」

 二人の嫉妬に塗れた視線を感じながら、シャーリーの唇を堪能する。そしてシャツのボタンを外して隙間から手を入れ、さらしに潰された胸を撫で回した。指先にわずかに突起の感触、それを執拗にいじり倒すと、シャーリーが乱れた吐息を誤魔化すようにこう口にする。

「んっ……だ、だんなさま、ま、窓の外……はぁ、はぁ……オズマーランドが見えてまいりました」

「ん? 早くないか?」

「ん、あっ……見えるのはまだ、シンボルタワーだけですが……」

 そう言われて目を凝らすと地平線の向こうに塔らしきシルエットが見える。なるほど、この距離で見えるぐらいなら相当巨大なものらしい。

「……デカいな」

 思わずそう呟くと、アーヴィンが不満げに唇を尖らせながらこう言った。

「そりゃそうよ、オズマのシンボルかたどったものだもの」

「……なんか今、背筋に冷たいものが走ったんだが?」

「平たく言えば、おち○ちんだよね」

 うん、ザザ。わかってはいたんだけど、言葉にしないで欲しかった。

 先の膨らんだ形状にそんな気はしてたんだ。でも、まさかこの国の人間もそこまで頭がおかしいことはないだろうって、信じたかったんだよ。

「この国で一番高い大聖堂の尖塔より、拳一つ分だけ低いと聞いております。おそらく男性器を模った建造物としては、世界最大ではないかと」

「そもそも男性器を模った建造物なんて他にないからな!」

 冷静に説明してくるあたり、シャーリーですらアレがおかしいとは、これっぽっちも思っていないらしかった。シンボルタワーが男性のシンボルの形とは、捻りがなさすぎて逆に意表を突かれたような気さえする。

「夜はライトアップされると聞いてるけど……見上げれば、満天の星とおち○ちん。ロマンティックだわ」

 一気に帰りたくなった。思わずげっそりしていると、アーヴィンが急に頬を赤らめる。

「誰のおち○ちんでもいい訳じゃないんだからね!」

 そんなツンデレはいらない。

 時を追うごとに近づいてくる巨大な男性器。シャーリーを可愛がってやろうという意欲も大きく減退し、物足りなげな目をするシャーリーには申し訳ないとは思いながらも、そこから俺は目を瞑って、ひたすら魔法の術式の暗唱に没頭した。現実から目を背けたかったのである。

 そこから一刻ほども経った頃、精霊列車トレインが次第に速度を落とし始めた。

 速度が落ちるに従って、車輪を通じて振動が戻ってくる。

「旦那さま、リメルに到着します。お目覚めくださいませ」

 シャーリーが、俺の耳元で囁いた。

 どうやら彼女は、俺が目を瞑っていたので眠っているものと思っていたらしい。

 速度を落とし続けていた車両が完全に停止して、俺は静かに目を開けた。

 窓の外には、石造りの駅舎が見える。観光地ゆえか、それは王都の発着場よりも立派な造りのようにも思えた。

「着いたー!」

 ザザがはしゃぎ声を上げると、アーヴィンとシャーリーが俺の方へと手を差し伸べてくる。

「行くわよ、オズ」

「旦那さま、参りましょう」

 大きく伸びをしながら客車を降りるザザ。その後を追って乗降口に降り立つと、俺たちの立つ一等客車専用の乗降口の遥か後方、三等客車用の乗降口に、人が溢れ出ているのが見えた。

 想像していたよりずっと多くの人々が、同じ列車に乗っていたようだ。

 空を見上げれば、太陽は未だ中天に到達しておらず、柔らかな日差しが降り注いでいる。

 駅舎の窓から見える範囲には、石造りの街並み。建物は俺の生きていた時代の建築様式に近いようだが、少なくとも俺の知るリメルの風景ではなかった。

「本当に昼前に着いたけど……ここ、ホントにリメルなんだよな?」

「だから、そうだってば」

 今さら何を言っているのとでも言いたげに、ザザが苦笑する。

 だが、やはり前世での苦難に溢れた道のりを知るだけに、俺は未だに信じられずにいた。

 階段を下りて、発着場の中央口へ。

 ここで二等、三等客車の乗客と合流するため、シャーリーとアーヴィンは一旦俺たちと距離を取り、ザザが待ってましたと言わんばかりに俺に腕を絡める。

 発着場を出ると、オズマーランド正門までは一本の大きな道が続いていて、その左右には多数の露店が軒を連ねていた。

「えへへ、まずは腹ごしらえからだよねー」

 そう言いながら、ザザが楽しげにキョロキョロと左右の露店を見回す。

「園内には本格的な料理店もあるみたいだけど、こういう食べ歩きも旅の醍醐味だよね」

「そうなのか?」

 俺の生きていた時代の貴族なら食べ歩きなどという無作法はもっての外だったのだが、この時代ではそうではないのだろうか?

 そう考えていると、背後でシャーリーがこれ見よがしに咳払いをした。

「旦那さまの妻として恥ずかしくない行動をお願いします」

「えー……いいじゃん。旅行なんだからちょっとぐらいハメを外してもさぁ」

「ダメよ。到着したら、すぐにリメル領主と会食の予定だもの」

 アーヴィンのその一言に、俺は思わず目を丸くする。

「え? お忍びのはずじゃ……」

「そのつもりだったんだけど、お母さまが勝手に通達しちゃったのよ。『娘がお忍びで訪問する』って……領主は当然クラリエ家の末裔ではあるけれど、オズの正体についてはバラしちゃダメよ」

 相変わらず、女王陛下は何を考えているのかよくわからない。

 アーヴィンの言う通り、領主ということは現在のクラリエ家の当主、つまり俺の死後に生まれた弟であり、妹のように可愛がってきたメイド──アリシアと親父殿の間に生まれた子の子孫である。

(もしかしたら、俺を会わせてやろうとでも思ったのかな……)

 だとすれば、ありがた迷惑としか言いようがない。

 興味がないわけではないが、一方でどんな感情を持てばよいのかわからなかった。

 親父殿への想い、アリシアへの想い、郷愁。ぐちゃぐちゃに入り混じった感情が、俺の胸の奥で澱のように沈殿していくような気がする。

(まあ、大人しくしてればいいよな……)

 名残惜しげに左右の屋台を眺めるザザを引き摺って門をくぐり、園内に足を踏み入れると、そこにはやたらリアルな筋骨隆々のネズミの着ぐるみが二本足で立っていた。

 可愛げは全く無く、近寄ってくる来場客を「シャー! シャー!」と威嚇している。普通に怖い。

「……なにあれ?」

「マスコットのオズマウスじゃん」

 俺の問いかけに、ザザが『そんなことも知らないの?』とでも言いたげな顔をした。

「マスコットって……子供泣くだろ、あれ。そもそもなんで鼠?」

「だって、オズの友達でしょ?」

「は?」

 背後で首を傾げるアーヴィンを振り返って、俺も思わず首を傾げる。

 話が見えない。見かねたシャーリーが、俺たちの話に割り込んできた。

「オズマウスは、旦那さまがスラムに潜伏しておられた際の唯一の友達だった鼠がモデルと言われておりますが、ご記憶にはございませんか?」

「ないない! そんな記憶はない!」

 確かにスラムにネズミは沢山いたが、あの時は飢えていたので姿を見かけるたびに、どうにか捕まえて食うことはできないものかと考えたものである。

 あの頃は両手が無かったのでどうしようもなかったが、少なくとも友達なら旨そうとは思わなかったことだろう。

 思わず、溜め息を吐く。

「で、会食って、どこに行ったらいいんだ?」

「シンボルタワーの根元に迎賓館があるから、そこでって聞いてるわ」

「根元って……」

 少なくとも建物に使う言葉ではなかった。

 視線を上げると巨大なシンボルタワーが目に飛び込んでくる。なにが悲しくて自分の逸物を見上げなければならないのか。許されるなら跡形もなく吹っ飛ばしてやりたい。

 ともかく、俺たちはシンボルタワーの方へと向かって歩みを進めた。

 園内には、そこかしこに例の筋骨隆々のオズマ像が設置されていたが、いちいちツッコミ始めるときりがないので割愛するが、俺のメンタルは確実にゴリゴリと削られている。

 そして、イヤな予感はしていたのだが、辿り着いたシンボルタワーの根元には、案の定二つの球状の建物があった。

 どう見てもキ○タマである。しかも何の嫌がらせか、黄金色に輝いていた。最悪である。何が最悪って、愛する妻たちの誰一人としてこの光景をおかしいと思っていなさそうなことが、最悪としか言いようがなかった。

 右側のキ○タマの前で、何人もの園内スタッフらしき男女が何かを探すように、キョロキョロと辺りを見回している。そして、そのうちの一人がこちらに気付くと、慌ただしく駆け寄ってきた。

「ご来賓の方……でございましょうか?」

 アーヴィンの名を出すのは憚られるのだろう。そのスタッフが恐る恐るそう問いかけるとアーヴィンは、王族らしいロイヤルスマイルを浮かべて小さく頷いた。

 途端に、そのスタッフは総身に緊張を走らせながら、右側のキ○タマの方を指し示す。

「ようこそ、オズマーランドへ! どうぞ、こちらへ!」

 スタッフの後について、俺たちは右側のキ○タマへと足を踏み入れた。

 とりあえず、キ○タマに足を踏み入れるという表現のおかしさについては、考えないことにしたい。

 キ○タマ……もとい、球形の建造物は外装の煌びやかさとは裏腹に、内装は意外にもかなり真面だった。

 高級感のある食堂レストランといった雰囲気で、十数人は座れるであろう黒檀の長テーブルの脇には一人の男性の姿がある。年の頃は四十代半ば、筋骨隆々たる偉丈夫であった。

「アーヴィン姫殿下! この度は我が領地へのご来訪、心より歓迎いたします!」

「クラリエ卿、お久しぶりです」

 どうやら、この男が我がクラリエ家の末裔らしい。

 三〇〇年後の子孫ともなれば、血も混じり合って親父殿やアリシアの面影を見つけることは難しいだろうとは思っていたが、難しいとかそんなレベルの話ではなかった。

 親父殿は俺以上に痩せ型で細身、アリシアについては言うまでもない。このムキムキマッチョな現領主とは似ても似つかなかった。どちらかと言えば、例のオズマ像の方がよく似ている。

(……というか、この男が例のオズマ像のモデルなんじゃないのか?)

 そんなことを考えていると、領主がいぶかしむような声音でアーヴィンに問いかけた。

「しかし、姫殿下。失礼ですがこの度はどう言った御心境の変化ですかな。御身自らオズマーランドにお越しになるなんて。女王陛下から、姫殿下は大英雄オズマをあまりお好みでいらっしゃらないと伺っておりましたが……」

「あら、別に嫌っている訳ではありませんわ。それに、今回は友人たちとの親睦を深めるのが目的ですし……」

 アーヴィンは、俺たちの方へと顔を向ける。

「クラリエ卿にご紹介しておきましょう。近衛騎士のスピナー卿はご存じですわよね」

「ええ、もちろん」

 シャーリーと領主が会釈し合うのを見届けると、アーヴィンは俺の方を指し示した。

「こちらが彼女の弟にして、私のバディのオズ・スピナー。そして、その隣が彼の婚約者で私の友人、ザザ・ドールですわ」

 途端に領主が大きく目を見開く。

「おお、この少年が噂の!」

「噂……ですか?」

「ええ、対抗戦で姫殿下とともに巨大ゴーレムを打ち倒し、女王陛下の危機を救ったともっぱらの噂ですぞ」

(こんな辺境地にまで伝わっているのか……目立ちたくない身としてはかなりマズい気がするな)

 ひとしきりの挨拶を終え、俺たちは席に着いた。

 最上席は、もちろん王族であるアーヴィン。友人枠である俺とザザと違い、護衛ということになっているシャーリーには最初、席は用意されていなかった。だが、アーヴィンの希望ということで急遽、彼女の席を用意してもらう。

「姉が立ったままでは、オズが気を使いますから」

「これはこれは! 気が回らず申し訳ありませんでした」

 そう言って、領主が大きな身を縮めるようにして頭を掻いた。巨体のせいで威圧感があるものの、その笑顔には何ともいえない愛嬌がある。

 そんな彼の様子に、俺はどこか見覚えのあるものを感じた。

(親父殿ではないけれど、誰かに似ているんだ……いったい誰だ?)

 食事は、昼食ゆえに重すぎないが、心づくしが感じられるとてもおいしいものだった。終始なごやかな雰囲気の中で会話も弾み、俺は先程頭を過った疑問をぶつけてみることにする。

「そういえば、領主さまは大英雄オズマの彫像に良く似ておられますね。もしかして、あの彫像のモデルは領主さまですか?」

「ははは! 似ていると仰っていただくのは光栄ですが、現在の一般的なオズマ像のモデルは、曾祖父のオズマールだと聞いております」

「ひいお爺さまですか?」

「ええ、芸術家たちがオズマをどう描くか頭を悩ませ、実際のオズマはどんな人物だったのかと研究されていく途上で、我がクラリエ家の男たちが代々皆、このように体躯に恵まれていることに着目し、オズマはきっとそれ以上であっただろうと、オズマールをモデルに筋肉を一回り大きく造られた彫像が、現在のオズマ像の原型だと言われておりますな」

(いやいやいや! 代々体躯に恵まれって……そんなことないからな! クラリエ家は、どっちかっていうと小柄で細身な血筋だぞ!)

 どう考えても他所から入ってきた血に、クラリエ家の血が制圧されたとしか思えなかった。

(だが、まあ……オズマ像がなんでマッチョなのかはよくわかったよ)

「それで……姫殿下。午後から園内を散策されるのであれば、こちらでも護衛を用意し、必要であれば一般人の入場規制を行いますが?」

 領主のそんな提案に、アーヴィンはゆっくりと首を振る。

「不要です。お忍びですから。列に並ぶのも人込みに揉まれるのも良い思い出になるでしょう。ね、シャーリー」

「はい、私もついておりますので」

 実際のところ護衛など付けられたらいちゃつくこともできず、ザザが俺を独占することになるのだから、この二人にそんなもの許容できるはずがなかった。

 会食を終えて領主に礼を言うと、俺たちはキ○タマを後にして園内の散策をスタートする。

「どう、オズ? 子孫に会った気分は」

「うん……色々と複雑だな。クラリエ家がこの時代にも残っていること自体は喜ばしいけれど、三百年後の人間に親父殿の面影を探してしまったのは、我ながら滑稽というか……」

「別におかしなことじゃないわよ」

 思わず目を伏せる俺の手をとって、アーヴィンが微笑んだ。

「旦那さまには、私たちがついています」

「そうそう、昔のことなんてどうでもいいじゃん!」

 シャーリーが優しく微笑み、ザザが明るい声とともに俺の肩を叩く。

「ああ……そうだな」

 そして、彼女たちは俺の手をとって走り始めた。

 園内は、既に多くの人で賑わっている。

 リメルは、もともと切り開いた山肌に畑ばかりの何もない場所だ。人間よりも狼やイノシシ、熊の方が多いような超絶怒涛の田舎だっただけに、これだけの賑わいを見せていることが信じられない気がした。

「オズくん、アタシ行ってみたいアトラクションがあるんだけど!」

「ああ、いいぞ」

 グイグイと俺の手を引っ張ってくるザザ。

 彼女に連れていかれたのは、『オズマ・ザ・ライド』という名の乗り物だった。

 高速で走る籠のようなものに乗って、走行しながら大英雄オズマの一生を体感するという実にアレな代物である。

 予想通り、この『オズマの一生』には欠片ほどの事実も存在せず、後半に到っては無数のお姉さんたちと筋骨隆々のオズマの蝋人形が、あらゆる体位でまぐわっている間を駆け抜けるという不道徳すぎるアトラクションであった。

 続いて、連れて行かれたのは『オズマシアター』。

 そこでは、役者たちによって寸劇が行われていた。

 マッチョな大英雄オズマが、次から次へと現れる悪者を一撃で倒して高祖フェリアを救い出し、最後は「実は炎の精霊王だったのだ!」と、わざとらしい告白をして精霊界に帰っていくというあらすじである。

(いや、帰っちゃったら、炎の精霊王はいないって話と矛盾するだろ……)

 たぶん、こういうツッコミは無粋なのだ。実におおらかである。

 げっそりする俺とは裏腹に、妻たちは大はしゃぎ。彼女たちもあれが事実ではないことはわかっているはずなのだが、「それはそれ、これはこれ」ということらしかった。

「……ちょっと休憩したい」

 俺が思わず音を上げると、シャーリーが口元に指を当てて考える。

「休憩であれば……ファミリー向けのフードコートと男性向けの風俗コートがあるようですが、どちらがお好みでしょう?」

「いや、フードコートだろ」

 風俗でご休憩は、更に疲れるヤツである。

 フードコートで一休み。

 オズマサンドやオズマ丼などの意味不明なメニューを完全に無視して、俺は紅茶とスコーンを注文する。

 広いフードコートの壁面には、一目でフェリアだとわかる壁画が描かれていた。

 俺が知っているフェリアがそのまま成長したら、確かにこんな感じの美しい女性になるだろうと、そう思う。長い槍を手に紫のローブを纏った彼女に、白い羽を持つ銀髪天使が寄り添っていた。

(ん? あの天使、何となくジゼルに似ているような……)

 だとすれば皮肉なものである。どう考えても彼女には、天使よりも悪魔の方が似合っているからだ。

「時間的には、次が最後のアトラクションかしら」

 円卓を囲んでケーキをつつきながら、アーヴィンがそう告げた。

「じゃあ、観覧車! オズマーランドに来たら観覧車は乗らないと!」

 ザザがケーキを頬張りながらそう言うと、アーヴィンとシャーリーもうんうんと頷く。

「観覧車なんて見かけなかったけど?」

 俺が首を傾げると、シャーリーが口を開いた。

「観覧車はメインアトラクションなので、一番奥にあるんです」

「一番奥?」

「ええ、シンボルタワーの裏側ですね」

 フードコートを出てシンボルタワーの裏側に回ると、そこには巨大なオズマ像がそびえ立っていた。

 夕闇の中にピンクの照明でライトアップされて仁王立ち。思いっきり勃起した股間のアレを軸に、巨大な車輪のようなものがゆっくりと回っている。

「最悪すぎるだろ!?

 頭のおかしさここに極まれり。だが、俺のそんなツッコミを完全に無視してザザが話を進めた。

「この観覧車のゴンドラは魔法のゴンドラって言われてて」

「魔法?」

「仕掛けもないのに、なぜか小刻みに揺れるらしいんだよね」

「絶対、中でヤってるだろ!?

 思わず声を上げる俺に、ザザはブンブンと首を振った。

「そんなことないってば! だって、男同士で入っても揺れてたもん!」

 ノーコメントである。

 見上げれば、確かに幾つものゴンドラが小刻みに揺れている。

「とにかく、俺は絶対乗らない! 下で待ってるから!」

 俺が強硬にそう言い張ったので、彼女たちは渋々三人でゴンドラに乗り込んだ。

 車輪の回転に従ってゆっくり上昇していく彼女たちを乗せたゴンドラ。ベンチに腰を下ろして見上げていると中天に達する直前辺りから、それがガタガタと小刻みに揺れ始めた。

(え……?)

 やがて、ゴンドラから降りてきた彼女たちは、なぜか顔を真っ赤にして息を荒げている。

「あ、あの……」

 俺が声を掛けるも、彼女たちはどこか上の空。感想を尋ねてみても、三人は一様に顔を赤らめて「スゴかった」としか言ってくれなかった。

 いったい中で何が起こっていたのかは、謎のままである。

 しばらくベンチで休憩した後、俺たちは本日の宿泊先へと向かうことにした。

「クラリエ卿が特別な宿を用意してくれるって言ってたわ」

 アーヴィンの言葉に従ってシンボルタワーの下に向かうと、園内スタッフらしい女性が慌ただしく駆け寄ってきた。

「園長より伺っております。ご宿泊でございますね?」

「ええ、そうよ」

「本日の宿泊は、大英雄オズマの生家にお部屋をご用意させていただきました」

「オズマの生家? レプリカってこと?」

 ザザが首を傾げると、スタッフは小さく首を振る。

「いいえ、大英雄オズマの生家に関しては、三百年前のまま保存されております」

 思いもよらぬその発言に、俺は思わず目を丸くする。

「それでは、こちらへ」

 園内スタッフに先導されて、進入禁止の立て看板の立った細い通路を抜ける。

 木々に囲まれた林の中、開けた場所に辿り着くとそのスタッフが誇らしげに胸を張った。

「ご覧ください! これが大英雄オズマの生家です」

 俺たちは、思わず呆気に取られた。

 ライトアップされた建物全体が、黄金色に輝いていたからである。

「全て当時のままでございます」

「うそつけぇぇえええ!」

 流石に、これはツッコまざるをえない。

 全面黄金張りの実家はイヤすぎる。落ち着かなくて住んでなどいられるわけがない。

 それ以前に、我がクラリエ家は辺境の貧乏貴族なのだ。こんな金の掛かった邸宅に住めるはずがなかった。

 だが、スタッフは何食わぬ顔をして案内を続ける。

「大英雄の生家でございますし、これぐらい当然でございます」

「そうなのですか?」

「そんなわけないだろ……」

 ヒソヒソと問いかけてくるシャーリーに、俺は肩を竦めてみせた。

 案内された客室内も全て黄金。落ち着かないことこの上ない。っていうか、目が痛い。救いを求めるように窓の外に目を向けた途端、俺は思わず声を上げた。

「あっ!」

「ん? どうしたの?」

 ザザが俺の傍へと歩み寄って、その視線の先へと目を向ける。

 この建物の裏手、そこには朽ちた廃屋のようなものがひっそりと佇んでいた。

「あれは……俺の生家だ」

 俺のその言葉に妻たちが顔を見合わせる。

 屋根も破れ、ボロボロで見る影もないが、それでも見間違えようはずがなかった。

 取り壊されずに柵で囲まれているところをみると、歴史的価値を計りかねているのかもしれない。

 俺たちは頷きあい、夕食を用意してくれているスタッフたちに気付かれないようにこっそりと表へ出て、裏手へと向かった。

 薄闇の中に佇む生家は、もはや幽霊屋敷と言った風情。朽ち果て、苔むしたボロボロの廃屋である。それでもその形、その佇まいは間違いなく俺が少年期を過ごした屋敷だった。

 建て付けの悪い扉を押し開けて中に踏み入ると、そこには家具の一つもなく、踏み出せばギシギシと足下で危うい音がする。

(三百年経って、まだ形を保ってるというだけでも奇跡だよな)

 この時代に生まれ変わって初めて触れる、嘗ての俺の生活の痕跡。

(懐かしい……)

 死んだ時点でも、八年は帰省していなかったのだ。

 奥の台所から、今にも妹のように可愛がっていたメイドのアリシアが顔を覗かせるような錯覚を覚える。

(何もない。何もないが……もしかしたら)

 俺は居間の壁、その一角に手を当てて『解呪デイスペル』の魔法を発動させた。

 すると、そこに小さな扉が現れる。

「え? 何、これ?」

 俺の肩越しにザザが身を乗り出し、興味津々といった目を向けてきた。

「親父殿の隠し書庫だ。親父殿の趣味は春画収集で……頼まれて、俺が『偽装デイスガイス』の魔法を施したことがあったなって……」

「じゃあ、これは未発見のオズマ史跡ってこと!?

「いや、未発見かどうかはわからないし、何も残っていない可能性の方が高いと思うけど……」

 以前、国立博物館に親父殿の集めた春画が展示されていると聞いた。これは、そもそもそれを隠していた場所なのだ。

「オズ! 開けてみましょう!」

 アーヴィンが、興奮気味に俺の肩を掴んで揺する。俺が取っ手に手をかけると、背後でシャーリーがゴクリと喉を鳴らした。

 そっと扉を開くと、中を覗き込んだアーヴィンが首を傾げる。

「……手帳かしら?」

 そこには一冊の手帳らしきものが置かれていた。この書庫自体が収集物を保管するための長期保存用の魔道具なのだが、それでもかなり腐食してボロボロになっている。

 注意深く取り出し、一ページ目を捲ると見覚えのある字が視界へと飛び込んできた。

「親父殿の手記……だな」

 そう思った途端、胸の奥から懐かしさが溢れ出し、目の奥に熱いものがこみ上げてくる。

 領主にあるまじき悪筆、右肩上りの文字がのたうっていた。一日一日の出来事の記載は短く、俺が死んだ年の辺りから大きく日付が飛んでいる。

 帝国占領下とはいえ、流石にリメルまで完全に支配するのは困難だ。親父殿は帝国に恭順を示すことで、そのまま領主の地位を維持したらしい。

 まあ、帝国にしてみれば、何の旨味もないような土地である。放置されたという方が適切なのかもしれない。

 だが、ある年を境に、文中に頻繁に登場する名前があった。

 ジゼル──フェリア嬢の使いと、そう書かれている。

 もしかしたら、メイドのジゼルの血縁者なのかもしれないが、彼女を案内役としてフェリアは旧王国の遺臣、反乱分子たちをリメルに逃れさせていたようだ。

 そして最後の一ページ。そこには遂にフェリアが叛旗を翻したと、そう書かれていた。

 親父殿は王国の遺臣を率いて、王都へと攻め上がったようだ。俺が生きている間には、碌に剣を握ったことのないような、あの親父殿がだ。信じられないような気がした。

 そして、最後の一文は、妻マルメに後を託しフェリア嬢の下へと参じると記されている。

(マルメ……マルメって護衛剣士のマルメか!)

 一度里帰りした時に紹介された、山賊あがりの女傑だ。

 俺よりも十は年下だったが、威圧感のすごい、筋肉ダルマみたいな女だった。捕らえられた山賊の中で使えそうなヤツを取り立てるというのは、人材不足の田舎ではよくあることだ。

(メイドって言うから、親父の後妻はアリシアだと思い込んでいたが……そうか、マルメか……)

 領主の仕草が誰かに似ているとそう思ったが、間違いない。マルメに似ていたのだ。

 親父殿の後妻がアリシアではなかったことに、ホッとするような思いもあるが、だからといってもう手の届かない遠い昔のことには違いない。

 アリシアが、あれからどうなったのかはわからないが、幸せな一生を過ごせたことを祈るしかなかった。

「オズ、大発見よ! 歴史的大発見だわ!」

 アーヴィンが、興奮気味に声を上げる。

「そうか……」

「その……オズがイヤでなければ、しかるべき研究機関に提出すべきだと思うのだけれど……」

 今となっては親父の形見と言えなくもないが、先に死んだ親不孝者が形見とはおかしな話でもある。

「構わないよ」

 俺は、アーヴィンにそっと親父殿の手帳を手渡した。



 黄金屋敷に戻った後、俺は食事も取らずにベッドに大の字になって、ただ天井を見上げていた。

 楽しい新婚旅行のはずが、思いがけず親父殿の生きていた痕跡に触れて、感傷的な想いに沈んでしまっていたのだ。

 部屋一面が黄金色なのには閉口するが、彼女たちが気を使ってくれて、しばらく一人にしてくれたのは幸いだった。

 取り乱したりはしないが、やはり気持ちを整理するためには時間が必要だったのだ。

 やがて、日付も変わろうかという頃になって、遠慮がちに扉をノックする音が響く。

「オズ……その、大丈夫?」

 心配げに眉を下げながらアーヴィンが扉の間から顔を覗かせ、続いてシャーリーとザザも部屋へと入ってきた。

「心配かけちゃったな」

 身を起こして微笑むと、アーヴィンが俺の頭を抱きかかえるように手を回してくる。

「大丈夫、オズには私たちがついてるから……」

「ああ」

 失ったものは確かにある。過去にももう手は届かない。

 だが、それと引き換えに、俺はこの三人の可愛い妻たちを得たのだ。彼女たちに不安げな顔をさせていることこそ間違いに違いなかった。

「三人とも、こっちにおいで」

 俺が手を差し伸べると、三人は安堵の微笑みを浮かべて俺に身を寄せてくる。

 三人は既に入浴も済ませて夜着姿。ふわりと立ち昇る湯上がりの良い匂いに、心が温かくなるような気がした。

 あらためてベッドに横たわると、夜着を脱ぎ棄てたアーヴィンとザザが左右から耳元へと囁きかけてくる。

「……オズ、愛してる」

「オズくん、好きぃ……」

 そして、腰の上に馬乗りになったシャーリーが正面からむにゅっと、柔らかな肉鞠を俺の顔へと押し付けてきた。

「はい、旦那さま。旦那さまの大好きなおっぱいです」

「んふっ、んんんっ……」

 息苦しくも甘美なその感触に、俺は顔を左右に振って顔全体を包みこむ蕩けるような感触を楽しむ。

(ああ、柔らかい……)

 人肌の温もりに、先程まで感じていた言葉にしがたい寂しさが、スッと消えていくのを感じた。

 シャーリーが身を起こし、顔を覆っていたものが離れて視界が開けると、ゆさっと重たげにぶら下がる双乳の向こうにシャーリーの優しい微笑みがある。

「お好きなだけ、楽しんでくださいませ」

 その言葉に甘えて、俺は目の前に垂れ下がる白い果実を両手で掴み、桜色の突起へと吸いついた。

「ンッ……」

 かすかに身を震わせるシャーリー。俺は牝牛の如き乳房を思うままに揉みしだきながら、ちゅうちゅうと薄桃色の授乳器官に吸い付く。

「あんッ、旦那さま……私のミルク、たくさんお吸いくださいっ、んんっ……」

 もちろん母乳など出る訳もないのだが、そこは気分である。

「じゃあ、オズくんのミルクも搾っちゃおーっと」

「ザザ、独り占めなんてさせないんだから!」

 シャーリーに負けじと、ザザとアーヴィンが奪い合うようにズボンの上から勃起を撫で回した。

「元気づけようと思ってたけど、こっちはもう元気いっぱいだよねー」

「心配して損したわ」

 手を忙しなく動かしながら、ザザは悪戯っぽく笑い、アーヴィンは呆れたような声を漏らす。

「そりゃ、みんなが可愛いからだって」

 そう言いながら俺は、目の前の双乳を真ん中に寄せ、左右の乳首にまとめてしゃぶりついた。

「あぁん、旦那さまっ、両方一緒になんてっ……」

 ちゅぱちゅぱと両乳首を纏めて吸うと、シャーリーが喜悦に満ちた声を上げる。

 一方、ザザとアーヴィンは下着ごとズボンを脱がせると、それぞれ左右からそそり勃つ逸物に舌を這わせ始めた。

「んあっ……れろっ、オズのおち○ちん、いやらしい味がするぅ……いつまでも舐めてたくなっちゃうっ、れろっ、れろれろれろっ……」

「舐めてるだけでドキドキしちゃうよ……んれろっ、ぺろれろ、れろれろれろっ……」

「くっ……」

 二枚の舌が男根全体を這い回るその刺激に、俺は思わず乳首から口を離す。

 二人がかりのフェラチオは、これが初めてというわけではなかった。二人とももはや慣れたもの。アーヴィンが亀頭を舐めれば、ザザが裏筋を、アーヴィンが裏筋を舐めれば、ザザが亀頭をと、阿吽の呼吸で絶妙な連係を繰り出してきた。

「あん、姫殿下、先っぽばっかり舐めて、ずるいっ」

「そんなにいうなら、一緒に舐めればいいじゃない」

 亀頭を挟んで、左右から舌を絡ませ合う妻たち。それはさながら、キスを思わせる舌遣いだった。

「あんっ、旦那さまっ、あ、あ、あっ……」

 シャーリーの乳房を揉みしだきながら、俺は股間を這いまわる舌の心地よさに全身を弛緩させ快感の吐息をもらす。

「ああ、三人とも気持ちいいよ。気持ちよすぎてすぐイっちゃいそうだ」

「ダメよ、オズ。私たちのご奉仕はこんなものじゃないんだから」

「そうそう、ここからが本番なんだから」

 そう言うやいなや、ザザが玉袋の片側を口に含んで転がし始めた。

「あん、オズくんのここ、いやらしい匂いが籠もってて興奮しちゃう……れろっ、れろれろっ……んれろっ、れろれろれろれろっ……」

 すると、アーヴィンが負けじと反対側に吸いつく。

「この中に子種がいっぱい詰まってると思うと、ドキドキするわ……んちゅ、ちゅううううっ……」

 二人は陰嚢を舐めしゃぶりながらも、肉竿への奉仕は忘れない。アーヴィンが亀頭を手の平で包みこんで揉みしだき、ザザが幹を緩やかに扱いた。

「うっ、ヤバいな、これ……」

 肉棒と陰嚢への同時責めに、俺は思わずビクンと腰を浮かし、その上に跨がっていたシャーリーがきゃっと短い声を漏らす。蕩けるような愉悦が背筋を痺れさせた。

「もう! 旦那さま、私を忘れないでください」

 双乳が顔に押しつけられ、俺は再び乳首へとしゃぶりつく。

(アーヴィンとザザから奉仕されながらシャーリーのおっぱいを吸ってるなんて、こんな贅沢、他にないぞ)

 遂にアーヴィンが俺のモノを咥え込んで激しく頭を上下させ始め、ザザは幹に執拗に舌を這わせ始めた。

 愛する妻たち三人による、愛情たっぷりのハーレム奉仕。これだけ一方的な奉仕を受けて我慢など長くは続かない。顔に押し付けられるシャーリーの乳房の極上の感触。下半身ではアーヴィンとザザが、絶妙なコンビネーションで俺を限界へと追い詰めていった。

「くっ!」

 短い呻き声とともに、俺は遂に限界を迎える。

 甘美な乳首の味わいと、逸物を責められて湧き上がる快楽に、抗う術もなく頂点を極めた。

「んんっ! んんんっ!」

 アーヴィンの喉奥で、濃厚な精を解き放つ。彼女はくぐもった声を洩らしながらも、おしゃぶりをやめようとはしない。それどころか更に射精を促すかのように、情熱的に頭を振り続けた。

(あっ、ああっ……すごいっ、気持ちよすぎるっ……)

 極上のハーレム奉仕が織り成す快楽に陶酔しつつ、俺は間断なく精を吐き出し続ける。脈動ごとに鋭い快感が背筋を駆け上り、心地よい虚脱感が全身に染み渡っていった。

「ぷはっ……」

 ひとしきりの射精が終わると、アーヴィンは逸物から口を離し、その瞬間、ザザは精液を奪い取ろうと彼女の唇に吸い付く。

「んふっ、や、ザザっ、やめっ、んんんっ……んちゅぱっ、れるれるっ……」

 口内に溜まったドロッと濃厚な精液を口移ししつつ、ねっとりと舌を絡め合う二人の妻。その光景は、あまりにも倒錯的な官能に満ちていた。

(女の子同士のキス……それに白い精液が舌に絡みついて……)

 淫靡な光景にゴクリと生唾を呑みこむ俺。そんな俺に、シャーリーが懇願するような目を向けてくる。

「ああ、旦那さまの精液、羨ましいです……」

 そんな切なげな顔をされると、どうにかしてあげたくなってしまう。

「じゃあ、シャーリーにはお腹の中にいっぱい注いであげるから」

 俺がそう口にした途端、ザザとアーヴィンが「えー!」と不満げな声を上げた。

 だが、シャーリーは控えめな彼女にしては珍しく二人を押し退けるように、その身を下半身の方へと滑らせ、すでに濡れそぼった割れ目に素早くペニスをあてがう。

「順番! 順番ですから。ほら、私が第一夫人ですし……ああっ、んんっ……出したばかりなのに旦那さまのこれ、やっぱり大きい……んっ、あああっ!」

 腰を沈ませながら、愉悦に満ちた嬌声をあげるシャーリー。

 彼女がゆっくり腰を動かし始めると、ザザとアーヴィンは互いに不満げな顔を見合わせて頷いた。

「はあ、もう仕方ないわねぇ……」

「うん……今はこっちで我慢するよ」

 そして彼女たちは、俺の手をそれぞれの股間に導いて、自ら秘裂に指を招き入れる。

「んはあっ、ほんとはおち○ちんが、あんっ、いいけどぉ……今は、シャーリーに譲ってあげるわよ」

「ああっ、オズくんの指っ! あんっ、あ、あっ……」

 ザザとアーヴィンが、俺の指を道具のように扱いながら甘い声で喘ぎ始めた。

 指先に感じる彼女たちの股間は、すでに興奮でしとどに濡れている。ならばと、俺も両手の指で彼女たちの牝穴をいやらしく擦り上げた。

「はああっ、オズくん、オズくぅん! そこ、いいのぉ! もっと、もっと奥まで突っ込んでぇ!」

 ザザは、たちまち快感に表情を蕩けさせながら甲高い歓喜の声を上げる。

「ひゃああんっ! そこ、オズ、私の弱いところぉ……くうぅんっ、ああんっ!」

 指の動きに嬌声をあげながら、アーヴィンとザザが俺の上で腰を動かし続けているシャーリーにへなへなとしがみついた。

「あ、あぁ、旦那さまぁ、旦那さまぁ……あんっ、奥に当たって気持ちいいですぅ」

 そして、シャーリーは我を忘れて腰を大きく動かしながら快感を訴える。

 三人の妻が互いの身を抱き合いながら激しく乱れる壮絶な光景。俺の興奮は留まるところを知らず、股間の昂りは早くも限界に達しようとしていた。

「ああん、ザザぁ……」

「んんっ、姫殿下ぁ、んじゅるっ、んふっ、んぅううんっ……」

「いやぁん……仲間外れはいやですぅ……んちゅっ、ちゅっ、れろっ」

 我を忘れて妻たちは互いの舌を貪りあい、うっとりした面持ちでキスの快感に耽っている。

「んっ、んあっ……ザザったら、キスがいやらしすぎ。んじゅるっ……乳首もはしたなく勃起させて、んんんっ……」

「姫殿下こそ、舌遣いが卑猥すぎだってばぁ、んっ……それにはしたない乳首はお互い様でしょ……んじゅるっ、じゅずずっ、んむっ、んんんっ……」

「んあっ、あああっ、あ、あ、あっ、んんんんっ!」

 互いの淫乱さを指摘し合いながら、淫蕩な接吻を交わし続けるザザとアーヴィン。シャーリーに到っては、普段の凛々しい顔の面影もなくだらしなく表情を蕩けさせている。

 唾液に妖しくぬめる三枚の舌が、ぬろぬろと複雑に絡み合う淫靡な光景。互いに舌を吸い合い、唾液を飲ませ合うそんな獣染みた妻たちの姿が俺を一気に絶頂へと押し上げていった。

「くっ!」

 短い呻き声とともに、腰の奥で渦を巻いていた白濁液が堰を切ってシャーリーの胎内へと溢れ出す。

「あ、あっ、あっ、イクっ、イクっ、イクぅううううう!」

 シャーリーが大きく身を仰け反らせるのとほぼ同時に、アーヴィンとザザも身を強張らせた。

「ひっ! ぁあああああああっ!」

「イクっ! あぁあああああああああ!」

 妻たちは互いの身を固く抱きしめ合いながら、絶頂に身を強張らせる。

 ビクンビクンと脈動を繰り返しながら、俺も射精の快感に酔った。

 やがて、俺が全てを吐き出し終えると、妻たちは俺の上へと倒れこんでくる。

 汗まみれの身体、呼吸音はそれぞれに異なるリズム。

 俺がいて、彼女たちが確かに今、ここにいた。

 過ぎ去ってしまった過去に覚えた寂しさが滑稽に思える。そうだ。俺のことを心から恋い慕ってくれる妻たちの他にいったい何が必要だというのだろう。

《特別収録 レッツゴー☆オズマーランド!/了》