肉棒が激しく跳ねて膣壁を叩き、ドピュッ、ドピュッと灼熱の奔流が胎内へと注ぎこまれてくる。

「あぁああああああああああっ!」

 私は両脚で彼のウエストを挟み込み、背骨が折れんばかりに身を仰け反らせた。

 浅ましくも膣肉はキュッと肉棒を咥えて、最後の一滴まで愛する少年の精を搾り取ろうとしているかのように激しく蠢く。

「あ……あ……あぁ……」

 最後の脈動を受け止め、力尽きるようにベッドに背を落とすと、荒い吐息が上から降ってきた。そして、私たちは汗まみれの互いの身体を愛おしむように抱きしめ合う。

(ああ……幸せ……)

 彼の体温を感じるだけで、幸福感が胸の奥から湧き上がってきた。

 未だに、私の身に何が起こったのかはわからない。あれほど鈍かった感覚が、こんなに鮮烈な快感を生み出すまでに変わってしまった理由は全くわからなかった。

 でも、もはやそんなことはどうでもいい。私は、観覧席から歩み出て舞台に立ったのだ。傍観者ではなくなってしまったのだ。

「あ……抜いちゃヤだ」

 肉棒を引き抜こうとする彼の動きを察知して、私は股間に力を込める。

 だが、遅かった。彼が腰に手をかけて力を入れると、ヌポッと卑猥な音がして、肉棒が抜け落ち、逆流した精液が秘唇からトロリと溢れだした。

「もー! イヤだって言ったのにぃ……」

 ブスっと唇を尖らせると、オズくんは呆れ顔で苦笑する。

「まだまだ、夜は長いんだから」

 耳元でそう囁かれると、途端に頬が熱を持つ。

 私はもう、この快感無しで生きていける気はしなくなっていた。


  第三章 暴走シスター襲来!  


「クロエさまの場合、快感神経が眠っているだけでございましたので、オズマさまの体内で生成される媚薬で、眠っていたソレを強引に叩き起こしてやれば、こうなるのは必然。むしろ、これまで刺激を受けて来なかった分、人並み以上の快感に晒される訳でございますから、意識を保っていられる訳がございません。とはいえ、少々やり過ぎではないかと……」

 朝、ベッドの惨状を目にしたジゼルが、責めるような視線を俺へと向けてきた。

 クロエが離してくれなかったからというのは、言い訳でしかない。

 お陰でクロエは足腰が立たず、アカデミー復帰二日目にして、さっそく欠席。

 おまけに昨晩、媚薬まみれの状態で放りだされたアーヴィンは、ジゼルが何らかの処置をしてくれて落ち着いてはいるものの機嫌は最悪。何らかの埋め合わせは必要だろう。

(まさか、こんなことで悩むことになるなんてな……)

 仕方がなかったとはいえ、気が付けば四人目の妻を迎えることになっている状況は、我ながら全く意味がわからない。童貞のまま死んだ前世を思えば、とんでもない違いである。

 そんなことを考えながら、俺は一限目間際の廊下を生徒会室へと向かっていた。

 登校してすぐに、フレデリカ姫から生徒会室に来るようにと、名指しで呼び出されたのだ。

 生徒会室に辿り着き、扉をノックすると、その向こうから涼やかな女性の声が聞こえてきた。

「お入りください」

 本校舎三階の最奥。そこに鎮座する重厚な扉を押し開けて、俺はその向こう側へと足を踏み入れる。

 白塗りの壁は上品で、赤じゅうたんの床は豪奢。ソファーセットの向こう側、黒檀のデスクの奥でフレデリカ姫が立ち上がり、ニコリと微笑みながら小首を傾げた。

「御足労いただき、誠に申し訳ございません」

 アーヴィンから、このアカデミーの実質的な最高権力者は、この丸顔の姫殿下なのだと聞いている。ここも生徒会室という名ではあるが、実質は彼女の私室らしかった。

「オズ・スピナーくん。本来ならワタクシの方から出向くべきなのですけれど、それはそれで衆目を集めてしまいますので」

「あ、はい……お気遣いなく」

 彼女は今、俺のことを『オズマさま』ではなく、『オズ・スピナーくん』と、そう呼んだ。

 誰かが、ここでの会話に耳をそばだてているのかもしれない。

 意識を集中させてみれば、隣室に繋がる扉の向こうに人の気配がある。人数は一人、わずかに殺気だっているように思えた。

 俺は、姫殿下に勧められるままに、ソファーへと腰を下ろす。

「それで……どういったご用件でしょう?」

「その後、いかがでございますか? 女子生徒からの過剰なアプローチは収まりましたでしょうか?」

「はぁ……まあ、一応、婚約者もできましたので」

「そうですわね。ですが、残念ながらザザさんのドール家は地方の小貴族。押し退けてでもオズくんを手に入れようと画策している家もあるようですから、充分にご注意を」

「……はあ。それはザザの身に危険が及ぶ可能性があると?」

「そうですわね。その可能性も否定できません」

 俺も男だ。モテて悪い気はしない。だが、大事な妻の身に危険があるのだとすれば、それを放置するわけにはいかない。

「それで……ここからが本題なのですけれど、オズくんに一人、生徒の面倒をみていただきたいのです」

「生徒の面倒を? 俺がですか?」

 それは、姫殿下からの依頼としては、かなり意外な気がした。接触する人間が増えれば、俺の正体がバレる可能性も高くなるからだ。

「特例の編入生で……本当に申し訳ないと思うのですけれど、オズくんぐらいにしか彼女を制御できそうな方に覚えがないものですから」

「制御?」

 人間関係においてあまり使用されることのないその単語に、俺が戸惑う素振りを見せると、姫殿下は隣室に繋がる扉の方へと声を掛けた。

「お入りください」

 すると、制服姿の女の子が一人、憮然とした表情で部屋へと入ってくる。

 黄土色の長い髪はボサボサで、まるでライオンのよう。

 目つきは相当に悪く、そちらも肉食獣を思わせた。

 すらりと手足は長いが、胸元は男かと思うぐらいにフラットで、制服のリボンは付けていない。そして、ボタンを外したシャツの首元は、だらしなくたわんでいた。

 見覚えは……もちろんある。ただ、どうして彼女がここにいるのかがわからなかった。

「シスター……アンジェ!?

 呆然とそう呟くと、彼女は不愉快げに頬を歪め、威嚇するようにこちらを睨みつけてくる。

「あ? 文句あんのかテメェ? ジロジロ見んじゃねぇよ、このエロ猿! 目ん玉スプーンでほじくり返すぞ、コラ!」

 呼吸するかのような罵詈雑言。

 それは間違いなく俺の知る、正教会最強のシスターだった。

 例の透け透け僧衣でもなく、黄金の甲冑ビキニアーマーでもない制服姿の違和感は凄まじいが、なにせ口が悪い。誤解のしようもないぐらい、シスターアンジェだった。

 俺は、救いを求めるように、姫殿下の方へと目を向ける。

 すると彼女は、苦笑気味に肩を竦めた。

「実は……オズくんと戦いたいと仰っておられまして、戦えないなら僧籍を捨てる。路上であの男を襲ってやると暴れられたものですから、とうとう正教会が女王陛下に泣きついてきた……という訳なのです」

「俺を襲うって言っちゃってる人の面倒みるんですか!?

「ええ、正教会としてはシスターアンジェにげんぞくされては困りますし、いつ襲撃されるかわからない状況であれば、我々もオズくんを守りにくい。それならば、いっそのこと手元に置いて、授業の一環としての安全を確保した模擬戦なら許可しようと……そういうことに落ち着いたのです」

「戦うのは確定事項なんですね……」

 俺が、げっそりした顔でそう口にすると、姫殿下は女王陛下そっくりの微笑を浮かべる。

「大丈夫ですよ。アカデミー在籍中は生徒として、課題に従事してもらいます。もっとも、オズ君に勝つまではアカデミーに在籍するということらしいので、永久に在籍することになるのでしょうね。勝てるわけありませんし」

 姫殿下がコロコロと笑うと、ビキっと音を立ててシスターアンジェのこめかみに青筋が浮かび上がった。

「おい、メス豚! 聞き捨てならねぇぞ! あぁん! 勝てるわけないだと! 上等だよ! いますぐ、この野郎ぶっ殺してやんよ!」

「もう百回ぐらい申し上げたと思いますが、私闘は一切許可いたしません。言うことを聞いていただけないなら、二度と戦うことは叶いませんわよ?」

「チッ……むかつくぜ。お高くとまりやがって」

 シスターアンジェは、ブスっとした顔でそっぽを向く。

「では、オズ・スピナーくん、お願いいたしますね」

 そう言って、姫殿下は全てを俺に丸投げし、にこやかに微笑んだ。

(うわ……おっとりしていると思ってたけど……やっぱり、あの女王陛下の娘なんだなぁ、この人)

 それが、フレデリカ姫殿下についての偽らざる俺の感想である。



 生徒会室を出て、教室に戻ったのは一限終わりの休憩時間。

「あ、オズくん、遅かったじゃな……」

 口を「な」の形に開いたまま、ザザがピタリと動きを止める。いや、ザザだけではない。俺が扉を開けた時点で、教室内の時が止まっていた。

 理由はもちろん、俺の背後に立っている人物のせいである。

「げぇえぇぇえっ!? シスターア、アン、アン、ア、ア、アン、アン……ジェェ!?

 喘ぎ声みたいな悲鳴を上げたのはボルツ。対抗戦でシスターアンジェに、瞬殺された男子生徒の一人である。同じく瞬殺されたもう一人の男子生徒、イニアスの方へと目を向ければ、彼は泡を吹いて気を失っていた。

 ボルツの悲鳴を皮切りに騒然とする教室。こうなることは大体想像がついていた。つまり、この口の悪いシスターはそれぐらい有名人で、それぐらいヤバい奴ということである。

「おい! イニアス! しっかりしろ! 誰かっ! 担架を!」

 戸惑いとおののきの声で騒然とする教室。

 ザザとミュシャが、慌ただしく俺の方へと駆け寄ってくる。

「オ、オズくん、い、いったい、な、何がどうなってんの?」

「そうだよ。なんで彼女が、こんなとこに?」

 歓迎されざるゲストの方へ、遠慮がちな視線を投げながら、声を潜めて問いかけてくる二人。背後でシスターアンジェが「ちっ」と舌打ちをして、お前が説明しろとばかりに、俺の膝の裏をつま先で蹴り飛ばした。

「痛っ!? それが……学生交流の一環として、しばらくアカデミーに在籍するらしくて」

「「は?」」

 引き攣った微笑みを浮かべながら答えると、ザザとミュシャは目を丸くしたまま言葉を失う。

「おい、クソ野郎。いつまでここに突っ立ってりゃいいんだ? とっとと席に案内しやがれ、このウスノロハゲ!」

「ハゲてねぇよ! ほんと口悪いな!?

 大して言葉を交わしたこともないはずなのだけれど、よくもそんなに人を罵倒できるものだと、一周回って感心する。

「まあ、いいや……えーと、空いてる席は」

 彼女を先導しようとした途端、突然、ドンッ! と、俺を突き飛ばす者がいた。

「どけって、お呼びじゃねぇんだよ、劣等属性! 風属性は風属性同士、あとは俺がこいつの面倒見てやっから、すっこんでろ!」

 それはキコ。オールバックのガラの悪いクラスメイトが俺を押し退けて、シスターアンジェの肩に手を置いた。

「アンタは、俺のバディってことで。へへっ! これで、最強のバディ誕生だな」

 口元をにやけさせながらキコがそう言い放つと、途端にザザが声を荒げる。

「ちょっと! 何言ってんのよ、キコ! アンタのバディはミュシャでしょうが!」

「あん? うっせぇブス!」

「ブスっ!? 誰がブスよ!」

「あー、うるせぇ、うるせぇ! こいつみたいな落ちこぼれと俺じゃ釣り合わねぇんだっての! やっと俺と釣り合うヤツが現れたってのに、水差すんじゃねーよ!」

「あんたねぇ!」

 ザザが堪らず声を荒げると、ミュシャが彼女のシャツの裾を掴んで、ふるふると首を振った。

「ほ、ほんとのことだから……わ、わたし、足引っ張ってばかりだし……」

 ほらみろとばかりに、キコが肩を竦めたその瞬間──

「おまえとアタシも釣り合わねぇっての!」

 不愉快げなシスターアンジェの声とともに、バチッ! と紫電が走って、いきなりキコの身体が吹っ飛んだ。

「バカが! 気安くアタシの身体に触りやがって! ミンチにすんぞ、この生ゴミが!」

 シスターアンジェが腹立たしげに触られた部分を払うと、キコが尻餅をついたまま、声を荒らげる。

「痛って……優しくしてやりゃつけあがりやがって! 俺の親父はこの国の法務大臣だぞ、牢にぶち込まれたくなきゃ、いますぐ詫びやがれ! 跪いて俺にすがれ、このクソアマ!」

 途端に、ただでさえ不愉快げだったシスターアンジェの顔。そのこめかみに野太い青筋が浮かび上がった。

「うるせぇ! 大臣がどうした! アタシはシスターアンジェだ、馬鹿野郎! やれるもんならやってみやがれ! 稲妻閉じ込められる牢があるってんなら見せてみろよ!」

 そして、彼女の周囲にバチバチと紫電が走り始める。顔を蒼ざめさせるキコ。救いを求めて周囲を見回すも、生徒たちの視線は冷ややかだった。声にこそ出さないが、誰もが「あーやっちゃったなー」とでも言いたげな顔をしている。

「何よりムカつくのがアタシの身体に触れたことだ! このゲロシャブ野郎! いいか、シスターってのは、みーんなオズマさまの妻なんだ! アタシの身体に触れて良い男は、オズマさまだけなんだよ! このボケ!」

 次第にヒートアップしていくシスターアンジェ。

「ちょ、ちょ、ちょっ! ちょっと待て! 待てってば!」

 ひっくり返されたダンゴムシのように足をバタつかせるキコを、シスターは獰猛な表情を浮かべて見下ろした。

「やかましい! 死んで詫びやがれ!」

 流石にこれはマズい。キコがどうなろうと構わないが、面倒を見ろと言われた手前、放っておくわけにはいかなかった。

 俺は、今にも雷撃を放とうとするシスターアンジェとキコの間に身を投げ出す。

「待て待て待て! 落ちつけってば! 俺と試合しに来たんだろ? ここで暴力沙汰起こすようなヤツとじゃ試合なんてできないぞ!」

「んだと!」

「頭使えよ、シスター。同じブッ飛ばすにしても、授業の模擬戦ならどんな無茶したって何の問題もない。対戦相手一人目がキコ、二人目が俺ってことでどうだ?」

「なっ!? ば、馬鹿野郎! か、勝手なこというんじゃねぇ! じょ、冗談じゃねぇぞ!」

 途端に、背後でキコが騒ぎ出す。そんな彼を一瞥して、暴走シスターは振り上げた手を下した。

「ちっ……面倒くせぇな、ったく」

 舌打ちしながら、彼女はキコを睨みつけ、ドスの利いた声でこう言い放つ。

「てめぇ、逃げんじゃねぇぞ! もし逃げやがったら、地獄の果てまで追いかけて、てめぇの粗末なチ○ポ細切れにしてやっから、覚悟しやがれ」

 ピクピクと頬を引き攣らせるキコ、シーンと静まり返る教室。そんな中、いつのまにか俺の傍に歩み寄っていたアーヴィンが、やたら低い声で囁きかけてきた。

「なに電気女にまで色目使ってんのよ。この浮気者」

(いや、俺……何にも悪くないよね)

 ジトっとした目を向けてくるアーヴィンに、俺は強張った微笑みを返す。お姫さまはご機嫌斜め。あきらかに昨晩、欲求不満のままに放置されたことが糸を引いていた。

「違うから。フレデリカ姫殿下に面倒みろって押し付けられただけだから……」

「……どうだか」

 ヒソヒソとそんなやり取りを繰り返していると、シスターアンジェがまた「ちっ」と舌打ちをして、こんどは脛を蹴りつけてくる。

「あーもう面倒くせぇな。バディはお前でいいや」

「ちょ!? いや、ダメダメ! 属性違うし、俺にはアーヴィンってバディが……」

「属性? 知ったこっちゃねぇな。アタシに釣り合うヤツが他にいねーんだからしょうがねぇだろうが!」

 シスターアンジェが聞く耳持たぬとばかりに肩を竦めると、アーヴィンがいきなり俺の首に手を回し、頭を自分の胸元へと抱きかかえた。

「ちょ、ちょっと! アンタ! いいかげんになさい! オズは私のバディなんだから! アンタなんかに渡すつもりないんだからね!」

「ア、アーヴィン!? お、落ち着いて!」

 これには、いきなり周囲がざわついた。顔面を胸に押さえつける光景は、いくらアーヴィンが洗濯板とはいえ、男女の関係を想像させるには充分。

 ザザが「あちゃー」と額を押さえると、一方でミュシャが興味津々といった目を向けてくる。

「え、もしかして二人って……」

 どこからか戸惑うような声が聞こえたのとほぼ同時に、あまりにも都合よく、アルメイダ先生が教室に入ってきた。

「何を騒いでいるの! 早く席に着きなさい!」

 それにしてもアルメイダ先生は毎度毎度、本当に良いタイミングで現れる。廊下で入ってくるタイミングを計ってるんじゃないだろうか。